
執筆者:辻 勝
会長税理士
診療報酬改定2026在宅医療の点数と施設基準|税理士が解説

はじめに:2026改定の結論(訪問診療の経営に何が効くか)
診療報酬改定2026(令和8年度)で在宅医療・訪問診療は、「個別点数の増減」だけでなく、評価の適正化と連携・ICTの実装度合いが収益と運用負荷を左右します。特に訪問診療クリニックは、算定構造が複数の加算・管理料の積み上げで成り立つため、要件の微修正が月次売上に直結しやすい領域です。
当法人(税理士法人 辻総合会計)でも、在宅医療を行う顧問先から「改定で何を先に整えるべきか」「施設基準の届出で落とし穴はないか」という相談が増えています。本稿では、現時点で公表されている情報を起点に、訪問診療の点数改定の捉え方と施設基準の実務対応を整理します。
診療報酬改定2026の全体像(改定率・施行時期・在宅医療の位置づけ)
まず、訪問診療の改定影響を読むうえで、全体方針の確認が欠かせません。令和8年度改定では、物価高騰・賃上げ、人手不足への対応、2040年を見据えた機能分化・連携、医療DXの推進などが基本方針として示されています。あわせて「治し、支える医療」の文脈で、在宅医療・訪問看護を含む地域包括ケアの推進が明記されています。
公表資料では、改定率(2年度平均)や施行時期が示され、さらに「適切な在宅医療の推進のための対応」や「実態を踏まえた在宅医療・訪問看護関係の評価の適正化」などが、全体の効率化項目の一部として位置づけられています。
| 観点 | 令和6年度改定(参考) | 令和8年度改定(2026)現時点の公表情報 |
|---|---|---|
| 改定の軸 | 24時間体制、連携、ICT活用を後押し | 物価・賃上げ対応と同時に、在宅の「適正化」も論点 |
| 施行タイミング | 2024年度改定で順次施行(項目ごと) | 診療報酬は2026年6月施行(公表資料ベース) |
| 在宅領域のメッセージ | 連携を評価する加算新設・見直し | 在宅・訪問看護の評価見直しが示唆(詳細は今後) |
訪問診療の点数改定2026:読み方(「増える/減る」ではなく「構造が変わる」)
ロングテールで多いのは「訪問診療 点数 改定 2026」で、結論だけを知りたいニーズです。ただし、在宅は「基本料の一律増減」より、要件付き加算の通りやすさと連携コストのバランスで実態が決まります。
2024改定で起きた“在宅の構造変化”を復習(2026を読む土台)
令和6年度改定では、地域の24時間体制や情報共有を促進する観点から、例えば次のような「連携・ICT」を軸とした評価が整理されました。
- 往診時に、他医療機関との定期カンファレンスまたはICT等での情報共有を前提とした加算(新設)
- 介護保険施設等との平時連携を前提に、急変時の往診を評価する加算(新設)
- 在宅療養移行加算について、対象範囲の拡大や連携要件(カンファレンス/I CT)の扱いの見直し
この流れは、「在宅の提供量」だけでなく「提供の質(連携・継続性・緊急対応)」に報酬設計を寄せる動きと言えます。
2026改定で想定される“適正化”の意味(税理士の実務視点)
公表資料にある「評価の適正化」は、一般に次のいずれか、または組み合わせで表れます(ここは方針からの推測であり、確定情報ではありません)。
- 同種サービスの重複評価の整理(似た加算の統合・要件整理)
- 実績・質指標(看取り、緊急往診、連携会議、情報共有体制など)への寄せ方の調整
- 施設・人員配置要件の運用厳格化、またはDX前提の柔軟化
訪問診療クリニックでは、これらが「算定できる加算が減る」ではなく、算定できる医療機関が絞られる形で出ることがあります。したがって、経営対応は「点数表が出てから動く」では間に合わず、体制整備と記録様式の先行が有効です。
施設基準はどう変わる?(訪問診療クリニックが押さえる論点)
検索では「訪問診療 点数 改定 2026 施設基準」のように、点数と施設基準をセットで確認したいニーズが顕著です。施設基準は、加算の可否だけでなく、監査対応・返還リスクにも直結します。
施設基準チェックの要点(2026でブレにくい“型”)
在宅医療の届出・算定で、改定ごとに細部は変わっても、実務上ブレにくい論点は概ね次のとおりです。
- 24時間対応の定義(連絡体制、往診体制、看護との連携、代替手段)
- 連携の“平時運用”の証跡(定期カンファレンス、ICT共有のログ、情報提供書)
- 緊急時の役割分担(後方支援病院、入院受入、看取り対応)
- 診療録記載の粒度(誰と何を共有し、何を参照して、どの判断をしたか)
- 多職種連携(訪問看護、ケアマネ、介護施設、薬局)と情報共有ルール
施設基準の「よくある落とし穴」(返還・指摘を避ける)
現場で起こりがちな論点は次のとおりです。
- “連携しているつもり”だが、定期性や記録が不十分で要件を満たさない
- ICT共有をしているが、閲覧可能状態の担保(誰がいつ見られるか)の説明ができない
- 24時間体制の名義と実態が乖離している(オンコール体制の記録が弱い)
- 診療録に「参照した情報」「連携先名」「診療の要点」の記載が欠ける
税務・経営の観点では、加算返還が起きると、過年度分の返還に加え資金繰りへ波及しやすいため、算定前の体制証跡づくりが重要です。
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改定対応の進め方(訪問診療の点数・施設基準を同時に整える)
ここからは、訪問診療クリニックが2026改定に向けて実務で進めやすい手順を示します。ポイントは「算定できる体制」と「説明できる記録」を同時に作ることです。
Step 1: 現状の算定ポートフォリオを棚卸しする
月次で、在宅領域の算定項目(管理料、訪問診療、往診、各種加算)を一覧化し、「どの要件で成立しているか」を紐づけます。ここが曖昧だと、改定後に影響額の試算ができません。
Step 2: 施設基準・連携体制の“証跡”を整備する
連携会議の議事録、情報提供書、ICT共有の運用手順、オンコール実績などを、監査目線で説明可能な形にします。診療録のテンプレート整備もこの段階で行います。
Step 3: 2026の論点(適正化・DX)に合わせて運用を微調整する
「定期性」「誰が何を共有するか」「患者同意の扱い」など、運用の穴を塞ぎます。改定で要件が変わった場合も、運用を少し変えるだけで追随できる状態が理想です。
Step 4: 収益・コストの同時シミュレーションを行う(税理士が見るポイント)
訪問件数や看取り件数の想定を置き、加算の算定率が数%下がった場合、逆に連携評価が上がった場合など、複数シナリオで試算します。人件費(オンコール、事務、看護補助)、ICTコスト、車両費なども連動させます。
Step 5: 届出・教育・請求チェックの運用を回す
届出期限や様式改定に備え、作業担当を決め、請求前点検(レセプトチェック)とカルテ記載の整合を運用に組み込みます。ここまでやって初めて、改定後に“安全に算定できる”状態になります。
よくある質問
Q: 2026改定で訪問診療の点数は上がりますか、下がりますか?
A:
現時点では、在宅患者訪問診療料など「個別点数の増減」は確定していません。一方で、公表資料には在宅医療・訪問看護の評価を実態に合わせて見直す旨が示されており、増減よりも「算定要件・対象の整理(適正化)」として影響が出る可能性があります。したがって、点数表の公表を待つだけでなく、連携・ICT・記録整備を先行しておくことが実務的です。Q: 施設基準の届出で、訪問診療クリニックが一番注意すべき点は何ですか?
A:
「体制があること」より「体制を説明できること」です。24時間対応、連携会議/I CT共有、緊急時対応方針などは、診療録・議事録・運用手順として証跡が残っていないと指摘対象になり得ます。算定を始める前にテンプレートと記録ルールを固めるのが安全です。Q: 税理士に相談するメリットは、診療報酬の専門家ではないのに何ですか?
A:
改定影響は「点数」だけでなく、オンコール体制、人員配置、ICT投資、返還リスクなどを通じてキャッシュフローに波及します。税理士は、試算(複数シナリオ)、資金繰り、投資計画、労務コストの見える化をセットで扱えるため、「改定に耐える経営設計」を作りやすい点がメリットです。まとめ
- 診療報酬改定2026(令和8年度)は、在宅医療・訪問診療で評価の適正化が論点になり、個別点数の増減より「算定構造の変化」に備える必要がある
- 2024改定では連携・ICTを評価する加算や見直しが進んでおり、2026でも「質・連携・記録」が収益とリスクを分ける
- 施設基準は、体制そのものより“証跡”が重要で、診療録テンプレートや運用手順の整備が返還リスク低減につながる
- 準備は「算定棚卸し→証跡整備→運用微調整→収支シミュレーション→届出・教育」が実務的な順序
- 個別点数が確定する前から、連携・ICT・記録整備を先行しておくと改定対応が滑らかになる
参照ソース
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の基本方針」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001618046.pdf
- 厚生労働省「診療報酬改定について(令和7年12月24日)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001620952.pdf
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001226864.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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