
執筆者:辻 勝
会長税理士
外来感染対策向上加算の算定要件|2026年版・発熱外来向け

結論:外来感染対策向上加算は「体制整備+公表+協定」が核心
外来感染対策向上加算は、診療所が平時から感染対策の体制を整え、地域連携を行うことを評価する加算で、患者1人につき月1回6点です。発熱外来クリニックでは、2024年度改定で追加された発熱患者等対応加算(+20点/回)も含め、院内運用とレセプトの整合が課題になりやすいでしょう。ポイントは「施設基準を満たして届出」「発熱患者受入れの公表」「(要件として)協定指定の整理」「算定の併算定ルール把握」の4点です。
外来感染対策向上加算とは(点数・算定の基本)
外来感染対策向上加算は、感染防止対策を組織的に実施する診療所が、地方厚生(支)局へ届出を行ったうえで算定できます。点数は6点(患者1人につき月1回)です。
算定のイメージとしては、初診・再診など通常の診療行為に「月1回だけ上乗せする」設計です。したがって、同一月内で同一患者が複数回受診しても、外来感染対策向上加算自体は原則「月1回」に限られます。
税理士法人 辻総合会計では、クリニックのレセプト運用や返戻・査定の傾向分析をご支援する中で、「体制は整っているのに、公表・掲示・記録が弱く算定が不安定」というケースをよく見ます。診療報酬は“やっている”だけでなく“示せる”形にすることが重要です。
施設基準の全体像(発熱外来クリニックで押さえる要件)
外来感染対策向上加算の施設基準は、院内の感染対策体制に加え、発熱患者の受入れ方針の公表や動線分離、さらに新興感染症への備え(協定・指定)まで含めて整備する方向に見直されています。
院内体制:感染防止対策部門と院内感染管理者
診療所内に感染防止対策部門を設置し、専任の医療有資格者を院内感染管理者として配置することが求められます(兼任制限の論点もあるため、院内の役割分担を文書化しておくのが安全です)。
また、職員研修は少なくとも年2回程度の実施が要件に含まれます。研修記録(日時・参加者・内容)を残し、更新し続けられる運用にしておくことが、監査対応では効きます。
公表・動線分離:受診歴を問わない受入れと空間/時間分離
2024年度改定の方向性として、外来において受診歴の有無に関わらず発熱等の患者を受け入れる旨を公表し、空間的・時間的分離などで動線を分ける体制が要件に組み込まれています。
協定・指定:第二種協定指定医療機関(発熱外来)との関係
外来感染対策向上加算の要件(施設基準)の一つとして、感染症法に基づく第二種協定指定医療機関(発熱外来を行うもの)に該当することが言及されています。協定締結の実務は都道府県ごとに運用差が出やすいため、県の医療措置協定の窓口・提出様式・更新時期まで確認しておくことが大切です。
発熱外来の加算:発熱患者等対応加算の算定方法と併算定の注意点
2024年度改定で、外来感染対策向上加算の届出医療機関を対象に、発熱患者等への診療を評価する加算が整理されています。概要資料では「発熱患者等への診療に加算(+20点/回)」とされています。
ポイントは「誰に」「いつ」「何と一緒に」算定できるかです。疑義解釈(その1)では、同月内にすでに外来感染対策向上加算を算定している患者が、同月に発熱等で受診した場合の扱いとして、外来感染対策向上加算は算定できない一方で、要件を満たせば発熱患者等対応加算は算定できる旨が示されています。
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比較表:外来感染対策向上加算と発熱患者等対応加算の違い
| 項目 | 外来感染対策向上加算 | 発熱患者等対応加算 |
|---|---|---|
| 目的 | 平時からの感染対策体制・地域連携の評価 | 発熱等患者への適切な感染対策下での診療の評価 |
| 点数 | 6点 | +20点/回(概要資料) |
| 算定頻度 | 患者1人につき月1回 | 受診1回ごと(要件を満たす場合) |
| 前提 | 施設基準を満たし届出(診療所) | 外来感染対策向上加算の届出医療機関が対象 |
| 実務上の注意 | 月内の算定は1回に制御 | 同月の併算定ルールに注意(疑義解釈あり) |
届出から算定までの実務手順(発熱外来クリニック向け)
Step 1: 施設基準の棚卸し(体制・文書・記録)
- 感染防止対策部門・院内感染管理者の任命(職務分掌の明文化)
- 年2回研修の計画と実施記録のフォーマット化
- 地域連携(カンファレンス参加等)の記録整備
Step 2: 公表・掲示の整備(発熱患者受入れ)
- 受診歴を問わない受入れ方針の記載(自院HP・院内掲示)
- 空間的・時間的分離(予約枠、導線、待機場所、動線表示)の運用ルール化
- スタッフ向け手順書(PPE、トリアージ、消毒、換気、検体取り扱い等)の最新版管理
Step 3: 協定・指定の確認(都道府県の医療措置協定)
- 第二種協定指定医療機関(発熱外来)に該当するための手続確認
- 協定の更新時期・要件変更の有無を定期的に点検
Step 4: 地方厚生(支)局へ届出、レセコン設定、試算定
- 届出様式を入手し、提出先(管轄事務所)と提出部数・添付書類を確認
- レセコンで「月1回6点」の制御と、発熱患者等対応加算の算定条件を設定
- 1か月分の算定を仮集計し、想定外の二重算定がないか点検
よくある質問
Q: 外来感染対策向上加算は、同じ月に何回でも算定できますか?
A:
いいえ。点数は患者1人につき月1回6点で、同一月内の複数受診でも原則1回に限られます(概要資料の記載に基づく運用です)。Q: 先に外来感染対策向上加算を算定した患者が、同月に発熱で受診した場合はどうなりますか?
A:
疑義解釈(その1)では、外来感染対策向上加算は算定できない一方で、要件を満たせば発熱患者等対応加算は算定できると整理されています。レセコン設定で二重算定を防ぐのが実務上の要点です。Q: 「公表」は院内掲示だけで足りますか?
A:
施設基準の抜粋では「公表」の要件が示されており、自治体の医療機関情報ページ等での公開と整合を取る運用が安全です。地域の運用(都道府県・厚生局の指導)も踏まえ、表現の統一を推奨します。Q: 協定(第二種協定指定医療機関)の要件が未整備でも算定できますか?
A:
施設基準に位置づけられているため、原則は協定・指定の整理が必要です。経過措置の考え方が示されている資料もありますが、対象期間・適用条件があるため、最新の通知・自治体運用で確認してください。まとめ
- 外来感染対策向上加算は患者1人につき月1回6点で、施設基準を満たして届出が前提
- 発熱外来では、受診歴を問わない受入れの公表と、空間的・時間的分離などの運用整備が重要
- 2024年度改定で発熱患者等対応加算(+20点/回)が整理され、併算定ルールの把握が必須
- 同月内の二重算定はミスが起きやすいので、レセコン設定と月次点検が有効
- 協定・指定(第二種協定指定医療機関)や自治体掲載など、外部要件も含めて整合を取る
参照ソース
- 厚生労働省「令和4年度診療報酬改定の概要(感染症対策)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000911809.pdf
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定での感染症への対応」: https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001219303.pdf
- 四国厚生支局「疑義解釈資料の送付について(その1)(令和6年3月28日)」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/shikoku/000399717.pdf
- 厚生労働省「今冬の新型コロナ感染拡大に備えた体制確認等(施設基準抜粋含む)」: https://www.mhlw.go.jp/content/001367081.pdf
- 関東信越厚生局「基本診療料の届出一覧(令和6年度診療報酬改定)」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/shitei_kijun/kihon_shinryo_r06.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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