
執筆者:辻 勝
会長税理士
クリニック集患の実践策|Web・地域連携・口コミを税理士が解説

クリニックの集患対策とは|結論は「導線×接点×体験」
クリニックの集患対策とは、患者さんが「知る→比較する→予約する→通い続ける」までの一連の導線を設計し、地域での接点を増やし、受診後の満足(体験)を継続的に高める取り組みです。課題になりやすいのは、Web施策だけに偏り予約は増えても定着しない、地域の紹介はあるが情報発信が弱く選ばれにくい、といった分断です。
厚生労働省の受療行動調査(令和5年・概数)では、医療機関にかかる際に情報を入手している人の情報源として「家族・友人・知人の口コミ」が外来で68.4%と最も高く、次いで「医療機関が発信するインターネットの情報」が外来で28.8%とされています。つまり、口コミとWeb発信は同時に強化すべき領域です。
税理士法人 辻総合会計では30年以上にわたりクリニックの経営支援に携わってきましたが、収益が安定している院ほど「集患」を広告の強弱で捉えず、院内オペレーションや紹介ルート、Web予約導線までを一体で管理しています。
医院「集客」とクリニック「集患」の違い|医療は規制と信頼が中心
一般的な「集客」は販促施策で短期的な来店数を増やすニュアンスが強い一方、医療の「集患」は信頼と継続受診を前提に設計します。理由は次の3点です。
- 医療は広告規制(医療法に基づく医療広告規制)により、表現できる内容や方法に制約がある
- 患者さんは価格よりも安心・説明・通いやすさで意思決定しやすい
- リピート・紹介が長期の経営を左右する
Webでの集患(クリニック マーケティング)|SEO/MEOと予約導線が核心
Web施策は「見られる」だけでは不十分で、予約・問い合わせまでの導線が成果を分けます。おすすめの設計は次の順番です。
Web集患の方法(手順)|最短で成果に近づける4ステップ
Step 1: 受診理由(症状・ニーズ)を言語化する
診療科名ではなく、患者さんが検索する言葉に置き換えます(例:内科→発熱、咳、生活習慣病、健診結果の再検査)。
Step 2: 診療メニューのページを「1テーマ1ページ」で作る
「誰の、どんな悩みに、何ができるか」を明確にし、院内の流れ(予約→受付→検査→会計)も文章で補足します。患者体験を先に示すと離脱が減ります。
Step 3: MEO(ローカル検索)を整備する
Googleビジネスプロフィールは、診療時間・休診日・電話・予約URL・写真(院内・入口・導線)を最新化し、投稿は「お知らせ」「季節の注意喚起」「予防接種の案内」など事実情報を中心にします。
Step 4: 予約導線を最短化する
トップ・各診療ページ・アクセスページの全てに「予約/問い合わせ」導線を統一して配置します。電話・Web予約・LINE等、入口を増やし過ぎるとスタッフ対応が混乱するため、運用可能な数に絞ることが重要です。
WebでのKPI例|数字で管理しやすい指標
- 検索結果→サイト流入:診療メニュー別の訪問数
- 流入→予約:予約ボタンのクリック率、予約完了率
- 予約→来院:無断キャンセル率、前日リマインド到達率
- 来院→継続:再診率、健診/予防接種などの再来導線
地域連携(医院 集客の王道)|紹介が増える「接点」の作り方
地域連携は、広告費をかけずに質の高い紹介につながりやすい一方、仕組み化しないと属人的になりがちです。ポイントは「誰と」「何を」「どの頻度で」連携するかを明確にすることです。
連携先の候補
- 近隣の医療機関(専門外来・画像検査・入院先など)
- 薬局(服薬フォロー、在宅支援)
- 介護事業者(ケアマネ、訪問看護、地域包括支援センター)
- 企業・学校(健診、予防接種、産業医連携)
地域連携を強くする実務ポイント
- 紹介状・検査結果の返書を「速く」「丁寧に」返す(信頼の蓄積)
- 連携先が困る“つなぎにくさ”を潰す(直通連絡、予約枠の明確化)
- 院内の対応品質を揃える(受付・電話・会計のばらつきを減らす)
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口コミの活用法|増やすより「設計して守る」
受療行動調査(令和5年・概数)で示される通り、口コミは受診判断に強い影響があります。一方で医療は、体験談の扱い・広告の透明性・個人情報の保護で事故が起きやすい領域です。ここは「攻め」より「設計して守る」が正解です。
口コミを増やす前に整えること(院内設計)
- 受付の第一声、待ち時間説明、会計の分かりやすさ
- 医師の説明(選択肢提示、リスク説明、次回方針)
- 清潔感、導線、掲示物の統一、よくある質問の見える化
この土台がないまま評価依頼だけをすると、低評価のリスクが上がります。まずは口コミが自然に生まれる体験を整えることが優先です。
口コミ運用の注意点(リスク)
- 医療広告規制上、患者の治療効果に関する体験談を自院の広告として用いることは慎重な対応が必要
- 事業者が依頼・対価提供した投稿であるのに広告表示がない場合、ステルスマーケティングとして景品表示法上の問題になり得る
- 口コミ返信で個人情報(受診の事実、症状など)を推認させない
Web・地域連携・口コミの比較|どれから着手すべきか
まずは「短期で改善でき、院内負荷が小さい」ものから着手し、次に「再現性が高い仕組み」に投資すると失敗しにくくなります。
| 施策 | 即効性 | 継続性 | 主なコスト | 規制・炎上リスク |
|---|---|---|---|---|
| Web(SEO/MEO・予約導線) | 中 | 高 | 制作・運用工数 | 表現・医療広告規制 |
| 地域連携(紹介ルート) | 低〜中 | 高 | 関係構築工数 | 低(運用品質が鍵) |
| 口コミ(体験改善+運用) | 中 | 高 | 院内改善工数 | 高(表現・ステマ・個人情報) |
また、厚生労働省の受療行動調査(令和5年・概数)では、情報入手先として外来患者の「家族・友人・知人の口コミ」が68.4%、「医療機関が発信するインターネットの情報」が28.8%と報告されています。数値が示す通り、Web発信と口コミは相互補完の関係です。
よくある質問
Q: クリニックの集患で最初にやるべきことは何ですか?
A:
まず「受診理由(症状・ニーズ)別のWebページ整備」と「予約導線の最短化」です。診療内容が良くても、見つけてもらえず、予約が面倒だと選ばれにくくなります。次に地域連携の紹介導線(返書の迅速化、連絡手段の明確化)を整えるのが定石です。Q: 口コミサイトやGoogleの口コミは、医院側が掲載しても問題ありませんか?
A:
体験談の取り扱いは医療広告規制との関係で慎重な判断が必要です。また、依頼・対価提供などで投稿を促す場合は、広告であることを隠すとステルスマーケティング規制の問題が生じ得ます。実務としては、院内体験を改善し、依頼する場合も透明性を確保し、返信では個人情報を推認させない運用が重要です。Q: Web広告(リスティング等)は有効ですか?
A:
有効な場合はありますが、医療広告規制に配慮した表現管理が必要で、さらに予約枠・人員体制が整っていないと電話・受付が逼迫します。まずは自然検索とMEO、予約導線を整え、需要を受け止められる体制を作ってから検討すると費用対効果が安定します。まとめ
- クリニックの集患は「Web導線×地域接点×院内体験(口コミ)」を一体で設計すると安定しやすい
- 受療行動調査(令和5年・概数)では「家族・友人・知人の口コミ」が外来68.4%と最上位、Web発信も外来28.8%と重要
- WebはSEO/MEOより先に「予約導線」を整えると成果が出やすい
- 地域連携は返書の迅速化・連絡手段の明確化で紹介が増えやすい
- 口コミは増やす前に院内体験を整備し、医療広告規制・ステマ規制・個人情報に配慮した運用が必須
参照ソース
- 厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html
- 厚生労働省「令和5(2023)年受療行動調査(概数)の概況(PDF)」: https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jyuryo/23/dl/gaisu-gaikyo2023.pdf
- 消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります」: https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/
- 個人情報保護委員会「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」: https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/iryoukaigo_guidance/
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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