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クリニック向けコラム
作成日:2025.05.29
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

クリニック開業の流れ|準備〜開院スケジュールを税理士が解説

8分で読めます
クリニック開業の流れ|準備〜開院スケジュールを税理士が解説

クリニック開業の流れは、「事業計画→物件・資金→内装・機器→採用→届出→開院」で進みます。問題は、工事・納品・採用と行政手続きが同時並行になり、どれか一つの遅れが開院日に直結しやすいことです。そこで本記事では、開業日から逆算してタスクを配置する実務的なスケジュールと、届出の要点を整理します。税理士法人 辻総合会計では、クリニック顧問を中心に開業前後の会計・資金繰り設計を長年支援してきた経験を踏まえ、現場で詰まりやすい論点に絞って解説します。

クリニック開業の流れとは(全体像)

一般的に、テナント開業なら「6〜10ヶ月」、戸建て新築なら「12ヶ月以上」を見込みます。最短化の鍵は、意思決定の順序を誤らないことです。特に「物件確定」「融資内定」「設計確定」は、後工程(工事・採用・届出)を連鎖的に決める“起点”になります。

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フェーズ目安時期主なタスク
構想・調査12〜9ヶ月前診療圏調査、コンセプト、収支計画(患者数・単価・稼働率)
物件・資金9〜6ヶ月前物件選定、家賃・保証金交渉、金融機関打診、見積比較
設計・機器6〜3ヶ月前内装設計、工事契約、医療機器・IT(レセコン等)選定
人材・運用3〜1ヶ月前採用、就業規則、研修、導線・予約設計、導入リハ
届出・開院1ヶ月前〜当日各種届出、保険指定、広告・HP整備、内覧会、開院
開院後1〜3ヶ月レセプト運用安定、患者動向分析、資金繰りモニタリング
ここがポイント
「医療法の届出」や「保険医療機関の指定申請」は、管轄(都道府県・保健所設置市・特別区、地方厚生(支)局)により提出先・締切運用が変わります。必ず“開業地の窓口”の最新案内で確認し、締切日から逆算して準備してください。

クリニック開業スケジュールの作り方(逆算の手順)

ここでは、開業に必要なタスクを「逆算」で組み立てる手順を示します。ポイントは、契約(賃貸借・工事)と手続き(届出・保険指定)を「いつ動かすと開院日に間に合うか」で管理することです。

Step 1: 開業日(診療開始日)を仮決めする

採用難・工事遅延を想定し、開業日は繁忙期や連休を避けて仮置きします。ここで“月初開院”を狙う場合、保険指定との整合が重要です(後述)。

Step 2: 診療圏調査→コンセプト→収支計画を作る

患者数の前提(来院頻度・新患数・稼働率)を置き、保険診療のレセプト入金タイミングも織り込みます。収支計画は、融資審査の土台になります。

Step 3: 物件選定と契約条件の調整

賃料だけでなく、工事区分(A工事/B工事)、原状回復範囲、看板設置、医療機器搬入経路を詰めます。ここが曖昧だと、工事費が膨らみやすいです。

Step 4: 資金調達(融資内定)を取る

資金計画は「設備資金+運転資金」で設計します。特に開院直後は人件費・家賃が先行し、レセプト入金は後追いになりがちです。運転資金(最低3〜6ヶ月分)を別枠で確保すると、開院後の意思決定が安定します。

Step 5: 設計・内装工事を確定する

設計確定が遅れると、発注・納品・検査が連鎖して遅れます。動線(受付〜待合〜診察〜処置)と感染対策、スタッフの作業動線を優先して設計します。

Step 6: 医療機器・IT(レセコン/電子カルテ等)を選定する

開院直前にITを入れると、研修時間が不足し、レセプト事故の原因になります。導入・リハーサル日をあらかじめ確保します。

Step 7: 採用・就業ルール・研修を回す

採用は「必要人数」より「立ち上げ力(接遇・多能工)」を重視します。就業規則・雇用契約、社会保険・労働保険の段取りも同時に整えます(保険指定の添付書類で加入状況確認が求められる運用もあるため)。

Step 8: 届出・指定申請を行う(開院に直結)

  • 医療法上、臨床研修等修了医師等が診療所を開設した場合、開設後10日以内に所在地の都道府県知事へ届出が必要とされています(医療法第8条)。
  • 保険医療機関の指定日は、原則として「指定申請をした翌月1日」とされます。保険医療機関の指定日を月初に合わせたい場合、前月の締切(各府県事務所等で運用)から逆算して申請準備が必要です。

Step 9: 広報(HP/内覧会)と開院後1ヶ月の運用計画を作る

予約枠、初診導線、電話対応、クレーム対応、現金・キャッシュレスの締め処理など、開院後の“日次運用”を先に決めると混乱が減ります。

個人開業と医療法人(法人開設)の違い

開業形態は、税務・資金繰り・将来の承継(持分や役員報酬設計)まで影響します。初期は個人で始め、一定規模で法人化する設計も一般的です。

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観点個人開業医療法人(法人開設)
初期スピード比較的早い設立手続き分だけ前倒しが必要
税務所得税(累進)中心法人税+役員報酬設計が中心
資金管理事業と家計が混ざりやすい口座・経理分離しやすい
将来の承継個人資産の相続設計が主定款・ガバナンス・役員設計が重要
ここがポイント
広告・ホームページの表現は医療法の規制対象です。診療科名の標榜や、症例写真、比較優良の表現などは判断が難しいため、厚生労働省の整理資料やガイドラインに沿って点検してください。最終判断は個別事情で変わるため、必要に応じて専門家確認を推奨します。

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開業でつまずきやすい注意点(遅延と赤字の典型)

  • 工事費の増額:要因は「仕様の後出し」「追加配線・設備」「大家工事区分の誤認」。見積は“含まれるもの/含まれないもの”を文書で固定します。
  • 採用の長期化:募集開始が遅い、給与テーブルが市場と乖離、面接回数が多すぎる、が典型です。採用計画は3ヶ月前に遅くとも開始します。
  • レセプト運用の立ち上げ:導入直後は入力ルールが揺れます。スタッフ研修とダブルチェック体制を最初から作るのが安全です。
  • 資金繰りの見誤り:開院後は「固定費+借入返済」が先行します。月次で損益・資金繰りをモニタリングし、想定患者数との差を早期に補正します。

よくある質問

Q: クリニック開業は最短で何ヶ月かかりますか? ▼

A:

テナントで仕様が固まっている場合は6ヶ月程度で進むことがありますが、物件確定・融資・工事・採用・届出が同時並行になるため、実務上は6〜10ヶ月を見込むケースが多いです。
Q: 保険診療で開院したい場合、いつまでに何を準備すべきですか? ▼

A:

保険医療機関の指定日は原則「指定申請の翌月1日」とされるため、希望する開院月の前月締切(運用は各府県事務所等)に間に合うよう、申請書・添付書類・オンライン資格確認の準備などを前倒しで進めます。
Q: 開設届はいつ出す必要がありますか? ▼

A:

医療法では、臨床研修等修了医師等が診療所を開設した場合、開設後10日以内に所在地の都道府県知事へ届出が必要とされています。実務の提出窓口は自治体の案内に従ってください。

まとめ

  • クリニック開業は「事業計画→物件・資金→内装・機器→採用→届出→開院」の順で進む
  • スケジュールは開業日から逆算し、物件・融資・設計確定を起点に組み立てる
  • 医療法の届出は開設後10日以内が原則(医療法第8条)
  • 保険診療で月初開院を狙うなら、保険医療機関の指定日(原則:申請翌月1日)から逆算が必須
  • 開院直後の資金繰り対策として運転資金(最低3〜6ヶ月分)を厚めに確保する

参照ソース

  • 厚生労働省「医療法(医療法第8条:開設後10日以内の届出等)」: https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=80090000&dataType=0
  • 厚生労働省 地方厚生局「保険医療機関・保険薬局の指定等に関する申請・届出(指定日は原則 申請翌月1日)」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/shinsei/shido_kansa/hoken_shitei/index.html
  • 厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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