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クリニック向けコラム
作成日:2026.01.11
更新日:2026.01.15
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

税務調査の質問20選|クリニック想定問答を税理士が解説

11分で読めます
税務調査の質問20選|クリニック想定問答を税理士が解説

クリニックの税務調査で質問されることとは

税務調査で聞かれるのは、「売上が正しく計上されているか」「経費が事業のためか」「帳簿と証憑が整合しているか」を確認する質問です。特にクリニックは、保険診療と自費診療が混在し、現金比率やスタッフ数も多いことから、売上の網羅性と現金・預金の動きが焦点になりやすい傾向があります。
本記事では、クリニック税務調査での「質問内容」と「回答例(想定問答)」を20個に厳選し、質問の意図と準備ポイントまで、税理士法人 辻総合会計の実務経験に基づいて解説します(個別事情により対応は異なります)。

税務調査の全体像と「聞かれる順番」の考え方

税務調査は何を確認するのか(質問検査の観点)

税務調査では、申告内容の裏付けとして帳簿書類、領収書、契約書、通帳、レセプト関連資料等との突合が行われます。多くのケースで、最初に院内の運用を把握する「ヒアリング(事業理解)」があり、その後に売上・経費・人件費など論点別に深掘りされます。
なお、実地調査は原則として事前に日程等の通知がされる運用です(例外はあります)。

クリニックで深掘りされやすい論点

  • 現金売上(自費・物販・予防接種等)の計上漏れ
  • 自費と保険の区分、返金・キャンセル・未収金処理
  • スタッフ給与、外注費(業務委託)の実態
  • 交際費・福利厚生費・旅費交通費の私的混入
  • 消費税(課税・非課税の区分、インボイス対応の実務)
ここがポイント
調査対応で最も重要なのは「一貫性」です。記憶で曖昧に答えるより、帳簿・規程・運用メモなど“根拠に戻る”姿勢が結果的にリスクを下げます。回答は「事実+根拠(資料名)」のセットを基本にしましょう。

クリニック税務調査:質問内容20選と回答例(想定問答)

以下は、現場で頻出の「税務調査 質問」を20個に整理したものです。回答例は、一般的な型としてご利用ください(事実に反する説明は避けてください)。

A. 事業の全体像(1〜4)

1. 開業時期、診療科目、1日の患者数、スタッフ数は?

  • 意図:売上規模・業務フロー・人件費水準の把握
  • 回答例:「2018年開業、皮膚科と美容皮膚科です。平日平均80名、土曜120名程度。常勤3名、非常勤5名です。」

2. 保険診療と自費診療の割合は?どのメニューが多い?

  • 意図:売上の構成比、課税関係や現金比率の想定
  • 回答例:「保険7割、自費3割です。自費は主に施術と物販です。月次で区分集計しています。」

3. 売上計上のタイミングは?(施術日・入金日・請求日)

  • 意図:期ズレ(期末の未収・前受)の有無
  • 回答例:「原則として役務提供日基準で計上し、未収金は月末時点で計上しています。」

4. 会計処理の体制は?院内担当・会計ソフト・税理士関与は?

  • 意図:記帳の信頼性、内部統制の把握
  • 回答例:「受付で日計表を作成し、経理担当が月次で会計ソフトへ入力、当法人(税理士)が月次監査しています。」

B. 売上・現金管理(5〜10)

5. 現金売上はどれくらい?現金は誰が締める?

  • 意図:現金計上漏れリスクの確認(典型論点)
  • 回答例:「自費の一部が現金です。毎日、受付2名でレジ締めし、日計表とレジ集計を突合しています。」

6. レジ締めの手順は?日計表・レジジャーナル・予約システムの一致は?

  • 意図:売上の網羅性(記録の連動)
  • 回答例:「日計表、レジZレポート、予約システムの消込一覧を毎日保管し、差異が出た場合は当日中に原因を記録しています。」

7. 返金・クーリングオフ・キャンセルの処理は?

  • 意図:売上除外の正当性、証憑の有無
  • 回答例:「返金時は返金伝票を起こし、同意書と振込記録(または現金出金記録)を添付しています。」

8. 未収金(ツケ)や分割払いはある?回収管理は?

  • 意図:期末未収の漏れ、貸倒処理の妥当性
  • 回答例:「分割は決済会社経由のみで、未収はありません。万一の未収は患者別台帳で管理します。」

9. 売上の入金経路(現金・カード・振込・決済代行)は?入金差額は?

  • 意図:手数料控除、入金差額の原因(取消・手数料)の説明
  • 回答例:「カードは決済代行経由で入金、手数料は支払手数料で処理。月次で売上計上額と入金額を照合しています。」

10. 現金の保管場所と入金頻度は?金庫残高と帳簿残高は一致する?

  • 意図:現金過不足、私的流用の疑い排除
  • 回答例:「金庫で保管し、週2回入金。現金出納帳で残高管理し、差異は現金過不足で当日処理しています。」

C. 経費・私的混入(11〜15)

11. 家事関連費(自宅家賃・光熱費・通信費)の按分基準は?

  • 意図:按分の合理性、過大計上の有無
  • 回答例:「在宅事務はありません。按分は行っていません(行う場合は床面積・利用時間等で説明できる基準を用意)。」

12. 交際費は誰と何の目的で?領収書の記載は?

  • 意図:交際費の実態、私的飲食の排除
  • 回答例:「医療連携先との会食等です。参加者・目的を領収書裏に記載し、院内規程に基づき精算しています。」

13. 旅費交通費・学会費は業務関連と説明できる?

  • 意図:私的旅行の混入、同伴者分の扱い
  • 回答例:「学会参加が目的で、参加登録証・日程表・領収書を保管しています。私的部分がある場合は区分して精算します。」

14. 備品・医療機器の購入は固定資産計上している?耐用年数は?

  • 意図:資産計上漏れ、減価償却の妥当性
  • 回答例:「10万円超の備品は固定資産として台帳管理し、法定耐用年数に基づいて償却しています。」

15. 仕入(物販・化粧品・サプリ)や薬剤の棚卸はしている?

  • 意図:期末在庫の漏れ(売上原価の歪み)
  • 回答例:「期末に棚卸表を作成し、在庫評価を行っています。廃棄があれば廃棄記録を残しています。」

D. 人件費・外注費(16〜18)

16. 給与台帳・タイムカード・雇用契約書は整っている?

  • 意図:人件費の整合、架空人件費や過大計上の排除
  • 回答例:「雇用契約書、勤怠データ、給与明細、振込記録をセットで保存しています。」

17. 非常勤医師・看護師の支払いは給与?外注?区分根拠は?

  • 意図:外注費(業務委託)への付替え、源泉・社保の論点
  • 回答例:「勤務実態に応じて給与として源泉徴収しています。業務委託の場合は契約書・成果物・独立性を確認しています。」

18. 家族への給与・手当は業務実態がある?金額根拠は?

  • 意図:同族関係者への過大支給、実態確認
  • 回答例:「担当業務、勤務時間、成果を明確にしており、同職種相場に照らして金額設定しています。」

E. 役員・消費税・保存(19〜20)

19. 院長の役員報酬・事業主貸(個人流用)・貸付金はある?

  • 意図:役員報酬の適正、資金流出、勘定科目の妥当性
  • 回答例:「役員報酬は定期同額で議事録保管。個人支出は事業主貸で処理し、内容が分かるようメモを残しています。」

20. 消費税の課税・非課税の区分は?インボイスの運用は?

  • 意図:課税売上割合、仕入税額控除の適用可否
  • 回答例:「保険診療は非課税、自費は内容により課税/非課税を判定し、区分経理しています。請求書の保存と電子取引データの保存ルールも整備しています。」

質問に強くなるための「準備リスト」ステップ(当日までにやること)

Step 1: 売上の突合セットを作る
日計表、レジ集計、予約/会計システム出力、入金明細(カード・代行・振込)を月次で突合し、差異理由(手数料・取消・返金)をメモ化します。

Step 2: 現金・預金の説明資料を整える
現金出納帳、金庫管理ルール、入金頻度、両替・小口の運用を文書化します。現金過不足が出た場合の処理も一貫させます。

Step 3: 経費は「規程+証憑+目的」で束ねる
交際費・旅費・福利厚生など、私的混入が疑われやすい科目は、院内規程とセットで保管し、領収書に目的・同席者・場所を記載します。

Step 4: 人件費は「契約・勤怠・支払」の三点セット
雇用契約書、勤怠、給与台帳、振込記録がつながる状態にします。外注費は契約・成果物・独立性の根拠を用意します。

Step 5: 保存年限と保管場所を統一する
帳簿書類は原則7年(状況により10年)など、法令上の保存期間を意識して、紙と電子の保管ルールを統一します。

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よくある指摘に直結する「論点×証憑」比較表

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論点(質問領域)税務署が見たがる主な証憑指摘に発展しやすい例
現金売上日計表、レジZ、現金出納帳、入金記録日計表と入金額が継続的に不一致
自費診療施術同意書、契約書、返金伝票、決済明細返金が多いが根拠書類がない
物販・在庫棚卸表、仕入明細、廃棄記録期末棚卸をしていない
交際費・旅費領収書、参加者/目的メモ、規程私的な飲食・旅行が混在
人件費・外注費契約、勤怠、給与台帳、支払記録実態は雇用なのに外注で処理
消費税区分区分経理表、請求書、電子取引データ課税/非課税の判定が曖昧
ここがポイント
「分からないので適当に答える」は避けましょう。確認して回答すること自体は通常問題になりません。むしろ、事実と異なる説明が後から矛盾として残る方がリスクです。

よくある質問

Q: 税務調査は事前に連絡が来ますか? ▼

A:

一般的な実地調査は、調査開始日前までに電話等で事前通知が行われる運用です。ただし、例外的に事前通知が行われない類型もあり得ます。まずは通知内容(税目・期間・日時・場所など)を整理し、準備範囲を明確にします。
Q: 税務調査で「その場で答えられない」と不利になりますか? ▼

A:

直ちに不利とは限りません。記憶で回答して後から訂正が生じる方が、結果的に疑義を招きます。資料を確認して、事実ベースで回答する運用にしましょう。
Q: クリニックで特に見られるのは自費診療ですか? ▼

A:

自費は現金比率や返金処理など、売上の網羅性を検証しやすい領域のため、深掘りされやすい傾向があります。日計表・決済明細・同意書等をセットで保管し、説明可能な状態にしておくことが重要です。
Q: 帳簿や領収書は何年保管すべきですか? ▼

A:

法人は原則として申告書提出期限の翌日から7年(欠損金等の状況により10年)など、税目・状況で保存年限が定められます。電子取引データも含め、保存ルールを整備してください。

まとめ

  • 税務調査の質問は「売上・経費・証憑の整合性」を確認するために設計される
  • クリニックは保険と自費が混在し、現金管理と区分経理が深掘りされやすい
  • 回答は「事実+根拠資料名」を基本にし、曖昧な推測回答を避ける
  • 準備は「突合(売上)」「三点セット(人件費)」「規程(経費)」が中核
  • 最適解は状況次第のため、疑義が出そうな論点は事前に税理士へ相談する

参照ソース

  • 国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」: https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/ippan.htm
  • 国税庁「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」: https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/sonota/120912/index.htm
  • 国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5930.htm
  • 国税庁「(消費税)自己の負担で行う保険診療(質疑応答事例)」: https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/07/01.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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