
執筆者:辻 光明
代表税理士
銀行融資の種類と審査ポイント|中小企業のプロパー・保証付き

銀行融資は「資金繰りを安定させたい経営者」にとって有効ですが、プロパー融資と信用保証付きのどちらを選ぶか、そして何をどう準備するかで結果が大きく変わります。結論として、審査は「返済原資(キャッシュフロー)」「資金使途の妥当性」「財務の透明性」を軸に評価され、制度面では信用保証制度や、近年は事業性評価を後押しする施策の流れも強まっています。準備不足のまま申込むと、希望額が出ない・条件が悪化するという問題が起きやすい点に注意が必要です。
銀行融資の種類とは(プロパー・保証付き・形態別)
プロパー融資とは
プロパー融資は、銀行が信用保証協会の保証を付けずに、銀行自身のリスク判断で実行する融資です。決算内容・事業の安定性・情報開示姿勢がより重視され、条件(期間・金利・担保/保証)も銀行の裁量が大きくなります。実務では「取引実績を積み上げ、段階的にプロパー比率を高める」設計が王道です。
信用保証付き融資とは
信用保証付き融資は、信用保証協会の保証を付けることで銀行のリスクを軽減し、資金調達のハードルを下げる枠組みです。経営環境の変化等に対応するセーフティネット保証のように、状況に応じた制度も存在します。保証が付く分、保証料負担が発生する点は資金繰り計画に織り込む必要があります。
形態別(証書貸付・当座貸越など)の代表例
- 証書貸付:設備資金・長期運転資金向き。返済期間と返済原資の整合が重要
- 手形貸付:短期のつなぎ資金向き。回転期間と入金サイトの説明が必須
- 当座貸越:資金繰りの波を吸収。極度額設定の根拠(売上・粗利・季節性)が要点
- 割引(手形/でんさい等):売掛債権の早期資金化。与信管理の状況を見られやすい
プロパー融資と信用保証付きの違い(比較表)
| 項目 | プロパー融資 | 信用保証付き融資 |
|---|---|---|
| リスク負担 | 銀行が主に負担 | 保証協会の保証で銀行リスク軽減 |
| 審査の色合い | 財務・事業性・情報開示をより厳格に評価 | 制度要件+財務/事業性を総合評価 |
| コスト | 原則として保証料なし | 保証料負担あり(条件により変動) |
| 使いどころ | 長期取引・優良先化、条件改善 | 初回/拡大局面、環境変化時の資金確保 |
| 留意点 | 否決時の影響(他行含む)に配慮 | 枠・要件、保証料を資金繰りに反映 |
保証付き融資は「通りやすさ」だけでなく、資金使途・返済計画が明確な場合に資金調達の再現性が高い点がメリットです。一方で、長期的に金利・条件の最適化を狙うなら、プロパー比率を高めるロードマップが重要になります。
銀行審査のポイント(何を見られるか)
1) 返済原資(キャッシュフロー)の一貫性
審査の本丸は「返せるか」です。PLの利益より、実務では減価償却費を含めた営業キャッシュフローや、借入返済とのバランス(返済余力)を見られます。設備資金なら、投資後の収益・コスト構造がどう変わるかを数字で示すことが有効です。
2) 資金使途と資金計画(なぜ今、いくら必要か)
資金使途が曖昧だと、過大調達・資金流用リスクと見なされます。運転資金は「売上増に伴う増加運転資金」「支払サイト差」「季節性」など、計算根拠を示すと通りやすくなります。
3) 財務の透明性(税務申告・勘定科目の中身)
銀行は決算書の見た目だけでなく、科目の中身(役員貸付金、仮払金、棚卸資産、売掛金の滞留)を確認します。特に役員貸付金や私的流用が疑われる科目がある場合、是正方針とスケジュールを示すことが重要です。
4) 担保・保証(経営者保証の考え方)
担保や経営者保証は条件交渉の中心です。近年は「事業の将来性に基づく融資(事業性融資)」を後押しする制度整備も進んでおり、過度な不動産担保・個人保証依存を見直す流れがあります。もっとも、実務では財務内容とガバナンス(資金管理・月次管理)が整っていない段階で、いきなり無担保無保証を狙うのは現実的ではありません。
5) 面談・提出資料(情報開示姿勢)
定量(数値)と同じくらい、定性(説明の筋の良さ)が効きます。追加質問に即答できる体制、月次での業績把握、課題の自己認識(打ち手がある)が信用につながります。
融資申込の流れ(手順と準備の実務)
Step 1: 資金使途と希望条件を定義する
運転/設備の区分、必要額、希望期間、返済方法(元金均等・元利均等等)を整理します。ここが曖昧だと審査が長引きます。
Step 2: 返済計画を数字で作る(資金繰り表+損益計画)
最低でも「月次の入出金」「返済後残高」「売上変動時の耐性」を示します。銀行は悲観ケースの耐性を見ます。
Step 3: 提出資料を揃える
決算書(2〜3期)、試算表、資金繰り表、借入一覧、設備見積、主要取引先一覧など。科目の内訳説明も準備します。
Step 4: 面談で事業の勝ち筋とリスクを説明する
成長要因だけでなく、リスク(採用難、原価高、規制等)と対策をセットで説明します。
Step 5: 条件交渉と実行後のモニタリング
金利・保証・担保条件を調整し、実行後は月次報告の型を作ります。次回の条件改善(プロパー化)につながります。
中小企業の税務・経営相談
創業から成長期まで、企業のフェーズに合わせた税務・経営サポートを提供しています。
平日 9:15〜18:15(土日祝休業)
税理士法人の現場で多い相談例(ケーススタディ)
税理士法人 辻総合会計では、開業・成長期の中小企業から「保証付きは通るがプロパーが難しい」「希望額が減額される」といった相談が多く寄せられます。例えば、売上は伸びているのに運転資金が足りないケースでは、増加運転資金の根拠が説明できておらず、資金使途が曖昧と判断されがちです。月次試算表と入出金実績から増加運転資金を算定し、返済後残高の見通しを提示したところ、保証付きで満額実行となり、翌期更新で一部プロパーへ切替できた事例があります。ポイントは「数字の再現性」と「説明の一貫性」です。
よくある質問
Q: プロパー融資は保証付きより必ず金利が低いですか?
A:
一概には言えません。信用力が高く、情報開示・月次管理が整っている場合はプロパーで条件改善しやすい一方、銀行方針や担保・保証条件で逆転することもあります。総コスト(保証料含む)で比較するのが実務的です。Q: 赤字決算でも融資は受けられますか?
A:
可能性はあります。ただし「赤字の理由が一過性か」「改善の打ち手が実行されているか」「返済原資が確保できるか」が問われます。資金使途が合理的で、資金繰り上の必要性が説明できることが重要です。Q: 信用保証付き融資の注意点は何ですか?
A:
保証料負担と、制度要件・枠の確認です。また、別枠制度(例:セーフティネット保証)を検討する場合は、対象要件に該当するか、自治体等の手続きが必要かを事前に確認しましょう。まとめ
- 銀行融資は「プロパー」と「信用保証付き」を軸に、形態(証書貸付・当座貸越等)を使い分ける
- 審査の核心は返済原資(キャッシュフロー)と資金使途の妥当性、財務の透明性
- 保証付きで実績を作り、月次管理と情報開示を整えてプロパー比率を高める設計が有効
- 申込前に資金繰り表・借入一覧・科目内訳まで準備し、説明の一貫性を担保する
- 制度・慣行は変化しており、事業性評価を示せる管理体制が今後ますます重要
参照ソース
- 中小企業庁「信用保証制度の利用状況」: https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/shikinguri/hosho/index.html
- 中小企業庁「セーフティネット保証制度」: https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_gaiyou.html
- 金融庁「企業価値担保権(旧:事業成長担保権)について」: https://www.fsa.go.jp/policy/kigyoukachi-tanpo/index.html
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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