
執筆者:辻 勝
会長税理士
かかりつけ医機能報告制度と診療報酬|機能強化加算への影響を2026視点で整理

かかりつけ医機能報告制度とは(まず押さえる結論)
かかりつけ医機能報告制度は、病院・診療所(※特定機能病院・歯科を除く)が、自院の「かかりつけ医機能」について都道府県へ報告し、その内容を地域で共有・協議して、地域のかかりつけ医機能の確保につなげる制度です。
重要なのは、この制度は“診療報酬の届出制度”ではなく、“医療法ベースの機能報告”だという点です。
ただし、報告内容は都道府県で集計・公表され、地域の協議にも使われます。結果として、診療報酬(とくに「かかりつけ医」関連の加算)と“整合性が求められる局面”が増えます。
2026(令和8年)から何が始まる?スケジュールと対象
実務で大事な“いつ・誰が・どうやって”を先に整理します。
- 対象:特定機能病院・歯科医療機関を除く、すべての病院・診療所
- 定期報告:毎年1〜3月に都道府県へ報告(原則G-MIS)
- 初回の定期報告:G-MIS操作機能は令和8年1月1日から利用可能(=2026年1月)
- 報告後:都道府県が確認・集計・分析し、内容・確認結果を公表、協議の場で検討
「毎年1〜3月」「G-MIS」「2026年1月から」がキーワードです。
報告する“かかりつけ医機能”は2階建て(1号機能・2号機能)
報告項目は大枠として「1号機能」と「2号機能」に整理されます。
1号機能:日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能
1号機能に関しては、一定の報告事項について「実施している/実施できる」などの要件があり、さらに報告した内容の一部を院内掲示することが求められます(G-MISから掲示用様式の出力が可能)。
2号機能:具体的な体制(4類型)を支える機能
1号機能を有する医療機関は、2号機能についても報告します。2号機能は、たとえば次のような領域です。
- 通常の診療時間外の診療
- 入退院時の支援
- 在宅医療の提供
- 介護サービス等と連携した医療提供
「報告」だけで終わらず、院内掲示・患者説明までがセットになる点は、診療報酬よりも運用負荷として効いてきます。
診療報酬の「機能強化加算」とは(点数・位置づけ)
機能強化加算は、初診時に所定点数へ加算される評価で、2024年度点数表では「機能強化加算として80点を加算」と整理されています。
ここで誤解されやすいのは、
- 機能報告=都道府県への報告(医療提供体制)
- 機能強化加算=施設基準に適合し届出した医療機関が、初診時に算定(診療報酬)
という“制度の土台”が違うことです。現時点では、機能報告を出したから機能強化加算が算定できる、という直結関係にはなっていません。
かかりつけ医機能報告制度は機能強化加算にどう影響する?
影響は「今すぐの算定可否」ではなく、主に次の3層で効いてきます。
1) 直近:算定要件の自動変更は起きない(ただし説明整合性は問われる)
機能報告は“地域への説明責任(院内掲示・患者説明)”の色が強い制度です。
一方、機能強化加算は“算定要件の適合・届出・算定ルール”が中心です。
しかし、患者・地域から見れば「“かかりつけ”と名のつく制度が複数ある」状態になります。
そのため、院内掲示や説明内容が、算定実態(機能強化加算を取っている/いない)と矛盾していると、クレームや問い合わせの火種になり得ます。
2) 2026以降:報告データが“評価設計の材料”になりやすい
機能報告は、都道府県が内容を確認し、集計・分析し、公表し、協議の場で検討する設計です。
つまり、制度的に「データが溜まり、比較可能な形に整う」方向へ進みます。
診療報酬側(検証・評価の場)でも、機能強化加算などの届出状況や、施設基準(介護連携等)をどう検証するかが議論されています。
したがって、将来的には「機能報告で示される機能」と「診療報酬上の“かかりつけ医”評価(機能強化加算等)」の整合が論点化する可能性が高い、という構図です。
3) 監査・運用:二重管理を避ける“内部統制”が必要になる
現場的には、次が起こります。
- 報告内容:院内掲示・患者説明と結びつく(外部に見える)
- 算定内容:届出・算定実績として残る(審査支払・指導の対象)
この2本が並ぶと、「説明と請求の整合性」=内部統制が重要になります。
ここを放置すると、現場は「掲示はこう言っているが算定はこう」「報告はこうだが体制はこう」になり、突合対応のコストが増えます。
比較表:機能報告と機能強化加算は何が違う?
| 観点 | かかりつけ医機能報告制度 | 機能強化加算 |
|---|---|---|
| 根拠 | 医療提供体制(医療法ベース) | 診療報酬(点数表・施設基準・届出) |
| 目的 | 地域のかかりつけ医機能の見える化・確保 | 初診時の機能評価(加算) |
| 対象 | 病院・診療所(特定機能病院・歯科除く) | 届出し要件を満たす保険医療機関 |
| 手続 | 毎年1〜3月に都道府県へ報告(G-MIS) | 施設基準に適合→届出→算定 |
| 付随義務 | 院内掲示・患者説明(運用面が重い) | 算定ルール遵守(請求面が重い) |
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実務対応:2026に向けた“ズレない”準備(手順)
ここからは、現場が迷いやすい順に“やること”を並べます。
Step1:自院の「1号機能」「2号機能」を棚卸しする
- 何を「実施している/実施できる」と言えるか
- 実績・体制の根拠(当番表、連携先、実績一覧等)は何か
「できると言ったのに実態が追いつかない」が一番危険です。
Step2:院内掲示に落とし込む(G-MIS出力前提で文章を整える)
- 掲示に出る言い回しは、患者の解釈が先に立つ
- 算定(機能強化加算等)との“印象矛盾”がないか確認
Step3:機能強化加算の算定は「届出・要件・運用」を別管理でチェック
- 点数表上の位置づけ(初診時の加算)
- 自院の届出状況・更新・運用(初診判定、算定頻度、他加算との関係)
Step4:説明・掲示・請求の三点突合(内部監査の型を作る)
- 報告(G-MIS)
- 掲示(院内掲示物)
- 請求(算定実績)
この3点がズレなければ、制度が進んでも対応がブレません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 機能報告を出さないと、機能強化加算は算定できませんか?
直結はしません。機能報告は都道府県への報告で、機能強化加算は診療報酬上の施設基準に基づく届出・算定です。別制度として管理してください。
Q2. 機能報告で「2号機能あり」としたら、機能強化加算の算定が必須になりますか?
必須ではありません。ただし、患者・地域からは「かかりつけ機能を掲げる医療機関」として認識されやすくなるため、掲示・説明と算定実態の整合性は強く意識すべきです。
Q3. 2026年(令和8年)はいつから準備が必要ですか?
定期報告は毎年1〜3月で、G-MIS操作機能は令和8年1月1日から利用可能とされています。少なくとも前年の秋〜年末には、体制整理と掲示文案の準備に着手するのが安全です。
まとめ:影響は「算定可否」より「整合性」と「将来の評価設計」
かかりつけ医機能報告制度は、機能強化加算を“今すぐ変える仕組み”ではありません。
一方で、2026年から定期報告が動き、院内掲示・患者説明・公表・協議という流れが始まります。
その結果、医療機関側に求められるのは、制度間のズレをなくす運用です。
「報告」「掲示」「請求」を三点突合できる形にしておけば、診療報酬側で“かかりつけ医評価”が見直されても、対応が急に苦しくなるリスクを大きく下げられます。
参照ソース
- https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41118.html
- https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001427057.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001427054.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001427356.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001590091.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001251499.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000190167_00062.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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