
執筆者:辻 勝
会長税理士
診療報酬改定2026|皮膚科処置点数と美容影響|税理士が解説

診療報酬改定2026で皮膚科は何が変わる?
診療報酬改定2026(令和8年度)で皮膚科が最初に押さえるべき点は、改定が「令和8年6月施行」で進むこと、そして改定の狙いが「物価・賃金上昇への対応」「人材確保」「医療DX・効率化」に強く置かれていることです。
皮膚科は外来中心で、処置(創傷処置・皮膚腫瘍の小手術・凍結療法・光線療法等)や検査が収益の柱になりやすい一方、レーザー等の機器投資や美容(自由診療)も絡みます。つまり「点数そのもの」だけでなく、算定要件や運用(記録・同意・算定ロジック)の変更が経営インパクトを左右します。
税理士法人 辻総合会計では、医療機関の会計・資金繰り・人件費設計を支援する実務の立場から、改定時に「点数改定よりも運用変更で取り漏れ・返戻が増える」ケースを多く見てきました。本記事では、皮膚科の処置点数を中心に、レーザーと美容医療まで含めて、影響と対策を体系的に整理します。
皮膚科の処置点数とは?改定で見直されやすいポイント
「処置」は点数より要件で差が出る
皮膚科の処置は、1回あたりの点数が大きく跳ねない一方で、以下のような要件・記録が変わると、算定可否や算定回数に影響します。
- 算定対象となる病名や重症度の整理(軽症の包括化、評価の適正化など)
- 同一日・同一部位・同一手技の重複算定制限
- 写真記録・計測・創部管理の記載要件の厳格化
- 長期処方・リフィル処方の推進に伴う外来運用の再設計(再診回数、処置頻度との整合)
改定資料では、賃上げ・物価対応と同時に「効率化・適正化」も掲げられています。皮膚科では、処置の「実施実態」と「記録の標準化」が焦点になりやすいと考えておくと、準備の優先順位がつけやすくなります。
皮膚科で影響が出やすい処置の代表例
改定で影響を受けやすいのは、概ね次のような領域です(実際の増減は、告示・通知・点数表で最終確認が必要です)。
- 創傷処置(外傷、褥瘡、潰瘍等):評価のメリハリ、写真・測定等の要件
- 凍結療法・電気焼灼等:算定回数や対象の明確化
- 皮膚腫瘍の小手術:病理・検査との関係、算定の組み合わせ
- 光線療法:適応・実施体制・算定頻度
- 感染対策や医療安全に紐づく評価:外来でも要件化しやすい
ポイントは「どれが上がるか」よりも、取りこぼさない算定設計を院内で作れるかです。皮膚科は処置数が多く、1件あたり数十円〜数百円の差でも、月次で大きな差になります。
レーザー治療はどうなる?保険診療と機器投資の見方
レーザーは「技術評価」だけでなく「デバイス評価」の文脈もある
令和8年度改定の基本方針では、医療DX、イノベーション、ドラッグ/デバイス・ラグ/ロスといった文脈が明示されています。皮膚科領域でも、レーザー等は「技術」「機器」「適応」「安全管理」がセットで論点になりやすい領域です。
実務上は、点数改定よりも次の変化が重くなります。
- 施設基準・研修・安全管理(レーザー機器管理、合併症対応、説明同意の型)
- 算定要件の具体化(適応、回数、部位、併用算定の可否)
- 電子カルテのテンプレ運用(写真・同意書・施術記録の標準化)
レーザー導入クリニックが見るべきKPI
レーザーが保険・自費どちらに寄っていても、改定期にはKPIを再点検します。
- 保険:施術件数、算定漏れ率、返戻率、同日算定のルール逸脱件数
- 自費:予約単価、カウンセリング成約率、稼働率、原価(消耗品・保守)比率
- 共通:スタッフ工数(説明・記録)、クレーム率、広告表現の修正件数
特に保険のレーザー等は、「適応外」や「説明不足」がトラブルの火種になります。点数表の変更に合わせて、同意書・説明文書も更新するのが安全です。
美容医療への影響は?保険診療点数改定との接点
美容は点数改定の“直接対象外”でも、間接影響が大きい
美容医療(自由診療)は診療報酬の点数表で価格が決まるわけではありません。それでも、令和8年度改定が掲げる「賃上げ」「物価対応」「人材確保」は、美容クリニック・美容併設皮膚科にとってコスト構造へ直撃します。
また、保険診療と美容を併設する皮膚科は、保険と自費の線引きがより重要になります。
- 同一日の算定整理(保険診療と自費の会計・同意・記録の分離設計)
- スタッフ配置(保険外来の回転と美容枠の両立)
- 価格改定(材料費・人件費の上昇を反映したメニューの見直し)
保険(処置)と美容(自由診療)の違いを一枚で整理
皮膚科の経営判断は、「保険を伸ばすか」「美容を伸ばすか」ではなく、両者の運用差を踏まえた設計が要です。
| 観点 | 保険診療(処置点数) | 美容医療(自由診療) |
|---|---|---|
| 価格決定 | 点数表・告示・通知に従う | クリニックが設定 |
| 収益の変動要因 | 算定要件、返戻、同一日算定 | 集患、成約率、稼働率 |
| 必須管理 | 病名整合、記録、算定ルール | 同意、説明、クレーム対応 |
| 主要リスク | 算定誤り・返戻・指摘 | 広告表現・説明不足・返金 |
| 改定の影響 | 点数・要件が直接影響 | 人件費・物価・運用が間接影響 |
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皮膚科クリニックの実務対応:改定までにやるべきこと
Step 1: 公的資料の更新点を「論点→自院影響」で翻訳する
中医協資料、基本方針、改定概要から、皮膚科に関係する論点(外来、処置、DX、適正化)を抜き出し、自院の算定項目に紐づけます。
Step 2: レセコン・電子カルテの改修スケジュールを逆算する
令和8年6月施行を前提に、マスタ更新、テンプレ改修、同意書改訂、教育日程を設定します。4月・5月の繁忙を加味し、前倒しで着手するのが現実的です。
Step 3: 算定ルールを「チェックリスト化」して属人性を落とす
処置は担当者の経験に依存しやすい領域です。算定要件、写真記録、回数制限、同日算定をチェックリスト化し、取り漏れと返戻を同時に減らします。
Step 4: 収益影響を月次で見える化し、価格・人員を調整する
改定直後は変化が混在します。保険は返戻率、自費は成約率・稼働率を月次で見える化し、必要なら美容メニューの価格や予約枠、人員配置を見直します。
よくある質問
Q: 皮膚科の処置点数は「必ず下がる/上がる」と考えてよいですか?
A:
一律には言えません。改定の影響は点数の上下よりも、算定要件・併算定・回数制限・記録要件の変更で出ることが多いです。まずは自院の算定上位項目について、通知・点数表で要件差分を確認してください。Q: レーザー治療を保険と美容の両方で扱っています。何を優先して整備すべきですか?
A:
優先順位は「線引き(保険適用範囲の説明)」「同意と記録」「会計分離(保険と自費の整理)」です。これらが曖昧だと、返戻・患者トラブル・広告リスクが同時に顕在化します。改定期に書式・テンプレを統一すると効果的です。Q: 美容の価格改定は診療報酬改定と同じタイミングで行うべきですか?
A:
必ずしも同時である必要はありません。ただし、人件費・材料費の上昇局面では、価格と提供体制(枠数・工数)を同時に見直さないと利益が残りにくくなります。保険の運用変更対応と並行して、KPI(稼働率・成約率・原価率)で判断するのが安全です。まとめ
- 診療報酬改定2026(令和8年度)は6月施行で進むため、システム改修と教育の逆算が重要
- 皮膚科は点数の上下より、処置の算定要件変更で取り漏れ・返戻が増えやすい
- レーザーは安全管理・同意・記録の整備が収益とリスクを左右する
- 美容医療は直接の点数改定対象外でも、賃上げ・物価対応の間接影響が大きい
- 改定対応は「論点整理→マスタ更新→チェックリスト化→月次見える化」の順で進める
参照ソース
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の基本方針」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001618046.pdf
- 厚生労働省「診療報酬改定について(令和7年12月24日)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001620952.pdf
- 厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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