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作成日:2025.04.11
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

医療法人化手続きの全体像|設立までの流れと必要書類を解説

9分で読めます
医療法人化手続きの全体像|設立までの流れと必要書類を解説

医療法人化の手続きは、都道府県知事の設立認可を起点に、法務局での設立登記、さらに診療所・保険医療機関・税務等の切替届出までを一連で設計する作業です。院長が「いつ何を出すか」を誤ると、開院スケジュールや保険診療の継続、資金繰りに影響し得ます。この記事では、医療法人設立までの流れと必要書類を、実務で迷いやすいポイントに絞って整理します。

医療法人化とは何か

医療法人化とは、個人(院長)で開設している医療機関の運営主体を「医療法人」に切り替えることです。設立後は法人が医療機関を開設し、院長は理事長(または管理者)として運営に携わる形になります。

医療法人化は節税だけでなく、資金調達、分院展開、承継(後継者への引継ぎ)など経営上の選択肢を増やす一方、定款・役員体制・事業計画、各種報告や届出など、事務負担も増えます。したがって「設立できるか」ではなく「設立後に回るか」まで見越して設計することが重要です。

医療法人設立までの流れ

医療法人設立の実務は、大きく「認可」「登記」「切替届出」の3フェーズで整理すると見通しが良くなります。特に設立認可→登記→開設者変更の順序は崩せません。

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フェーズ主な目的主な提出先代表的な成果物
設立認可(行政)法人設立の許可を得る都道府県(担当課)設立認可書(認可の交付)
設立登記(法務)法人格を発生させる法務局(登記所)登記事項(法人番号の付番等)
切替届出(運用開始)医療機関運営を法人へ切替保健所、厚生局、税務署 等開設者変更・保険指定手続・税務届出
ここがポイント
都道府県の設立認可は、受付期間(年1~2回など)や事前相談の要否が運用上定められていることが一般的です。法人化の希望時期から逆算し、まず担当課へ「スケジュールとローカル要件」を確認するのが最短ルートになります。

医療法人化手続きのステップ

ここからは、実務での標準的な流れをステップ形式で示します(都道府県の運用により前後・追加があり得ます)。

Step 1: 法人化の基本設計(型・役員・決算期)

社団医療法人(一般的)か財団医療法人かを選び、役員(理事・監事)構成、社員(社団の場合)構成、決算期、役員報酬設計の方針を固めます。ここで設計を曖昧にすると、認可申請書類の整合性が取れず差し戻しになりやすいです。

Step 2: 定款(または寄附行為)作成

定款は審査の中心資料です。厚労省が公表する定款例をベースに、法人名、目的、事業、機関設計、会計、解散等の条項を整えます。附帯業務を行う場合は、その記載と運営方法の整理が必要です。

Step 3: 資産・契約関係の棚卸し(移転・賃貸・承継の整理)

個人名義の設備や預金、リース、借入、テナント賃貸借、医療機器保守契約などを洗い出し、法人への帰属方法(売買・賃貸・引継ぎ等)を決めます。金融機関の同意や契約変更が必要になるケースもあります。

Step 4: 事業計画・予算の作成(通常2年分)

認可申請では事業計画・予算書(2年分)が実務上の要となります。診療体制、収支見込、人員、設備、資金繰りを「説明可能な根拠」で作り込み、定款や人員計画と齟齬がないか確認します。

Step 5: 設立認可申請(都道府県)

設立認可申請書に、定款、財産目録、役員名簿、就任承諾書、施設概要、権利関係を示す資料などを添えて提出します。提出前の事前相談で指摘事項を潰し、形式不備・記載揺れを減らすことがポイントです。

Step 6: 設立登記(法務局)

認可後、法務局へ設立登記を申請します。定款、理事長選出を証する書面、理事長就任承諾書、財産目録、設立認可書などの添付が典型です。ここで法人が成立します。

Step 7: 開設者変更・保険指定等の切替届出

設立後は運用を「法人前提」に切り替えます。診療所の開設者変更(または新規開設の扱い)、保険医療機関の指定(切替)、各種許認可・届出、税務関係の届出、口座・請求・契約名義の変更を一気通貫で進めます。

医療法人化の必要書類

必要書類は「認可申請」「登記」「切替届出」で分けて管理すると漏れが減ります。以下は代表例です(都道府県ごとに様式・追加資料が指定されます)。

設立認可申請(都道府県)で求められやすい書類

  • 設立認可申請書
  • 定款(または寄附行為)
  • 財産目録、資産の帰属を示す資料(預金証明、不動産の権利関係資料等)
  • 設立趣意書
  • 設立決議録(社団の場合)
  • 役員・社員(評議員)名簿、就任承諾書、履歴書
  • 開設予定施設の概要(診療科目、人員、建物・設備の概要)
  • 事業計画書・予算書(通常2年分)
  • 管理者予定者に関する資料(医師免許証写し等)
  • 設立代表者の選任・権限を示す資料

設立登記(法務局)で必要になりやすい書類

  • 設立登記申請書
  • 定款
  • 理事長の選出を証する書面
  • 理事長の就任承諾書
  • 財産目録
  • 都道府県知事の設立認可書(またはその謄本)
  • 印鑑届書、委任状(代理申請の場合) 等

設立後の主な届出(運用開始の切替)

  • 保健所:診療所の開設者変更(または新規)関連の届出
  • 厚生局:保険医療機関の指定(切替)・施設基準等の届出
  • 税務署:税務署への設立届、青色申告、源泉・給与関係 等
  • 年金事務所/協会けんぽ(該当時):社会保険の適用関係(加入形態により異なる)
  • 銀行・リース会社・取引先:契約名義、請求先、口座 等の変更
ここがポイント
税務の届出は「出す順番」と「期限」が重要です。例えば、新設法人で第1期から青色申告を希望する場合、提出期限は「設立の日以後3か月を経過した日」と「第1期事業年度終了の日」のいずれか早い日の前日まで、というルールで管理します(個別事情で例外あり)。手続き全体の中で期限が短いものから先に逆算しましょう。

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つまずきやすい注意点とリスク

都道府県審査で差し戻しになりやすいポイント

  • 定款の文言がモデルから逸脱し、趣旨説明が不足している
  • 役員・社員構成の要件や、兼任関係の説明が不足している
  • 事業計画・予算と、診療体制(人員計画)・施設計画の整合が取れていない
  • 資産の帰属(誰のものか)や、法人への移転方法が曖昧で裏付け資料が弱い

登記・切替で事故が起きやすいポイント

  • 登記添付書類の不足(理事長選出書面、認可書の扱い等)
  • 既存の個人診療所からの切替で、請求・契約・雇用の名義変更が遅れる
  • 保険指定の切替に伴い、レセプト運用や患者案内の準備が間に合わない

法人化後の運用負担を見落としやすいポイント

医療法人は設立して終わりではありません。会計・決算、議事録整備、役員改選、各種報告など、ガバナンス運用が前提になります。法人化の意思決定時点で「院内の事務体制」「顧問先(社労士・税理士等)との役割分担」まで設計しておく必要があります。

税理士法人の実務視点:失敗しない進め方

税理士法人 辻総合会計では、医療法人化支援で「認可の通し方」だけでなく、設立後に資金繰り・人件費・役員報酬・納税が安定するかを重視します。現場で多いのは、法人化が節税目的に偏り、保険指定や契約名義変更、金融機関手続きが後手に回るケースです。

実務上は、次の順序で管理すると安全性が高まります。

  • 行政(認可)のスケジュールを最上流として、全体の工程表を確定する
  • 認可申請書類は「定款・役員・計画・資産」の整合性を最優先で点検する
  • 登記と同時並行で、保健所・厚生局・税務の切替タスクをチェックリスト化する
  • 設立後3か月以内に集中する手続きを先に洗い出し、担当者と期限を割り当てる

なお、手続きや必要書類は都道府県の運用、診療科、施設区分、既存の許認可状況により変わります。必ず個別確認を行ってください。

よくある質問

Q: 医療法人化の手続きはどのくらいの期間がかかりますか? ▼

A:

都道府県の受付回数(年1回・2回など)と審査期間に左右されます。実務では「事前相談~認可申請準備に数か月、認可後に登記・切替で数週間~」という設計が多いです。希望時期がある場合は、まず都道府県の受付スケジュールを確認して逆算します。
Q: 必要書類は全国で共通ですか? ▼

A:

主要項目(定款、財産目録、事業計画、役員関係など)は共通しやすい一方、様式、添付資料の粒度、押印・原本証明の扱い等は都道府県で異なります。厚労省の様式・定款例を基礎にしつつ、提出先の要領に合わせて調整するのが現実的です。
Q: 個人の診療所を医療法人に変えると、保険診療はどうなりますか? ▼

A:

原則として、保険医療機関の指定や各種届出を「法人として」整え直す必要があります。切替の手順を誤ると請求実務に影響が出るため、登記日を基準に、厚生局・保健所の手続き順序を事前に決めておくことが重要です。
Q: 税務署への届出で最低限押さえるべきものはありますか? ▼

A:

少なくとも法人設立届出(所轄税務署)と、青色申告を希望する場合の申請期限管理は優先度が高いです。あわせて、給与支払事務所の届出や源泉関係の手続きも、役員報酬・職員給与を支払う場合には早期に整えます。

まとめ

  • 医療法人化は「設立認可→設立登記→開設者変更等の届出」の三段階で設計する
  • 都道府県の受付期間・事前相談の要否がスケジュールを決める上流要因
  • 必要書類は「認可申請」「登記」「切替届出」に分けて管理すると漏れが減る
  • 事業計画・予算、資産の帰属、役員体制の整合性が審査・実務の核心
  • 設立後の保険指定・契約名義・税務届出まで含めて工程表化するのが安全

参照ソース

  • 厚生労働省「医療法人設立等の手続等について」: https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/igyoukeiei/tetuduki.html
  • 法務局(法務省)「医療法人設立登記申請書(様式・記載例)」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001250691.pdf
  • 国税庁「No.5100 新設法人の届出書類」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5100.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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