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クリニック向けコラム
作成日:2026.01.20
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

クリニック開設届の書き方|保健所手続きを税理士が解説

9分で読めます
クリニック開設届の書き方|保健所手続きを税理士が解説

クリニック開設届(診療所開設届)とは

クリニック開設届(診療所開設届)とは、診療所を開設した事実を==都道府県知事へ届け出る==ための書類で、実務上は保健所(医療監視担当)へ提出するのが一般的です。医療法では、診療所を開設した場合に==開設後10日以内==の届出が求められます。

開業準備は「内装・採用・機器」などに目が向きがちですが、届出が遅れると、保健所側の確認・受理が後ろ倒しになり、他の手続(指定申請等)のスケジュールにも影響が出やすくなります。

ここがポイント
この記事は「診療所(クリニック)」の一般的な届出実務の解説です。届出様式・添付書類の細部は自治体(都道府県/保健所設置市/特別区)により異なります。必ず管轄保健所の案内・チェックリストを優先してください。

クリニック開設届の期限と、必要になる関連届出

期限は「開設後10日以内」が原則

医療法では、臨床研修等修了医師等が診療所を開設したとき、==開設後10日以内に届出==を行う旨が定められています(医療法第8条)。また、休止・再開、廃止にも「10日以内」の届出が規定されています(医療法第8条の2・第9条)。

実務上は「開設日=診療開始日(初診を受ける日)」として扱う自治体が多い一方、建物引渡日や内覧会日と混同して記載ミスが起きやすい点に注意が必要です。

関連届出は「開設後」も続く(変更・休止・廃止)

開業後も、内容変更があれば「変更届(届出事項変更)」、休止・再開・廃止があれば各届出が必要です。届出漏れは監査・立入時の指摘になりやすいので、院内で「何が変わったら保健所届出か」を決めておくと運用が安定します。

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届出名(代表例)いつ出すか期限の目安典型的な添付の例
診療所開設届(クリニック開設届)診療所を開設した後開設後10日以内平面図、案内図、管理者免許証写し、従事者一覧 等
届出事項変更届名称・所在地表記・診療科・管理者・構造設備等の変更時変更後速やかに(自治体運用)変更内容の根拠資料(平面図差替、契約書、免許証写し等)
休止届/再開届休止した時/再開した時原則10日以内休止・再開日、理由資料(求められる場合)
廃止届廃止した時原則10日以内廃止日、理由資料(求められる場合)
ここがポイント
「保険医療機関指定申請(地方厚生局)」や「生活保護指定」「労災指定」等は、保健所届出とは別の制度・窓口です。開業スケジュールは“並走”するため、工程表で管理するのが安全です。

診療所開設届の書き方:記載項目を実務目線で整理

届出様式は自治体ごとに異なりますが、医療法施行規則では、開設日、管理者、診療に従事する医師・歯科医師(診療科名、診療日・診療時間)等の事項が整理されています。記載の要点を、ミスが多い順に解説します。

1) 「開設者」欄:個人か法人かで書き方が変わる

  • 個人開設:住所・氏名を住民票・印鑑証明・各種申請書と表記統一
  • 法人開設:法人名、主たる事務所所在地、代表者名の表記を登記簿と一致

よくあるミスは「医療法人の予定名で先に書く」「法人の所在地の表記ゆれ(丁目・番地)」「代表者の肩書の書き方が登記と異なる」などです。==表記統一==が最重要と考えてください。

2) 「名称」欄:看板名と届出名を一致させる

診療所の名称は、広告・看板・印刷物・Webサイトでも使用されます。保健所届出の名称と、建物看板・予約サイトの表記がズレると、修正の手戻りが起きます。

  • 「○○クリニック」「○○医院」などの表記ゆれに注意
  • 「医療法人○○会 ○○クリニック」のように法人名を冠する場合、法人名表記も登記どおりに

3) 「所在地(開設の場所)」欄:住居表示/地番の取り違えを防ぐ

不動産契約書や登記簿は「地番」、郵便・住居表示は「住居表示」という違いがあり、ここが混乱の源になります。届出は一般に「住居表示」を前提とする自治体が多いですが、運用は地域差があります。

  • 賃貸契約書の住所と、郵便住所が異なる場合は要注意
  • ビル名・階数・室番号の記載ルールも自治体で差が出やすい

4) 「開設年月日」欄:診療開始日との整合が重要

医療法上の期限管理(10日以内)にも直結するため、開設年月日は慎重に確定します。

  • 一般的には「初めて診療行為を行う日(診療開始日)」で整理することが多い
  • 内覧会・レセコン設定日・機器搬入日とは別物

当法人でも、開設日を「物件引渡日」で記載してしまい、後続の申請日程と齟齬が出て修正届になったケースが複数あります。==開設日=診療開始日==で院内ルール化するのが事故を減らします。

5) 「管理者」欄:免許証写しの添付と、常勤関係の整合

管理者(院長)は原則として医師(歯科医業なら歯科医師)で、氏名・住所等を記載し、免許証(または登録証等)写しの添付を求められる運用が一般的です。管理者が別の医療機関と兼務する場合、別途の手続・説明資料が必要になることがあります。

6) 「診療に従事する医師」欄:診療科名・診療日・診療時間の書き方

医療法施行規則では、診療に従事する医師等の氏名、担当診療科名、診療日・診療時間等が整理されています。書き方のコツは次のとおりです。

  • 非常勤医の曜日・時間帯は「予定」でよいか、確定が必要かを保健所に確認
  • 「午前・午後」表記の境界時刻(例:12:30〜)の扱いはブレやすい
  • 診療科名は、標榜する診療科名のルールとの整合も意識する

添付書類の考え方:保健所が見たいポイントから逆算する

添付書類は自治体差が大きい領域ですが、保健所(医療監視)が確認したいポイントは概ね共通です。

  • 施設が「診療所」として運用可能な構造設備か(動線・区画・用途)
  • 管理体制(管理者、従事者体制)が明確か
  • 図面・表示が現況と一致しているか

そのため、典型的には次が求められます(地域差あり)。

  • 付近見取図(最寄駅・道路からの導線)
  • 平面図(各室用途が分かるもの)
  • 管理者の免許証写し
  • 従事者一覧(職種・氏名・勤務形態)
  • 法人の場合:定款等(求められる運用あり)

保健所提出の流れ:開業前後の段取りをステップで把握する

Step 1: 管轄保健所を確定し、様式・必要添付を入手する

同じ都道府県内でも保健所ごとにチェックリスト運用が異なることがあります。まずは管轄(所在地ベース)を確定し、最新版の様式を入手します。

Step 2: 開設日(診療開始日)を決め、工程表を引く

開設日が決まると、届出期限(10日以内)が確定します。あわせて、内装工事完了、医療機器搬入、スタッフ研修、各種指定申請の提出日も逆算します。

Step 3: 図面・掲示物・動線の整合を取る

平面図は「各室用途」が読み取れることが重要です。診察室、処置室、待合、受付、感染対策上の区画など、現況と図面の不一致があると修正になりやすいです。

Step 4: 記載内容の表記統一(住所・氏名・法人情報)を行う

登記簿、賃貸契約書、住民票等と突合し、表記ゆれを消します。ここでの精度が高いほど、後続手続(指定申請、金融機関手続等)もスムーズになります。

Step 5: 保健所へ提出し、控えの保管・院内共有を行う

提出後は控え(受付印のある写し)を必ず保管し、院内の管理台帳(届出一覧)にも反映します。変更が起きたときに「どの届出が必要か」を判断できる状態が理想です。

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よくあるミスと、修正を防ぐ実務ポイント

  • 開設日と、他申請(指定申請・内覧等)の想定日がズレている
  • 所在地の表記が「住居表示/地番」で混在している
  • 名称が看板・Web・印刷物と一致していない
  • 非常勤医の診療日・診療時間が未確定のまま記載され、後で変更届が発生する
  • 図面が“計画図”のままで、現況と一致していない

当法人(税理士法人 辻総合会計)では、クリニック支援を30年以上行う中で、「保健所届出の修正が連鎖して、指定申請や開業告知が遅れる」ケースを繰り返し見てきました。届出は書類作成ではなく、==開業プロジェクト管理==の一部として位置づけると失敗が減ります。

よくある質問

Q: 診療所開設届は、どこに提出しますか? ▼

A:

法令上は「都道府県知事への届出」と整理されますが、実務上は所在地を管轄する保健所(医療監視担当)で受理される運用が一般的です。保健所設置市・特別区では、市長・区長が関与する運用があります。
Q: 開設日(開設年月日)は、いつの日付を書けばよいですか? ▼

A:

一般には「診療開始日(初めて診療行為を行う日)」で整理することが多いです。ただし自治体の解釈・運用で差が出るため、工程表を作る段階で保健所に確認しておくと安全です。
Q: 開設届を出し忘れた場合、どうなりますか? ▼

A:

法令上の期限(開設後10日以内)を超えるため、速やかに保健所へ相談し、提出・経緯説明・必要に応じた書面整備を行うことになります。遅延の事実自体よりも、後続手続や院内管理(変更届等)の混乱が実害になりやすい点に注意してください。
Q: 開業後に非常勤医の曜日が変わった場合も届出が必要ですか? ▼

A:

自治体運用によりますが、「診療に従事する医師」「診療日・診療時間」等を届出事項として扱う場合、変更届の対象になり得ます。変更が頻繁に起こる体制(複数非常勤)では、変更管理のルール化が有効です。

免責事項

本記事は、2026年1月時点の法令・一般的運用に基づく一般情報です。実際の届出要件・様式・添付書類・期限の運用は自治体・個別事情により異なります。具体的な手続は、必ず管轄保健所および関係機関の案内に従ってください。

参照ソース(公的機関)

  • 厚生労働省「医療法(昭和23年法律第205号)」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=80090000&dataType=0&pageNo=1
  • 厚生労働省「医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=80092000&dataType=0&pageNo=1
  • e-Gov 法令検索(医療法)https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000205

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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