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クリニック向けコラム
作成日:2026.01.06
更新日:2026.01.06
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

ベースアップ評価料の算定方法と実績報告|2026対応を税理士が解説

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ベースアップ評価料の算定方法と実績報告|2026対応を税理士が解説

ベースアップ評価料とは、令和6年度診療報酬改定で創設された「賃上げ原資を診療報酬で確保する」ための評価です。クリニックが算定するには届出(施設基準)と賃金改善の実施が前提で、算定後は毎年8月に賃金改善実績報告書の提出が必要です。スタッフの給与改善を進めたい一方で、「どこから手を付けるべきか」「報告でつまずかないか」が院長の悩みになりがちではないでしょうか。

ベースアップ評価料とは(わかりやすく)

ベースアップ評価料は、医療機関・訪問看護ステーションの職員の賃金改善を診療報酬で後押しする制度です。厚生労働省の特設ページでは、今からでも届出が可能で、届出の翌月から算定できる旨が明示されています(外来・在宅ベースアップ評価料(I)のみで賃金改善を目指す診療所も対象)。また、特設ページでは「歯科外来・在宅ベースアップ評価料」も「外来・在宅ベースアップ評価料」に含めて取り扱う整理がされています。

当法人(税理士法人 辻総合会計)でも、開業医の顧問先から「賃上げはしたいが原資が厳しい」「事務負担が増えるのは避けたい」という相談が増えました。制度の趣旨は明快ですが、実務は“届出→算定→賃金改善→報告”の流れを外さないことが要点です。

ここがポイント
対象職員の考え方が重要です。届出様式の記載上、対象職員は「主として医療に従事する職員(医師・歯科医師を除く)」として整理されており、常勤換算で人数を記載します。人員の数え方が曖昧だと、計画と実績の整合が取りづらくなります。

外来・在宅ベースアップ評価料の種類(I・II)と違い

クリニックが主に検討するのは「外来・在宅ベースアップ評価料(I)」です。一定の要件を満たす場合に(II)も関係しますが、まずは“自院がどの区分を届出するか”を明確にし、賃金改善計画と算定見込みを整合させることが先決です。

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区分主な対象届出実務のイメージこんなクリニックで検討
外来・在宅(I)外来・在宅を実施する医療機関まずはI単独で届出し、算定額の範囲で賃金改善を設計小規模で事務負担を抑えつつ、賃上げ原資を確保したい
外来・在宅(II)条件に該当する医療機関Iに加えて追加の整理が必要(届出区分・算出月など)体制・患者数等の条件に合致し、追加原資を検討したい
入院ベースアップ評価料入院機能を持つ医療機関クリニックでは該当しないことが多い有床診療所等で入院機能がある

なお、実務では区分変更や計画修正が起こり得ます。「計画書」と「実績報告」の整合が最重要で、後述する報告書作成時に矛盾が露呈しやすい点に注意してください。

ベースアップ評価料の算定方法(届出から算定開始まで)

算定の骨格は「届出(施設基準)を整え、賃金改善計画を作り、届出の翌月から算定し、実績を報告する」です。厚生労働省の特設ページでは、届出様式(評価料I専用の簡素な様式を含む)や、都道府県別の提出先(専用メールアドレス)も整理されています。

Step 1: 自院が届出する区分を決める(まずはIが基本)

外来・在宅ベースアップ評価料(I)のみで賃金改善を目指す場合も届出が可能です。まずは「Iのみ」か「I+II」かを判断し、必要なシート(届出書・計画書等)を揃えます。

Step 2: 対象職員(常勤換算)と賃金改善の設計を固める

対象職員数の把握と、賃金改善の配分(基本給・手当等の方針)を決めます。ここが曖昧だと、算定額と賃上げの説明が組み立てにくくなります。

Step 3: 所管の地方厚生(支)局へ届出(原則メール提出)

特設ページの案内どおり、所管の地方厚生(支)局の専用メールアドレスへExcelファイルを提出する運用が示されています(やむを得ない場合は書面提出)。提出先のメールアドレスと、提出ファイルの版(更新日)を必ず揃えます。

Step 4: 届出の翌月から算定し、賃金改善を実施・記録する

算定開始後は、賃金改善の実施状況が後日の実績報告の根拠になります。給与台帳や賃金規程の変更履歴など、説明可能な形で残しておくと報告が安定します。

賃金改善実績報告書の実務(毎年8月の提出)

ベースアップ評価料を届出している医療機関は、毎年8月に前年度の賃金改善の取組状況を評価するため「賃金改善実績報告書」を地方厚生(支)局長に報告する必要があります。特設ページでは、報告書専用様式(医療機関用・訪問看護ステーション用)が用意され、従来版様式の報告書シートで報告することも可能とされています。

また、事務連絡(令和7年3月31日)では、外来・在宅ベースアップ評価料(I)(II)等(点数表区分「O100」「O101」等)に係る実績報告の取扱いとして、報告専用様式での提出を可能とする整理や、従来様式を使う場合の前提(同一Excel内の計画書との関係)などが示されています。

ここがポイント
実績報告は「年度途中の区分変更」や「計画書の修正」があっても、届出を行った年度の賃金改善実施期間全体を1つの報告書にまとめて報告する整理が示されています。途中で方針変更があるクリニックほど、タイムラインの整理が重要です。

実績報告でつまずきやすいポイント

  • 計画書と実績の対象職員数・期間がずれている(常勤換算の定義が院内で揺れている)
  • 賃上げの内訳(基本給・手当等)と支給開始月の説明ができない
  • 従来版様式の一部セルが編集できず、修正が必要なのに無理に上書きしようとする
  • メール提出時のファイル名・記載事項(医療機関コード、対象年度、連絡先等)の不備

当法人の経験上、報告書作成そのものより「計画~実施~記録の一貫性」を最初から設計できているかで、作業時間が大きく変わります。特に、複数職種・複数雇用形態が混在するクリニックでは、常勤換算と賃金改善の対象範囲を“説明できる形”に落とすことが肝要です。

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ベースアップ評価料の注意点・リスク(院長が押さえるべき実務)

ベースアップ評価料は賃上げを支える一方、制度運用は「届出」「賃金改善」「報告」のセットです。次の論点は、事前に整理しておくことをお勧めします。

  • 賃金改善をどの職員・どの項目で行うか(基本給か手当か)を院内で合意する
  • 区分変更や計画修正が起きたときの運用ルール(誰が、いつ、何を更新するか)を決める
  • 実績報告に耐えるエビデンス(給与台帳、規程、議事録、通知文等)を残す
  • 顧問税理士・社労士・給与計算担当との役割分担を明確にする

制度対応は“やれば終わり”ではなく、継続運用が前提です。特に院長が押さえるべきは、賃金改善の意思決定と記録の統制です。ここが固まると、事務作業は大きく軽減します。

よくある質問

Q: ベースアップ評価料は、今からでも届出できますか? ▼

A:

厚生労働省の特設ページでは、まだ届出していない医療機関も対象で「今からでも届出でき、届出の翌月から算定できる」旨が示されています。まずは外来・在宅ベースアップ評価料(I)から検討し、届出様式と提出先(地方厚生(支)局の専用メール)を確認してください。
Q: 実績報告はいつ、何を出す必要がありますか? ▼

A:

ベースアップ評価料を届出している医療機関は、毎年8月に前年度の賃金改善の取組状況を評価するため「賃金改善実績報告書」を地方厚生(支)局長に報告する必要があります。報告専用様式が用意されており、従来版様式の報告書シートで報告できるケースもあります(計画書との関係など注意点があります)。
Q: 年度途中で計画を変えた場合、報告書は分けて提出しますか? ▼

A:

特設ページの注意点として、区分変更や計画修正があっても、届出を行った年度の賃金改善実施期間全体を1つの報告書にまとめて報告する整理が示されています。修正の経緯と期間の整合が取れるよう、変更履歴を残しておくことが重要です。

まとめ

  • ベースアップ評価料は賃上げ原資を診療報酬で確保する仕組みで、届出の翌月から算定が可能
  • クリニックは外来・在宅ベースアップ評価料(I)を起点に、区分と賃金改善計画を整合させる
  • 届出は原則、所管の地方厚生(支)局の専用メールへExcel提出で行う運用が整理されている
  • 実績報告は毎年8月に必要で、計画と実績の一貫性(対象職員・期間・内訳)が作業負担を左右する
  • 区分変更や計画修正があっても、年度の実施期間全体を1つの報告書にまとめる点に注意

参照ソース

  • 厚生労働省「ベースアップ評価料等について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html
  • 厚生労働省「事務連絡(令和7年3月31日)ベースアップ評価料による賃金改善の実績報告に係る届出様式の改定等について」: https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001469798.pdf
  • 厚生労働省「報告書専用様式(診療所)賃金改善実績報告書(Excel)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/baseup-rep202503-cl.xlsx

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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