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クリニック向けコラム
作成日:2026.02.05
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

循環器内科開業ガイド2026|設備投資・収益シミュレーション・立地戦略を税理士が解説

16分で読めます
循環器内科開業ガイド2026

循環器内科開業ガイド2026|設備投資・収益シミュレーション・立地戦略を税理士が解説

循環器内科の開業をお考えの先生に向けて、医療に特化した税理士の視点から、心エコーやホルター心電図などの設備投資、診療報酬の仕組み、収益シミュレーションまで、開業成功のポイントを詳しく解説します。

循環器内科は、高齢化の進展とともに患者数が増え続けている診療科目です。心疾患は日本人の死因第2位であり、高血圧・不整脈・心不全などの慢性疾患を抱える方は年々増加しています。一方で、心エコーなどの高額な検査機器が必要となるため、開業前の綿密な資金計画が欠かせません。


循環器内科クリニックの市場環境

心疾患は死因第2位——需要は拡大傾向

厚生労働省の「人口動態統計」によると、心疾患(高血圧性を除く)は悪性新生物に次ぐ日本人の死因第2位であり、年間約23万人が心疾患で亡くなっています。高齢者人口の増加に伴い、この数字は今後も上昇が見込まれます。

循環器内科クリニックが対応する主な疾患には、以下のようなものがあります。

  • 高血圧症:患者数約4,300万人と推計される国民病
  • 不整脈(心房細動):高齢化に伴い患者数が急増
  • 虚血性心疾患:狭心症・心筋梗塞のフォローアップ
  • 心不全:「心不全パンデミック」と呼ばれるほど患者が増加
  • 弁膜症:高齢者に多い大動脈弁狭窄症など
  • 末梢動脈疾患(PAD):動脈硬化に起因する血管疾患

生活習慣病管理との親和性

循環器内科の強みは、高血圧・脂質異常症・糖尿病といった生活習慣病の管理と密接に関わる点です。これらの疾患は循環器疾患のリスク因子であるため、循環器専門医が一括して管理することは患者さんにとっても大きなメリットがあります。

2024年度(令和6年度)の診療報酬改定では、**生活習慣病管理料(Ⅱ)**が新設され、高血圧・脂質異常症・糖尿病の管理が外来で評価される仕組みが強化されました。循環器内科クリニックにとっては、検査収入に加えて管理料による安定収入を得られるチャンスが広がっています。

病診連携の要としてのポジション

循環器内科クリニックは、急性期病院と地域のかかりつけ医をつなぐ重要なポジションにあります。心臓カテーテル治療や心臓手術後の患者さんが、退院後のフォローアップ先として循環器クリニックを受診するケースは非常に多く、基幹病院との連携ルートを構築できれば安定した患者紹介が期待できます。


必要な設備と初期投資

循環器内科に必須の検査機器

循環器内科クリニックの経営を左右するのは、どのレベルの検査機器を導入するかという判断です。以下に主要な検査機器と価格帯をまとめます。

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機器名価格帯(税別)用途
心臓超音波検査装置(心エコー)1,000〜3,000万円心機能・弁膜症の評価
12誘導心電計50〜150万円基本的な心電図検査
ホルター心電計100〜300万円(複数台)24時間不整脈モニタリング
運動負荷心電図装置300〜600万円虚血性心疾患のスクリーニング
ABI/PWV検査装置200〜400万円動脈硬化の評価
頸動脈エコー装置800〜1,500万円動脈硬化の評価(心エコーと兼用可)
胸部X線装置300〜800万円心拡大・肺うっ血の評価
血液検査機器(BNP迅速測定等)200〜500万円心不全マーカーの即日判定

検査機器の選び方——3つのパターン

循環器内科クリニックの設備投資には、診療方針に応じて3つのパターンがあります。

パターン①:フル装備型(検査機器総額 3,500〜6,000万円)

心エコー(ハイエンド機)、ホルター心電計(5台以上)、運動負荷装置、ABI/PWV、頸動脈エコーをすべて揃え、高度な検査を自院で完結させるタイプです。大学病院や基幹病院の循環器内科出身の先生が、検査中心の診療を行う場合に向いています。

パターン②:標準型(検査機器総額 2,000〜3,500万円)

心エコー(ミドルクラス)、ホルター心電計(3台程度)、ABI/PWVを中心に揃え、運動負荷検査は基幹病院に紹介するタイプです。循環器専門外来と生活習慣病管理を両立させたい先生に適しています。

パターン③:ミニマム型(検査機器総額 1,000〜2,000万円)

心電計とコンパクトな心エコー、ホルター心電計(2台程度)を導入し、生活習慣病管理を主軸に据えるタイプです。開業資金を抑えたい先生や、内科全般を幅広く診療したい先生に向いています。

税理士からのアドバイス

心エコーは循環器内科の「看板装置」であり、最も費用対効果の高い投資です。

心エコー検査は1件あたりの診療報酬が高く(後述)、検査時間も15〜30分程度と効率的です。中古機器やリースの活用で初期費用を抑える方法もありますが、画質は患者満足度と診断精度に直結するため、可能であればミドルクラス以上の導入をおすすめします。


開業費用と資金計画

開業費用の目安

循環器内科クリニックの開業費用は、テナント開業か戸建て開業かで大きく異なります。

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項目テナント開業戸建て開業
内装工事費2,000〜4,000万円3,000〜6,000万円
医療機器2,000〜5,000万円2,000〜5,000万円
土地・建物敷金・保証金 500〜1,000万円5,000万〜1億円
電子カルテ・IT300〜500万円300〜500万円
什器・備品200〜400万円200〜400万円
開業前人件費200〜400万円200〜400万円
広告宣伝費200〜400万円200〜400万円
運転資金(6ヶ月分)1,500〜3,000万円1,500〜3,000万円
合計7,000万〜1億5,000万円1億2,000万〜2億5,000万円

資金調達の方法

循環器内科クリニックの開業資金は高額になるため、複数の資金調達手段を組み合わせることが一般的です。

  • 自己資金:総投資額の10〜20%(1,000〜3,000万円程度)が目安
  • 銀行融資(プロパー):メガバンク・地方銀行からの融資。循環器内科は収益性が高いため比較的融資は通りやすい
  • 日本政策金融公庫:新規開業向けの融資制度。金利が低く、無担保枠もある
  • 医療機器リース:心エコーやホルター心電計はリース対応可能。月額固定でキャッシュフロー管理がしやすい
  • 医師信用組合:医師向けの融資制度があり、条件が有利な場合がある

税理士からのアドバイス

心エコーなどの高額機器はリース活用を検討してください。

リースであれば月々の支払いが平準化されるため、開業初年度のキャッシュフロー負担を軽減できます。また、リース料は全額経費として計上できるため、節税効果もあります。ただし、総支払額は購入より割高になるため、資金に余裕がある場合は購入のほうが長期的にはメリットがあります。

なお、青色申告の「少額減価償却資産の特例」(30万円未満の資産を即時償却)や、「中小企業経営強化税制」による即時償却・税額控除なども活用できるため、開業前に税理士と相談しておくことをおすすめします。


収益シミュレーション

診療報酬の特徴——循環器内科の「稼げる検査」

循環器内科は検査単価が比較的高く、内科系の中でも収益性の高い診療科目です。主な検査の診療報酬点数を確認しましょう。

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検査項目診療報酬点数金額換算(10円/点)
心臓超音波検査(経胸壁)880点8,800円
ホルター型心電図検査1,750点17,500円
12誘導心電図130点1,300円
心臓超音波検査(負荷)1,010点10,100円
トレッドミル負荷心電図380点3,800円
ABI検査(血圧脈波)100点1,000円
頸動脈超音波検査350点3,500円
BNP検査136点1,360円
生活習慣病管理料(Ⅱ)333点3,330円(月1回)

※点数は令和6年度診療報酬改定時点のものです。

2つの収益モデル

循環器内科クリニックの収益構造は、検査中心型と生活習慣病管理型の2パターンに大別できます。

モデルA:検査中心型

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項目数値
1日あたり外来患者数40〜50人
うち心エコー検査5〜8件/日
うちホルター検査2〜3件/日
1日あたり平均診療単価8,000〜10,000円
月間診療日数22日
月間医業収入約700〜1,100万円
年間医業収入約8,400万〜1億3,200万円

モデルB:生活習慣病管理型

←横にスクロールできます→
項目数値
1日あたり外来患者数50〜70人
うち心エコー検査2〜4件/日
うちホルター検査1〜2件/日
1日あたり平均診療単価5,500〜7,000円
月間診療日数22日
月間医業収入約600〜1,080万円
年間医業収入約7,200万〜1億3,000万円

経費と院長の手取り

年間医業収入1億円と仮定した場合の経費構造の目安は以下のとおりです。

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項目金額割合
人件費(看護師3〜4名、事務2〜3名)2,500〜3,500万円25〜35%
医薬品・材料費800〜1,200万円8〜12%
家賃500〜1,000万円5〜10%
リース料・減価償却費500〜800万円5〜8%
その他経費500〜1,000万円5〜10%
経費合計4,800〜7,500万円48〜75%
院長報酬(税引前)2,500〜5,200万円25〜52%

税理士からのアドバイス

循環器内科の収益のカギは「心エコー検査の件数」です。

心エコー1件あたりの診療報酬は初診料・再診料と合わせると約12,000〜15,000円になり、所要時間は20〜30分程度です。1日に5件実施すれば、それだけで日商6万〜7.5万円の上乗せになります。臨床検査技師に心エコーを委託できる体制を整えれば、先生は他の患者さんの診察に時間を充てることができ、さらに効率的な経営が実現します。


開業立地と集患戦略

立地選定の5つのポイント

循環器内科クリニックの立地選びでは、以下の5つの視点が重要です。

① 高齢者人口の多いエリア

循環器疾患は60歳以上の患者さんが中心です。高齢化率の高い住宅地や、ニュータウンの成熟エリアは有力な候補地です。自治体が公開している「地区別高齢化率」のデータを確認しましょう。

② 基幹病院からのアクセス

心臓カテーテル治療や心臓手術を行う基幹病院の近くに開業すると、退院後の患者さんのフォローアップ先として紹介を受けやすくなります。車で15〜20分圏内が理想的です。

③ 競合クリニックの少ないエリア

循環器内科を標榜するクリニックは、他の内科系に比べて数が少ない傾向にあります。半径3km圏内に循環器専門クリニックがないエリアは狙い目です。

④ 交通の利便性・駐車場

高齢の患者さんが通いやすいよう、バス停や駅の近く、もしくは広い駐車場を確保できる場所が望ましいです。特に郊外では、15台以上の駐車場があると安心です。

⑤ 医療モール・メディカルビル

内科・整形外科・薬局が入居する医療モールでの開業は、相互送患のメリットがあります。循環器内科は他科との親和性が高いため、モール開業との相性が良い診療科です。

集患戦略——開業後の患者獲得

開業前(3〜6ヶ月前から)

  • 基幹病院への挨拶回り・紹介カードの配布
  • 地域の医師会への加入と顔つなぎ
  • ホームページ・Googleビジネスプロフィールの整備
  • 内覧会の開催(地域住民への認知向上)

開業後

  • 地域の健康診断・企業健診への参画
  • 高血圧教室・心臓病教室などの健康セミナー開催
  • 近隣の一般内科・かかりつけ医への紹介状対応の迅速化
  • 「循環器専門医」の資格を積極的にアピール

税理士からのアドバイス

開業初年度は、診診連携(クリニック間の紹介)が最も重要な集患チャネルです。

基幹病院からの紹介は信頼関係の構築に時間がかかりますが、近隣の一般内科の先生からの紹介は比較的早期に始まります。「心雑音がある」「心電図異常がある」「胸痛の精査が必要」といった患者さんを、スムーズに受け入れて迅速に結果を返すことで、紹介元の信頼を獲得できます。


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開業時の注意点

2024年度診療報酬改定の影響

2024年度(令和6年度)の診療報酬改定では、循環器内科に関連するいくつかの重要な変更がありました。2026年に開業する先生は、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 生活習慣病管理料(Ⅱ)の新設:高血圧等の管理が外来で月1回333点と評価される。循環器内科では対象患者が多く、安定収入につながる
  • 医療DXの推進:オンライン資格確認の義務化、マイナ保険証対応が必須。電子カルテの導入は事実上の標準に
  • かかりつけ医機能の評価:地域包括診療加算等の算定要件が見直され、かかりつけ医としての機能を持つことが収益面でもプラスに
  • ベースアップ評価料の新設:スタッフの賃上げに対応する新たな評価が設けられた

医療法人化のタイミング

循環器内科は年間医業収入が高くなりやすいため、個人事業での所得が1,800万円を超えるタイミングで医療法人化を検討するのが一般的です。法人化により、以下のメリットがあります。

  • 実効税率の引き下げ(個人最大55% → 法人約33%)
  • 役員報酬による所得分散
  • 退職金の積み立て
  • 社会保険の活用

ただし、法人化には設立費用や事務負担の増加もあるため、顧問税理士と相談のうえ最適なタイミングを見極めてください。

スタッフ採用のポイント

循環器内科クリニックでは、以下のスタッフ構成が一般的です。

  • 看護師:3〜4名(心電図・採血・患者対応)
  • 臨床検査技師:1〜2名(心エコー・ホルター解析を担当できると理想的)
  • 医療事務:2〜3名(レセプト業務は循環器の検査加算に精通した人材が望ましい)
  • 放射線技師:胸部X線撮影を行う場合は1名(兼任も可)

特に臨床検査技師の確保が経営上のカギです。心エコー検査を検査技師に委託できれば、医師は外来診療に専念でき、1日の患者数を大幅に増やすことが可能になります。

開業届出と施設基準

循環器内科クリニックの開業にあたっては、保健所への診療所開設届のほか、以下の届出・手続きが必要です。

  • 保険医療機関の指定申請(地方厚生局)
  • 各種施設基準の届出(検査機器に応じて)
  • 生活習慣病管理料の施設基準届出
  • 労災保険指定医療機関の申請
  • 各種公費負担医療(自立支援医療等)の指定申請

届出書類は煩雑ですので、開業支援コンサルタントや税理士と連携して進めることをおすすめします。


まとめ

循環器内科は、高齢化社会において需要が拡大し続ける有望な診療科目です。開業にあたっての主なポイントを整理します。

  • 市場環境:心疾患は死因第2位、高血圧・心不全・不整脈の患者数は今後も増加見込み
  • 初期投資:テナント開業で7,000万〜1億5,000万円、心エコーが最も重要な投資
  • 収益性:心エコー・ホルター心電図など検査単価が高く、年間医業収入1億円以上も十分に射程圏内
  • 立地:高齢者人口が多く、基幹病院からの紹介が見込めるエリアが有利
  • 成功のカギ:臨床検査技師の確保による検査効率化と、病診連携による安定した患者紹介

開業は先生の医師人生における大きな転機です。綿密な事業計画と資金計画のもとで進めていただくことが、長期的な経営安定の礎となります。循環器内科の開業をお考えの先生は、ぜひ医療に特化した税理士にご相談ください。


関連記事(院長向け)

  • 呼吸器内科開業ガイド2026
  • 消化器内科開業ガイド2026
  • クリニック医療法人化ガイド2026

参考リンク

  • 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について」
  • 厚生労働省「令和5年 人口動態統計(確定数)の概況」
  • 一般社団法人 日本循環器学会

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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