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クリニック向けコラム
作成日:2026.01.28
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

電子処方箋義務化2026|クリニックの準備・費用と補助金|専門家解説

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電子処方箋義務化2026|クリニックの準備・費用と補助金|専門家解説

電子処方箋の導入義務化2026は確定?結論と最新動向

電子処方箋は、紙の処方箋を「電子的に運用」し、直近の処方・調剤情報の参照や重複投薬等チェックに活用できる仕組みです。厚労省の公式サイトでも、導入・運用手順や申請(利用申請、運用開始日入力、補助金申請)を案内しています。
一方で「2026年に一律で義務化される」と断定して準備すると、投資時期や補助金の取りこぼしが起きやすい点が悩ましいところです。政策資料では、医療DXの工程表において電子処方箋を含む仕組みの普及を進め、2026年度以降の枠で「概ね全ての医療機関・薬局で導入」といった到達点が示されていますが、法令上の一律義務化の確定情報とは切り分けて理解する必要があります。

税理士法人 辻総合会計では、クリニックの設備投資(レセコン、電子カルテ、オンライン資格確認、ネットワーク整備)と資金繰りの相談を数多く受けます。現場で起きがちな課題は、「ベンダ改修は必要だが、いつ・どこまでやればよいか」「補助金を前提にした見積もりが妥当か」「院内の運用が回るか」の3点です。この記事では、2026年を見据えた“外さない準備”に絞って解説します。

電子処方箋とは何か

厚労省は、電子処方箋を「電子的に処方箋の運用を行う仕組み」であり、複数の医療機関・薬局で直近の処方・調剤情報を参照し、重複投薬等チェックに活用できると説明しています。
クリニック側の実務で変化が出やすいポイントは次のとおりです。

  • 他院処方や直近の調剤結果を踏まえた処方判断(参照可能範囲は制度・機能に依存)
  • 重複投薬等チェックのワークフロー(アラート対応のルール整備が必要)
  • リフィル処方箋等の関連機能や、将来的な全国医療情報プラットフォームとの接続を見据えた更新計画
ここがポイント
電子処方箋は「システムを入れれば終わり」ではなく、院内での運用設計(誰が・いつ・何を確認するか)までがセットです。導入後の手戻りは、医薬品マスタや用法マスタ等の設定不備、テスト不足で起きやすいので、稼働前のチェック工程を厚めに取るのが安全です。

クリニックの導入準備:やることを順番に整理

導入準備を迷子にしないコツは、「制度要件 → システム要件 → 運用要件 → お金(補助金)」の順で崩さないことです。オンライン資格確認など周辺要件との整合も含め、以下の手順で進めるとやり直しが減ります。

Step 1: 現状の前提条件を棚卸しする(電子カルテ/レセコン/資格確認)

  • 電子カルテ・レセコンの製品名、バージョン、保守契約の範囲
  • オンライン資格確認端末・カードリーダー等の機器構成
  • 院内ネットワーク(有線/無線、セキュリティ製品、VPN等)の制約

Step 2: ベンダに「電子処方箋対応の範囲」を明確に見積依頼する

  • 「電子処方箋管理サービス」への接続に必要な改修範囲(基本パッケージ改修)
  • 接続・周辺機器(資格確認端末の設定作業、資格確認用カードリーダー等)
  • 現地適用作業(運用調査・設計、セットアップ、テスト、立会い)
  • 追加機能(リフィル処方箋等、院内処方機能 等)の要否

Step 3: 申請・設定・テスト計画を作る(“いつ稼働”から逆算)

  • 利用申請、運用開始日の入力、マスタ設定、運用テストの工程をカレンダー化
  • 受付・医師・薬剤師(院内調剤がある場合)で役割分担を固定
  • 障害時(回線断、停電、ベンダ連絡不能)のバックアップ手順を文書化

Step 4: 職員教育と運用ルールを決めて稼働する

  • 重複投薬等チェックの「確認タイミング」と「対応基準」
  • 患者説明(紙と電子の扱い、薬局側の受付フロー差)
  • 稼働後1か月は“微修正前提”で、問い合わせログを蓄積して改善

導入費用の目安と補助金:令和7年度資料から読み解く

電子処方箋の導入費用は、クリニック規模でも「システム改修+接続・周辺機器+現地適用作業」でまとまった金額になりがちです。そこで重要なのが補助金と、都道府県の助成との組み合わせです。

厚労省の令和7年度資料では、電子処方箋管理サービスの初期導入に関し、補助対象費用を次のように整理しています(電子カルテ・レセコン等の改修、接続・周辺機器、現地適用作業等)。また、導入時期や同時導入する機能により、上限額が複数パターン示されています。

クリニック(診療所)の補助上限例(令和7年度資料)

←横にスクロールできます→
区分(令和7年度資料の例)診療所の補助上限(目安)補助率の考え方(資料の記載)
令和7年9月末までに初期導入9.7万円事業額38.7万円の1/4
令和7年9月末までに「新機能(リフィル処方箋等)」も同時に初期導入13.8万円事業額55.3万円の1/4
令和7年10月以降に初期導入(新機能同時導入を含む)15.1万円事業額60.3万円の1/4
令和7年10月以降に「院内処方機能」を同時に初期導入(新機能同時導入を含む)13.8万円事業額55.3万円の1/4

※上記は「医療情報化支援基金(電子処方箋)」の資料に基づく“診療所”の例です。実際の対象経費や申請要件は、申請時点の要領・ポータル掲載情報で確認してください。

都道府県助成との併用で「自己負担の見え方」が変わる

都道府県が実施する導入費用の助成について、厚労省資料では「助成金と他の補助金を併せて受給することが可能」とされ、導入費用に対する財政支援全体の割合として、診療所・薬局(大手除く)は3/4といった整理が示されています。
つまり、国の補助だけで判断せず、都道府県の助成募集(対象要件・募集期間・上限)も同時に確認するのが、資金計画上の“勝ち筋”になります。

ここがポイント
補助金・助成は「いつ初期導入したか」「どの機能を同時に入れたか」で区分されることがあります。見積書の段階で、ベンダに“補助対象になりうる費目(改修/周辺機器/適用作業)”を明細で分けてもらうと、申請時の手戻りが減ります。

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導入でつまずきやすい注意点:運用・設定・セキュリティ

最後に、導入の失敗パターンを先回りで潰しておきます。

  • マスタ設定の不備
    厚労省サイトでも、設定不備により薬局側システムで医師の処方と異なる医薬品名が表示される事例が報告されています。導入前の点検・テストは工程として必須です。
  • 現場運用が曖昧なまま稼働
    重複投薬等チェックのアラートが出たときに「誰が判断し、誰が記録するか」を決めていないと、稼働後の混乱が長引きます。
  • ネットワーク・セキュリティ対策の後回し
    電子処方箋は院内システムと外部サービスの連携が前提です。回線冗長化や端末管理、権限設計を“後で”にすると、改修費が膨らむ原因になります。

導入のゴールは「電子処方箋を出せる」ではなく、「安全に、日常診療で無理なく回る」です。院内の標準手順書(SOP)まで落とし込んで完成と捉えるのが実務的です。

よくある質問

Q: 電子処方箋は2026年に必ず義務化されますか? ▼

A:

2026年度以降の政策工程表で普及の到達点(概ね全ての医療機関・薬局で導入)が示される一方、法令上「2026年○月から一律義務化」と断定できる情報と混同しないのが安全です。実務上は、工程表の方向性に沿って導入が加速しているため、補助金や院内の更新計画(電子カルテ・レセコン更改)と合わせて前倒し準備を推奨します。
Q: 補助金はいつまで・いくら出ますか? ▼

A:

令和7年度資料では、初期導入の時期(令和7年9月末まで/10月以降)や同時導入機能により、診療所の補助上限(例:9.7万円、13.8万円、15.1万円など)が区分されています。年度・時期で条件が変わり得るため、申請時点の要領とポータル掲載情報で必ず確認してください。
Q: 院内処方(院内調剤)があるクリニックでも対応できますか? ▼

A:

厚労省サイトでは、院内処方等情報登録機能の開始が案内されています。院内処方の運用がある場合は、対応可否(機能提供時期、ワークフロー、職員教育)をベンダと早期に詰め、同時導入区分の有無も含めて見積・補助の整理を行うのが実務的です。

まとめ

  • 電子処方箋は、直近の処方・調剤情報参照や重複投薬等チェックに活用できる仕組みで、厚労省が導入・運用手順や申請を案内している
  • 「義務化2026」は、政策の到達点(普及目標)と法令上の一律義務化を切り分けて捉えると判断ミスが減る
  • 準備は「前提条件の棚卸し → ベンダ見積 → 申請・設定・テスト → 運用設計」の順で進める
  • 補助金は導入時期や同時導入機能で区分があり、診療所の上限例(令和7年度資料)をベースに資金計画を立てる
  • 国の補助に加え、都道府県助成との併用で自己負担が変わるため、募集要件を必ず確認する

参照ソース

  • 厚生労働省「電子処方箋」: https://www.mhlw.go.jp/stf/denshishohousen.html
  • 厚生労働省「医療情報化支援基金等(電子処方箋の補助:令和7年度資料)」: https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001208233.pdf
  • 内閣官房「医療DXの推進に関する工程表〔全体像〕」: https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/iryou_dx_suishin/pdf/suisin_zentaizo.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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