税理士法人 辻総合会計グループ
無料相談
経営ブログに戻る
中小企業向けコラム
作成日:2025.06.04
更新日:2026.01.02
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

請求書・領収書の電子保存ルール|電帳法2026を税理士解説

11分で読めます
請求書・領収書の電子保存ルール|電帳法2026を税理士解説

請求書・領収書の電子保存ルールとは(2026対応の結論)

請求書・領収書の電子保存は、電子帳簿保存法に基づき「どの形で受け取り/作った書類か」によって、守るべきルールが変わります。結論として、メール添付PDFやECの領収書など“電子で授受した取引情報”は、電子データのまま保存が原則必須であり、紙の領収書等はスキャナ保存(任意)か紙保存を選択します。

電子帳簿保存法の制度は、大きく次の3つに区分されます(いずれも国税関係の帳簿・書類が対象)。

  • 電子帳簿等保存:最初からPC等で作成した帳簿・書類をデータのまま保存(任意)
  • スキャナ保存:紙で受領・交付した書類をスキャンしてデータ保存(任意)
  • 電子取引データ保存:電子でやり取りした取引情報をデータ保存(原則必須)

実務では「電子取引データ保存」の対応漏れが最も多く、2026に向けても継続的な運用設計が重要です。税理士法人 辻総合会計でも、月次の記帳代行・経理DX支援の現場で、運用ルールの“決め方”と“守り方”が成否を分けるケースを多く見ています。

ここがポイント
本記事は一般的な制度解説です。業種・取引形態・システム環境により最適解は変わります。最終判断は顧問税理士等と個別に確認してください。

「電子保存が必要な請求書・領収書」と「紙保存でもよいもの」の違い

請求書・領収書という同じ名前でも、保存区分は「入手経路」と「オリジナルの形」で決まります。まずは棚卸し(分類)が第一歩です。

電子取引に該当する代表例(電子データ保存が原則必須)

「電子取引」とは、取引情報の授受を電磁的方式で行う取引を指し、取引情報は注文書・契約書・送り状・領収書・見積書等に通常記載される事項をいいます。つまり、次のようなものは電子取引データ保存の対象になりやすい類型です。

  • メール添付のPDF請求書・領収書
  • 取引先ポータルからダウンロードした請求書・支払明細
  • ECサイトや決済サービスの領収書画面・PDF
  • クラウド請求書システムで相互送受信したデータ

ここで重要なのは、「紙に印刷してファイル」では、原則として要件を満たしませんという点です(一定の緩和・猶予の枠組みはありますが、恒常運用としては“電子で保存できる体制”を前提に設計するのが安全です)。

紙で受領した領収書・請求書(紙保存 or スキャナ保存)

取引先から紙で受け取った領収書・請求書等は、

  • 従来どおり紙で保存する
  • スキャナ保存の要件に従って電子化して保存する(任意)
    のいずれかを選べます。

スキャナ保存は、文書保存の負担軽減のために設けられた制度で、対象書類(契約書、見積書、注文書、納品書、請求書、領収書など)を一定要件でスキャン保存できます。

自社で作成する請求書控え(最初から電子で作るなら電子帳簿等保存)

会計ソフトや請求書発行ソフトで作成し、そのままPDF等で控えを保持する場合は「電子帳簿等保存」の領域です。紙で出力して保存しても構いませんが、電子で完結するならデータ保存の設計メリットが大きくなります。

電子取引データ保存の要件(改ざん防止・検索・見える化)

電子取引データ保存は、2026時点でも経理実務の中核論点です。要点は「真実性(改ざん防止)」と「可視性(見える化・検索)」をどう担保するかです。

要件の全体像:真実性と可視性を“運用”で満たす

電子データは、後から差し替え・削除が容易なため、保存に当たって一定のルールが求められます。実務上は次を押さえると設計がしやすくなります。

  • 真実性:タイムスタンプ付与、訂正削除履歴が残るシステム、受領後のデータ改変を防ぐ運用など
  • 可視性:ディスプレイ・操作説明書等の備付け、検索機能(一定の場合は緩和あり)、税務調査時のダウンロード対応
ここがポイント
よくある相談として「PDFをフォルダ保存しているが大丈夫か」があります。結論は“フォルダ保存自体は可能”でも、検索や改ざん防止、調査時提出の体制まで含めて満たしているかがポイントになります。

検索要件の考え方(売上規模・調査対応で緩和があり得る)

電子取引データは、原則として日付・金額・取引先などで検索できる形が求められます。一方で、一定の売上規模以下で、税務調査時のダウンロード要請に応じられる等の場合、検索要件が緩和される枠組みがあります。

重要なのは、緩和を使う場合でも「調査時に出せる」ことが前提になる点です。運用ルールとして、

  • 「誰が」「どこに」「どの粒度で」保存し
  • 調査時に「どの形式で」「どの期間を」提出できるか
    を手順書に落とし込む必要があります。

2024以降のポイントを2026でも引きずる:宥恕措置の終了と“新たな猶予”

過去の経過措置として、一定期間は紙出力保存でも認める「宥恕措置」がありましたが、期限到来で廃止されています。加えて、要件に沿った保存ができないことに“相当の理由”がある場合の猶予的な枠組みが整備されています(ただし、調査時のダウンロード・書面提示等への対応が求められるため、恒常運用の代替としては慎重な検討が必要です)。

スキャナ保存の要件:読み取り品質・入力期限・書類区分がカギ

紙の領収書・請求書を電子化する場合は「スキャナ保存」の要件に従います。制度としては任意ですが、経理の省力化や保管スペース削減の観点で採用する企業は増えています。

読み取り(スキャン)の技術要件:200dpi、原則カラー

スキャナ保存では、入力装置(スキャナ等)が一定要件を満たす必要があります。代表的な要件として、解像度は200dpi以上、色調は原則カラー画像(一般書類はグレースケール可)などが示されています。スマホ撮影で運用する場合も、同等の品質要件を意識してください。

入力期限:早期入力方式(概ね7営業日)と業務処理サイクル方式(最長2か月)

スキャナ保存は「いつ入力するか」が監査・調査で見られがちです。代表的には次の考え方があります。

  • 早期入力方式:受領後、速やか(概ね7営業日以内)に入力
  • 業務処理サイクル方式:通常の処理期間(最長2か月以内)経過後、速やか(概ね7営業日以内)に入力

月次決算や支払サイクルに合わせて、どちらの方式で回すかを決め、社内の経費精算ルールに落とし込むと運用しやすくなります。

重要書類と一般書類:相互関連性の要否が変わる

スキャナ保存では、帳簿との相互関連性(仕訳と証憑が紐づく状態)の確保が論点になります。近年の見直しでは、相互関連性が必要な書類が「重要書類」に限定され、一般書類では要件が緩和される整理になっています。

  • 重要書類:領収書、契約書、納品書、送り状等(資金・物の流れに直結)
  • 一般書類:見積書、注文書等(直結しないものの一部)

実務では「領収書=重要書類」に該当しやすい点に注意が必要です。“一般書類扱いで運用していた”という誤分類が、後から是正コストを生むことがあります。

中小企業の税務・経営相談

創業から成長期まで、企業のフェーズに合わせた税務・経営サポートを提供しています。

無料相談を申込む 📞 06-6206-5510

平日 9:15〜18:15(土日祝休業)

関連記事

租税公課で経費になるもの・ならないもの一覧|税理士が解説

租税公課は「税金だから全部経費」と誤解されやすい科目です。本記事では法人・個人事業それぞれの経費可否を一覧で整理し、延滞税や罰金が否認される理由、計上時期(いつ落とすか)まで実務目線で解説します。

続きを読む

2026に向けた実務の進め方(運用設計のステップ)

電子保存は、システム導入だけでは完結しません。2026に向けて「分類」「保存」「検索」「監査対応」を一連の業務として設計しましょう。

Step 1: 書類を3制度に仕分けする(電子取引/スキャナ/電子帳簿等)

請求書・領収書を、受領方法(紙/電子)と作成方法(自社作成/受領)で仕分けし、どの制度で保存するかを決めます。まずは“現状の入手経路”を洗い出すことが最優先です。

Step 2: 保存ルール(保管場所・命名・権限)を標準化する

次の3点を標準化すると、担当者が変わっても運用が崩れにくくなります。

  • 保管場所:クラウドストレージ、経費精算システム、会計ソフト添付など
  • 命名規則:日付_取引先_金額_書類種別 など、検索に耐える形
  • 権限:削除・差替え権限を最小化し、ログが残る形に寄せる

Step 3: 検索・出力(ダウンロード)手順を作る

税務調査時に「いつからいつまでの、どの取引先の、いくらの書類」を出すのかを想定し、検索と出力の手順を文書化します。“担当者の頭の中”に手順がある状態はリスクです。

Step 4: スキャナ保存の入力期限を業務フローに組み込む

経費精算の締日、支払日、月次締めと連動させて、7営業日/2か月ルールを現実的に守れる設計にします。スマホ撮影の場合は、撮影品質のばらつきを抑えるガイド(撮影距離、影、傾き、解像度)もセットにします。

Step 5: 月1回のセルフチェック(簡易監査)を回す

運用開始後は、月1回、

  • 電子取引データの取りこぼしがないか
  • 検索で抽出できるか
  • スキャナ保存の入力期限が守られているか
    をサンプルで点検します。ここを回すだけで、調査対応力が大きく上がります。

3制度の比較表:請求書・領収書をどのルールで保存するか

←横にスクロールできます→
区分主な対象(請求書・領収書)義務/任意実務の要点
電子取引データ保存メールPDF、ポータルDL、EC領収書など“電子で授受”原則必須改ざん防止と検索・ダウンロード対応を設計
スキャナ保存紙で受領した領収書・請求書等をスキャン任意200dpi/カラー等の品質、入力期限(7営業日・2か月)
電子帳簿等保存自社で電子作成した請求書控え、帳簿任意電子のまま保存する場合の要件整備(優良要件は加算税軽減等と関係)

よくある質問

Q: 取引先から届いたPDF請求書を印刷して紙保存すれば足りますか? ▼

A:

電子で授受した取引情報は「電子取引」に該当し、原則として電子データの保存が求められます。例外的な猶予・緩和の枠組みはありますが、2026の実務としては「電子で保存し、検索・ダウンロードに対応できる」体制を整える方が安全です。
Q: 電子保存はクラウドストレージに入れておけばOKですか? ▼

A:

単に保管するだけでなく、改ざん防止(真実性)と、検索・出力(可視性)の要件を運用で満たす必要があります。命名規則、削除権限、ログ、検索手順、調査時の提出手順まで含めて整備してください。
Q: スマホ撮影でもスキャナ保存として認められますか? ▼

A:

可能です。ただし、解像度(200dpi相当)や色調(原則カラー)などの要件を満たす前提で、読み取り品質のばらつきを抑える運用が重要です。撮影ガイドと入力期限の管理をセットで整備してください。
Q: 経費精算システムと会計ソフト、どちらに保存すべきですか? ▼

A:

一般に、証憑の起点(経費精算・請求書受領)に近いシステムに一次保存し、会計仕訳と紐づけられる形にするのが運用しやすい傾向です。ただし、検索要件やダウンロード対応、権限管理の強さは製品により異なるため、要件を満たせる保存先を優先してください。

まとめ

  • 請求書・領収書の電子保存は「電子取引/スキャナ保存/電子帳簿等保存」の3制度で整理する
  • 電子で授受した請求書・領収書は電子取引データ保存として原則必須
  • スキャナ保存は任意だが、200dpi・原則カラー、入力期限(概ね7営業日、最長2か月)など運用設計が重要
  • 2026に向けては、検索・ダウンロード対応を含む“調査対応の手順化”が実務リスクを下げる
  • ルールはシステム導入で終わらず、月次のセルフチェックで維持する

参照ソース

  • 国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました(令和5年度税制改正の概要)」: https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0023003-082.pdf
  • 国税庁「スキャナ保存!(パンフレット)」: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0018004-061_02.pdf
  • 国税庁「電子帳簿保存法一問一答」: https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0024005-113_r603.pdf

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

シェア:
経営ブログに戻る

お電話でのご相談

06-6206-5510

受付時間 9:15〜18:15(土日祝休業)

Webお問い合わせ

おすすめコラム

請求書発行システムおすすめ比較|インボイス対応2026

請求書発行システムおすすめ比較|インボイス対応2026

ファクタリングとは?仕組みとメリット・デメリット|税理士が解説

ファクタリングとは?仕組みとメリット・デメリット|税理士が解説

RPAで経理業務を自動化する方法|2026年版・税理士監修

RPAで経理業務を自動化する方法|2026年版・税理士監修

人気コラムランキング

1
創業融資の自己資金はいくら必要?|税理士が解説

創業融資の自己資金はいくら必要?|税理士が解説

2
顧問税理士の選び方|料金相場と失敗回避5つ

顧問税理士の選び方|料金相場と失敗回避5つ

3
決算だけ税理士に依頼は可能?費用と注意点|税理士が解説

決算だけ税理士に依頼は可能?費用と注意点|税理士が解説

4
経理効率化ツール5選|中小企業の導入手順まで税理士が解説

経理効率化ツール5選|中小企業の導入手順まで税理士が解説

5
freeeとマネーフォワード比較|どっちを選ぶ?税理士が解説

freeeとマネーフォワード比較|どっちを選ぶ?税理士が解説

© 2026 税理士法人 辻総合会計グループ. All rights reserved.

プライバシーポリシー

お電話はこちら

06-6206-5510

06-6206-5510

無料相談する

平日 9:15〜18:15