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クリニック向けコラム
作成日:2026.01.07
更新日:2026.01.07
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

ベースアップ評価料の算定方法と実績報告|クリニック向け税理士解説

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ベースアップ評価料の算定方法と実績報告|クリニック向け税理士解説

ベースアップ評価料とは(わかりやすく整理)

ベースアップ評価料とは、医療機関が職員の賃金を改善(ベースアップ等)するための原資を診療報酬で確保する仕組みです。ポイントは、「算定で得た収入を、対象職員の賃金改善に充当し、計画と実績を報告する」ことにあります。

開業医の方にとっての悩みは、「どの区分を届け出ればよいのか」「実際いくら入るのか」「実績報告で何を求められるのか」が見えにくい点ではないでしょうか。本記事では、クリニック(医科・歯科)で多い外来・在宅ベースアップ評価料を中心に、算定の考え方と実績報告の実務を整理します。

外来・在宅ベースアップ評価料と歯科外来・在宅の関係

厚労省の特設ページでは、特に断りがない限り「歯科外来・在宅ベースアップ評価料」は「外来・在宅ベースアップ評価料」に含まれる整理が示されています。医科・歯科で書式や点数表の欄が分かれるため、届出様式は診療科に合わせて選択します。

対象職員(医師・歯科医師は原則対象外)

ベースアップ評価料の対象は、医療に従事する職種(薬剤師、看護職、リハ職、放射線・検査、栄養、MSW、歯科衛生士、医師事務作業補助者等)で、医師・歯科医師は含まれません。また、単に医療事務のみを行う職員は対象外となる扱いが示されています(届出資料の注意書きを必ず確認してください)。

ここがポイント
「対象職員に該当するか」は実務で迷いやすい論点です。兼務や業務実態で判断が変わることがあるため、雇用契約・職務分掌・シフト実態の3点セットで整理しておくと、実績報告の説明が通りやすくなります。

ベースアップ評価料の算定方法(外来在宅ベースアップ評価料を中心に)

算定の考え方はシンプルで、(1) 算定回数(初診・再診等、訪問診療等)を把握し、(2) 評価料の算定で得られる見込み収入を把握し、(3) その範囲内(または上回る水準)で賃金改善(ベア等)を設計します。

(Ⅰ)と(Ⅱ)のざっくりした違い

外来・在宅(歯科外来・在宅を含む)は(Ⅰ)(Ⅱ)があり、(Ⅰ)は比較的届出しやすい設計で、(Ⅱ)は(Ⅰ)だけでは一定水準以上の賃上げが難しい場合に追加で検討する位置づけです。届出可否や区分の考え方は資料・手引きに沿って判断します。

算定見込みは「直近1か月実績」を入力して把握する(2026年運用の実務)

小規模診療所向けの資料では、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)専用の届出様式を用いる場合、次のように「直近1か月の算定回数」を入力して、算定金額(収入)見込みを把握する流れが示されています。

Step 1: 届出様式(Excel)を入手する
厚労省特設ページや地方厚生(支)局のページから、評価料(Ⅰ)専用様式または従来版様式(95~98等)をダウンロードします。

Step 2: 直近1か月の算定回数を集計する
初診料等・再診料等・訪問診療料(同一建物か否か)など、様式が求める項目の「算定回数」を医事会計から抽出します。直近1か月が季節要因等で偏る場合は、直近3か月平均など合理的な方法の利用も示されています。

Step 3: 様式へ入力し、1か月当たりの算定金額(収入)を見込む
入力値から、評価料によって得られる1か月当たりの収入見込みが把握できます(繰越がある場合はそれも加味)。

Step 4: 収入見込みを「対象職員のベア等」に配分する
対象職員全員分の「基本給または毎月決まって支払われる手当」の引上げ見込み額を設計します。資料では、ベア等に連動する賞与増・時間外手当・法定福利費(事業主負担分)等も、一定範囲で賃金改善分に含められる整理が示されています。

ここがポイント
実務では、ベア等の設計を「一律手当」で行うクリニックが多い一方、将来の人件費カーブ(賞与・社保・残業代連動)まで含めた総額管理が重要です。評価料収入と賃金増加分の突合を、月次で簡易チェックできる形にしておくと、実績報告が大幅に楽になります。

実績報告の考え方と提出スケジュール(計画書とセットで理解)

ベースアップ評価料は「届出して算定して終わり」ではなく、毎年の書類提出が重要です。厚労省の資料では、少なくとも以下が明示されています。

  • 賃金改善計画書:毎年4月に作成し、6月30日までに地方厚生(支)局へ提出
  • 賃金改善実績報告書:前年度分を、8月31日までに提出

また、届出時期によっては、当該年度内に追加提出が不要となるケース(例:3月以降の届出など)も資料で整理されています。自院がどのパターンに該当するかは、届出月と算定開始月を起点に確認します。

実績報告で確認される中身(最低限の軸)

実績報告の中心は、次の突合です。

  • ベースアップ評価料収入(算定金額)の集計
  • 賃金改善措置による賃金増加分(対象職員分)の計算
  • 両者の差額確認と、余剰があれば翌年度へ繰越して賃金改善に充当

資料では、賃金増加分の考え方として「賃金改善後の給与総額」-「賃金改善前(しなかった場合)の給与総額」で算定する例示が示されています。実務では、比較対象期間と基準(どの賃金項目を含めるか)を社内で固定し、説明可能性を高めることが重要です。

クリニック実務での注意点(よくある落とし穴)

税理士法人 辻総合会計では、クリニック顧問の給与設計・届出運用の相談で、次の論点が繰り返し出てきます。

「収入」より「賃金増加」が下回っていないか

資料では、評価料収入に余りが出た場合、繰越して翌年度の賃金改善に用いる必要がある旨が示されています。逆に言うと、収入に見合う賃金改善の実行・記録が弱いと、運用が不安定になります。月次での差額管理を推奨します。

ベア等に「含められるもの/含められないもの」を混同する

資料では、毎月決まって支払われる手当の増額はベア等に含められる一方、定期昇給や一時金、業績連動の賞与等は対象外となる整理が示されています。就業規則・給与規程の表現と実態が一致しているかも重要です。

兼務スタッフの取り扱い

医療事務と医療補助を兼務するケースなど、実態で判断が分かれることがあります。実績報告では「説明できる整理」が最優先です。職務記録(業務日報、担当表、教育記録)など、簡易な根拠を用意すると説明が通りやすくなります。

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比較表で整理:届出・算定・報告の全体像

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項目初回届出(算定開始)年次運用(継続算定)
目的評価料算定のための施設基準届出賃金改善の計画・実績の説明責任
必要資料届出様式(評価料Ⅰ専用または従来版)賃金改善計画書、賃金改善実績報告書
主な入力直近1か月の算定回数、賃金改善見込み評価料収入の集計、賃金増加分の算定、差額・繰越
提出先地方厚生(支)局(多くはメール提出案内)同左(期限は6/30、8/31が基本)

よくある質問

Q: 外来在宅ベースアップ評価料は、届出したらいつから算定できますか? ▼

A:

資料では、原則として「届出の翌月1日から算定可能」とされ、月の最初の開庁日(最初の平日)に届出した場合は当月1日から算定可能となる取り扱いが示されています。実際の扱いは地方厚生(支)局の案内に従ってください。
Q: 実績報告は毎年必須ですか? ▼

A:

届出している医療機関は、前年度の賃金改善の取組状況について、毎年8月に報告が必要と整理されています。届出月と算定開始月により、当年度に追加提出が不要となるパターンもあるため、届出後のフロー資料で確認してください。
Q: ベースアップ評価料の対象職員に医療事務は含まれますか? ▼

A:

資料上は、医師・歯科医師は対象外で、また「単に医療事務を行うスタッフは含まれない」旨の記載があります。兼務の場合は業務実態を踏まえ、対象職種要件に沿って整理する必要があります。
Q: 評価料収入が余った場合はどうすべきですか? ▼

A:

資料では、評価料収入分に余りが出た場合、余り分は翌年度へ繰り越して賃金改善分に用いる必要がある旨が示されています。繰越の管理を含め、月次で「収入」と「賃金増加分」を突合しておくと、年次報告がスムーズです。

まとめ

  • ベースアップ評価料は、算定収入を対象職員の賃金改善に充当し、計画と実績を提出する制度
  • 外来・在宅(歯科外来・在宅含む)は、直近1か月の算定回数入力で収入見込みを把握しやすい
  • 年次提出は「賃金改善計画書(6/30まで)」と「賃金改善実績報告書(8/31まで)」が軸
  • 実績報告は「評価料収入」と「賃金増加分」の突合が核心で、余剰は繰越して賃金改善に充当
  • 対象職種・賃金項目の定義、兼務の整理、月次管理が運用の成否を分ける

参照ソース

  • 厚生労働省「ベースアップ評価料等について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html
  • 厚生労働省(PDF)「ベースアップ評価料届出後の流れ(評価料Ⅰのみ)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001467691.pdf
  • 地方厚生局「ベースアップ評価料の届出について(様式・提出案内)」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tokaihokuriku/shinsei/shido_kansa/shitei_kijun/r06baseup.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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