税理士法人 辻総合会計グループ
無料相談
医療経営ブログに戻る
クリニック向けコラム
作成日:2025.09.02
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

クリニック閉院手続きの全体像|届出・スタッフ対応・清算|税理士が解説

8分で読めます
クリニック閉院手続きの全体像|届出・スタッフ対応・清算|税理士が解説

クリニック閉院手続きとは(結論:届出・人・お金を同時に整理します)

クリニック閉院手続きとは、診療の終了に伴い、行政への届出、スタッフの雇用整理、資産・負債の清算までを一連で進める実務です。院長にとっての本質的な課題は、「患者対応」と「期限のある届出」が並行し、意思決定が遅れるとトラブルが連鎖する点にあります。
現場では「保健所への診療所廃止」「厚生局への保険医療機関の廃止」「税務の廃業・解散」「雇用の終了手続き」が同時期に発生し、抜け漏れが起きやすくなります。
税理士法人 辻総合会計でも、閉院のご相談では「誰に、何を、いつまでに」が整理できた瞬間に、コストと心理的負担が大きく下がるケースが多いと感じます。

閉院と廃業の違い(診療所の廃止・休止・法人解散を切り分ける)

「閉院」と一口に言っても、手続き上は複数の概念が混ざります。最初に整理すると、届出先と必要書類が明確になります。

←横にスクロールできます→
区分位置づけ主な届出先実務のポイント
休止一時的に診療を止める保健所(自治体)再開前提。休止期間の扱いは自治体ルールを確認
廃止(閉院)診療所をやめる保健所(自治体)診療所 廃止届(閉院届)。医療機器・カルテ整理まで必要
保険指定の廃止保険診療の指定をやめる地方厚生(支)局保険医療機関の廃止届(指定手続き)
法人の解散・清算医療法人等そのものをたたむ都道府県・法務局・税務署解散・清算は別工程。決算・残余財産の処理が核心
ここがポイント
「診療所の廃止(保健所)」と「保険医療機関の廃止(厚生局)」は、同じ“閉院”でも制度が別です。片方だけ提出して安心してしまうのが、よくある抜け漏れです。

クリニック閉院の全体スケジュール(手順をステップで整理)

閉院は「期限がある届出」と「期限がないが後回しにできない実務」の混在が難所です。まずはゴール日(最終診療日)から逆算し、60〜90日前に骨格を作ると安全です。

Step 1: 最終診療日・閉院方針を決定する

最終診療日、診療予約の締切、紹介状対応の方針を先に決めます。ここが曖昧だと、患者対応とスタッフ調整が同時に崩れます。
賃貸物件の場合は、原状回復や解約予告の期限が先に来るため、契約書の確認を最優先に置きます。

Step 2: 関係者への告知(患者・スタッフ・取引先)

患者への告知は「院内掲示+Web+紹介先の確保」をセットで行います。紹介状や診療情報提供書の発行が増えるため、受付・看護の工数も見積もります。
取引先(医薬品卸、検査会社、医療機器、清掃、廃棄物、リース)には、解約条件と最終請求の締め日を確認します。

Step 3: 行政届出(保健所・厚生局・税務・労務)

保健所には診療所 廃止届(閉院届)を提出します。提出期限は自治体ごとに異なりますが、廃止後10日以内を求める例が多く、事前相談が実務上は確実です。
保険診療を行っている場合、地方厚生(支)局へ保険医療機関の廃止(休止・再開)届を提出します(様式・提出方法は各厚生局で確認)。

Step 4: 診療記録・個人情報・医療資材の整理

カルテ(診療録)は、医師法の規定により原則5年の保存が求められます。閉院後に院内で保管できない場合は、保管場所・管理者・アクセス権限を決め、委託するなら契約書で責任分界を明確化します。
薬品・診療材料は返品可否と廃棄区分が混在します。感染性廃棄物は委託契約に沿って処理し、領収・マニフェストの保管も意識します。

Step 5: お金の整理(未収金・支払・解約・売却)

閉院前後で最も揉めやすいのが未収金回収です。自由診療や物販がある場合は、入金口座の継続、請求フロー、督促の方針を決めます。
リース・割賦・保守契約は中途解約金が発生することがあります。資産売却(医療機器・什器)は、売却益課税や撤去費用も含めて採算を見ます。

Step 6: 税務の手続き(個人/医療法人で異なる)

個人開業なら、税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書(廃業届)」を提出します。青色申告を取りやめる場合の届出や、消費税の追加手続きが必要になることもあります。
医療法人の場合は、閉院(診療所廃止)に加えて、法人の解散・清算をするか、事業縮小として存続させるかで工程が大きく変わります。

スタッフ対応の実務(退職・保険・最終給与で揉めない設計)

スタッフ対応は、制度論よりも「説明の一貫性」と「書面化」が結果を左右します。特に閉院は感情が動く局面なので、事前に“型”を作っておくと安全です。

退職までの進め方(ポイントは時系列と個別面談)

  • 閉院決定後、まず管理職・キーパーソンに説明し、次に全体説明を行う
  • 雇用契約(正社員・有期・パート)ごとに、終了日・有給消化・引継ぎを整理する
  • 退職合意の書面(退職届・合意書)を整備し、口頭だけで終わらせない

最終給与・退職金・有給消化

最終給与は「締め日・支払日」「残業代」「有給の扱い」「立替経費精算」を一括で確認します。退職金規程がある場合は、支給要件と源泉徴収の扱いを再確認します。
社会保険・雇用保険の資格喪失、離職票などの発行実務も並走します。期限が短い手続きもあるため、社労士や給与ベンダーと連携し、タスクの担当者を固定します。

ここがポイント
スタッフ対応での最大のリスクは、情報が二転三転することです。「閉院日」「最終出勤日」「賃金支払日」を先に確定し、説明資料を1枚にまとめて配布すると混乱が減ります。

医療機関専門の税理士にご相談ください

40年以上の実績。クリニック・医療法人の経営を税務・会計の両面からサポートします。

無料相談を申込む 📞 06-6206-5510

平日 9:15〜18:15(土日祝休業)

関連記事

"医師 引退の判断基準|クリニック閉院・承継の実務を税理士が解説"

"医師の引退は「年齢」だけで決めると後悔しがちです。本記事では、閉院か承継かを判断するための実務的な基準を、患者対応・職員・資金・税務・手続きの観点で整理。引退準備の進め方と失敗しやすい落とし穴も解説します。"

続きを読む

清算(閉院後に残る“見えない負債”を潰す)

閉院後に想定外で出やすいのは、請求漏れと解約漏れです。診療は終わっても、支払や事務は数か月残ります。

清算チェックリスト(抜けやすい項目)

  • 家賃・共益費・原状回復・保証金精算
  • リース・保守(電子カルテ、レセコン、医療機器、電話・ネット)
  • 医薬品・検査委託の最終請求、返品・廃棄
  • 産廃(感染性含む)の最終回収と証憑保管
  • 口座・クレカ・決済端末の解約、引落の停止
  • 反社チェック等がある場合のデータ削除証明(委託先)

ケーススタディ(よくあるつまずき)

たとえば、閉院後にレセコンやクラウド電子カルテの契約が自動更新され、数十万円単位で支払が継続していた例があります。診療現場が止まると“気づきの機会”が減るため、契約一覧表を作り、解約完了の証跡(メール・解約受付番号)まで保管するのが実務的です。

よくある質問

Q: クリニック閉院届(診療所廃止届)はどこに出しますか? ▼

A:

原則として、診療所の所在地を管轄する保健所(自治体)へ提出します。様式・添付書類・提出期限は自治体で異なるため、最終診療日が決まった段階で事前相談するのが確実です。
Q: 保険診療をしている場合、厚生局への手続きは必要ですか? ▼

A:

はい、必要です。保険医療機関の指定に関する手続きとして、地方厚生(支)局へ廃止(休止・再開)届を提出します。保健所の廃止届とは制度が別のため、両方の提出を前提に段取りを組みます。
Q: 閉院後のカルテ(診療録)はどう保管すべきですか? ▼

A:

原則として5年間の保存が必要です。閉院後も管理責任者と保管場所を明確にし、委託する場合は契約で責任分界と個人情報管理(アクセス権・廃棄手順)を定めることが重要です。
Q: 個人開業の廃業届はいつまでに出しますか? ▼

A:

国税庁の案内では、事業を廃止した日から1か月以内が目安です。青色申告の取りやめや、消費税に関する追加手続きが必要になるケースもあるため、税理士に早めに確認してください。

まとめ

  • クリニック閉院手続きは「保健所・厚生局・税務・労務」を同時に整理する実務
  • 「診療所の廃止」と「保険医療機関の廃止」は別制度のため、届出先を分けて管理する
  • スタッフ対応は、閉院日・最終出勤日・支払日を先に固定し、説明資料を一枚化する
  • カルテ(診療録)は原則5年保存。閉院後の保管体制と責任者を明確にする
  • 清算は未収金・契約解約・最終請求の漏れがリスク。契約一覧と証跡保管が有効

参照ソース

  • 国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm
  • 関東信越厚生局「保険医療機関・保険薬局の廃止・休止・再開の届出」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/hoken_shitei/ichiran_haishi.html
  • 厚生労働省「診療録の保存年限に係る現行法令上の規定について(PDF)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/001230827.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

シェア:
医療経営ブログに戻る

お電話でのご相談

06-6206-5510

受付時間 9:15〜18:15(土日祝休業)

Webお問い合わせ

おすすめコラム

年末調整のやり方|2025年版 書類・書き方を税理士が解説

年末調整のやり方|2025年版 書類・書き方を税理士が解説

ふるさと納税控除は年末調整OK?手続き方法|税理士が解説

ふるさと納税控除は年末調整OK?手続き方法|税理士が解説

【失敗しない】クリニック開業税務の5つの注意点

【失敗しない】クリニック開業税務の5つの注意点

人気コラムランキング

1
出資持分あり医療法人と持分なし医療法人の違いと承継・税務ポイント

出資持分あり医療法人と持分なし医療法人の違いと承継・税務ポイント

2
内科の訪問診療戦略|収益設計と集患・運用の実務を税理士が解説

内科の訪問診療戦略|収益設計と集患・運用の実務を税理士が解説

3
ふるさと納税控除は年末調整OK?手続き方法|税理士が解説

ふるさと納税控除は年末調整OK?手続き方法|税理士が解説

4
医師国保と厚生年金の加入判断ポイント|クリニック専門税理士が解説

医師国保と厚生年金の加入判断ポイント|クリニック専門税理士が解説

5
【失敗しない】クリニック開業税務の5つの注意点

【失敗しない】クリニック開業税務の5つの注意点

© 2026 税理士法人 辻総合会計グループ. All rights reserved.

プライバシーポリシー

お電話はこちら

06-6206-5510

06-6206-5510

無料相談する

平日 9:15〜18:15