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クリニック向けコラム
作成日:2026.01.28
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

ベースアップ評価料2026|賃上げ3.2%算定・届出|税理士解説

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ベースアップ評価料2026|賃上げ3.2%算定・届出|税理士解説

ベースアップ評価料2026とは

ベースアップ評価料2026は、職員の処遇改善(賃金改善)に充てることを前提に、診療報酬で「賃上げ原資」を手当てする仕組みです。院長・事務長にとっての課題は「賃上げをしたいが原資が読めない」ことであり、評価料はそのギャップを埋めるための制度と言えます。

令和8年度の診療報酬改定(令和8年6月施行)では、賃上げ分の中で、医療現場の生産性向上と併せて令和8年度・令和9年度にそれぞれ+3.2%分のベースアップ実現を支援する措置を講じる方針が示されています(看護補助者・事務職員は上乗せの考え方も示されています)。
一方で、各評価料の点数・算定要件や施設基準の細目は、告示・通知で順次具体化されるため、「今の制度でできる準備」と「2026の改定で変わり得る論点」を分けて押さえるのが実務的です。

ここがポイント
2026(令和8年度)改定は「令和8年6月施行」が示されています。点数配分や施設基準の細目は、改定告示・通知で更新されるため、届出書式や計算シートは必ず最新ファイルで確認してください。

医療従事者の賃上げ3.2%の算定方法

3.2%は「誰の・何の賃金総額」に対する割合か

実務では、まず「対象職員」と「基準となる賃金総額」を確定させます。ベースアップ評価料は、主として医療に従事する職員の賃金改善を目的とする評価で、職種の範囲や除外(例:役員報酬、専ら事務のみ等)は施設基準・通知で定義されます。

ここでは、計算の枠組み(考え方)を先に示します。

  • 基準賃金総額(年額):対象職員の基本給等+賞与相当+(賃金連動の)法定福利費事業主負担等
  • 目標賃金改善額(年額):基準賃金総額 × 3.2%

計算式(年額→月額へ落とす)

  1. 目標賃金改善額(年額)=基準賃金総額(年額)× 0.032
  2. 目標賃金改善額(月額)= 目標賃金改善額(年額)÷ 12

例:対象職員の基準賃金総額が年3,000万円なら、3,000万円×3.2%=96万円(年額)
月額にすると8万円が「追加で確保したい賃上げ原資」の目安です。

ここがポイント
賃金改善の対象は「基本給(ベア)だけ」に限りません。評価料の趣旨に沿う範囲で、ベアに連動する賞与や時間外手当、法定福利費(事業主負担)まで含めて設計すると、必要原資と実際のコストがズレにくくなります。

ベースアップ評価料収入から原資を見積もる

点数×件数×10円で月次収入を概算する

ベースアップ評価料は「点数」で設定され、通常は1点=10円(保険者負担・患者負担の合算)で収入を見積もります。現行(令和6年度改定の枠組み)では、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)が初診・再診等に上乗せされる形で示されています。

  • 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)(例:初診時6点、再診時等2点)
  • 月次概算収入=(初診件数×初診点数+再診件数×再診点数+在宅等)×10円

例:月の初診300件、再診2,000件、(初診6点・再診2点)とすると
(300×6+2,000×2)=5,800点 → 58,000円/月(概算)

この「概算収入」を、前段の「目標賃金改善額(月額)」と突き合わせ、足りない分は(1)評価料の区分調整(Ⅱの検討等)(2)生産性向上による原資捻出(3)賃上げ促進税制の活用等で埋めていきます。

評価料(Ⅰ)(Ⅱ)・入院評価の違い(実務の見立て)

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区分主な対象計算の特徴こんな医療機関に向く
外来・在宅(Ⅰ)外来・在宅中心初診・再診等に上乗せ、比較的シンプル無床診療所、外来中心
外来・在宅(Ⅱ)(Ⅰ)だけでは一定水準に届きにくい場合必要区分を計算し(Ⅰ)に上乗せ賃金改善余力が小さい施設
入院ベースアップ入院に携わる職員必要区分(多区分)を計算病院、有床診療所

現行枠組みでは、(Ⅰ)だけで一定水準(例:対象職員の給与総額の1.2%)に達しないと見込まれる場合に(Ⅱ)で上乗せする考え方が示されています。2026改定でも「3.2%支援」という大枠が示された以上、まずは(Ⅰ)で収入の土台を作り、足りない分をどう埋めるかが検討の順序になります。

ベースアップ評価料の届出手順

ベースアップ評価料は、施設基準に適合するものとして地方厚生(支)局長等に届出が必要です。厚生労働省の特設ページでは、まだ届出していない医療機関でも「今から届出でき、届出の翌月から算定できる」こと、届出様式(Excel)と都道府県別の提出先メールアドレスが公開されています。

Step 1: どの評価料を届け出るか決める(Ⅰのみ/従来版)
外来中心の診療所は、まず評価料(Ⅰ)のみで届出できるかを検討します。ファイルは「評価料Ⅰ専用届出様式(Excel)」と「従来版様式」に分かれています。

Step 2: 届出様式(Excel)を作成する
必要なシート(届出書、計画書、別添など)を記載します。診療所向けに書き方資料・記載例も用意されています。

Step 3: 管轄の地方厚生(支)局へ提出する
原則は、都道府県別に設定された専用メールアドレスへExcelファイルを提出します(メール環境がない等やむを得ない場合は書面提出)。提出後、受理されれば原則として翌月から算定開始となります。

Step 4: 賃金改善の実行と、年次の実績報告
計画に沿って賃金改善を行い、各年8月に「賃金改善実績報告書」を提出します。ここが監査・指摘の入口になりやすいので、給与台帳・賞与台帳・社会保険料の事業主負担の根拠をセットで保管しておくのが安全です。

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2026で押さえるべき実務ポイント

「原資の使途制限」と「配分」の設計

評価料は「賃金改善に用いる」ことが前提です。実務では、次の2点が監査対応上の要点になります。

  • 評価料収入の見える化:月次で「評価料収入」と「賃金改善コスト(ベア+連動費用)」を突合する
  • 配分ルールの文書化:職種・等級・常勤/非常勤の扱いを事前に決め、院内説明できる形にする

看護補助者・事務職員の上乗せの読み替え

令和8年度改定の方針文書では、ベースアップ支援は各年度+3.2%に加え、看護補助者・事務職員については「5.7%」の考え方が示されています。人材獲得競争の強い職種は、賃上げ設計を分けて検討する余地があります。

税理士法人としての実務(現場のよくある相談)

税理士法人 辻総合会計では、医療機関の顧問業務を通じて「賃上げをしたいが、月次のキャッシュが怖い」「届出は出したが、実績報告の整合が不安」といった相談を数多く受けます。ポイントは、評価料を“とりあえず算定”にせず、給与設計・会計処理・証憑管理まで一気通貫で整えることです。

よくある質問

Q: 3.2%は必ず達成しないといけませんか? ▼

A:

2026改定では「各年度+3.2%分のベースアップ実現を支援する措置」という政策方針が示されています。一方で、個別の施設基準や報告要件でどの水準を求めるかは告示・通知で具体化されます。まずは「目標原資(3.2%)」を試算し、評価料収入・人件費計画・生産性向上のセットで実現可能性を検討してください。
Q: 届出したらいつから算定できますか? ▼

A:

厚生労働省の特設ページでは、今からでも届出でき、届出の翌月から算定できる旨が案内されています。実務上は「提出→受理→翌月算定」を前提に、月末までの提出を目安に動くとスケジュールが組みやすいです。
Q: 届出は紙で出せますか? ▼

A:

原則は専用メールアドレスへExcel提出ですが、メールアドレスを持っていない等やむを得ない事情がある場合は書面提出も可能とされています。管轄の地方厚生(支)局都道府県事務所の案内に従ってください。

まとめ

  • ベースアップ評価料2026は、賃上げ原資を診療報酬で手当てする仕組み
  • 令和8年度・令和9年度は各年度+3.2%のベースアップ支援方針が示されている
  • 3.2%は「対象職員の賃金総額」を基準に、年額→月額へ落として試算する
  • 収入見積りは「点数×件数×10円」で概算し、足りない分の埋め方を設計する
  • 届出(Excel提出)と年次の実績報告まで、証憑管理を含めて運用する

参照ソース

  • 診療報酬改定について(令和8年度改定の方針): https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001620952.pdf
  • ベースアップ評価料等について(届出様式・提出先等): https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html
  • 令和6年度診療報酬改定の概要【賃上げ・基本料等の引き上げ】: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001251534.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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