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クリニック向けコラム
作成日:2025.03.30
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

医療法人 設立費用の目安|法人化コストを税理士が解説

7分で読めます
医療法人 設立費用の目安|法人化コストを税理士が解説

医療法人の設立費用は、結論として「実費は数万円〜十数万円程度、専門家に依頼する場合は報酬を含めて数十万円〜100万円超まで幅が出る」ものです。特に専門家報酬の範囲(どこまで丸投げするか)と、法人化に伴う資産・契約の整理(賃貸借、医療機器、スタッフ体制)で総額が変わります。ここでは「何にいくらかかるか」を分解し、院長が意思決定しやすい形で目安を示します。

医療法人の設立費用はいくらかかる?相場の捉え方

医療法人の設立費用は、「設立そのもののコスト」と「法人化に付随して発生するコスト」に分けると理解が早くなります。前者は書類作成・申請・登記のためのコスト、後者は運営を法人に切り替えるためのコストです。

  • 設立そのもののコスト:行政手続の実費、登記・印鑑関連、専門家報酬
  • 付随コスト:契約名義変更、規程整備、会計・給与体制の切替、必要に応じて資産整理
ここがポイント
医療法人は株式会社のような「定款認証(公証役場)」が前提ではなく、都道府県の認可(認可後に登記)という流れです。したがって、会社設立と同じ費目で見積もるとズレやすい点に注意してください。

医療法人化の費用内訳:実費と専門家報酬を分解する

実費(外部に払う“固定費目”)

実費は「証明書取得」「印鑑・登記関連」「申請書類の作成・提出に伴う費用」が中心です。金額は地域や状況で前後しますが、設立時の現金支出としては比較的読みやすい領域です。

  • 印鑑作成費(代表印・銀行印・角印など)
  • 印鑑証明書・登記事項証明書などの取得費
  • 書類作成・発送・交通費(郵送中心でも一定額は発生)
  • 登記申請に付随する諸費用(委任状、添付書類の整備等)
ここがポイント
医療法人の登記は、登録免許税がかからない旨が自治体の実務資料で案内されているケースがあります。設立費用の見積では「登録免許税を前提に計上していないか」を確認すると、見積の妥当性チェックになります。

専門家報酬(変動の中心)

費用の振れ幅を生むのは、ほぼこの領域です。典型的には次のように分業します。

  • 行政書士:都道府県への認可申請書類の作成・折衝支援
  • 司法書士:設立登記(法務局)手続
  • 税理士:法人化設計(役員報酬・決算期・消費税・資産整理)、設立後の会計税務運用

依頼範囲が「書類作成のみ」か「ヒアリングから要件整理、スケジュール管理、差戻し対応まで」かで金額が大きく異なります。見積を比較する際は、金額そのものより「対応範囲(スコープ)」を揃えることが重要です。

法人成りコストが増えやすいポイント

医療法人化は“手続を通す”だけでなく、“運営を法人に載せ替える”ことが本丸です。次の論点がある場合、付随コストが増えやすくなります。

1) 既存契約の名義・条件変更(賃貸借、リース、保守)

院長個人契約のままにできるもの、医療法人へ切替が必須のものが混在します。切替時に手数料が発生したり、再審査・保証条件の見直しが入ることがあります。

2) 資産の整理(医療機器・内装・車両など)

個人から法人へ資産を移すときは、税務(譲渡・時価・消費税の論点)や会計処理が絡みます。ここは資産移転の税務が論点化しやすく、税理士の関与範囲も広がりやすい部分です。

3) 人・規程・給与計算の切替

スタッフがいる場合は、雇用契約、就業規則、給与計算、社会保険の整理などが必要になります。外部社労士の関与が増えると、費用は増える一方で、運用リスク(未整備のまま走るリスク)は下がります。

設立費用の見積テンプレ:自走と外注でどう変わる?

医療法人設立の“コスト構造”を把握するため、よくあるパターンを比較します(あくまで目安で、地域・難易度・依頼範囲で変動します)。

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項目自走(最小)外注(標準)外注(フルサポート)
行政手続の実費(証明書・印鑑等)数万円〜数万円〜数万円〜
申請書類作成(都道府県認可)0円(自作)報酬発生報酬発生(調整含む)
設立登記(法務局)0円(自分で申請)報酬発生報酬発生(迅速対応)
法人化設計(税務・会計)最小限相談・設計費が発生体制構築まで発生
合計イメージ実費中心実費+報酬で数十万円〜100万円超もあり得る

ポイントは、「どこまでを“設立費用”に含めるか」を事前に定義することです。特に、会計・給与・規程まで含めた設立後の運営コストの立上げ支援は、見積に入っていないことがあり、後から追加費用になりがちです。

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費用を抑えるための進め方(手続きの段取り)

費用を抑えるコツは、値引き交渉よりも「差戻しの回数を減らす」「依頼範囲を整理する」ことです。以下の段取りで進めると、無駄な追加対応が減ります。

Step 1: “設立”と“運営切替”を分けて費目を棚卸し

設立(認可〜登記)に必要な作業と、運営切替(契約・資産・労務・会計)の作業を分け、論点ごとに担当者を決めます。

Step 2: 依頼範囲(スコープ)を文章で固定する

「申請書類の作成のみ」「都道府県との照会対応まで」「スケジュール管理・差戻し対応込み」など、見積の前提を揃えます。

Step 3: 先に決めるべき“設計項目”を確定する

決算期、役員体制、役員報酬の方針、資産の扱い、スタッフの雇用形態などを先に決めると、手戻りが減ります。

Step 4: 設立後3ヶ月の運用まで見据えて体制を整える

会計ソフト、給与計算フロー、請求・支払、稟議・承認など、最初の3ヶ月で破綻しやすい運用を先に固めます。

よくある質問

Q: 医療法人の設立に「資本金」は必要ですか? ▼

A:

医療法人は株式会社のような資本金制度が前提ではありません。ただし、設立時点の資産状況(資産の総額など)を示す書類が求められるため、運転資金や設備資金を含めた資金計画は別途重要です。
Q: 医療法人化で、個人の資産を法人に移すと税金がかかりますか? ▼

A:

資産の種類と移し方によっては、譲渡に伴う課税や消費税の論点が生じる場合があります。個別性が高い領域のため、資産一覧を作ったうえで、税務面の影響を事前に試算するのが安全です。
Q: 設立費用を抑えるために、どこを自分でやるのが効果的ですか? ▼

A:

効果が出やすいのは、(1)必要書類の収集・整理、(2)意思決定(役員・決算期・運営設計)を早く固めることです。一方、都道府県認可や登記は差戻し対応がコスト化しやすいため、負担感に応じて専門家活用を検討するとよいでしょう。

まとめ

  • 医療法人の設立費用は「実費+専門家報酬」で構成され、総額の振れ幅は主に依頼範囲で決まる
  • 付随コスト(契約・資産・労務・会計の切替)が見積外になりやすいので、先に費目定義を行う
  • 進め方は「設立」と「運営切替」を分け、論点ごとに担当とスコープを固定するのが有効
  • 資産の移転は税務論点が出やすく、事前の資産棚卸しと試算が重要
  • 個別事情で最適解が変わるため、見積比較では金額より対応範囲の揃え込みが重要

参照ソース

  • 厚生労働省「医療法人設立等の手続等について」: https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/igyoukeiei/tetuduki.html
  • 宮城県「医療法人の申請・届出 ガイド(登記の届出について)」: https://www.pref.miyagi.jp/documents/53493/maruwaka_touki.pdf
  • 法務局「医療法人設立登記申請書(PDF)」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252952.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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