
執筆者:辻 勝
会長税理士
【2025年最新】クリニック開業の保険医療機関指定申請ガイド

保険医療機関指定申請とは
保険医療機関指定申請とは、クリニック(診療所)が公的医療保険による保険診療を行うために、地方厚生(支)局長から「保険医療機関」の指定を受ける手続きです。結論として、指定日(原則毎月1日)に合わせて、申請書類と保健所手続きを逆算して準備することが成功の鍵になります。
開業準備は内装・採用・機器購入など多岐にわたりますが、実務で詰まりやすいのは「保健所の手続き(使用許可等)と指定申請の締切の段取り」です。保険診療開始日を決めているのに、書類が揃わず指定が翌月にずれ込むケースは珍しくありません。
本記事では、保険医療機関 指定申請の全体像、必要書類、審査(指定)までの期間、そして「クリニック開業時の届出の流れ」を税理士の実務目線で整理します。
クリニック開業での届出の流れ(全体像)
まず、保険医療機関指定申請は「単独で完結する手続き」ではなく、保健所・厚生局・地方社会保険医療協議会など複数の関与先が登場します。大まかな順序は次のとおりです。
- 保健所:診療所の開設届、使用許可証(または許可書・届書)の取得・整備
- 厚生局(都県事務所等):保険医療機関指定申請の提出
- 指定(協議会への諮問等を経る):指定通知書の受領
- その後:施設基準の届出(該当する場合)、オンライン資格確認の利用準備など
必要書類(診療所の指定申請で押さえるポイント)
必要書類は、厚生局の案内で明示されています。診療所の新規指定申請で特に重要なのは、次の3点です。
1. 使用許可証等の写し(保健所関係)
診療所については、使用許可証または許可書若しくは届書等の写しが求められます。これは「開設が適法に整っていること」を示す根拠書類で、スケジュール上のボトルネックになりやすい項目です。
2. 保険医(勤務医等)に関する一覧
病院・診療所では、管理者以外の保険医について、氏名・保険医登録の記号番号・担当診療科名を記載した書類の添付が求められます。また、保険医として掲げる者以外の医師等の数を記載した書類も必要とされています。
採用予定の医師がいる場合、「入職日」と「保険医登録情報の確認」を同時に進めないと、開業直前に書類が確定しない事態が起こり得ます。
3. 診療時間など、適格性確認に必要な書類
厚生局の案内では「その他指定の適格性等を確認するために必要な書類」があり、その一つとして診療時間の記載が示されています。ここは形式的に見えて、実務では「診療日・診療時間が確定していない」ことが遅延原因になります。内装・スタッフ確保・機器搬入の計画と整合させ、通常週の運用が説明できる形にしておくことが重要です。
審査期間(指定までの期間)と指定日の考え方
審査期間について、行政手続き上は「標準処理期間:特になし」とされる例があります。一方で、実務上は地方社会保険医療協議会への諮問などのプロセスがあり、指定日は原則として月1回(毎月1日)で運用されることが示されています。
したがって、開業スケジュールの組み方としては次の理解が現実的です。
- 指定は原則「毎月1日付」
- 申請の締切日は事務所ごとに異なり、都県事務所等の案内で確認する
- 締切に間に合わない場合、保険診療開始は翌月(または指定日調整)となる可能性が高い
このため、「開業日をいつにするか」よりも先に、「保険診療開始日をいつにするか(自由診療のみ先行するか)」を決め、指定のタイミングに合わせて逆算するのが安全です。
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指定申請の手順(実務のステップ)
Step 1: 開設形態とスケジュールを確定する
個人開設か医療法人開設かで、準備書類・関係者(行政書士、司法書士、社労士等)との分担が変わります。まず、保険診療開始希望日(=指定日)と、内装完了・保健所手続き完了の目標日を置きます。
Step 2: 保健所手続きを先行して進める
診療所の開設届、使用許可に向けた準備を進め、使用許可証等を“申請期限までに用意できる”状態を作ります。ここが遅れると、指定申請そのものが提出できません。
Step 3: 指定申請書・添付書類を整える
厚生局所定の様式で申請書を作成し、添付書類(使用許可証等、保険医一覧、診療時間、必要に応じ確認票等)を揃えます。開設者・管理者の氏名表記(戸籍上の漢字等)など、形式要件で差し戻しが出やすいので、提出前に第三者チェックを入れるのが有効です。
Step 4: 管轄の厚生局窓口へ提出(窓口または郵送)
原則は所在地を管轄する都県事務所等へ提出します。締切日が事務所ごとに異なるため、必ず管轄ページで確認します。更新以外は窓口提出が推奨される例もあるため、可能なら窓口提出で不備をその場で潰すのが実務的です。
Step 5: 協議会プロセスを経て指定通知書を受領する
地方社会保険医療協議会への諮問を経て指定が行われ、指定通知書が発送される流れが示されています。通知書の受領後、保険診療の運用(レセコン設定、算定ルール、掲示物等)を本格稼働させます。
ありがちなつまずきと回避策
| つまずきポイント | 起きること | 回避策 |
|---|---|---|
| 使用許可証等が締切に間に合わない | 指定申請が出せず、保険診療開始が翌月以降にずれる | 内装工期のバッファ確保、保健所相談の前倒し |
| 勤務医情報が確定しない | 保険医一覧が作れず差し戻し | 採用決定と同時に登録番号等を回収、入職前に必要情報を取得 |
| 診療時間が曖昧 | 適格性確認で補正依頼 | 通常週の運用で固定し、スタッフ体制と整合させる |
| 提出先・締切の誤認 | 提出遅れ扱いになる | 管轄都県事務所の案内ページで締切日を確認し、カレンダー化 |
よくある質問
Q: 申請してからどれくらいで保険診療を開始できますか?
A:
指定日は原則として毎月1日付で行われる運用が示されており、締切に間に合えば翌月1日指定となるイメージで計画するのが一般的です。締切日は事務所ごとに異なるため、管轄の厚生局(都県事務所等)の案内で確認してください。Q: 書類が少し足りない状態でも、とりあえず提出できますか?
A:
実務上は差し戻し・補正依頼が発生すると、指定日(毎月1日)のサイクルに間に合わなくなるリスクが高まります。特に使用許可証等の根拠書類や、保険医情報は早期に確定させ、提出前にチェックリストで不備を潰すことを推奨します。Q: 開業月の月初からオンライン資格確認を使いたい場合はどうすればよいですか?
A:
案内では、指定申請とは提出時期が異なる注意喚起や、受付番号情報提供依頼書等の提出が示されています。保険診療開始と同時稼働を目指す場合は、指定申請とは別タスクとして前倒しで準備してください。Q: 自由診療で先に開業し、後から保険診療に切り替えることは可能ですか?
A:
可能です。ただし、患者導線・価格表示・同意書・広告表現など運用面の切替コストが発生します。指定日サイクルを踏まえ「いつ保険に切り替えるか」を最初に決めておくと、開業後の混乱を抑えられます。まとめ
- 保険医療機関指定申請は、保険診療を行うために地方厚生(支)局長の指定を受ける手続き
- 指定日は原則毎月1日の運用が示され、締切日から逆算したスケジュール設計が重要
- 診療所では使用許可証等の写し、保険医情報、診療時間などの添付が重要論点
- 審査(指定)プロセスには協議会への諮問が含まれ、書類不備は指定遅延に直結しやすい
- 開業準備の工程表に「保健所手続き」「指定申請締切」「指定日」を明確に組み込み、専門家チェックで差し戻しを防ぐ
参照ソース
- 地方厚生(支)局(関東信越厚生局)「保険医療機関・保険薬局の指定申請」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/hoken_shitei/ichiran_shitei_shinsei.html
- 地方厚生(支)局(関東信越厚生局)「保険医療機関・保険薬局の指定申請手続きの流れ及び添付書類等」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/hoken_shitei/shitei_shinsei.html
- 地方厚生(支)局(近畿厚生局)「保険医療機関・保険薬局の指定等に関する申請・届出」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/shinsei/shido_kansa/hoken_shitei/index.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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