
執筆者:辻 勝
会長税理士
開業医の補助金・助成金一覧|2025年版の探し方

開業医が使える補助金・助成金は、「設備投資や業務改善にかかった費用の一部を補助する制度」と「雇用・賃上げ等の取組を支援する制度」に大別されます。問題は、制度が多く、募集時期や要件が毎年変わるため「自院が対象か」「いつ・何を出せばよいか」が分かりにくい点です。この記事では、2025年度(令和7年度)を想定し、クリニックで使いやすい制度の見つけ方と、申請で外しやすい実務ポイントを整理します。
開業医が使える補助金・助成金とは
補助金・助成金は似ていますが、実務では次のように捉えると整理しやすいです。
- 補助金:公募(応募)型。審査・採択があり、事業計画(使い道の妥当性)が重視されます。交付決定前の発注が対象外になりやすい点が要注意です。
- 助成金:要件(賃上げ、就業環境整備など)を満たすと支給される設計が多く、労務・就業規則・実績管理が重視されます。
また、国の制度に加えて、都道府県・市区町村の制度(設備導入、開業支援、感染症対策、DX等)もあります。制度を横断的に探すには、電子申請・検索の入口を押さえるのが近道です。
まず押さえる「探し方」:jGrantsで公募を俯瞰する
国・自治体の補助金等は、検索と電子申請を一体化した「jGrants」で整理して確認できます。クリニック向けに限らず、業種横断の公募が多いため、まずは以下の軸で絞り込むのが実務的です。
- 目的:DX(予約/問診/会計)、省力化、感染対策、待ち時間短縮、採用・定着、賃上げ
- 使途:ソフト/機器、内装・導線改善、広告・広報、研修、外部専門家
- 申請主体:個人事業(院長)か、医療法人か
- 対象条件:従業員数、賃上げ要件、最低賃金近傍か、就業規則整備状況
GビズID(電子申請の共通ID)が必要になる制度も多いので、「申請するかもしれない」と思った時点で取得準備を進めるとロスが減ります。
クリニックで使われやすい代表例(2025年度想定)
ここでは「開業医が触る頻度が高い」観点で代表例を整理します。募集の有無・枠・要件は年度で変わるため、最終確認は必ず公募要領で行ってください。
販路開拓・集患・院内導線の改善:小規模事業者持続化補助金
小規模事業者等の販路開拓や生産性向上を支援する制度で、チラシ・Web・看板・広報物、導線改善に伴う一部経費などが論点になりやすい領域です。開業初期の「認知獲得」「予約導線の整備」「採用広報」など、投資の目的が明確な場合に検討余地があります。ポイントは、事業計画で「誰に、何を、どう改善し、どんな効果が出るか」を数字で説明することです。
賃上げに連動した設備投資:業務改善助成金
最低賃金の引上げに対応して、賃金引上げと生産性向上(設備投資等)をセットで支援する仕組みです。医療事務・看護助手等の人件費が上がる局面で、レジ・精算、受付、バックヤードの省力化投資を検討する際に候補になります。特に賃上げ要件と投資内容の整合が重要で、申請前の設計が成否を左右します。
労務管理・働き方の整備:働き方改革系の助成(制度の考え方)
労働時間管理、年休取得促進、就業規則整備、労務管理ソフト導入など、就業環境整備に絡む助成は、社労士領域のドキュメント整備が前提になります。制度の枠組みは「成果目標」と「対象取組」がセットで、実施→実績報告の流れを取ります。対象経費の範囲や“原則対象外”が細かいので、事前に要件確認が必須です。
補助金と助成金の違い:選び方を比較表で整理
「どれを見ればよいか」を迷う場合、まず種類で当たりを付けます。
| 区分 | 主な目的 | 典型的な必要書類 | 支給の流れ | クリニックの使いどころ |
|---|---|---|---|---|
| 補助金(公募型) | 設備投資、DX、販路開拓 | 事業計画、見積、体制図など | 採択→交付決定→実施→実績報告→精算 | 予約/問診/会計のDX、院内導線改善、広報投資 |
| 助成金(要件型) | 賃上げ、労務改善、人材育成 | 就業規則、賃金台帳、出勤簿等 | 取組→要件充足→申請→支給 | 賃上げ対応、省力化投資、働き方の整備 |
| 自治体制度 | 地域政策に連動 | 申請書・見積・事業報告 | 自治体ごと | 開業支援、内装・設備、DX、感染対策など |
結論として、開業医が最初に検討しやすいのは「DX/省力化」「賃上げ対応」「販路開拓(集患・採用)」の3軸です。まずは自院の課題をこの3つに分類すると、制度探索が早くなります。
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申請の方法・手順(実務の流れ)
制度ごとに差はありますが、実務フローは概ね共通です。ここを外すと“対象外”になりやすいため、順番を固定化してください。
Step 1: 目的と投資内容を1枚に整理する
待ち時間短縮、患者満足、レセプト・会計の省力化、採用強化など、目的を先に決めます。目的が曖昧だと、計画書が散漫になります。
Step 2: 対象要件を確認する(従業員数・申請主体・賃上げ要件)
個人か法人か、常勤・非常勤の数え方、最低賃金近傍か等で対象が変わります。助成金は労務書類の整合が最重要です。
Step 3: GビズIDを準備し、jGrantsで該当公募を探す
電子申請が必須・推奨の制度が増えています。GビズIDは取得に時間がかかる場合があるため、早めに動きます。
Step 4: 見積・仕様を固める(交付決定前に契約しない)
補助金は特に、交付決定前の契約・発注・支払が対象外になり得ます。ベンダー選定は“見積取得まで”に留め、契約はタイミング管理を徹底します。
Step 5: 実施・証憑管理→実績報告→精算
領収書、振込記録、納品書、写真等、後から揃わない証憑が多いので、実施開始時点で保管ルールを決めます。補助金は後払いが基本のため、資金繰りも併せて確認します。
注意点と、採択・支給を近づけるポイント
- 公募要領の“対象外経費”を先に読む:医療機器そのものが対象外になるケース、汎用PCが対象外になるケースなど、落とし穴が多い領域です。
- 計画は「患者体験」と「職員負荷」を数字で:例)受付の処理時間、会計待ち時間、予約キャンセル率、残業時間など。
- 助成金は“先に労務整備”:就業規則、36協定、勤怠・賃金台帳の整備が前提になります。社労士と連携すると早いです。
- 予算制約で早期締切がある:年度の後半ほど競争が激化することが多く、募集開始直後に動いた方が安全です。
- 税務上の取扱い:補助金等は会計・税務で収益計上や圧縮記帳等の論点が出ます。資金繰りと合わせて、顧問税理士へ早めに共有してください。
よくある質問
Q: 開業直後でも補助金・助成金は使えますか?
A:
使える可能性はあります。ただし、制度ごとに「創業後○年以内」「開業前は対象外」「開業後に一定の実績が必要」など条件が異なります。まず申請主体(個人/法人)と従業員数、投資内容を整理し、該当公募の要件を確認してください。Q: 予約システムや問診システムの導入は対象になりますか?
A:
制度によります。DX・省力化系の補助金では対象になり得ますが、補助対象経費の範囲(初期費用、月額利用料、保守費など)は公募要領で差があります。交付決定前の契約・支払が対象外となるケースもあるため、導入スケジュールの管理が重要です。Q: 申請は自院だけでできますか?
A:
可能ですが、補助金は事業計画の作り込み、助成金は労務書類の整合が難所です。院内で体制が組めない場合、税理士・社労士等の専門家と役割分担(計画、労務、証憑管理)を決めると成功確率が上がります。まとめ
- 開業医の制度活用は「DX/省力化」「賃上げ対応」「販路開拓」の3軸で整理すると探しやすい
- 補助金は公募型で審査があり、助成金は要件充足と労務書類が鍵になりやすい
- jGrantsで公募を俯瞰し、GビズIDの準備を早めに行う
- 交付決定前の契約・支払、証憑管理の不備が最も多い失敗要因
- 税務・労務の論点が絡むため、顧問税理士・社労士との連携が実務上有効
参照ソース
- jGrants(補助金の検索・電子申請): https://www.jgrants-portal.go.jp/
- 厚生労働省「業務改善助成金」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html
- 中小企業庁「小規模事業者持続化補助金について」: https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/shokibo/jizoku/
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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