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クリニック向けコラム
作成日:2025.06.02
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

クリニック確定申告の経費と節税ポイント|2026年版 税理士が解説

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クリニック確定申告の経費と節税ポイント|2026年版 税理士が解説

クリニック確定申告の結論:経費の線引きと節税設計が9割

クリニックの確定申告は、売上(保険・自費)の整理よりも「どこまでを必要経費にできるか」「節税策をどう組むか」で税額が大きく変わります。特に個人クリニックの院長にとっては、経費が過少だと税負担が重くなり、過大だと否認リスクが上がる――このバランスが課題ではないでしょうか。結論として、経費の根拠(目的・金額・証憑)を揃えたうえで、青色申告・減価償却・役員ではなく事業主としての設計(専従者等)を早めに固めるのが最短ルートです。

税理士法人 辻総合会計では、クリニック顧問の実務で「経費の誤解」「消費税の論点」「設備投資の処理」でつまずくケースを多く見ています。本記事は、開業医が年度末に慌てないための実務チェックとしてまとめます。

クリニック確定申告とは:開業医は何を申告する?

個人クリニック(院長=事業主)の基本

個人で開業している場合、原則は「事業所得」として所得税の確定申告を行います。売上(収入)から必要経費を差し引いた所得に対して、所得税・住民税が課税されます。加えて、条件により消費税申告が必要になることがあります。

医療法人との違い(“確定申告”の意味が変わる)

医療法人の場合、法人税申告が中心で、院長個人は役員報酬や配当等を個人の確定申告で申告します。この記事は主に「個人クリニック」の確定申告を想定しつつ、医療法人でも共通する経費判断の考え方も含めます。

申告期限(2026年版の目安)

令和7年分(2025年分)の所得税・贈与税の申告・納付期限は「令和8年3月16日(月)」、個人事業者の消費税等の申告・納付期限は「令和8年3月31日(火)」が案内されています(国税庁の確定申告特集に基づく整理)。期限直前は予約枠や提出回線が混みやすいため、2月中に「数字の確定」まで進めるのが安全です。

医師が知っておくべき経費:認められる例と判断軸

経費の原則は「事業に必要(業務関連性)」「金額が妥当」「証憑がある」です。クリニックは私生活と混ざりやすく、家事按分と“目的の説明”が要点になります。

クリニックで典型的に経費になりやすいもの

  • 医薬品・衛生材料・医療消耗品
  • 医療機器の保守料、ソフト利用料(電子カルテ等)
  • 人件費(スタッフ給与・賞与・法定福利費)
  • 地代家賃、共益費、駐車場代(事業分)
  • 水道光熱費・通信費(事業分)
  • レセプト請求関連費用、委託費、外注費
  • 広告宣伝費(Web制作、看板、求人広告等)
  • 研修費・学会参加費(業務関連性が説明できる範囲)
  • 損害保険料(事業用)、リース料

グレーになりやすい(説明と按分が必要)

  • 自宅兼診療所の家賃・ローン利息、光熱費、ネット回線
  • 車両費(ガソリン・駐車場・保険・修理)※訪問診療や通勤混在など
  • 接待交際費(相手・目的・内容の記録が重要)
  • 書籍・情報サービス(医療関連性が薄いと否認されやすい)

原則としてNGに近い(否認されやすい)

  • 明確な私的支出(家族旅行、私的な衣類・嗜好品等)
  • 事業との関連性が説明できない高額支出
  • 領収書がなく、内容も不明な出金
ここがポイント
「医師だから一律に落ちる経費/落ちない経費」が決まっているわけではありません。税務上は“職種”よりも“取引の実態”が重視されます。迷う支出ほど、用途メモ(誰に・何のため・どの診療に役立つか)を残すと説明力が上がります。

節税の基本:青色申告・設備投資・制度活用の優先順位

節税は「経費を増やす」よりも、「制度要件を満たして控除を取りにいく」方が再現性が高い傾向があります。

青色申告特別控除(55万/65万円)を取りにいく

青色申告は、一定の帳簿・決算書類を整備した上で申告すると、所得から控除を受けられます。特に青色申告特別控除(最大65万円)は、要件を満たすだけで効果が大きい代表例です。65万円控除は、電子帳簿保存の要件を満たす、またはe-Taxで期限内申告する等の条件があるため、運用(会計ソフト・電子保存・提出方法)まで含めて設計します。

減価償却:高額機器は“買い方”より“処理”が税額に効く

医療機器・内装・什器などは、支出時に全額経費にならず、原則は減価償却で年ごとに費用化します。年度末に導入した機器の処理を誤ると、当期の利益が想定より大きくなり、納税資金が不足することがあります。リース・割賦・購入の違いも含め、契約形態と会計処理をセットで確認します。

クリニック特有の論点:社会保険診療と制度(措置法26)を知っておく

一定の条件下で、社会保険診療に係る必要経費を「租税特別措置法第26条」に基づく計算方法で求める選択肢が案内されています(いわゆる“措置法差額”の考え方)。ただし適用可否には収入規模等の要件があり、全員に有利とは限りません。

ここがポイント
措置法26(社会保険診療報酬の所得計算の特例)は、適用可否の判定と計算が重要です。導入するなら「保険・自費の区分」「共通経費の按分」「付表の作成」まで含めて、年中からの運用が安全です。

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医師の青色申告で65万円控除の条件|税理士が解説

医師(開業医・個人クリニック)が青色申告で65万円控除を受ける条件を整理。複式簿記、e-Tax、電子帳簿保存、申請期限、白色申告との違い、医業特有の注意点まで実務目線で解説します。

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確定申告の方法・手順:開業医が迷わない進め方

期限直前に「レシートの山」から始めると、経費の取りこぼしと否認リスクが同時に増えます。以下の順で進めると、手戻りが減ります。

Step 1: 申告区分を確定する(青色/白色、消費税の有無)
青色申告承認の状況、課税事業者かどうか、インボイス登録の有無などを整理します。ここが確定しないと、必要書類と処理が変わります。

Step 2: 売上を保険・自費で区分し、未収を把握する
支払基金・国保連の入金、窓口収入、自費売上を突合します。月次での突合が難しい場合、少なくとも年末までに整合表を作ります。

Step 3: 経費を「科目」より先に“用途”で整理する
家事按分が必要な支出(家賃・光熱費・車両費・通信費等)を先に抜き出し、按分根拠(面積、使用時間、走行記録など)を決めます。

Step 4: 設備投資・契約(リース/割賦)を棚卸しする
医療機器・内装工事・ソフトウェア等を一覧化し、取得日・金額・用途・契約形態を確認します。減価償却の計算に直結します。

Step 5: 申告書作成と提出(e-Tax推奨)
65万円控除の要件にも関係するため、可能であればe-Taxで期限内提出を基本線にします。提出後は、帳簿・領収書・契約書等の保存体制(紙/電子)を整えます。

よくある失敗と注意点:税務調査・消費税・資金繰り

“経費の取りこぼし”より危険なのは“根拠なき計上”

節税を意識するほど、経費計上が攻めに寄りがちです。重要なのは「説明できる形で計上する」ことです。特に交際費、研修費、車両費は、相手先・目的・業務関連性のメモがあるかどうかで説明力が変わります。

消費税:医療は非課税が多いが、論点が消えるわけではない

保険診療は非課税取引が中心になる一方で、自費診療や物販等の課税売上が混在する場合があります。課税・非課税が混ざると、仕入税額控除や経理処理が複雑になり、年度後半での修正が起きやすい点に注意が必要です。

資金繰り:納税資金は“利益”より“現金残”で見る

医療機器導入や人件費増がある年は、帳簿上の利益と手元資金が乖離しがちです。納税見込みを早めに出し、別口座で積み立てる運用が実務的です。

←横にスクロールできます→
論点ありがちな誤解実務の着眼点リスク
家事按分「だいたい半分」で良い面積・時間・走行記録など根拠で按分否認・追徴
設備投資「買った年に全額経費」原則は減価償却、契約形態も確認利益の過大/過少
青色控除「青色なら自動で65万円」e-Tax期限内提出等の要件管理控除減額
交際費「医師の付き合いだからOK」相手・目的・内容の記録が必須否認
消費税「医療は非課税だから不要」課税売上の有無、登録状況で判断申告漏れ

よくある質問

Q: 開業医の確定申告はいつまでですか? ▼

A:

令和7年分(2025年分)の所得税・贈与税は令和8年3月16日(月)まで、個人事業者の消費税等は令和8年3月31日(火)までが案内されています。実務上は、2月中に売上・経費・投資の確定まで終えるのが安全です。
Q: 医師の経費はどこまで認められますか? ▼

A:

原則は「事業に必要」「金額が妥当」「証憑がある」です。迷いやすい支出(車両費、研修費、交際費、自宅兼用の費用)は、業務関連性の説明と家事按分の根拠が重要になります。
Q: 青色申告の65万円控除を取るには何が必要ですか? ▼

A:

複式簿記での記帳・決算書の添付等の基本要件に加え、電子帳簿保存の要件を満たす、またはe-Taxで期限内提出する等の追加要件が必要です。会計ソフト運用と提出方法をセットで設計してください。
Q: 設備投資(医療機器)をした年は、税金が下がりますか? ▼

A:

多くの場合、医療機器等は減価償却となり、購入年に全額が費用化されるとは限りません。契約形態(購入/リース/割賦)と取得時期により当期の費用化額が変わるため、導入前に試算するのが確実です。

まとめ

  • クリニックの確定申告は「経費の線引き」と「納税資金の見通し」が核心
  • 経費は職種ではなく“取引の実態”で判断し、証憑と用途メモで説明力を確保
  • 青色申告特別控除と減価償却は、要件と運用を整えるほど効果が安定
  • 家事按分・交際費・研修費は根拠づけが重要(記録を残す)
  • 申告期限から逆算し、2月中に数字を固めると手戻りとリスクが減る

参照ソース

  • 国税庁「令和7年分 確定申告特集」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/index.htm
  • 国税庁「No.2072 青色申告特別控除」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
  • 国税庁「所得税青色申告決算書(一般用)付表《医師及び歯科医師用》記載要領(PDF)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2024/pdf/043.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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