
執筆者:辻 勝
会長税理士
眼科開業の資金・高額機器と収益計画|税理士が解説

眼科クリニック開業とは|結論は「機器投資と症例設計」が収益を左右します
眼科開業は、内科などに比べて高額機器への依存度が高く、診療メニュー(外来中心か、白内障手術まで行うか)で資金規模と利益構造が大きく変わります。誰にとって何が問題かというと、開業医にとっては「機器の買い方を誤ると返済負担が固定費化し、黒字でも資金不足になり得る」点が最大のリスクです。
本記事では、眼科の開業資金の内訳、代表的な医療機器、そして外来型・手術型の収益シミュレーションを、税務・資金繰りの視点で具体化します。
眼科クリニック開業資金の目安|資金計画は「初期投資」と「運転資金」を分ける
眼科の資金計画は、(1)内装・設備、(2)医療機器、(3)運転資金(最低6か月)に分解すると、資金ショートの原因が見えやすくなります。特に眼科は、OCTやオートレフ/ノンコン、視野計など、診療品質を担保する機器が多く、初期投資が膨らみがちです。
開業資金の主な内訳(例)
- 物件取得・内装(テナント):坪数と導線(検査室の数)で大きく変動
- 医療機器一式:購入・リース・中古の組合せが現実的
- IT・医療DX:レセコン、電子カルテ、オンライン資格確認、予約・問診
- 採用・立上げ費:求人広告、研修、開院前の人件費
- 運転資金:家賃・人件費・リース料・返済の「固定費6か月」が目安
眼科の医療機器|必須機器と「収益に効く」機器の考え方
眼科機器は、(A)初診・再診の回転を支える検査機器、(B)症例の質を上げる高度検査、(C)手術・処置の提供能力、の3層で整理すると投資判断がしやすくなります。
まず押さえる「必須」機器(外来の基盤)
- スリットランプ、眼圧計、検眼鏡等(基本診察)
- オートレフ/ノンコン、レンズメーター等(屈折・眼鏡関連)
- 視力検査一式、眼底カメラ(症例・導線次第で構成を調整)
投資対効果が出やすい代表例(症例設計に直結)
- OCT:網膜疾患・緑内障疑い等の評価で活用範囲が広い
- 視野計:緑内障の経過観察で継続的需要が生まれやすい
- 光学式眼軸長測定など:白内障・屈折矯正領域に接続しやすい
規制・保守の観点
医療機器はリスクに応じた区分(クラス分類)や保守の考え方があり、導入後は点検・校正・保守契約が固定費になります。価格だけでなく、保守体制とダウンタイム(故障時の診療停止)まで含めて選定するのが現実的です。
機器は「購入・リース・中古」どれが得?|税務とキャッシュフローで比較
眼科開業で最も多い失敗は、「黒字なのにキャッシュフローが苦しい」状態です。原因は、返済+リース料+人件費の固定費が想定より重くなることにあります。比較は“月次の資金繰り”で行います。
| 方式 | 初期支出 | 月次負担 | 会計・税務の扱い(概略) | 向くケース |
|---|---|---|---|---|
| 購入(現金/借入) | 大きい | 返済あり | 減価償却(耐用年数) | 長期で使い倒す機器、金利が低いとき |
| リース | 小さい | 一定 | 料金は原則費用処理(契約形態による) | 更新前提、初期資金を厚く残したい |
| 中古+保守 | 中 | 変動 | 購入と同様(償却/一括の検討) | 予算制約が強い、試験導入したい |
保険医療機関指定の取得時期や、開院月の売上立上がりまでの資金繰りを考えると、「手元資金を残す」設計が効きます。保険医療機関の指定は、原則として申請の翌月1日が指定日となる運用が示されています(地域の締切は各事務所等で異なります)。
医療機関専門の税理士にご相談ください
40年以上の実績。クリニック・医療法人の経営を税務・会計の両面からサポートします。
平日 9:15〜18:15(土日祝休業)
眼科開業の収益シミュレーション|外来型・手術型で「売上の山」が違う
ここでは、資金計画に使えるよう、月次で見える形に落とします。数値はあくまでモデルで、実際は立地、診療圏、医師の専門領域、採用状況で変動します。税理士法人 辻総合会計では、複数の医療機関の開業・資金繰り支援の現場で、以下のように「症例設計→必要機器→資金計画→返済可能性」を一体で組むケースが多いです。
モデル前提(共通)
- 診療日:月22日
- 患者単価:診療内容で変動(下記にレンジで設定)
- 固定費:家賃+人件費+リース料+水道光熱+保守等(外来型で軽め、手術型で重め)
- 借入返済:元利均等、設備資金と運転資金を分けて想定
収益モデル比較(概算)
| モデル | 主な提供内容 | 患者数/日(目安) | 月売上(概算) | 固定費(概算) | 営業利益(概算) |
|---|---|---|---|---|---|
| 外来標準型 | 一般眼科+検査中心 | 35〜55 | 600万〜950万 | 450万〜650万 | 150万〜300万 |
| 外来強化型 | OCT/視野など高度検査を厚めに | 40〜65 | 800万〜1,200万 | 520万〜750万 | 200万〜450万 |
| 手術併設型 | 外来+白内障手術等を実施 | 45〜75 | 1,200万〜2,000万 | 800万〜1,250万 | 250万〜600万 |
ポイントは、「売上が伸びるモデルほど、機器投資・人員・保守・材料費も増え、損益分岐点が上がる」ことです。手術併設型は年収(オーナー利益)の上振れ余地がある一方、症例が立ち上がるまでの期間に資金が耐えられるかが勝負になります。
眼科開業の手順|「届出→指定→立上げ」を逆算する
眼科は、機器納期・内装工期・人材採用に時間がかかりやすく、スケジュール遅延がそのまま家賃先行・人件費先行になります。逆算で組み立てます。
Step 1: 診療圏と症例設計を決める
「一般眼科中心」「緑内障フォローを厚め」「白内障まで」など、提供価値を決めます。ここがブレると、機器選定も内装導線も過剰投資になりがちです。診療圏は人口だけでなく、近隣眼科の診療時間・手術対応・検査装備まで見ます。
Step 2: 機器リストを3段階(必須/推奨/将来)に分ける
初年度に必要なものと、症例が育ってから追加するものを分けます。資金繰りの安全域が大きく変わります。
Step 3: 資金調達(借入・リース)と返済可能性の検証
月次の返済+リース料が、保守的売上でも回るかを確認します。設備資金と運転資金を分け、開院後3〜6か月の赤字を織り込みます。
Step 4: 届出・指定申請のスケジュールを確定
開院日に保険診療を開始するには、指定申請の締切と指定日(原則、申請翌月1日)を踏まえた逆算が必要です。オンライン資格確認の導入準備もここで同時に進めます。
Step 5: 採用・オペレーション設計(検査導線)
眼科は検査比率が高く、スタッフの熟練で回転数が変わります。検査室の配置、患者導線、予約枠設計で「同じ患者数でも残業と待ち時間」が変わります。
よくある質問
Q: 眼科開業資金はどの費目が最もブレますか?
A:
ブレやすいのは医療機器と内装です。機器は導入範囲(OCT、視野計、白内障関連)で桁が変わり、内装は検査室数と導線設計で坪単価が変動します。固定費が増えるため、運転資金は最低6か月分を別枠で確保するのが安全です。Q: 眼科開業の年収はどのくらい見込めますか?
A:
年収(オーナー利益)は「症例設計」と「固定費構造」で大きく変わります。外来中心は立上げが比較的安定しやすい一方、利益上限は設備投資の範囲に連動します。手術併設は上振れ余地がある反面、症例立上げまでの資金耐久が必要です。まずは月次の資金繰り(返済・リース料込み)で黒字化ラインを確定させるのが実務的です。Q: 機器は購入とリース、どちらが有利ですか?
A:
一概には言えません。購入は総コストが下がることがある一方、初期資金が薄くなりがちです。リースは手元資金を温存しやすい反面、月次固定費が増えます。開院初年度の売上立上がりが読めない場合は、手元資金を厚く保つ設計(リース併用や段階導入)が合理的です。まとめ
- 眼科開業は高額機器と症例設計で、資金規模と利益構造が大きく変わる
- 資金計画は「初期投資」と「運転資金(最低6か月)」を分けて設計する
- 機器導入は購入・リース・中古を比較し、キャッシュフローで意思決定する
- 収益シミュレーションは外来型・手術型で分け、損益分岐点(固定費)を先に固める
- 指定申請などの行政手続は締切・指定日から逆算し、開院日の実現可能性を高める
参照ソース
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定説明資料等について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000196352_00012.html
- 厚生労働省(地方厚生局)「保険医療機関・保険薬局の指定等に関する申請・届出」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/shinsei/shido_kansa/hoken_shitei/index.html
- 厚生労働省「高度管理医療機器、管理医療機器及び一般医療機器に係るクラス分類ルールの改正について」: https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb9324&dataType=1&pageNo=1
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
ご注意事項
本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。
税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。
記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。
