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クリニック向けコラム
作成日:2026.01.28
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

外来医師過多区域の減算措置|2026年改定で新規開業に影響するポイントと実務対応

11分で読めます
外来医師過多区域の減算措置|2026年改定で新規開業に影響するポイントと実務対応

外来医師過多区域の減算措置|2026年改定で新規開業に影響するポイントと実務対応

2026年(令和8年度)の制度見直しでは、医師偏在対策の一環として「外来医師過多区域」における新規開業へ、これまでより強いディスインセンティブ(不利益)をかける方向性が明確になりました。
とくに重要なのは、外来医師過多区域で無床診療所を新規開業する医療機関が、都道府県知事の要請に従わない場合、診療報酬上の“減算措置”を講じるという点です。

本記事では、検索意図(医師偏在対策の減算措置を知りたい)に沿って、制度の全体像と、開業実務として「どこで躓きやすいか」「どう回避するか」を中心に整理します。


1. 外来医師過多区域(外来医師多数区域)とは何か

外来医師過多区域=「外来医師多数区域」と理解してよい

行政文書や議論の場では、従来から**「外来医師多数区域」という用語が使われてきました。2026年施行に向けた議論では、趣旨を分かりやすく伝える意図もあり、報道・解説等で「外来医師過多区域」**という表現が用いられることがあります。
実務上は、**都道府県が外来医師偏在指標を用いて設定する“外来医師多数区域”**を指すものとして整理しておくと齟齬が出にくいです。

どうやって決まる?:外来医師偏在指標 → 二次医療圏単位で設定

外来医療計画の考え方として、国が示す算定式に基づき都道府県が二次医療圏単位で「外来医師偏在指標」を定め、その指標により「外来医師多数区域」を定義します。
そして、外来医師多数区域で新規開業を希望する者に対して、都道府県が地域で不足する医療機能を担うよう求める仕組みが位置づけられています。

ポイントは次の3つです。

  • 判定は市区町村ではなく、原則として二次医療圏の枠組みで動く
  • 「医師が多い」かどうかは、単純な人口比ではなく偏在指標で評価される
  • 新規開業者は、区域の不足機能(夜間・休日、在宅、救急、周産期等)を踏まえた協議に組み込まれる

2. 2026年改定で何が変わる?:減算措置が“制度として明文化”

結論:要請に従わない新規無床診療所に、診療報酬上の減算措置

令和8年度(2026年)の診療報酬改定方針の文書では、医師偏在対策として次が明記されています。

  • 改正医療法に基づき、外来医師過多区域において無床診療所の新規開業者が都道府県知事からの要請に従わない場合には、診療報酬上の減算措置を講じる

これにより、従来の「協議・公表中心」の枠組みから、収益に直接響くペナルティの設計が制度上の選択肢として前面に出た、というのが2026年改定の本質です。

いつから影響する?:施行時期に注意(医療法施行と診療報酬施行はズレ得る)

実務では「いつから減算されるのか」が最重要です。
令和8年度改定の文書では、診療報酬について令和8年6月施行とされる一方、医師偏在対策の枠組みは医療法(省令・通知含む)の施行時期と連動するため、2026年4月〜6月にかけて制度運用が立ち上がる可能性を前提に、開業スケジュールを組むのが安全です。


3. “要請”とは何か:都道府県から何を求められるのか

医師偏在対策パッケージの整理では、外来医師過多区域で新規開業希望者に対し、都道府県が次を行える方向が示されています。

  • 開業6か月前に提供予定の医療機能等の届出を求める
  • 協議の場への参加を求める
  • 地域で不足する医療、または医師不足地域での医療提供を要請できる
  • 要請に従わない場合、理由説明の求め、勧告・公表、保険医療機関指定期間の短縮(例:6年→3年等)といったペナルティを組み合わせる余地がある

ここでの「要請」は、単なるお願いではなく、**協議・公表・(2026年以降は)減算と接続する“制度的な要請”**です。
新規開業側の実務としては、要請に「従う/従わない」という二択ではなく、要請を受けた後に協議で“現実的な落とし所”を作るのが重要になります。


4. 新規開業にどう影響する?:減算措置のインパクトを整理

影響①:開業準備のToDoが増える(行政対応が必須タスク化)

外来医師過多区域に該当する場合、開業準備は次の前提が変わります。

  • 物件・内装・人員計画だけでなく、都道府県との事前調整が工程表に入る
  • “いつ届出するか”が、資金繰り・採用・広告開始の逆算に直結する
  • 協議の場で求められる機能(例:夜間休日、在宅、救急初期対応等)により、必要スタッフや体制が変わり得る

影響②:収益の下振れリスク(減算の対象・率が決まるとダメージが可視化)

2026年の文書段階では「診療報酬上の減算措置を講じる」という枠組みが示されていますが、具体的に何が、どの程度減算されるかは、最終的に告示・通知・点数表で確定します。
したがって、現時点の最適な対応は次の通りです。

  • 具体率を“推測”して事業計画を作り込むより、
  • 減算の発動条件(=要請に従わない、という状態)を回避する設計を先に固める

影響③:指定期間短縮など、診療報酬以外の不利益とセットで来る可能性

医師偏在対策パッケージの記載上は、要請に従わない場合の不利益として、勧告・公表や保険医療機関指定期間の短縮も並行して示されています。
診療報酬の減算だけに目が行くと、運用上のリスク(指定更新の扱い、地域内でのレピュテーション等)を見落とすので注意が必要です。


5. 開業希望者の実務フロー:減算を回避するための動き方

ここからは実務として、最短で押さえるべき流れを整理します。

ステップ1:開業地が「外来医師過多区域」かを確認する

  • 都道府県の医療計画/外来医療計画で、二次医療圏の区分を確認
  • 外来医師偏在指標、外来医師多数区域の指定状況、協議の場の運用状況を確認
  • “市区町村レベルの人気エリア”ではなく、二次医療圏で判定される点に注意

ステップ2:不足機能(地域課題)を読み解き、提供可能性を棚卸し

協議で問われるのは「何科で開業するか」だけでなく、地域の外来機能をどう補完するかです。
典型的に論点になりやすいのは次です。

  • 夜間・休日の初期対応への関与(当番医、急患センター連携など)
  • 在宅医療(訪問診療、看取り、施設連携)
  • 救急搬送後のフォローや地域連携(病診連携)
  • 小児・周産期・精神等、地域の不足領域への寄与
  • かかりつけ機能の明確化(地域包括の観点)

ここは「全部やります」ではなく、体制・人員・時間で実行できる範囲で、提供メニューを具体化するのがコツです。

ステップ3:開業6か月前を基準に、届出・協議の工程を組む

医師偏在対策パッケージでは、外来医師過多区域の新規開業希望者に対し、都道府県が開業6か月前に提供予定機能等の届出を求める方向が示されています。
逆算すると、例えば「2026年10月開業」なら、遅くとも2026年4月頃に届出〜協議に入る想定が必要です。

ステップ4:要請が来たら“協議で着地”させる(放置が最悪)

減算措置の発動条件は、ざっくり言えば「要請に従わない」です。
実務上の地雷は、次の状態です。

  • 返信しない(放置)
  • 要請を形式的に拒否して終わる
  • 協議に出ない
  • 代替案を出さない

要請の趣旨に100%従えない場合でも、代替案(段階導入、連携先確保、当番回数の提案等)を提示し、協議のプロセスに乗せることで、「従わない」と評価される状態を回避しやすくなります。


6. 具体例:よくある開業ケースと“減算リスク”の分岐

ケースA:人気駅前で内科クリニック(無床)を新規開業

  • 想定される論点:すでに内科が多い/在宅不足/夜間休日の受け皿不足
  • リスク:要請(在宅参入、当番医参加等)に対し「できない」で止めると、減算対象化の恐れ
  • 回避策:
    • 在宅は“月◯件から開始”など段階導入
    • 地域の在宅支援診療所や訪問看護との連携を先に取り付け
    • 休日当番の参加回数を現実ラインで提案

ケースB:皮膚科・美容寄りの外来で開業

  • 想定される論点:地域で不足している機能とのミスマッチ
  • リスク:要請の内容が「不足機能への寄与」を強く求める形になる可能性
  • 回避策:
    • 一般皮膚科枠の確保(感染症、褥瘡、在宅患者対応など)
    • 近隣病院・在宅医との紹介逆紹介ルール整備
    • 地域の公的役割(学校医、産業医等)との接続も検討

ケースC:小児科で開業(ただし医師過多区域)

  • 想定される論点:小児救急・夜間休日の体制、他科との連携
  • リスク:単独で夜間休日が難しい場合、要請に対する説明不足が問題化
  • 回避策:
    • 近隣小児科との輪番・連携、休日急患センター参画
    • 乳幼児健診、予防接種の受け皿としての貢献を具体化

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7. チェックリスト:外来医師過多区域で開業する前に必ず確認する10項目

開業意思決定の前に、次をチェックしてください(どれかが欠けると、後から手戻りが出やすいです)。

  • 開業地の二次医療圏が「外来医師多数区域(外来医師過多区域)」に該当するか
  • 都道府県の外来医療計画で、不足機能として何が挙がっているか
  • 開業6か月前届出を前提に、工程表が組まれているか
  • 協議の場(地域医療構想調整会議等)の運用実態を把握しているか
  • 要請が来た場合の“代替案”を、事前に用意しているか
  • 在宅・救急・休日など、具体的に提供できる範囲を数値で説明できるか
  • 連携先(病院、訪問看護、薬局、介護等)の目星が付いているか
  • 収益計画に「行政対応の遅延」「体制増強」の上振れコストが織り込まれているか
  • 減算措置の“発動条件”が社内(医師・事務長・コンサル等)で共有されているか
  • 最新の告示・通知・点数表(確定後)を確認し、計画をアップデートする運用になっているか

8. よくある質問(Q&A)

Q1. 外来医師過多区域に該当したら、開業できないの?

開業そのものが一律に禁止される、という整理ではありません。
ただし、外来医師過多区域(外来医師多数区域)では、不足機能を担う要請や協議のプロセスに組み込まれ、要請に従わない場合には診療報酬の減算など不利益が設計されます。つまり「開業はできるが、条件を無視すると不利益が出る」方向です。

Q2. 減算は、どの点数が対象?どれくらい下がる?

2026年改定方針の文書では「診療報酬上の減算措置を講じる」と枠組みが示されていますが、対象点数・減算率・適用開始日は、最終的に告示・通知・点数表で確定します。
したがって現時点で断定はできません。実務では「減算が発動する状態(要請に従わない)を回避する」設計が優先です。

Q3. 要請に“従えない”事情がある場合は?

従えない事情があること自体はあり得ます(人員不足、診療科特性、施設制約など)。
重要なのは、放置や形式的拒否ではなく、代替案を提示し、協議プロセスで合意形成を図ることです。要請の趣旨(地域の不足機能を補う)に沿う提案ができるかが分水嶺になります。

Q4. 開業地選定は、これからどう変わる?

従来の「人口動態・競合数・駅前導線」中心の意思決定に加えて、
二次医療圏ベースでの外来医師偏在指標、都道府県の不足機能、協議運用が、開業リスク(減算等)に直結するようになります。
開業地選定の“評価軸”が1つ増えた、と考えると実務が整理しやすいです。


まとめ

  • **外来医師過多区域(外来医師多数区域)**は、都道府県が外来医師偏在指標に基づき二次医療圏単位で設定する枠組み
  • 2026年(令和8年度)改定では、外来医師過多区域で無床診療所を新規開業する者が要請に従わない場合、診療報酬上の減算措置を講じる方針が明確化
  • 実務の勝ち筋は、減算率の推測ではなく、要請→協議→代替案提示で「従わない」状態を作らない工程設計
  • 開業予定なら、開業6か月前の届出・協議を前提に、物件・採用・資金繰りの逆算を早めに行う

制度は「知らなかった」では済まない形に近づいています。
外来医師過多区域での新規開業を検討している場合は、開業地の外来医療計画を起点に、行政対応を工程表に組み込むところから始めてください。


参照ソース(go.jpのみ)

  • https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001620952.pdf
  • https://www.mhlw.go.jp/content/000550063.pdf
  • https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/001512865.pdf
  • https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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