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クリニック向けコラム
作成日:2025.07.22
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

医師の専従者給与の注意点|配偶者・家族給与を税理士が解説

8分で読めます
医師の専従者給与の注意点|配偶者・家族給与を税理士が解説

医師の専従者給与とは、個人開業医が生計を一にする配偶者・親族に支払う給与を、一定の要件のもとで必要経費にできる制度です。家族へ給与を払っていても、要件を外すと経費否認や追徴に直結します。特に「専ら従事」「届出」「金額の相当性」が争点になりやすく、クリニックの実務設計が重要です。

医師の専従者給与とは何か

個人開業医(事業所得)が、配偶者や子などの親族に給与を支払う場合、原則として必要経費になりません。これを緩和する仕組みが、青色申告者の青色事業専従者給与、白色申告者の事業専従者控除です。

医師のクリニックでは、受付・会計、レセプト補助、物品発注、採用・労務、簡易な経理など、業務が多岐にわたります。親族が実態として従事しているなら制度活用は合理的ですが、「家計の振替」「名義だけ」になっていると税務調査で弱くなります。

青色専従者給与の要件と届出期限

要件の全体像(4点)

青色事業専従者給与が必要経費として認められるための主要要件は次のとおりです。

  • 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族で、年齢15歳以上
  • その年を通じて6か月超の期間、事業に専ら従事
  • 「青色事業専従者給与に関する届出書」を期限までに提出
  • 届出に記載した方法・金額の範囲内で支給し、労務の対価として相当な金額

「専ら従事」は、他にフルタイム勤務がある場合などは満たしにくい要件です。たとえば配偶者が別の勤務医として常勤勤務している、他社で週5日勤務している、といったケースは、専従性の説明が難しくなります。

届出の期限

届出書の提出期限は、原則としてその年の3月15日です。開業後に新たに専従者がいることとなった場合は、その日から2か月以内が期限となります。届出がない年は原則経費にできません。また、増額など内容変更がある場合は変更届の提出が必要です。

ここがポイント
青色事業専従者として給与の支払を受ける人は、原則として同一生計配偶者や扶養親族にはなれません。配偶者控除・扶養控除との関係まで含めて、世帯全体で有利不利を確認しましょう。

専従者給与の「金額」の決め方と否認リスク

「相当額」の考え方(税務調査で見られる点)

専従者給与は、届出しても金額が過大なら、その過大部分は必要経費になりません。実務上は次の観点で説明可能性を作ります。

  • 職務内容(受付・会計・レセプト補助など)と責任の範囲
  • 従事日数・時間(週何日、何時間)
  • 同規模・同地域の相場、院内の他スタッフ賃金との整合
  • クリニックの収益規模(利益が出ていないのに高額などは不自然)

当法人(税理士法人 辻総合会計)では、クリニックの記帳・申告支援を通じて、専従者給与が否認されやすいパターンとして「業務実態の証拠が薄い」「支払が不規則」「金額が相場から乖離」を繰り返し見ています。金額だけでなく、証拠設計がセットです。

否認されやすい典型例

  • 口座振替のように、事業主名義口座から生活費としてまとめて移しているだけ
  • タイムカード・業務日報がなく、説明が「手伝っている」程度
  • 届出額より多く支給している、または届出の支給期と違う形で支給している
  • 受け取る側が別の勤務で多忙で、専従性が形式的

クリニックでの実務:源泉徴収・年末調整・書類

専従者給与は「給与」です。支払う側(クリニック)は源泉徴収義務者として、原則、給与支払時に所得税・復興特別所得税を控除し、翌月10日までに納付します。毎月の源泉税額は、国税庁の源泉徴収税額表(令和7年分など)で確認します。

また、年末調整・源泉徴収票の交付、法定調書合計表の提出など、通常の従業員給与と同様の運用が必要です。税務調査では「実際に支払っているか」「給与台帳があるか」がまず確認されます。

ここがポイント
2026年(令和8年)1月1日以後に開業した個人事業主は、源泉徴収関係の届出の扱いが変わる点があります。開業届の提出有無や、給与支払開始時の手続を含めて、所轄税務署・顧問税理士に確認してください。

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青色専従者給与・白色控除・通常給与の違い

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区分経費算入・控除主な要件向いているケース
青色事業専従者給与支給した「相当額」を必要経費専ら従事、届出、届出額以内で支給親族が受付等で実質的に常勤に近い
事業専従者控除(白色)配偶者は上限86万円、親族は上限50万円等(計算式あり)専ら従事、申告書に記載青色にしていないが親族が従事している
通常の従業員給与原則として必要経費親族が「生計を一にしない」等の前提が必要になりやすい世帯分離など事実関係が明確な場合

「配偶者が週2日だけ受付を手伝う」「子が長期休暇のみ手伝う」など、専従性を満たさない場合に、安易に専従者給与を計上すると否認リスクが上がります。制度選択は、勤務実態と家計の実態を前提に判断します。

専従者給与を始める手順

Step 1: 仕事内容と勤務実態を定義する

担当業務、勤務日・時間、責任範囲を文章化します。後日の説明資料にもなります。

Step 2: 専従者給与の金額・支給日を決める

同地域相場、院内賃金、収益規模から「相当額」を設計し、支給日を固定します。

Step 3: 届出書を期限内に提出する

3月15日まで(新規の場合は2か月以内)に届出書を提出し、増額時は変更届も用意します。

Step 4: 給与計算・源泉徴収・証憑を整備する

給与明細、振込記録、給与台帳、タイムカード(または業務日報)を整備し、源泉所得税を期日までに納付します。

よくある質問

Q: 配偶者が他院でパート勤務しています。青色専従者給与にできますか? ▼

A:

勤務時間・日数によります。「その事業に専ら従事」が要件のため、他の勤務が主である場合は要件を満たしにくいです。クリニックでの従事実態(6か月超、実働、責任範囲)を整理したうえで、専従者給与にせず、別の設計(役割分担や業務委託等)を検討します。
Q: いくらまでなら専従者給与として安全ですか? ▼

A:

一律の上限はなく、「労務の対価として相当」と説明できる範囲です。職務内容・勤務時間・相場・院内賃金との整合が重要で、過大部分は経費になりません。金額単体より、根拠資料(業務記録、給与規程、比較データ)を揃えることが実務上の安全策です。
Q: 届出を出し忘れました。年末にまとめて払えば経費になりますか? ▼

A:

届出がない年は原則として専従者給与を必要経費にできません。届出額・支給期と異なる支給は否認リスクも高くなります。気付いた時点で、翌年以降の届出と運用整備を優先し、過年度は修正の要否を専門家と検討してください。

まとめ

  • 医師の専従者給与は、家族への給与を経費化できる一方、要件を外すと否認リスクが高い
  • 争点は「専ら従事」「届出期限」「届出額の範囲」「相当額」の4点
  • 金額は相場と実態で根拠化し、給与台帳・業務記録・振込証跡を整備する
  • 源泉徴収や年末調整など、給与の実務を通常の従業員と同水準で運用する
  • 配偶者控除・扶養控除との関係も含め、世帯全体で最適化する

参照ソース

  • 国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2075.htm
  • 国税庁「A1-11 青色事業専従者給与に関する届出手続」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/12.htm
  • 国税庁「No.2502 源泉徴収義務者とは」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2502.htm
  • 国税庁「令和7年分 源泉徴収税額表」: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2024/02.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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