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中小企業向けコラム
作成日:2026.02.08
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

インボイス2割特例終了2026|消費税対策を税理士が解説

9分で読めます
インボイス2割特例終了2026|消費税対策を税理士が解説

インボイス2割特例は2026年9月で終了します

インボイスの経過措置である「2割特例」は、令和5年10月1日〜令和8年9月30日までの日が属する課税期間が対象で、2026年9月30日を含む課税期間までで終了します。以後は原則として「本則課税」または「簡易課税」で計算することになり、納税額と事務負担が増えやすくなります。

特に、免税→課税へ切り替えたフリーランスや小規模事業者は、2割特例がある間に「価格・契約・会計処理」を整えておかないと、2026年10月以降の資金繰りに影響が出るケースが典型です。

2割特例とは何か(まず結論)

2割特例は、インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者になった小規模事業者について、売上に係る消費税額のうち実質2割を納めるイメージで計算できる負担軽減措置です。申告時に所定の記載を行うことで適用でき、事前届出が不要とされている点が大きな特徴です。

一方で、誰でも使えるわけではありません。基準期間の課税売上高が1,000万円超の事業者や、制度趣旨上「免税点の適用がない」扱いになるケースなどは対象外になり得ます。自社が該当するかは、登録経緯・基準期間・資産取得の状況とセットで確認が必要です。

ここがポイント
2割特例は「申告のたびに選べる」一方で、「そもそも対象となる課税期間か」が前提条件です。終了直前の課税期間に、誤って適用してしまうミスが増えやすいので注意してください。

終了後に消費税負担が増える理由

2割特例が終わると、消費税の計算が原則として次のどちらかになります。

  • 本則課税:売上に係る消費税額 - 仕入・経費の仕入税額控除(インボイス保存が前提)
  • 簡易課税:売上に係る消費税額 ×(1-みなし仕入率)

2割特例は「実額の仕入控除計算」よりも納税額が小さくなりやすい設計でした。終了後は、課税売上に対して納税が素直に増えます。さらに、インボイスの保存・区分処理など運用面のコストも増えます。

加えて、買手側には「免税事業者等からの仕入れ」に関する仕入税額控除の経過措置があり、一定割合(例:80%)を控除できる期間が設けられています。この割合が変わる局面では、取引先からの値下げ圧力や契約条件の見直しが発生しやすく、売手側(あなた)の粗利を圧迫する原因になります。

2割特例・簡易課税・本則課税の違い(比較表)

終了後の意思決定は「簡易課税へ移るか」「本則で耐えるか」が中心になります。現場で説明に使いやすいように、差分を表で整理します。

←横にスクロールできます→
項目2割特例(経過措置)簡易課税本則課税
位置づけ免税→課税の激変緩和小規模向け簡便制度原則の計算方法
適用期間2026/9/30を含む課税期間まで適用可(要件内)常に適用可
納税額の考え方売上消費税の一部を納付(概ね2割イメージ)売上消費税×(1-みなし仕入率)売上消費税-実額の仕入控除
事前届出不要(申告で選択)原則必要(期限あり)不要
事務負担低〜中中高(インボイス管理が重い)
向くケース期間中の暫定措置経費率が読みにくい、請求書管理を軽くしたい仕入・外注・経費が大きい、設備投資が多い

ポイントは、2割特例終了後に「自動で簡易課税に切り替わるわけではない」ことです。移行は手続きと期限管理が核心です。

ここがポイント
簡易課税は「みなし仕入率」で計算するため、外注費や仕入が少ない業種だと不利になることがあります。逆に、インボイス管理の実務コストを下げたい事業者には選択肢になります。

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2割特例終了後の消費税対策(中小企業・フリーランス向け)

ここからは、税額そのものと、キャッシュ・契約の両面で実務的に効く対策を整理します。

対策1:まず「簡易課税に移るか」を税額で試算する

2割特例の終了後、最初にやるべきは「本則 vs 簡易」を数字で比較することです。特に次の属性は試算の優先度が高いです。

  • 外注比率が高い(制作、開発、業務委託が多い)
  • 経費は多いが、インボイスが揃わない支出がある
  • 価格転嫁が難しく、粗利が薄い

税額比較は「年間」だけでなく、資金繰りの観点で「月次の納税見込み」まで落とすと意思決定が早くなります。

対策2:簡易課税へ切替える場合は「届出期限」を死守する

簡易課税は届出が原則必要です。届出の提出が間に合わないと、当面は本則課税で対応せざるを得ず、事務負担と納税額が一気に重くなります。

Step 1: 自社の課税期間(個人は暦年、法人は事業年度)を確定する

決算月・課税期間を前提に、いつから簡易課税を使いたいのか(2026/10/1以後の最初の課税期間など)を決めます。

Step 2: 「簡易課税制度選択届出書」の提出要否と期限を確認する

原則として、適用を受けようとする課税期間の開始前までに提出が必要です。年末・期末が絡むと担当者の繁忙期に埋もれやすいので、早めのスケジュール化が重要です。

Step 3: 会計ソフトの設定(税区分・摘要ルール)を先に整備する

簡易課税でも「課税売上の集計」は必要です。税率ごとの売上管理、返品・値引き処理、インボイス番号の記録方針など、運用ルールを先に決めるほどミスが減ります。

対策3:値付け・契約を「消費税込みの設計」に直す

2割特例がある間は、税負担が軽く見えます。終了後は納税が増えるため、次の見直しが効きます。

  • 見積書の表記(税別・税込の統一、消費税の明示)
  • 長期契約の単価改定条項(税制変更時の協議条項)
  • BtoBの請負・委託契約(インボイス要件、請求書仕様)

「価格転嫁」は交渉論になりがちですが、契約書・見積書の型を先に整えると、交渉の材料が揃います。

対策4:免税事業者との取引(外注・仕入れ)の棚卸しをする

買手側の仕入税額控除の経過措置が変わるタイミングでは、取引先から「単価見直し」や「登録の有無確認」が入りやすくなります。

あなたが発注側の場合は、外注先の登録状況を棚卸しし、インボイスが必要な支出・不要な支出を分けて管理してください。あなたが受注側の場合は、請求書の形式と番号の記載漏れがないように運用を固めておくのが実務上の防波堤になります。

よくある質問

Q: インボイス2割特例は「いつまで」使えますか? ▼

A:

2割特例を適用できる期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間です。したがって、2026年9月30日を含む課税期間までが対象となり、それ以後は原則として使えません。
Q: 2割特例が終わったら自動的に簡易課税になりますか? ▼

A:

自動的には切り替わりません。簡易課税は原則として届出が必要で、提出が遅れると本則課税での対応が必要になります。適用開始したい課税期間から逆算して、届出期限を管理してください。
Q: 2割特例終了後、フリーランスは何から着手すべきですか? ▼

A:

まずは「本則と簡易の税額試算」と「請求書・見積書の税込設計」の2点です。次に、会計ソフトの税区分設定と、取引先(発注側・受注側)とのルール整備を進めると、申告時の事故が減ります。
Q: 免税事業者との取引は、2026年10月以降すぐに不利になりますか? ▼

A:

影響は取引形態によって異なります。買手側には免税事業者等からの仕入れに関する経過措置があり、一定期間は控除割合が認められています。ただし、割合変更の局面では単価交渉が起きやすいため、取引条件の明文化が重要です。

まとめ

  • インボイス2割特例は2026年9月30日を含む課税期間までで終了
  • 終了後は「本則課税」か「簡易課税」が中心となり、納税額と事務負担が増えやすい
  • 簡易課税を使うなら、届出期限の管理が最重要(自動切替はされない)
  • 税額試算と同時に、値付け・契約・請求書仕様を「税込設計」に直しておく
  • 免税事業者との取引は、経過措置の変更タイミングで交渉が起きやすいので棚卸しが有効

参照ソース

  • 国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要」: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm
  • 国税庁「インボイス制度に関するQ&A(問113 免税事業者等からの仕入れに係る経過措置)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-15.pdf
  • 国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6498.htm
  • 国税庁「適格請求書等保存方式(インボイス制度)の手引き」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_tebiki.htm

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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