
執筆者:辻 勝
会長税理士
診療報酬改定2026歯科の初再診料と衛生士実地指導|税理士法人が解説

2026年度(令和8年度)の歯科診療報酬改定では、歯科の初・再診料の引上げと、歯科衛生士による口腔機能に関する実地指導の評価新設が検討されています。歯科医院にとっては、レセプト対応だけでなく、院内体制・記録様式・スタッフ運用まで含めた「算定の作り込み」が課題になりやすい論点です。
本記事では、中医協の検討資料(2026年1月時点)を前提に、「初再診料」と「歯科衛生士の実地指導(歯科衛生実地指導料として検索されがち)」の変更点と、改定対応の実務手順をまとめます。
診療報酬改定2026歯科の全体像
2026年度改定は、中医協(中央社会保険医療協議会)で個別項目が順次提示され、点数や要件が確定していくプロセスを取ります。したがって、現時点の資料には点数が「●●点」となっている箇所があり、最終決定は告示・通知で確認が必要です。
税理士法人 辻総合会計では、歯科医院の月次顧問で「改定のたびに算定可否が変わり、運用と記録が追いつかない」という相談を繰り返し受けます。改定対応は、点数差よりも「算定漏れ・返戻・個別指導リスク」を減らす設計が重要です。
歯科 初診料・再診料 2026の変更点
「初再診料」の見直しは何が変わるのか
検討資料では、歯科診療報酬として「初・再診料(地域歯科診療支援病院歯科初・再診料を含む。)を引き上げる」方針が示されています。対象は以下のイメージです。
- 歯科初診料(注の取扱いを含む)
- 歯科再診料(注の取扱いを含む)
- 地域歯科診療支援病院歯科初診料・再診料
- 「歯科初診料又は歯科再診料相当で評価されている項目」も同様に対応(資料上の記載)
重要なのは、点数の増減だけでなく、注(届出の有無、情報通信機器を用いた場合等)で算定区分が分かれる構造が維持される点です。改定後に点数が上がっても、届出漏れや運用ミスで「低い区分」で算定してしまうと、実入りは増えません。
初診料・再診料の「注」と院内運用の見直し
歯科初診料・歯科再診料は、注の要件(届出の有無、算定場面の整理)で分岐します。改定が入るタイミングで、次の3点を棚卸ししておくと安全です。
- 施設基準の届出状況(どの区分で算定できる前提か)
- 受付〜診療〜会計のどこで「区分判定」しているか(人に依存していないか)
- レセコンのマスタ更新後、区分選択が初期値のままになっていないか
歯科衛生実地指導料はどう変わる?(口腔機能実地指導料の新設)
検索では「歯科衛生実地指導料」と表現されることがありますが、検討資料上のポイントは、歯科衛生士による「口腔機能に関する実地指導」を推進するため、評価体系・要件を見直し、新たな評価(新設)を行うことです。
変更の骨子:口腔機能実地指導料(新設)+要件見直し
資料では、次の方向性が示されています。
- 口腔機能指導加算について、患者の口腔内状況に応じた指導を行う等、要件・評価体系を見直す
- (新)口腔機能実地指導料(●●点)を新設
- 施設基準(「別に厚生労働大臣が定める施設基準」)が前提になる想定
つまり、「歯科衛生士が実地指導をした」だけでは足りず、誰が・何を・どの患者に・どの手順で・どの記録を残したか、が算定の成否を分ける設計になります。
実地指導で求められる記録の考え方
実地指導系は、将来的に個別指導等で「実施根拠」を見られやすい領域です。新設項目への対応としては、最低限次を揃える発想が必要です。
- 対象患者の該当性(口腔機能低下症等、院内ルールでの該当判断)
- 指導の具体(説明した内容、実施した訓練・セルフケアの指示)
- 実施者(歯科衛生士)、歯科医師の関与(指示・確認の取り方)
- 文書提供の有無(提供する場合は様式統一)
レセプト上は1行でも、カルテ側は「第三者が追える粒度」にしておくのが安全です。
2026改定の比較表:初再診料と実地指導の整理
現時点で公開されている資料の範囲で、論点を比較すると次のとおりです(点数は資料上「●●」となっている箇所があります)。
| 項目 | 現行の考え方(一般論) | 2026改定(検討資料ベース) |
|---|---|---|
| 歯科初診料・歯科再診料 | 初診・再診の基本評価。注で区分分岐がある | 初・再診料(地域歯科診療支援病院分含む)の引上げ方針。相当項目も同様に対応 |
| 歯科衛生士の実地指導(口腔機能) | 既存の加算等で評価される領域が中心 | 歯科衛生士による口腔機能の実地指導を推進し、(新)口腔機能実地指導料を新設。評価体系・要件を見直し |
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歯科医院の改定対応:算定準備の手順
改定当日にバタつく医院ほど、「マスタ更新はしたが、運用と記録が変わっていない」状態になりがちです。実務は次の順で整えると事故が減ります。
Step 1: 対象項目の洗い出し(初診・再診/実地指導)
- 自院の算定実績(初診・再診の区分、衛生士の指導系算定)を月次で抽出
- 返戻・査定の履歴がある項目を別枠で管理
Step 2: 施設基準・届出の棚卸し
- 初診・再診の注で「届出の有無」が関係する区分を確認
- 新設予定の実地指導料が「施設基準前提」になり得るため、届出要件の公表後すぐ動けるよう準備
Step 3: 院内オペレーション設計(誰が判定し、誰が記録するか)
- 受付で判定する項目、診療室で判定する項目を分ける
- 歯科衛生士の実地指導は「実施→記録→歯科医師確認」の流れを固定
Step 4: 記録様式と文書の整備
- テンプレ(SOAP、指導記録、文書提供様式)を院内で統一
- 「算定要件の文言」をそのまま写すのではなく、実施内容が具体になるよう設計
Step 5: レセコン・電子カルテの連携確認
- マスタ更新後、初期値が意図した区分になっているか確認
- 算定漏れチェック(前月比、初診率、指導系の件数)を月次でルーチン化
注意点:返戻・個別指導リスクを減らす視点
点数アップより「算定の再現性」を優先する
初再診料は件数が多い分、区分選択ミスの影響が大きくなります。改定対応で優先すべきは、点数差の最大化ではなく、算定の再現性(誰が入力しても同じ)です。
衛生士の実地指導は「実施根拠」を残す
新設項目は、現場が慣れるまで解釈がブレやすく、返戻・確認が入りやすい領域です。歯科衛生士が行う内容を、医院として「対象」「メニュー」「記録」を標準化しておくと、算定と品質が同時に安定します。
よくある質問
Q: 歯科初診料・歯科再診料の点数は、2026年は何点になりますか?
A:
2026年1月時点の中医協資料では「引き上げる」方針が示される一方、点数が「●●点」として提示されている箇所があります。最終点数は、告示・通知や確定版の点数表で確認してください。Q: 「歯科衛生実地指導料」は、現行のどの項目が変わるイメージですか?
A:
検討資料では「歯科衛生士による口腔機能に関する実地指導」を推進するため、口腔機能指導加算の評価体系・要件を見直し、(新)口腔機能実地指導料を新設する方向性が示されています。院内では、対象判定と指導記録の標準化が実務上の要点です。Q: 改定対応で最初にやるべきことは何ですか?
A:
まずは自院の算定実績から「初再診料の区分」と「衛生士の指導系算定」を洗い出し、届出状況と運用フロー(誰が判定し、誰が記録するか)を固定してください。マスタ更新だけでは算定は安定しません。Q: 税理士に相談するメリットはありますか?
A:
診療報酬そのものの解釈は公的資料と算定ルールが前提ですが、税理士は「月次試算表・人件費・生産性」とセットで改定影響を見られます。点数の増減だけでなく、衛生士配置や教育コストを含めた収益構造の見直しに役立ちます。まとめ
- 2026年度改定(検討資料)では、歯科の初・再診料の引上げが示されている
- 点数が「●●点」の箇所があり、最終確定は告示・通知で確認が必要
- 歯科衛生士の口腔機能に関する実地指導を推進し、(新)口腔機能実地指導料の新設が示されている
- 改定対応は、マスタ更新より先に「届出・運用・記録様式」の標準化が重要
- 返戻・指導リスクを減らすには、算定の再現性と実施根拠の記録設計が鍵
参照ソース
- 厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第645回)議事次第」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_69484.html
- 厚生労働省「総-2 個別改定項目について(その2)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001643628.pdf
- 厚生労働省「総-2 個別改定項目について(その1)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001639439.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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