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中小企業向けコラム
作成日:2025.07.01
更新日:2026.01.02
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

創業融資の事業計画書の書き方|数値設計のポイントを税理士が解説

8分で読めます
創業融資の事業計画書の書き方|数値設計のポイントを税理士が解説

導入:創業融資を左右するのは「数字の説明力」です

創業融資の事業計画書は、単なる夢やアイデアの資料ではなく、金融機関に「この事業は返済できる」と納得してもらうための説明書です。起業家にとっての課題は、情熱はあるのに、売上の根拠や返済可能性が書面で伝わらず、面談前に評価が落ちてしまう点にあります。本記事では、創業融資で見られる観点を踏まえ、計画書の型と数字の作り方を具体的に解説します。

事業計画書とは:審査資料であり、経営の設計図

事業計画書(創業計画書)は、事業内容・市場・強み・資金計画・収支計画を一貫したストーリーで示す資料です。融資審査では「資金の使い道が妥当か」「計画が実現可能か」「返済原資が確保できるか」を確認するために使われます。

一方で、作成者側にとっても、事業の勝ち筋とボトルネックを言語化し、開業後の意思決定をブレさせないためのツールになります。税理士法人 辻総合会計でも、創業期の顧問先支援の現場で「計画書を作ったことで、資金繰りと採用計画の矛盾に早期に気づけた」という相談が少なくありません。

創業融資の審査で見られるポイント

見られるのは「事業の魅力」より「返済までの再現性」

審査の核心は、資金使途と返済計画が収支と整合しているかです。次の観点がセットで評価されます。

  • 市場・顧客:誰の何の課題を解決し、いくらで売るのか
  • 強み:なぜ自社が選ばれるのか(経験、立地、差別化、導線)
  • 体制:誰が、いつまでに、何をやるのか(役割・外注先・採用)
  • 数字:売上の作り方、原価・固定費、利益、返済余力

ありがちな「良い/悪い」の違いを比較

←横にスクロールできます→
項目通りやすい計画書(例)落ちやすい計画書(例)
売上計画客単価×客数×稼働日で算出し、根拠資料を添付「半年で月商300万円」など宣言だけ
競合比較競合の価格・立地・強みを調査し差別化競合分析がない、または感想のみ
費用計画家賃、人件費、広告費など固定費が現実的コストが薄い、見積もりがない
返済計画借入条件に基づき返済額と資金繰りを確認返済額の記載がない、黒字前提
ここがポイント
ポイントは「数字を盛る」ことではなく、「数字の作り方を説明できる」ことです。根拠のない上振れは面談で深掘りされ、整合性が崩れると評価が下がります。

事業計画書の書き方:融資担当者が読みやすい順序と手順

ここでは、初めてでも漏れなく作れる実務手順を示します。テンプレートに当てはめるだけでなく、各パートが一つのストーリーになるように組み立てます。

Step 1: 事業概要を1ページで言い切る

  • 事業の対象(誰に)
  • 提供価値(何を)
  • 収益モデル(いくらで)
  • 開業時期と拠点(いつ・どこで)

最初の段落で「読み手がイメージできるか」を意識します。

Step 2: 市場・競合を数字で示す

商圏、ターゲット、競合店舗数、価格帯を具体化します。可能なら、現地観察やネット調査の結果を箇条書きにし、差別化の根拠にします。

Step 3: 売上計画を分解して根拠化する

売上は「単価×数量×稼働」で作ります。例えば飲食なら「客単価3,000円×1日30名×月25日=月225万円」。この分解ができると、広告費や人員配置も説明しやすくなります。ここが売上の根拠の中核です。

Step 4: 原価・固定費を見積書ベースで積む

  • 原価率(仕入、外注)
  • 固定費(家賃、通信、リース、保険)
  • 人件費(採用時期、時給・月給、社会保険)
  • 税金・会計(顧問料、決算費用)

見積書が取れない項目は、相場の出典をメモし、面談で説明できるようにします。

Step 5: 借入金の返済額を先に確定し、資金繰りで検証する

借入500万円、5年返済、年2.0%なら、元利均等返済の月返済は約8.8万円です。利益が出ても、運転資金が不足すれば返済はできません。月次で「売上入金のタイミング」「支払(家賃・仕入・給与)」「返済」を並べ、資金ショートがないか確認します。

Step 6: リスクと打ち手を書く

想定外は必ず起きます。「売上が計画比80%の場合」「採用が遅れる場合」など、下振れシナリオと手当(広告費の増減、固定費の圧縮、追加資金の確保)を書きます。ここが数字の整合性の最終チェックになります。

ここがポイント
面談では「なぜその数字なのか」を質問されます。計画書と同じ順番で口頭説明できるよう、1分要約(事業概要→強み→数字)を準備しておくと有効です。

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失敗しやすいポイントと注意点

売上の上振れだけが目立つ

「開業3か月で黒字化」など、結果だけの記載は逆効果になりがちです。分解式(単価×数量×稼働)と、集客手段の実行計画をセットで示します。

資金使途が曖昧、または混在している

設備資金と運転資金が混ざると、妥当性が評価しづらくなります。設備は見積書、運転資金は「何か月分の固定費か」を明確にします。

自己資金の説明が弱い

通帳残高だけでなく、貯蓄の経緯、資金移動の理由、家計の固定費を説明できるようにします。自己資金は「返済の姿勢」と「資金繰り余力」のシグナルになります。

税金・社会保険を落としている

創業直後でも、住民税・事業税、社会保険料、消費税(将来の課税事業者化)など、キャッシュアウト要因があります。損益では黒字でも、資金繰りでは赤字になる典型なので注意が必要です。

税理士に相談すべきタイミングと依頼の仕方

事業計画書は自作できますが、次のケースでは専門家レビューの投資対効果が高くなります。

  • 数字が苦手で、収支と資金繰りの整合が不安
  • 設備投資が大きく、運転資金の余裕が少ない
  • 既存借入や家計負担があり、返済余力の説明が難しい
  • 面談での説明に自信がない

税理士法人 辻総合会計では、計画書の文章添削よりも「数字の前提条件」「資金繰りの波」「税・社保のキャッシュアウト」を中心にレビューし、面談で突っ込まれやすい論点を事前に潰す支援を行っています。個別事情で最適解は変わるため、必要に応じてスポット相談を活用するとよいでしょう。

よくある質問

Q: 自己資金はどれくらい用意すべきですか? ▼

A:

一律の正解はありませんが、最低限「開業費+運転資金の初期赤字を吸収できる額」が必要です。自己資金が少ない場合は、投資額の圧縮や、黒字化までの期間を短くする設計(固定費の見直し、段階採用)をセットで示すと説明力が上がります。
Q: 売上予測の根拠は何を用意すると良いですか? ▼

A:

立地・商圏データ、競合の価格帯、予約見込み、既存顧客の引継ぎ見込み、広告施策と想定反応率などが有効です。少なくとも「単価×客数×稼働日」の分解と、客数の根拠(集客導線)を一緒に説明できる状態を作ります。
Q: 面談でよく聞かれる質問は何ですか? ▼

A:

「なぜこの事業をするのか」「競合との差は何か」「売上の根拠は」「固定費はどこまで下げられるか」「最悪ケースの対応は」などです。計画書の順番で説明できるよう、1分要約と、数字の前提メモを用意するとスムーズです。

まとめ

  • 事業計画書は「事業の魅力」よりも返済可能性と再現性を示す資料
  • 売上は単価×数量×稼働に分解し、根拠と集客導線をセットで書く
  • 固定費・税金・社会保険を含め、資金繰りで返済を検証する
  • 下振れシナリオと打ち手を書き、数字の整合性を担保する
  • 不安がある場合は、数字と面談論点に強い専門家レビューが有効

参照ソース

  • 中小企業庁「創業・起業支援(施策情報)」: https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sogyo/
  • 中小企業庁(ミラサポplus)「事業計画の作り方」: https://www.mirasapo-plus.go.jp/guide/
  • 経済産業省「創業支援等事業計画(制度概要)」: https://www.meti.go.jp/policy/local_economy/sogyo/

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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