
執筆者:辻 勝
会長税理士
アレルギー科開業のニーズと収益|花粉症外来の可能性を税理士が解説

アレルギー科開業のニーズと収益|花粉症外来の可能性を税理士が解説
アレルギー専門医としての開業を検討されている先生に向けて、アレルギー科クリニックの開業ポイントを解説します。花粉症シーズンの収益最大化、舌下免疫療法による通年収益の確保、そして季節変動を乗り越える経営戦略まで、クリニック専門の税理士が詳しくお伝えします。
アレルギー疾患の現状と市場ニーズ
アレルギー患者の増加傾向
日本におけるアレルギー疾患の患者数は年々増加しており、国民の約2人に1人が何らかのアレルギー疾患を有するとされています。
主なアレルギー疾患の患者数(推計)
- 花粉症:約3,000万人
- アトピー性皮膚炎:約500万人
- 気管支喘息:約800万人
- 食物アレルギー:約150万人
特にスギ花粉症は毎年増加傾向にあり、2026年現在では国民の約38%が罹患していると推計されています。
アレルギー科開業の優位性
アレルギー科開業には以下の優位性があります:
| 優位性 | 内容 |
|---|---|
| 高い需要 | 花粉症患者は毎年来院 |
| リピート率 | 舌下免疫療法で3年継続 |
| 幅広い年齢層 | 小児から高齢者まで |
| 専門医不足 | 競合が比較的少ない |
| 自費診療の余地 | アレルギー検査・食事指導等 |
アレルギー科開業の初期費用
開業費用の目安
アレルギー科クリニックの開業費用は、3,500万〜5,000万円が相場です。小児科を併設する場合は5,000万〜6,500万円程度になります。
費用内訳
| 項目 | 費用目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 内装工事 | 600万〜1,000万円 | 処置室・吸入室 |
| 医療機器 | 800万〜1,500万円 | 呼吸機能検査等 |
| 保証金・敷金 | 200万〜400万円 | 立地による |
| 運転資金 | 1,000万〜1,500万円 | 6ヶ月分推奨 |
| 開業諸経費 | 200万〜400万円 | 広告・備品等 |
必要な医療機器
アレルギー診療に必要な主な医療機器:
- スパイロメーター:50万〜150万円(呼吸機能検査)
- 呼気NO測定器:100万〜200万円(気道炎症評価)
- ネブライザー:5万〜20万円/台
- プリックテスト用具:10万〜30万円
- 血液検査機器(外注も可):200万〜500万円
比較的低コストで開業できるのがアレルギー科の特徴です。
花粉症シーズンの収益戦略
季節変動の実態
アレルギー科クリニックの最大の課題は季節変動です。スギ・ヒノキ花粉症シーズン(2月〜5月)に患者が集中し、夏〜秋は閑散期となります。
月別患者数の傾向(概算)
| 月 | 患者数比率 | 主な疾患 |
|---|---|---|
| 1月 | 80% | インフル・風邪 |
| 2月 | 150% | スギ花粉症開始 |
| 3月 | 200% | スギ花粉症ピーク |
| 4月 | 180% | ヒノキ花粉症 |
| 5月 | 120% | 花粉症終盤 |
| 6〜8月 | 60% | 閑散期 |
| 9月 | 90% | 秋花粉・ダニ |
| 10〜12月 | 70% | 風邪・喘息 |
花粉症シーズンの対応策
繁忙期対策
- 予約枠の拡大(オンライン診療活用)
- 臨時スタッフの確保
- 処方箋の効率化(リフィル処方)
- 院内滞在時間の短縮
収益最大化のポイント
- 初診時のアレルギー検査実施
- 舌下免疫療法への誘導
- 点鼻・点眼薬の院内処方
舌下免疫療法による通年収益の確保
舌下免疫療法とは
舌下免疫療法(SLIT)は、アレルゲンを少量ずつ投与して体を慣れさせる根治療法です。3〜5年の継続治療が必要なため、長期的な通院収入が見込めます。
対象疾患と製剤
| 疾患 | 製剤名 | 投与期間 |
|---|---|---|
| スギ花粉症 | シダキュア | 3〜5年 |
| ダニアレルギー | ミティキュア | 3〜5年 |
| ダニアレルギー | アシテア | 3〜5年 |
舌下免疫療法の収益性
舌下免疫療法は、安定収入の柱となります。
患者1人あたりの収益(月次)
- 再診料:730円(73点)
- 処方箋料:680円(68点)
- 薬学管理料等:430円(43点)
- 月間収入:約1,840円/人
100人の舌下免疫患者がいる場合
- 月間収入:約18.4万円
- 年間収入:約220万円
さらに、舌下免疫療法の患者は3〜5年継続するため、一度獲得すれば長期的な収益が見込めます。
舌下免疫療法の導入ポイント
- 適切な患者選定:5歳以上、継続可能な患者
- 導入時期:スギは6〜11月、ダニは通年
- 説明・同意:継続の重要性を十分に説明
- フォロー体制:定期的な効果確認
閑散期対策と通年収益モデル
閑散期の収益確保策
花粉症シーズン以外の収益を確保するための戦略:
1. 通年性アレルギー疾患の診療
- ダニ・ハウスダストアレルギー
- 食物アレルギー
- 薬剤アレルギー
- 職業性アレルギー
2. 気管支喘息の診療
- 喘息患者は通年で通院
- 呼吸機能検査の定期実施
- 吸入指導による患者教育
3. アトピー性皮膚炎の診療
- スキンケア指導
- 外用療法の管理
- 生物学的製剤(デュピクセント等)
4. 自費診療メニューの導入
- 詳細アレルギー検査(View39等)
- 遅延型フードアレルギー検査
- 栄養指導・食事相談
収益シミュレーション
通年安定モデル(舌下免疫療法重視)
前提条件
- 舌下免疫療法患者:150名
- 1日外来患者数:平均35名
- 診療日数:月22日
月間収益試算(平均)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 外来診療収入 | 450万円 |
| 検査収入 | 80万円 |
| 処置・吸入収入 | 50万円 |
| 舌下免疫療法収入 | 30万円 |
| 月間売上 | 610万円 |
| 人件費 | 180万円 |
| 家賃 | 50万円 |
| その他経費 | 80万円 |
| 月間利益 | 300万円 |
年間売上:約7,300万円、年間利益:約3,600万円
繁忙期(3月)の収益
- 月間売上:900万円
- 月間利益:500万円
医療機関専門の税理士にご相談ください
40年以上の実績。クリニック・医療法人の経営を税務・会計の両面からサポートします。
平日 9:15〜18:15(土日祝休業)
開業立地の選定ポイント
アレルギー科に適した立地
優先すべき条件
- 住宅地・ファミリー層が多いエリア
- 小学校・幼稚園の近く
- 駐車場確保可能
- 駅徒歩10分以内
避けるべき条件
- 競合アレルギー専門クリニックの近隣
- 高齢者中心のエリア(花粉症患者少)
小児科との併設
アレルギー科と小児科の併設は、相乗効果が高い組み合わせです。
- 小児喘息・アトピーの診療
- 食物アレルギーの管理
- 予防接種との組み合わせ
- ファミリー層の取り込み
開業成功のためのポイント
専門性のアピール
- アレルギー専門医の資格取得
- 舌下免疫療法の実績公開
- 患者向けセミナーの開催
Web集患の強化
花粉症シーズンは検索需要が急増するため、SEO対策が重要です。
- 「花粉症 ○○市」でのSEO対策
- 症状別のコンテンツ作成
- オンライン予約システムの導入
- Googleマイビジネスの最適化
患者教育の充実
- 吸入指導・自己注射指導
- アレルギー日記の活用
- 食事指導・環境整備指導
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アレルギー科の開業は、花粉症患者の増加を背景に需要が高まっています。季節変動を乗り越えるためには、舌下免疫療法による通年収益の確保が鍵となります。
アレルギー科開業のポイント
- 開業費用は3,500万〜5,000万円と比較的低コスト
- 花粉症シーズンの繁忙期対策が重要
- 舌下免疫療法で3〜5年の継続患者を確保
- 通年性アレルギー・喘息で閑散期を補完
- Web集患で花粉症シーズンの新患獲得
アレルギー専門医としての開業をお考えの先生は、ぜひ専門家にご相談ください。当事務所では、アレルギー科クリニックの開業支援実績がございます。
参考情報
- 日本アレルギー学会 - アレルギー専門医制度について
- 環境省 花粉情報サイト - 花粉飛散情報
- 鳥居薬品 舌下免疫療法 - シダキュア・ミティキュア情報
この記事は2026年2月時点の情報に基づいています。診療報酬は改定される可能性がありますので、最新情報は専門家にご確認ください。
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
ご注意事項
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