
執筆者:辻 勝
会長税理士
内覧会とは?開業前クリニック内覧会成功術の実践|税理士が解説

内覧会とは?開業前に行う目的と効果
内覧会とは、開業直前にクリニックを地域の方へ公開し、院内設備・診療方針・スタッフの雰囲気を知ってもらう場です。開業直前の医師にとっての課題は「まだ患者がいない状態で、どう認知と信頼を立ち上げるか」であり、内覧会はその初速を作る実務的な手段になります。
ポイントは、内覧会を「見学イベント」で終わらせず、開業後の初診予約・受診に接続する設計にすることです。地域に“ここなら相談できそう”という安心感が生まれると、開業初月の稼働が安定しやすくなります。
税理士法人 辻総合会計としては、内覧会はマーケティング施策であると同時に、開業後の資金繰り・採用・オペレーションを左右する「立ち上げ工程」と捉えることを推奨しています。
クリニック内覧会の準備(やること一覧と段取り)
内覧会準備は「告知」「当日の体験」「フォロー」の3つに分解すると抜け漏れが減ります。以下は当法人で支援する際に汎用的に使っている段取りです。
Step 1: 目的とKPIを決める(T-21〜T-14)
- 目的例:開業前の認知獲得、初診予約の獲得、近隣医療機関・薬局との関係構築
- KPI例:来場者数、LINE/メール登録数、WEB予約の事前登録数、近隣事業者名刺交換数
ここが曖昧だと、当日が“にぎわった”だけで終わりがちです。「開業後に何をしてほしいか」から逆算します。
Step 2: 告知導線を設計する(T-14〜T-7)
- チラシ:商圏に合わせて配布範囲を決める(町丁目単位まで落とす)
- WEB:公式サイトに「内覧会ページ」を作成(日時、場所、駐車場、予約要否、所要時間)
- 近隣連携:薬局、介護事業者、学校、企業、自治会などへ挨拶回り
この段階で「予約なし来場」を基本にしつつ、混雑回避のために時間帯目安を提示するのが実務的です。
Step 3: 当日の“体験”を作る(T-7〜前日)
- 受付〜見学の導線(靴、ベビーカー、車いすを想定)
- 相談ブース(個別相談は10分枠などルール化)
- スタッフ配置(受付、誘導、説明、撮影、清掃、在庫管理)
- 配布物(診療時間、アクセス、予約方法、診療方針、よくある質問)
内覧会は短時間で印象が決まります。「迷わない導線」と「安心できる説明」が成果に直結します。
Step 4: フォローを自動化する(当日〜T+3)
- 来場御礼(LINE/メール)
- 開業日リマインド
- 予約ページへの導線
- よくある質問の追記(サイト更新)
来場者の熱量は数日で下がるため、フォローは最初から設計しておきます。
開業内覧会で集患につなげる方法(当日の見せ方・話し方)
内覧会で集患につなげるには、「診療の強み」より先に「受診のしやすさ」を体験してもらうのが有効です。
1) “初診の不安”を潰す展示にする
- 受診の流れ(受付→問診→診察→会計→処方)
- 予約の取り方(QRでその場登録できると強い)
- 感染対策・導線(発熱動線や隔離室があるなら説明)
特に新規開業では、「ここなら行っても大丈夫」が最初の意思決定になります。
2) スタッフ紹介は「役割」と「温度感」を伝える
院長の専門性だけでなく、受付・看護師の対応が医院の印象を決めます。写真と一言コメントを掲示し、「どんな相談が多いか」を短く添えると安心につながります。
3) 近隣医療機関・薬局向けの時間を別枠で設ける
一般来場者のピーク時間と分け、紹介・連携の話ができる時間帯を確保します。地域連携は開業後の患者紹介や処方設計にも影響するため、内覧会は“はじめての営業日”と捉えるのが実務的です。
告知手段の比較(チラシ・WEB・近隣連携の使い分け)
内覧会の告知は、単一チャネルよりも組み合わせが安定します。費用感と到達の特性を整理します(地域・単価で変動します)。
| 告知手段 | 特徴 | 費用感の目安 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| ポスティング/新聞折込 | 生活圏に面で届く | 数万円〜数十万円 | 商圏が半径1〜2kmの外来中心 |
| 公式サイト/Googleビジネスプロフィール | 検索からの流入を受ける | 自作なら低コスト | 予約・アクセス情報を整備したい |
| SNS(地域コミュニティ含む) | 拡散と雰囲気訴求 | 低コスト〜 | 写真・動画で院内を伝えたい |
| 近隣挨拶(薬局・介護・企業) | 信頼の獲得が早い | 人件費中心 | 在宅/慢性疾患/紹介連携を重視 |
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内覧会での注意点(医療広告・個人情報・運営リスク)
内覧会は「広報イベント」でもあるため、法令・ガイドラインの観点を押さえることで、後から修正コストが増えるのを防げます。
医療広告の観点:表現・実績・口コミの扱い
- 事実と異なる、誇大な表現は避ける(比較優良・No.1等の根拠が弱い表示はリスク)
- 自由診療を扱う場合は、費用やリスク等の情報提供が必要になる場面がある
医療広告規制はウェブサイト等も含めた運用が整理されています。内覧会ページやSNS投稿も含め、「事実ベースで、患者の適切な選択に資する情報」に寄せるのが安全です。
個人情報の観点:来場者リストは目的と管理が核心
受付で名簿を作る場合、取得目的(例:開業案内、予約案内)を明示し、保管方法とアクセス権を決めます。医療分野は要配慮個人情報を含み得るため、問診に踏み込む相談受付は運用を分けるのが無難です。
運営リスク:混雑・クレーム・事故を想定して潰す
- 駐車場不足、近隣への騒音・路上駐車
- ベビーカー・車いす導線、段差・転倒
- 院内撮影(他の来場者が映る)
建物のバリアフリー配慮は、来場体験だけでなく開業後の通院継続にも効きます。
よくある質問
Q: 内覧会はいつ実施するのが一般的ですか?
A:
開業の1〜2週間前に土日で実施するケースが多いです。告知期間を確保しつつ、開業日までの記憶が残りやすいタイミングが現実的です。スタッフ研修も兼ねるなら、前日にリハーサルを入れると安定します。Q: 予約制にした方が良いですか?
A:
原則は予約不要が来場ハードルを下げます。ただし混雑が見込まれる商圏や小規模クリニックでは、時間帯目安の提示や、個別相談のみ予約制にする「併用」が運用しやすいです。Q: 内覧会で何を配布すべきですか?
A:
最低限として、診療時間・アクセス・予約方法・診療方針・対応可能な検査や設備の案内を用意します。追加で、発熱時の来院方法や小児同伴の注意など「よくある不安」への回答があると受診につながりやすいです。Q: SNSに院内写真を載せても問題ありませんか?
A:
可能ですが、医療広告規制の考え方に沿った表現にし、誤認を招く強い断定表現は避けます。また、来場者が写り込む場合は個人情報・肖像の観点で配慮が必要です。掲載前に院内ルール(撮影可否、掲示)を決めておくと安全です。まとめ
- 内覧会とは、開業前に院内を公開し認知と信頼を立ち上げる施策
- 成功の鍵は「見学」ではなく開業後の予約・受診に接続する設計
- 準備は「目的/KPI→告知→体験設計→フォロー」の順で進めると抜け漏れが減る
- 告知はチラシ・WEB・近隣連携を組み合わせ、商圏と診療方針に合わせて最適化する
- 医療広告・個人情報・運営リスク(混雑や撮影)を事前に潰して修正コストを減らす
参照ソース
- 厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html
- 個人情報保護委員会「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス等」: https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/iryoukaigo_guidance/
- 国土交通省(PDF)「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築物の基準(バリアフリー関係)」: https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001402955.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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