
執筆者:辻 勝
会長税理士
電子カルテ情報共有サービス2026|経過措置延長と対応

電子カルテ情報共有サービス2026の結論|導入期限と経過措置
電子カルテ情報共有サービスは、「全国医療情報プラットフォーム」の一部として、医療機関・薬局等で患者の情報を連携する仕組みです。医療DX推進体制整備加算等の要件に関わる経過措置は、令和8年(2026年)5月31日まで延長されました。つまり、2026年は「猶予がある年」ではなく、期限から逆算して導入準備を完了させる年です。院内のシステム更改・ベンダ調整・運用設計まで含めて、今から計画化しないと間に合わないケースが出ます。
電子カルテ情報共有サービスとは|何を共有する仕組みか
電子カルテ情報共有サービスは、全国の医療機関や薬局などで患者の電子カルテ情報を共有するための仕組みです。提供される機能は大きく次の枠組みで整理すると理解しやすいです。
- 診療情報提供書を電子で共有(退院時サマリーは添付扱い)
- 各種健診結果の閲覧(保険者・医療機関等・本人等)
- 患者の6情報の閲覧(全国の医療機関等・本人等)
- 患者サマリーの閲覧(本人等)
ポイントは、単に「院内の電子カルテをクラウド化する」話ではなく、全国医療情報プラットフォームに接続して標準化された形で情報をやり取りする構想だという点です。したがって、導入は「電子カルテの買い替え」だけでなく、インフラ・セキュリティ・運用(誰がいつ閲覧し、どう記録するか)まで含めたプロジェクトになります。
2026年の導入スケジュール|経過措置延長と「導入期限」
経過措置はいつまで延長されたか(導入期限の考え方)
医療DX推進体制整備加算および在宅医療DX情報活用加算における「電子カルテ情報共有サービス」要件の扱いは見直され、経過措置期間が令和8年5月31日まで延長されました。
この期限は「その日までにサービス活用体制が整っていればよい」という意味合いで語られがちですが、実務では次の“前倒し期限”を別に置く必要があります。
- ベンダ選定・見積確定:遅くとも導入の6〜9か月前
- 機器・回線・院内端末の整備:3〜6か月前
- 操作教育・運用テスト:1〜2か月前
- 運用開始:期限より十分前(トラブル対応のバッファ確保)
2026年の「リリース予定」も見落とさない
厚生労働省の公開資料では、2026年3月リリース分、2026年10月リリース予定分といった更新計画に関する情報も示されています。つまり、2026年は制度面だけでなく、システム面でも変更が起こりやすい年です。システムベンダに「いつ、どの版に対応するか」を確認し、院内の運用・マニュアルも更新前提で設計しておくのが安全です。
経過措置延長の背景|なぜ延びたのか、何に注意すべきか
経過措置が延長された背景として、公的資料では次の趣旨が示されています。
- 本格稼働の前提となる制度(医療法等改正法案)の成立・施行の状況
- 電子カルテ情報共有サービスに関する対応状況を踏まえた見直し
ここで注意したいのは、「延長=導入不要」ではない点です。診療報酬の算定要件に関わる論点である以上、期限後は要件を満たせないことで算定可否や運用に影響が出る可能性があります。経過措置を“先送りの理由”にせず、“導入計画を確定する猶予”として使うのが現実的です。
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導入までの実務ステップ|院内で何を、どの順で進めるか
ここからは、院長・事務長・システム担当が押さえるべき進め方を、実務順に整理します。
Step 1: 現状把握(電子カルテ・回線・端末・セキュリティ)
院内の電子カルテ種類、連携機能の有無、端末台数、ネットワーク構成、ログ管理状況を棚卸しします。特に、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインへの対応状況(委託先管理、アクセス権、バックアップ等)は早期に点検してください。
Step 2: ベンダに確認する(対応時期・費用・前提条件)
確認事項は次の3点に絞ると交渉が進みます。
- 電子カルテ情報共有サービスへの対応予定(版・時期)
- 改修費用と保守費用の増減
- 院内で必要になる追加機器・設定作業
Step 3: 申請・設定・運用テスト(ポータル手順に沿う)
利用申請、初期設定、運用テスト、運用開始日登録など、手続きは所定の手順で行います。システム設定は「技術的にできる」だけでなく、「受付〜診察〜会計の業務フローに無理がない」状態まで落とし込むことが重要です。
Step 4: 運用ルール化(誰が閲覧し、どう記録するか)
“閲覧できる”はスタート地点です。実運用では、次を必ずルールにします。
- 閲覧対象(どの患者、どの場面で見るか)
- 記録(閲覧した事実・所見の反映)
- トラブル時(閲覧不可、誤登録、患者説明)
比較表|“経過措置中”と“期限後”で何が変わるか
| 観点 | 経過措置中(〜令和8年5月31日) | 期限後(令和8年6月1日以降の想定) |
|---|---|---|
| 電子カルテ情報共有サービス要件 | 期限までに体制整備を進める猶予がある | 要件未達だと診療報酬算定や体制評価に影響が出る可能性 |
| 院内の優先順位 | 更改・改修計画を確定しやすい | 駆け込み導入で費用・運用負荷が増えやすい |
| ベンダ調整 | 比較検討・見積調整の余裕 | ベンダ側の混雑で納期遅延リスク |
※「期限後」の影響は、個別の施設基準・通知改正の内容により異なります。必ず最新の通知・資料で確認してください。
よくある質問
Q: 電子カルテ情報共有サービスの“導入期限”はいつですか?
A:
医療DX推進体制整備加算等に関わる電子カルテ情報共有サービス要件の経過措置は、令和8年(2026年)5月31日まで延長されています。実務では、ベンダ改修や運用テスト期間を見込んで、数か月以上前倒しで稼働させる計画が安全です。Q: 経過措置が延長されたなら、2026年は何もしなくてよいですか?
A:
いいえ。延長は「体制整備の猶予」であって、要件が消えるわけではありません。院内の更改計画、ベンダ対応時期、職員教育まで含めて、2026年内に“運用できる状態”へ持っていく必要があります。Q: まず何から着手すべきですか?
A:
最初は「現状把握」と「ベンダ確認」です。特に、対応予定時期(2026年中のどの版に対応するか)と費用、院内追加機器の有無を先に押さえると、導入スケジュールと予算化が一気に現実になります。Q: 小規模クリニックでも運用が回りますか?
A:
回りますが、属人化させない設計が必要です。閲覧ルール、トラブル時の手順、ログ点検を最小限の運用に落とし込み、月次の点検だけは定例化するのが現場負荷とリスクのバランスが良い方法です。まとめ
- 電子カルテ情報共有サービスは全国医療情報プラットフォームの一部で、医療機関・薬局等で情報共有する仕組み
- 医療DX推進体制整備加算等に関わる電子カルテ情報共有サービス要件の経過措置は令和8年5月31日まで延長
- 2026年はリリース計画も含め変更が起こりやすく、ベンダ対応時期の確認が必須
- 導入は「システム」だけでなく「運用ルール化」までが成果物
- 駆け込み導入を避けるため、前倒しの計画と定例点検(権限・ログ・マニュアル)が有効
参照ソース
- 厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/denkarukyouyuu.html
- 厚生労働省「個別改定項目について(医療DX推進体制整備加算等の要件の見直し)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001521281.pdf
- 厚生労働省「医療DX推進体制整備加算等の要件の見直しについて」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001521280.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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