
執筆者:辻 勝
会長税理士
医療広告ガイドライン改正2026|Web・SNS対応を税理士が解説

医療広告ガイドライン改正2026年のポイント
医療広告ガイドラインは、クリニックのホームページやSNS投稿も含めて「患者等を誘引する表示」を規律するルールです。2026年にWeb・SNS運用を見直すなら、まず「何が広告に当たるのか」「何が禁止されるのか」「限定解除の条件」を押さえ、制作会社・運用担当と同じ基準で運用することが重要です。
特に現場で問題になりやすいのは、自由診療の訴求、症例写真、口コミ・体験談の扱い、そして“広告ではないつもり”のSNS投稿です。意図せず違反表現が混ざると、修正対応や風評だけでなく、行政対応・契約トラブルにも発展します。
本記事では、厚生労働省の公表資料を前提に、クリニックのWeb・SNSを「守りながら成果を出す」ための運用設計を、税理士の視点(外注費・契約・業務フロー)も含めて解説します。
医療広告規制とは?ホームページ・SNSが対象になる理由
「広告」に当たるかの基準(まずここが誤解されやすい)
医療分野では、紙のチラシだけでなく、ホームページ、SNS投稿、バナー広告、動画、メールマガジン等も含めて評価されます。基本は次の3点で判断されます。
- 誘引性:受診等を促す目的・効果があるか
- 特定性:特定の医療機関・医師が識別できるか
- 医療・診療内容に関する表示か
SNSは「雑談のつもり」でも、院名・ロゴ・リンク・予約導線があれば、上記を満たしやすく、実務上は広告規制の射程に入りやすい媒体です。
禁止されやすい代表例(SNSで頻出)
- 虚偽・誇大広告:断定表現、根拠なき効果強調、事実と異なる表示
- 比較優良広告:他院より優れている旨(ランキング、No.1、唯一等を含む)
- ビフォーアフター:治療効果の誤認につながるおそれがある写真等(取り扱いは慎重に)
SNSは投稿サイクルが速く、ストーリーズ等で消えるため、社内チェックが形骸化しやすい点がリスクです。
2026年の最新動向:改正点の読み方(“いつの版”を参照するか)
医療広告ガイドラインは、通知等により改訂が行われます。実務では「制作会社が参照している版」と「院内が参照している版」がズレると、表現基準が食い違い、修正コストが増えます。
2026年時点の対応としては、次を最低限そろえるのが現実的です。
- 現行の「医療広告ガイドライン(最新版)」を院内の基準文書として固定
- Q&Aも併せて運用し、現場判断(SNS文言、価格表示、症例表示)を統一
- 重大論点(自由診療、症例、限定解除)だけは、事前にテンプレ化してレビューを定着
クリニックのホームページ・SNSで実務対応する方法
媒体別のチェックポイント(比較表)
| 媒体 | つまずきやすいポイント | 実務対応(おすすめ) |
|---|---|---|
| 公式ホームページ | 自由診療の効果表現、症例、料金、限定解除要件の欠落 | ページごとに「目的・根拠・注意事項・費用・副作用等」を点検し、テンプレ化 |
| SNS(投稿・リール) | 断定表現、ランキング・No.1、体験談の引用、施術前後の見せ方 | 投稿ガイド(NG集)を作り、原稿段階でレビュー。ハッシュタグも含め確認 |
| SNS広告(配信) | 誘引性が強く、表現が攻めがち。LPとの整合が崩れる | 広告文・バナー・LPをセットで審査。外注先にもガイドラインを配布 |
| 口コミ・第三者サイト | 依頼投稿、口コミの転載、誤認を招くまとめ | 口コミ誘導は設計に注意。転載は原則避け、院側の説明情報を充実 |
「限定解除」を前提にするページは、要件を先に設計する
ウェブサイト等は、条件を満たすことで広告可能事項の限定を解除できる枠組みがあります。ここを理解せずに「自由診療ページを作る」と、後から全面改修になりがちです。
運用設計の要点は次の通りです。
- 料金:総額・内訳・追加費用の有無を明確化(見積りの前提も含む)
- リスク:副作用・合併症・一般的な注意事項を具体的に記載
- 代替手段:選択肢や一般的情報を示し、過度な誘引にならないよう整理
- 根拠:エビデンスや適応の範囲を、誤認が生じない表現にする
税理士の立場から見ると、ここが整うほど「外注費の手戻り(追加見積)」「炎上対応コスト」「予約キャンセルによる機会損失」が減り、結果としてマーケ費用対効果が安定します。
すぐ実行できる:Web・SNSの点検手順(ステップ形式)
Step 1: 対象媒体を棚卸しする
- 公式HP(診療科別・自由診療LP・ブログ)
- SNS(公式・院長個人・スタッフ投稿の運用ルール)
- 広告配信(Meta/Google/LINE等)
- 外部掲載(ポータル、口コミ、取材記事)
Step 2: 禁止表現の一次スクリーニングをする
- 断定(必ず治る、絶対、100%)
- No.1/日本一/唯一/ランキング
- 誤認を招く写真・体験談の使い方
- 根拠不明の「最先端」「画期的」等
Step 3: 自由診療ページは“限定解除の要件”で再構成する
- 費用、リスク、治療内容、比較情報、注意事項の不足を補う
- 重要箇所は固定文(テンプレ)として、更新時に落ちない設計にする
Step 4: 承認フローを決め、証跡を残す
- 原稿→レビュー→公開の担当者と期限を明確化
- 広告運用会社との契約書・修正範囲(追加費用条件)も整理
- 更新履歴(いつ、誰が、何を変えたか)を保管
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よくある落とし穴:SNS運用での広告規制リスク
投稿者が増えるほど、基準がブレる
院長・スタッフ・広報がそれぞれ投稿すると、表現の“守備範囲”がバラつきます。結果として、同じ施術なのに投稿ごとに言い回しが違い、誤認や誇大に見えるリスクが高まります。
対応策はシンプルです。
- NG例を具体的に列挙した「院内SNSガイド」を作る
- 投稿テンプレ(例:診療時間変更、キャンペーン告知、症例説明の定型文)を用意
- 月1回だけでも、投稿の棚卸し会議を実施して基準を更新する
外注制作会社に“丸投げ”すると、責任の所在が曖昧になる
制作会社は表現の提案をしますが、最終責任は医療機関側に残ります。だからこそ、発注時点で「守るべき基準」と「修正の範囲」を契約に落とすことが重要です。
税理士法人 辻総合会計では、広告表現そのものの是非に加えて、外注費の再見積条件、成果報酬型の設計、解約条項など、経営管理の観点からも一体で整理する支援を行っています。
よくある質問
Q: クリニックのSNS投稿も「医療広告」として規制されますか?
A:
規制対象になり得ます。院名・予約導線・診療内容が結びつき、誘引性と特定性を満たすと、広告として評価される実務運用が一般的です。院内ルール(投稿テンプレ・承認フロー)を作ると事故が減ります。Q: 「No.1」「日本初」などの表現は使えますか?
A:
原則として慎重に扱うべきです。根拠の提示が難しく、比較優良広告や誇大表示と判断されるおそれがあります。事実を示す場合でも、第三者検証・対象範囲・調査方法が明確でない表現は避けるのが安全です。Q: 症例写真(ビフォーアフター)を掲載したいのですが、完全に禁止ですか?
A:
一律に「完全禁止」とは言い切れませんが、誤認リスクが高いため、掲載する場合は表現・条件・注記を含めて慎重な設計が必要です。特にSNSの短尺動画は文脈が欠落しやすく、ビフォーアフターの見せ方が問題化しやすい点に注意してください。Q: 広告表現に不安がある場合、どこに相談すべきですか?
A:
まずは医療機関を所管する自治体(都道府県、保健所設置市、特別区)の窓口が基本です。加えて、制作会社・運用会社との契約や費用の手戻りが論点になるため、実務では法務(弁護士)と経営管理(税理士)を組み合わせると整理が早くなります。まとめ
- 医療広告ガイドラインは、ホームページやSNSも含めて規制対象になり得る
- 判断の要点は誘引性と特定性、そして禁止表現(虚偽・誇大、比較優良等)
- 自由診療ページは「限定解除」を前提に、費用・リスク等をテンプレ化して運用する
- SNSは投稿者が増えるほど基準がブレるため、NG集と承認フローが有効
- 外注は丸投げせず、基準共有と契約条件(修正範囲・追加費用)まで一体で整える
参照ソース
- 厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index_00003.html
- 厚生労働省「医療広告ガイドライン(令和6年9月13日最終改正)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001304536.pdf
- 厚生労働省「医療広告ガイドラインに関するQ&A」: https://www.mhlw.go.jp/content/000371812.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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