
執筆者:辻 勝
会長税理士
フリーランス確定申告1年目の失敗5選と節税|税理士が解説

フリーランス1年目の確定申告で失敗しないための結論
フリーランス1年目の確定申告で最も多い失敗は、「記帳と証憑(領収書等)の整理が遅れ、期限直前に数字が合わなくなる」ことです。初心者ほど、売上・経費・口座・カードの流れが混在し、気づかないうちに漏れや重複が起きます。
初めての確定申告で失敗したくない方は、まず年間の“お金の流れ”を一本化し、次に青色申告の可否と帳簿の作り方を固めるのが近道です。税理士法人 辻総合会計でも、1年目のご相談は「やり方」そのものより、準備設計でつまずくケースが目立ちます。
失敗1:売上の計上漏れ・二重計上が起きる(入金=売上ではない)
「入金があった月を売上月にする」「請求書の発行漏れに気づかない」など、売上の計上基準が曖昧だと、売上がズレます。フリーランスは取引先ごとに締日や入金日が違うため、入金ベースにすると漏れやすくなります。
よくあるパターン
- 請求書を出したが、入金が翌月なので未計上にした
- 複数の決済手段(銀行・決済サービス)で入金を見落とした
- 同じ売上を「請求書」と「入金」の両方で二重計上した
対策(最低限これだけ)
- 売上は「請求(役務提供)ベース」で一覧化し、入金は突合(チェック)に使う
- 取引先別に「請求日・請求額・入金日・入金額」を1シートで管理する
- 確定申告書等作成コーナーやe-Taxを使う場合でも、入力前に売上一覧の突合を先に終える(作成コーナーは案内に沿って申告書等を作成・送信できます)
失敗2:経費の入れ過ぎ・入れ忘れ(必要経費の判断が曖昧)
経費は「事業のために必要な支出」ですが、初心者が最も迷うのがここです。プライベート支出を混ぜると否認リスクが上がり、逆に経費にできるものを漏らすと税負担が増えます。
必要経費は、単に「支払ったから経費」ではなく、年末までに債務が確定しているかなどの考え方もあります。
ありがちな誤解
- 「クレカで払った日=経費計上日」と思い込む
- 仕事にも使う支出を“全部”経費にしてしまう
- 交通費・サブスク・外注費など、細かい支出を拾いきれない
対策(判断の軸を固定する)
- 「事業関連性」「金額の妥当性」「証憑の有無」の3点で判断する
- 経費の科目(勘定科目)を先に決め、迷う支出はメモを残す
- 領収書が出ない支出(アプリ課金等)は、利用明細・請求メール・画面保存で補強する
失敗3:家事按分が雑で説明できない(自宅・スマホ・車など)
フリーランス1年目は自宅兼事務所が多く、家賃・光熱費・通信費などが混ざりやすい領域です。家事按分は認められる一方、根拠が弱いと指摘を受けやすいポイントでもあります。
典型例(つまずきやすい項目)
- 家賃・電気代・ネット回線・スマホ料金
- 自家用車のガソリン代・高速代
- 自宅の備品(机・椅子・プリンター等)
対策(根拠の作り方)
- 面積(仕事部屋の㎡/住居全体)または使用時間(業務利用割合)など、ルールを1つに決める
- ルールを年内で一貫させ、翌年も同じロジックで継続する
- 数値根拠(平面図・利用ログ・稼働時間の目安)を残しておく
家事按分は「正解」よりも「説明可能性」が重要です。税理士法人 辻総合会計でも、按分率そのものより、根拠資料の有無で対応工数が大きく変わります。
失敗4:青色申告の準備が間に合わない(申請期限と帳簿の要件)
節税目的で青色申告を選びたいのに、「青色申告承認申請書の提出期限を過ぎていた」「帳簿が要件を満たさず控除が取れない」など、制度設計で失敗するケースがあります。
青色申告承認申請は、原則として申告をしようとする年の3月15日まで、または開業後2か月以内など期限があります。
青色申告(控除)の基本(押さえるべきポイント)
青色申告特別控除は10万円・55万円・65万円があり、65万円は要件が上がります。特に65万円は、一定の要件(例:e-Taxで期限内申告、または電子帳簿保存の要件を満たす等)を満たす必要があります。
「複式簿記が必要」「貸借対照表・損益計算書の作成が必要」など、帳簿の作り方そのものが節税と直結します。
対策
- 開業したら早めに「青色申告承認申請」を検討し、期限を確認する
- 会計ソフトを使う場合でも、勘定科目・摘要ルールを最初に統一する
- 65万円控除を狙うなら、e-Taxで期限内提出できる環境(マイナンバーカード方式等)を前倒しで準備する
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失敗5:申告直前にe-Tax・作成コーナーで詰まる(入力前の準備不足)
初めての確定申告では、「入力作業」より「入力する数字が固まっていない」ことがボトルネックになります。提出直前に慌てると、控除漏れ・添付漏れ・数字の取り違えが起きます。
確定申告書等作成コーナーは案内に沿って申告書等を作成できますが、素材(集計)が整っていないとミスが増えます。
対策:提出までの手順をテンプレ化する(フリーランス確定申告のやり方)
Step 1: 取引の入口を一本化する(口座・カード・請求)
事業用の口座・カードを決め、入出金をできる限り集約します。混在している場合は、今年分だけでも取引明細をCSVで落として整理します。
Step 2: 売上を確定する(請求と入金の突合)
請求書・売上管理表をベースに、入金を照合します。決済サービスの入金遅延・手数料控除もここで調整します。
Step 3: 経費を分類する(証憑→科目→事業関連性)
領収書・請求書・明細を科目別にまとめ、迷うものは「メモ」を添付します。家事按分の対象は別枠に分けます。
Step 4: 決算整理をする(減価償却・未払・前払など)
高額備品は一括経費にならないことがあるため、固定資産・減価償却の扱いを確認します。年をまたぐ支出(前払・未払)の整理も行います。
Step 5: 作成コーナー/e-Taxで申告書を作り、提出する
マイナンバーカード方式などログイン方法を事前に確認し、入力後は控除・添付・数値の整合性を最終チェックします。
節税のコツ:1年目でも実行しやすい優先順位
節税は「無理に経費を増やす」ことではなく、制度を取りこぼさないことが基本です。1年目は次の優先順位で整理すると実務が回ります。
| 優先順位 | 施策 | 効果の方向性 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 1 | 青色申告の活用(10万/55万/65万) | 所得控除で税負担を抑える | 申請期限・帳簿要件・期限内提出が重要 |
| 2 | 経費の漏れ防止(サブスク・外注・交通) | 課税所得を適正化 | 証憑・事業関連性の説明が必要 |
| 3 | 家事按分の整備(家賃・通信・光熱) | 継続的に効く | 根拠(面積・時間等)を残す |
| 4 | 高額備品の整理(固定資産・減価償却) | 年ごとの負担を平準化 | 一括経費可否の判断が必要 |
| 5 | 提出方法の最適化(e-Tax等) | 事務負担の圧縮 | 事前準備(カード・暗証番号等)が必要 |
よくある質問
Q: フリーランス1年目でも青色申告にできますか?
A:
可能です。青色申告を希望する場合は「青色申告承認申請書」を期限までに提出する必要があります。一般に、申告をしようとする年の3月15日まで、または開業後2か月以内などのルールがあるため、開業時点で確認しておくと安心です。Q: レシートがない支出は経費にできませんか?
A:
原則は証憑が望ましいですが、レシートが出ない支出もあります。その場合は、クレジット明細、請求メール、利用履歴などで支出事実と事業関連性を説明できるように整理してください。経費は「支払ったか」だけでなく、年内に債務が確定しているかなどの考え方も重要です。Q: e-Taxで確定申告するには何が必要ですか?
A:
マイナンバーカード方式を利用する場合、マイナンバーカードを事前登録し、暗証番号(数字4桁等)を用いてログインする方法があります。提出直前に設定で詰まらないよう、早めにログイン手順を確認しておくことをお勧めします。まとめ
- 1年目の最大の失敗は、売上・経費・証憑の整理が遅れて数字が固まらないこと
- 売上は入金ベースにせず、請求と入金の突合で漏れ・重複を防ぐ
- 経費は事業関連性・妥当性・証憑の3点で判断し、迷いはメモで残す
- 家事按分は「説明可能性」が重要。按分ルールと根拠を一貫させる
- 青色申告は申請期限と帳簿要件がカギ。e-Tax等の準備は前倒しで行う
参照ソース
- 国税庁「確定申告書等の作成|令和7年分 確定申告特集」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/kakushin-sakusei/
- 国税庁「マイナンバーカード方式について(e-Tax)」: https://www.e-tax.nta.go.jp/kojin/mycd_login.htm
- 国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm
- 国税庁「No.2072 青色申告特別控除」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
- 国税庁「No.2210 必要経費の知識」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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