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クリニック向けコラム
作成日:2026.01.08
更新日:2026.01.08
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

開業医 年収の目安は?勤務医比較と診療科別|税理士が解説

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開業医 年収の目安は?勤務医比較と診療科別|税理士が解説

開業医の年収はいくらが目安か(結論)

開業医の年収は「勤務医より必ず高い」とは言い切れません。なぜなら、開業医の収入は医業収益(売上)と医業費用(人件費・家賃・材料費等)の差で大きく変動し、さらに「個人開業」か「医療法人」かで、手元に残るお金の出方(所得・税目・社会保険)が変わるからです。

厚労省の「医療経済実態調査(第25回)」では、一般診療所の損益や、医療法人の院長(常勤)の平均給料年額(賞与込)が示されています。これらを使うと、開業医の収入は概ね「2,000万円台〜3,000万円台が見える一方で、設備投資・人件費・患者数でブレる」という現実が読み取れます(後述)。

厚労省データで見る「開業医」と「勤務医」の収入比較

ここでは、厚労省「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告(令和7年11月26日公表)」の数値をもとに整理します。開業医は「一般診療所(個人)」の損益差額、医療法人は「院長の役員報酬(賞与込)」と「診療所の損益差額」を組み合わせて見ます。

ここがポイント
同じ「年収」でも、勤務医は主に給与収入、開業医は主に事業所得(個人)または役員報酬+法人利益(法人)です。税金・社会保険の計算の土台が違うため、単純比較ではなく「手取り」と「将来の資金繰り(投資・借入返済・退職金)」までセットで考える必要があります。

主要データ(1施設当たり/1人当たりの目安)

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区分指標直近(前年)の目安読み方のポイント
開業医(個人の一般診療所・全体)損益差額(概算)約2,631万円医業収益(約9,086万円)+介護収益(約35万円)−費用(約6,489万円)で概算。院長の生活費原資に近いが、内部資金化も起こる
開業医(個人の一般診療所・入院収益あり)損益差額約5,420万円入院ありは規模が大きく、変動も大きい
開業医(医療法人の一般診療所)院長の平均給料年額(賞与込)約2,898万円院長=役員報酬の水準。ここから所得税・住民税・社会保険等が発生
開業医(医療法人の一般診療所・全体)損益差額約905万円役員報酬等の費用計上後に残る法人利益(内部留保され得る)
勤務医(一般病院)医師の平均給料年額(賞与込)約1,485万円病院勤務医の給与水準の目安(施設類型・地域・年齢で差)
勤務医(医療法人の一般診療所)医師の平均給料年額(賞与込)約1,099万円クリニック雇用医師の給与水準の目安

上表から、医療法人の院長(役員報酬)が約2,900万円、病院勤務医が約1,500万円という「見かけ上の差」は確認できます。一方で、開業医側は固定費(人件費・家賃・リース・借入返済)の設計次第で、損益差額が大きく動きます。特にスタッフ構成や人件費上昇局面では、売上が伸びても利益が伸びないケースが現場で増えています。

診療科別データの考え方(公的統計の限界と、実務で使える代替指標)

「診療科別の年収データ」を探すと、実は公的統計で“診療科別に院長の年収”を一直線に並べた資料は多くありません。そこで実務では、診療科ごとに「収益構造(単価×患者数×稼働日)」「必要スタッフ数」「高額材料・検査外注」「設備投資の重さ」を分解して、年収を推計します。

以下は、開業検討時に使われる“診療科タイプ別の収益構造”の整理です(あくまでモデル化であり、個別条件で変わります)。

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診療科タイプ(例)収益ドライバーコストの重さ年収が伸びやすい条件(概念整理)
外来・回転型(皮膚科、耳鼻科等)患者数×稼働日中予約設計と導線で回転数が上がる。スタッフ運用が鍵
検査・機器型(眼科、整形外科等)検査・処置×単価高設備投資と稼働率が勝負。資金繰り設計が重要
小児科・総合診療型継続通院×信頼中感染症流行等で波が出やすい。診療時間と人員の平準化が課題
メンタル系(精神科・心療内科)面談枠×単価低〜中予約枠設計が直結。採用とキャンセル率管理が重要

「診療科別データ」を“数字”として見たい場合は、次のようにシミュレーションでレンジを置くのが現実的です。

診療科別の年収レンジを作る簡易シミュレーション

Step 1: 月の患者数(延べ)と単価を置く

  • 例:延べ患者数 2,000人/月、1人当たり平均単価 7,000円 など

Step 2: 医業収益(月)=患者数×単価+(検査・処置の上振れ)

  • 検査・処置型はここが伸びやすい一方、設備投資の回収が必要です。

Step 3: 医業費用(人件費・家賃・材料・外注・減価償却)を率で置く

  • スタッフ厚め:費用率 70〜80%
  • 効率運営:費用率 60〜70%

Step 4: 年間利益(概算)=年収益×(1−費用率)

  • ここが「個人開業の事業所得」や「法人利益+役員報酬設計」のベースになります。

この手順でレンジを置くと、「外来回転型で患者数が確保できる」「機器型で稼働率が高い」などの条件差が、年収差として見えるようになります。

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個人開業(個人事業)の手取りの考え方

  • 収入の核:損益差額(売上−経費)=事業所得のイメージ
  • ここから:所得税・住民税・国保(または医師国保等)・年金、事業の将来投資(更新費)を支払う

個人は「利益がそのまま院長の所得」になりやすい反面、税率が上がると手取りの伸びが鈍化し、また設備更新費を内部に残すかどうかの判断が難しくなります。

医療法人の手取りの考え方(役員報酬+法人利益)

  • 収入の核:院長の役員報酬(給与)+(法人に残る利益)
  • 役員報酬:所得税・住民税・社会保険の対象
  • 法人利益:法人税等の対象。将来の設備投資や退職金原資として内部留保する設計が可能

厚労省データでは、医療法人診療所の院長の平均給料年額(賞与込)が約2,898万円、同じく診療所の損益差額が約905万円という形で「給与+利益」の二階建て構造が見えます。つまり、開業医の“実力値”を見るには、給与だけでなく利益の残り方も確認が必要です。

ここがポイント
医療法人化は「節税になるか」だけで判断しない方が安全です。金融機関との関係、採用、退職金設計、家族への所得分散、将来の承継まで含めて経営の器を変える意思決定になります。

よくある質問

Q: 開業医は勤務医より年収が高いのが普通ですか? ▼

A:

平均的には高く見えることが多い一方で、固定費が重いと利益が出にくくなります。厚労省調査では、医療法人診療所の院長の平均給料年額(賞与込)が約2,898万円、一般病院の医師が約1,485万円という差が見えますが、開業医は患者数・人件費・家賃・設備投資でブレ幅が大きい点に注意が必要です。
Q: 開業医の年収を「手取り」で見ると何割くらい残りますか? ▼

A:

所得水準・家族構成・社会保険の加入形態で変わるため一律の割合は危険です。高所得帯では税・社会保険の合計負担が大きくなりやすく、また開業医は設備更新や借入返済に資金を残す必要があります。手取りは「生活費として使えるお金」と「事業に残すお金」を分けて試算するのが実務的です。
Q: 診療科別の年収データはありますか? ▼

A:

診療科別に院長年収を網羅した公的統計は多くありません。そのため実務では、患者数・単価・稼働日・必要人員・設備投資の重さを置いて、診療科タイプ別にレンジ試算を作ります。本記事のステップ(患者数×単価×費用率)で、候補地と運営モデルに合わせた試算を作るのが現実的です。
Q: 医療法人化すると、院長の手取りは増えますか? ▼

A:

増える場合もありますが、必ずではありません。役員報酬の設計、法人利益の残し方、社会保険、退職金設計、将来の承継方針で結果が変わります。税務だけでなく、資金繰りとガバナンスを含めて総合判断する必要があります。

まとめ

  • 開業医の年収は「売上−経費」または「役員報酬+法人利益」で決まり、勤務医よりブレ幅が大きい
  • 厚労省データでは、医療法人診療所の院長の平均給料年額(賞与込)は約2,898万円、一般病院の医師は約1,485万円が目安
  • 個人開業の損益差額(概算)は約2,631万円、入院収益ありでは約5,420万円と、規模で大きく変動する
  • 診療科別の公的な“院長年収一覧”は少ないため、患者数×単価×費用率でレンジ試算を作るのが現実的
  • 「年収」だけでなく、手取り・設備更新・借入返済・承継まで含めて意思決定することが重要

参照ソース

  • 厚生労働省「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告(令和7年11月26日公表)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001599546.pdf
  • e-Stat(政府統計の総合窓口)「賃金構造基本統計調査(医師等の職種別賃金の参照に利用可能)」: https://www.e-stat.go.jp/stat-search/database?layout=dataset&query=%E5%8C%BB%E5%B8%AB&statdisp_id=0004007961
  • 国税庁「所得税の税率(超過累進税率の確認)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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