税理士法人 辻総合会計グループ
無料相談
医療経営ブログに戻る
クリニック向けコラム
作成日:2025.01.24
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

クリニック消費税の課税・非課税判定|税理士が解説

9分で読めます
クリニック消費税の課税・非課税判定|税理士が解説

クリニックの消費税は「保険診療だから関係ない」と思われがちですが、実務では自由診療・健診・物販・文書料などが混在し、課税・非課税の判定と申告要否が経営判断に直結します。特に、設備投資が多いクリニックほど「仕入れに含まれる消費税(仕入税額控除)」の扱いで手取りが変わります。ここでは、院長・事務長が押さえるべき論点を、税理士法人 辻総合会計の医療顧問実務で頻出のパターンに沿って解説します。

クリニックの消費税とは(まず結論)

結論から言うと、クリニックの収入は大きく「非課税(社会保険医療の給付等)」と「課税(自由診療・物販等)」に分かれます。社会保険診療は原則非課税ですが、非課税が多いほど仕入税額控除が効きにくくなり、消費税の“負担感”が強くなります。

また、消費税の申告が必要かどうかは、原則として「基準期間の課税売上高」で判定します。つまり、保険診療が中心でも、自由診療・物販が増えると申告対象になる可能性があります。

ここがポイント
消費税の「非課税」は“消費税がかからない売上”ですが、仕入れ側の消費税(支払った消費税)が必ず全額戻るわけではありません。非課税売上が多い医療機関では、仕入税額控除が制限される点が実務上の核心です。

医療の消費税が「非課税」になる範囲(医療 消費税 非課税)

非課税の典型は、健康保険法・国民健康保険法などに基づく療養の給付等、いわゆる社会保険診療です。国税庁の整理でも「社会保険医療の給付等」は非課税取引として位置づけられています。

一方で、同じ医療機関の収入でも、制度に基づく療養に該当しないものは課税になり得ます。判定のコツは「その対価が“法令に基づく医療の給付等”か、それとも“保険外の役務・物販”か」を分解して考えることです。

非課税になりやすい例(概要)

  • 健康保険・国保に基づく診療報酬(自己負担分を含む)
  • 労災・自賠責など制度に基づく医療の給付等
  • 公費負担医療(自治体等の施策に基づくもの) など

「非課税=全部安心」ではない理由(仕入税額控除の制限)

消費税の計算は大まかに「預かった消費税(売上)-支払った消費税(仕入)」です。しかし、非課税売上に対応する仕入は控除できない(または按分が必要)となり、ここで差が出ます。実務では課税売上割合の管理が重要です。

自由診療・健診・物販はどうなる?(自由診療 消費税)

自由診療は、社会保険医療の枠外で提供される役務であるため、原則として課税取引になりやすい領域です。加えて、医薬品や衛生材料などの「販売(物販)」も、保険診療に該当しない限り課税となるのが基本です。

課税になりやすい収入の例

  • 美容皮膚科・美容整形などの自由診療
  • 自費の健康診断・人間ドック(治療ではなく検査サービスとして提供されるもの)
  • 予防接種(制度・委託形態により整理が必要なケースあり)
  • 文書料(診断書、証明書等)
  • 院内販売(化粧品、サプリ、OTC類似品、衛生用品等)
  • 駐車場利用料・広告収入など医療外収入

収入区分の整理に使える比較表

←横にスクロールできます→
項目内容A(非課税になりやすい)内容B(課税になりやすい)
診療の性格法令に基づく療養の給付等(社会保険診療)制度外の役務提供(自由診療・健診等)
患者負担保険の一部負担金(非課税に含まれる扱い)自費100%(課税)
典型例保険診療、労災・自賠責の対象医療等美容、検診、文書料、物販
実務ポイント仕入税額控除が制限されやすい領収書・請求書の税区分表示が重要
ここがポイント
「混合(保険+自費)」は会計処理での区分が重要です。売上台帳・レセコン出力・物販POSなど、データソースが分かれるほど“集計ズレ”が起きやすく、申告時に修正コストが増えます。

クリニックの消費税申告が必要になる条件(医院 消費税申告)

申告要否は「課税事業者かどうか」で決まります。基本は次の考え方です。

  • 基準期間(原則:2年前)の課税売上高1,000万円超で課税事業者
  • 一定の場合、特定期間(原則:前年上半期)の判定が入ることがある
  • 免税でも、課税事業者を選択する届出(課税事業者選択届出書)を出すと申告が必要

実務的には、自由診療の立ち上げ期・高額設備投資のタイミングで「課税事業者選択」や「簡易課税の適用」を検討することがあります。損得は、売上の課税割合と投資規模で変動します。

医療機関専門の税理士にご相談ください

40年以上の実績。クリニック・医療法人の経営を税務・会計の両面からサポートします。

無料相談を申込む 📞 06-6206-5510

平日 9:15〜18:15(土日祝休業)

関連記事

医師国保と厚生年金の加入判断ポイント|クリニック専門税理士が解説

医師や従業員が加入できる保険を整理し、医師国保(国保組合)と厚生年金・健康保険(社会保険)の違い、加入要件、手続きの進め方を解説。2024年以降の適用拡大や2025年成立法の方向性も踏まえ、クリニックの実務で迷いやすい論点をまとめます。

続きを読む

申告までの実務手順(判定→区分→計算→届出)

ここからは、院内で運用しやすい手順に落とします。

Step 1: 収入を“取引単位”で棚卸しする

レセプト収入、自由診療、健診、文書料、物販、その他収入を列挙し、月次で金額が取れる状態にします。会計ソフトの勘定科目だけで判断せず、実態(何の対価か)で区分します。

Step 2: 課税・非課税・不課税(対象外)を判定する

医療の給付等に該当するか、単なる物販・サービス提供かを基準に整理します。迷う取引(委託健診、自治体事業、予防接種等)は、契約書・請求書様式・委託主体を確認し、税理士と論点メモを残します。

Step 3: 課税事業者かどうか(申告要否)を判定する

基準期間の課税売上高(課税取引の売上)を集計し、1,000万円超かを確認します。自由診療の伸びがある院は、翌々期から課税事業者になる“時間差”を見落としがちです。

Step 4: 計算方式(原則課税/簡易課税)とインボイス対応を決める

  • 原則課税:実額で仕入税額控除を計算。高額投資があると有利になり得るが、区分経理が重い。
  • 簡易課税:業種みなしで控除を計算。事務負担は軽いが、投資局面では不利になることも。

さらに、2023年10月開始のインボイス制度下では、課税仕入れの控除や請求実務に影響が出ます。B2C中心のクリニックでも、企業健診・産業医契約・テナント賃料等がある場合は、取引先要請の有無を確認します。

よくあるミスと、税務調査で見られるポイント

1) 自由診療と保険診療の売上混在(集計ズレ)

皮膚科・眼科・整形外科などで、保険診療と自費メニューが同時に走ると、レセコン外の売上(現金・カード)が漏れやすくなります。月次で「現金/カード/振込」と「診療区分」のクロス集計を作ると事故が減ります。

2) 物販の税率・区分の誤り

院内販売は課税取引になりやすい一方、軽減税率(8%)の対象になり得る品目も混在します。品目マスタの税率設定を固定し、仕入先の請求書と突合する運用が有効です。

3) 仕入税額控除の按分漏れ(課税売上割合の管理不足)

非課税売上が大きい医療機関では、共通仕入(家賃、光熱費、通信費、消耗品等)の取扱いが論点になります。申告方式とともに、証憑保存と区分経理の設計が重要です。

ケーススタディ(匿名化)

美容皮膚科を併設したクリニックで、保険診療が売上の大半を占める一方、自由診療と院内物販が伸長していました。課税売上が基準期間で1,000万円を超えたにもかかわらず、免税のまま資金繰りを組んでいたため、申告開始期の納税資金が不足しかけました。早期に月次で課税売上をモニタリングし、納税見込を資金繰り表に織り込むことで、無理のない分割納付計画と設備投資計画に着地できました。

よくある質問

Q: 保険診療だけなら消費税申告は不要ですか? ▼

A:

社会保険診療は非課税ですが、申告要否は「基準期間の課税売上高」で判定します。自由診療・物販・文書料などの課税売上が増えれば、申告が必要になる場合があります。
Q: 自由診療の領収書は税込表示が必要ですか? ▼

A:

原則として、課税取引の対価である以上、税区分が分かる形(税率・税額等)が望ましいです。B2C中心でも、内部統制として「内税/外税」「税率」を統一し、会計・レセコン・決済端末の整合を取ると、申告作業が安定します。
Q: インボイス登録はクリニックでも必要ですか? ▼

A:

患者(一般消費者)向けが中心なら、登録が直ちに必須とは限りません。ただし、企業健診・委託業務・B2B取引がある場合、取引先から求められることがあります。登録の損得は、課税売上規模、仕入控除、取引先要請を踏まえて個別に判断します。

まとめ

  • クリニックの消費税は、非課税(社会保険医療)と課税(自由診療・物販等)の区分が出発点
  • 申告要否は「基準期間の課税売上高」で判定し、自由診療の伸びは“時間差”で効いてくる
  • 非課税売上が多いほど仕入税額控除が制限され、資金繰りに影響が出やすい
  • 原則課税・簡易課税・インボイス対応は、投資計画と取引形態に合わせて設計する
  • 迷う取引は契約書・請求書・委託スキームまで確認し、区分経理を早期に固める

参照ソース

  • 国税庁「No.6201 非課税となる取引」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6201.htm
  • 国税庁「消費税法基本通達 第6節 医療の給付等関係」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/06/06.htm
  • 国税庁「インボイス制度について」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_about.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

シェア:
医療経営ブログに戻る

お電話でのご相談

06-6206-5510

受付時間 9:15〜18:15(土日祝休業)

Webお問い合わせ

おすすめコラム

年末調整のやり方|2025年版 書類・書き方を税理士が解説

年末調整のやり方|2025年版 書類・書き方を税理士が解説

ふるさと納税控除は年末調整OK?手続き方法|税理士が解説

ふるさと納税控除は年末調整OK?手続き方法|税理士が解説

【失敗しない】クリニック開業税務の5つの注意点

【失敗しない】クリニック開業税務の5つの注意点

人気コラムランキング

1
出資持分あり医療法人と持分なし医療法人の違いと承継・税務ポイント

出資持分あり医療法人と持分なし医療法人の違いと承継・税務ポイント

2
内科の訪問診療戦略|収益設計と集患・運用の実務を税理士が解説

内科の訪問診療戦略|収益設計と集患・運用の実務を税理士が解説

3
医師国保と厚生年金の加入判断ポイント|クリニック専門税理士が解説

医師国保と厚生年金の加入判断ポイント|クリニック専門税理士が解説

4
ふるさと納税控除は年末調整OK?手続き方法|税理士が解説

ふるさと納税控除は年末調整OK?手続き方法|税理士が解説

5
【失敗しない】クリニック開業税務の5つの注意点

【失敗しない】クリニック開業税務の5つの注意点

© 2026 税理士法人 辻総合会計グループ. All rights reserved.

プライバシーポリシー

お電話はこちら

06-6206-5510

06-6206-5510

無料相談する

平日 9:15〜18:15