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クリニック向けコラム
作成日:2025.08.23
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

クリニック経費の可否一覧と注意点|税理士が解説

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クリニック経費の可否一覧と注意点|税理士が解説

クリニックの経費とは、原則として「収入を得るために必要だった支出」のうち、税務上認められるものです。一方で、私的支出や罰金などは経費になりません。院長にとって悩ましいのは、医療業では支出が多岐にわたり、業務目的の説明と証憑の整備が弱いと否認リスクが上がる点です。税理士法人 辻総合会計では医療業の会計・税務相談を長年多数支援してきた経験から、現場で迷いやすい「可否の境界」を中心に整理します(個別事情で結論が変わるため、最終判断は専門家へご相談ください)。

クリニック経費とは:判断基準と基本ルール

クリニックの経費(必要経費/損金)は、基本的に次の3点で判断します。

  • 業務との関連性:診療収入を得るために必要か
  • 金額の妥当性:社会通念上、過大ではないか
  • 証拠の有無:領収書・請求書・契約書・議事録等で説明できるか

実務では、支出そのものよりも「説明可能な形で残っているか」が重要です。とくに私的要素が混ざるものは、家事関連費の区分ができないと経費性が弱くなります。

ここがポイント
同じ支出でも「誰が」「何のために」「どの患者層・業務に資するか」をメモで残すだけで、税務上の説明力が大きく上がります。カード明細だけでなく、目的・参加者・内容の記録をセットで運用しましょう。

クリニックの経費になるもの一覧:勘定科目別(代表例)

以下は、医療業で頻出の「経費になりやすい」代表例です(法人/個人で科目は異なりますが考え方は概ね共通です)。

人件費・外注費

  • 給与・賞与(スタッフ、非常勤医師等)、法定福利費(社会保険料の事業主負担分)
  • 求人広告費、紹介手数料
  • 外注費(レセプト代行、清掃委託、医療廃棄物処理委託、IT保守、HP運用)

地代家賃・水道光熱費・通信費

  • テナント賃料、共益費、駐車場代(業務用)
  • 電気・ガス・水道(業務用)
  • 電話、インターネット、クラウド利用料、電子カルテ等の月額利用料

医療材料・消耗品・衛生関連

  • 医療材料、衛生材料、検査試薬(診療に直接必要なもの)
  • 事務消耗品、印刷、トナー、ユニフォーム等(業務用)

減価償却(医療機器・内装・什器備品)

  • X線、超音波、OCTなどの医療機器、PC・サーバ、什器備品、内装工事等
  • 高額資産は原則「一括で経費」ではなく、減価償却で年ごとに費用化します

研修費・図書費・専門家費用

  • 学会参加費、研修参加費(業務関連性が明確なもの)
  • 医学書・専門誌・ガイドライン等の購読
  • 税理士・社労士・弁護士報酬、顧問料

広告宣伝費・接待交際費

  • 看板、HP制作、WEB広告、チラシ(医療広告ガイドライン等の遵守が前提)
  • 交際費(紹介元との会食等:参加者・目的・内容の記録が重要)

租税公課・保険料・支払利息

  • 事業税、固定資産税(業務用部分)
  • 火災保険・施設賠償責任保険等(業務用)
  • 事業用借入の利息(元本返済は経費になりません)

経費にならないもの一覧:否認されやすい支出

次の支出は、税務上「経費にならない」または否認されやすい典型です。

  • 所得税・住民税(個人)/法人税等(法人)の本税
  • 罰金・科料・過料、延滞税等(ペナルティ類)
  • 私的な飲食・旅行・趣味・家族行事など、業務関連性が弱いもの
  • 院長のスーツ・私服(原則)。一方、明確な制服・白衣等は業務用として整理しやすい
  • 生計一親族への給与(要件を満たす場合を除く)や、実態のない外注
  • 過度に高額な接待、プライベート性の強い贈答
  • 領収書がない、支払先が不明、目的が説明できない支出
ここがポイント
「医療の質向上のため」と言いながら、実態が観光中心の出張や、家族同伴の私的旅行になっているケースは、特に否認リスクが高い論点です。業務スケジュールと成果物(参加証・資料・報告書)を残しましょう。

クリニック経費の判断が難しいもの:可否の境界と実務対応

判断が割れやすい項目は「ルール」より「運用」で差が出ます。代表例を表にまとめます。

←横にスクロールできます→
支出例経費になりやすい条件(例)経費になりにくい例(NG)
学会参加・研修診療内容と関連、参加証・資料・報告書あり観光が中心、業務成果が不明
書籍・サブスク医療・経営に直結、院内で共有私的娯楽目的のコンテンツ中心
会食・交際参加者・目的・内容が記録され妥当額同伴者が家族、目的不明、過大
車両費訪問診療・往診など用途明確、走行記録生活利用中心、記録なし
自宅兼用費用面積・時間等で合理的に按分し証拠ありなんとなく一定割合で按分
IT機器・スマホ業務アカウント運用、端末管理ルールあり私用アプリ中心、明細が不明

ポイントは、可否を「感覚」で決めないことです。税務上は、区分できる根拠と継続した運用があるほど強くなります。

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クリニックの経費計上の方法:迷わないための手順(証憑・按分・資産判定)

経費計上を仕組みにすると、判断ブレと否認リスクが下がります。

Step 1: 支出を3分類する(業務/家事関連/私的)

支払時点で「業務のみ」「家事関連(混在)」「私的」を区分します。家事関連は後述の按分対象です。

Step 2: 証憑をセットで保管する(領収書+目的メモ)

領収書・請求書に加え、会食は参加者、研修は内容、広告は媒体・期間などをメモします。クレジット明細だけに依存しない運用が重要です。

Step 3: 家事按分はルール化して固定する

自宅兼用の場合は、床面積・使用時間・回線契約の実態など、合理的基準で按分します。毎年同じ基準で継続することが説明力になります。

Step 4: 固定資産か消耗品かを判定する

高額機器や内装は原則、取得時に一括費用化せず、耐用年数に応じて減価償却します。迷う場合は、金額基準と使用期間、資産性(長期利用)で判定します。

Step 5: 消費税(インボイス)・保存要件を確認する

課税事業者の場合、仕入税額控除のために請求書等の保存要件を満たす必要があります。制度対応を経理ルールに落とし込みましょう。

税務調査で見られやすいポイント:クリニック特有の注意点

医療業で実務上チェックされやすいのは、次の領域です。

  • 交際費・会議費:参加者・目的が曖昧、同日重複、金額過大
  • 旅費交通費:観光要素、家族同伴、行程と業務内容の不整合
  • 家事按分:根拠のない割合、年ごとに比率が変動、証拠不足
  • 医療機器:資産計上漏れ、耐用年数の誤り、修繕費との区分
  • 親族関連:給与・外注の実態(勤務実態、成果物、相場)

「否認されるか否か」は、帳簿の見え方と説明資料で変わります。疑義が出やすい支出ほど、事前にルール化しておくことが有効です。

よくある質問

Q: 自宅を一部クリニック事務所として使う場合、家賃や光熱費は経費になりますか? ▼

A:

家賃・光熱費は、業務で使用した部分に限り経費化が可能です。面積や使用時間など合理的基準で按分し、根拠(間取り図、使用実態メモ、契約内容)を保存してください。
Q: 院長のスーツや靴は経費になりますか? ▼

A:

原則として私的要素が強く、経費になりにくい項目です。一方、白衣・スクラブなど業務専用性が高いものは整理しやすい傾向があります。購入目的と使用実態の説明が鍵です。
Q: 学会参加費や旅費はどこまで経費になりますか? ▼

A:

診療と関連する研修・学会で、参加証・プログラム・資料・報告書などが揃い、行程が業務中心なら経費性が高まります。観光や私的行程が大きい場合は、業務部分のみの整理や私費負担が無難です。
Q: 医療機器を購入しました。全額を当期の経費にできますか? ▼

A:

原則は固定資産として計上し、耐用年数に応じて減価償却します。少額資産の特例など判断が分かれるため、金額・使用期間・導入形態(購入/リース)を踏まえて税理士に確認することを推奨します。

まとめ

  • クリニックの経費は「業務関連性」「妥当性」「証憑」の3点で判断する
  • 経費になる代表例は、人件費・賃料・医療材料・外注費・専門家費用・広告費など
  • 経費にならない典型は、所得税/住民税・罰金等・私的支出・目的不明の支出
  • 判断が割れる項目は、目的メモと継続運用(家事按分ルール、参加者記録等)が重要
  • 税務調査では交際費・旅費・按分・資産計上・親族関連が重点になりやすい

参照ソース

  • 国税庁「No.2210 必要経費の知識」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm
  • 国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6498.htm
  • 国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」: https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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