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中小企業向けコラム
作成日:2026.02.08
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

賃上げ促進税制2026中小企業|控除率改正を解説

8分で読めます
賃上げ促進税制2026中小企業|控除率改正を解説

賃上げ促進税制2026の結論|中小企業の「最大控除率」は下がる可能性

賃上げ促進税制(中小企業向け)は、賃上げをした企業が「給与増加額の一定割合」を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。現行制度では上乗せ要件を満たせば最大45%ですが、2026(令和8)年度税制改正大綱では、教育訓練費に係る上乗せ措置を廃止する方針が示されています。
その結果、教育訓練費上乗せ(10%相当)を取れていた企業は、最大控除率が「45%→35%」へ下がる影響が想定されます(他の上乗せ要件を満たす場合でも、教育訓練費分が消えるイメージです)。

当法人(税理士法人 辻総合会計)でも、賃上げ税制は「控除率の最大化」より、適用要件を落とさず確実に取る運用に相談が集中します。2026年は、教育訓練費上乗せの廃止を前提に、賃上げ設計と証憑整備を組み直すのが現実的です。

賃上げ促進税制(中小企業向け)とは|控除の対象・期間・基本の考え方

中小企業向け賃上げ促進税制は、一定の要件を満たして「前年度より給与等支給額が増えた」場合に、控除対象雇用者給与等支給増加額に一定率を掛けた金額を税額控除できる仕組みです。
現行では、対象期間が「平成30年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度」とされています。

ポイントは次の2つです。

  • 税額控除は「給与総額そのもの」ではなく、「前年度からの増加額」がベース
  • 税額控除には、調整前法人税額の20%上限など、控除できる上限がある(控除しきれない分の繰越制度もあり)
ここがポイント
2026年の論点は「制度がなくなるか」ではなく、「教育訓練費上乗せが消えることで、最大控除率を当てにした計画が崩れるか」です。大綱段階の内容は、法案・通達で適用開始事業年度が確定します。

控除率はどう変わる?|45%→35%のロジックを図解

現行(中小企業向け)の税額控除率は、基本15%に上乗せを加えていく構造です。

  • 基本:15%
  • 上乗せ(賃上げ率が高い):+15%(賃上げ率2.5%以上 等)
  • 上乗せ(教育訓練費):+10%
  • 上乗せ(子育て・女性活躍等の認定):+5%

つまり、全部満たすと 15% + 30% = 最大45% になります。

一方、2026(令和8)年度の税制改正大綱では、教育訓練費に係る上乗せ措置を廃止する方針が明記されています。すると、教育訓練費(+10%)が抜けるため、最大は 45% - 10% = 35% が想定されます(他の上乗せが残る前提)。

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区分現行(中小企業向け)2026改正大綱ベースの見込み
基本控除率15%15%(維持前提)
賃上げ率上乗せ+15%+15%(見直しが入る可能性はある)
教育訓練費上乗せ+10%廃止(0%)
認定(くるみん/えるぼし等)上乗せ+5%+5%(維持前提)
最大控除率45%35%(想定)

※「維持前提」は、中小企業向け制度が継続するという大枠の方向性と、現行制度の構造からの整理です。個別の率・要件は、改正法令で最終確定します。

教育訓練費上乗せ廃止の影響|「投資しても税額控除が増えない」局面へ

教育訓練費上乗せは、研修費・外部講師費・受講料などを増やした企業にとって、税額控除率を一気に引き上げられる強い武器でした。これが廃止されると、次の影響が出ます。

1) 最大控除率で計画していた企業は、納税見込みがズレる

例えば「今年は教育訓練費を積んで最大45%を狙う」設計だった場合、同じ賃上げをしても控除率が10%分落ちるため、法人税の着地が上振れします。資金繰りや決算賞与の判断に影響が出やすいです。

2) 研修投資の意思決定が「税制ありき」から外れる

教育訓練費を増やすこと自体は、採用・定着・生産性に効きます。ただし税制上のリターンが薄くなるなら、研修のやり方を「外部研修中心→OJT・内製化」「全員一律→職種別の重点投資」へ寄せる企業が増えるはずです。

3) これからは「賃上げ率」上乗せと認定上乗せが主戦場

教育訓練費が消えるなら、控除率を上げる手段は大きく2つに収れんします。

  • 賃上げ率の上乗せ(例:2.5%以上の達成)
  • くるみん・えるぼし等の認定による上乗せ

特に、賃上げ率上乗せは「給与総額の増加率」が焦点なので、賞与・ベア・手当・定期昇給の組み合わせで、数字を確実に作る設計が重要です。

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中小企業がやるべき実務対応|2026に向けた3ステップ

教育訓練費上乗せがなくなる前提で、実務は「要件を落とさない」体制整備が最優先です。

Step 1: 自社が「中小企業者等」に該当するか確認する

資本金や従業員数、適用除外(所得の年平均15億円超など)に該当しないかを先に確認します。グループ会社がある場合は、株主構成(大規模法人の持株比率)も要注意です。

Step 2: 賃上げ率(1.5%/2.5%)を「月次で」見える化する

賃上げ税制は「決算で初めて判定」だと手遅れになりがちです。月次で前年同月累計と比較し、着地見込みがズレたら賞与・手当・採用時期を含めて調整できる体制が必要です。

Step 3: 証憑・明細書の準備を先回りする

税制適用は、確定申告書への明細書添付など実務が伴います。給与台帳・賃金台帳、対象外となる役員・特殊関係者の除外整理、助成金が絡む場合の計算など、税務処理の前提を整えておきます。

ここがポイント
現場では「賃上げはしたのに、定義のズレで給与等支給額の集計を誤り、控除額が下がる」事故が最も多いです。給与の範囲、集計単位、前年比較の基準を早めに固めましょう。

よくある質問

Q: 2026年は中小企業の賃上げ促進税制そのものがなくなりますか? ▼

A:

2026(令和8)年度税制改正大綱では、賃上げ促進税制の見直しが示されつつ、論点は企業規模別の整理であり、少なくとも「教育訓練費の上乗せ廃止」は明記されています。制度の存廃や適用開始事業年度は、改正法令で確定します。
Q: 教育訓練費上乗せが廃止なら、研修費は増やさない方が得ですか? ▼

A:

税額控除の上乗せは期待できなくなりますが、研修投資自体が採用難・離職防止・生産性に効くケースは多いです。税制メリットが薄れる分、研修の内容・対象・内製化など、費用対効果で設計し直すのが合理的です。
Q: 「45%→35%」は確定ですか? ▼

A:

現行の中小企業向けは、基本15%に上乗せ(賃上げ率+15%、教育訓練費+10%、認定+5%)で最大45%という構造です。教育訓練費上乗せを廃止する方針が示されているため、単純化すると最大は35%が想定されます。ただし、他の上乗せ率や要件が同時に見直される可能性があるため、最終確定は改正法令の公布後に判断します。

まとめ

  • 中小企業向け賃上げ促進税制は「給与増加額×控除率」を税額控除できる制度
  • 現行は基本15%に上乗せで最大45%(賃上げ率+15%、教育訓練費+10%、認定+5%)
  • 2026(令和8)年度税制改正大綱で教育訓練費上乗せの廃止が示され、最大控除率は35%へ下がる影響が想定
  • 2026は「教育訓練費で控除率を上げる」より、賃上げ率上乗せ・認定上乗せの設計が重要
  • 実務は、該当性確認→賃上げ率の月次管理→明細書・証憑整備の順で先回りする

参照ソース

  • 財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要(令和7年12月26日 閣議決定)」: https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_gaiyou.pdf
  • 国税庁「No.5927-2 給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(中小企業者等における賃上げ促進税制)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5927-2.htm
  • 中小企業庁「中小企業向け『賃上げ促進税制』」: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai.html

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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