
執筆者:辻 勝
会長税理士
医療DX推進体制整備加算2026の要件|70%対応を解説

2026年の結論:70%は「加算1・4」を狙うなら避けて通れない
医療DX推進体制整備加算2026の実務ポイントは、マイナ保険証利用率の実績要件が段階的に引き上げられ、特に「医療DX推進体制整備加算1・4」で2026年3月〜5月に70%が求められる点です。要件強化は「届出しただけ」では乗り切れず、受付現場の運用設計が成否を分けます。
厚労省資料では、利用率実績要件を時期で区分し、2026年3月1日〜5月31日に加算1・4は70%へ引き上げる整理が示されています(令和7年10月以降の見直し)。また、健康保険証の経過措置終了(令和7年12月1日まで)を踏まえた強化である点も明記されています。
当法人(税理士法人 辻総合会計)では、クリニックの算定要件対応を「施設基準の整備」と「受付オペレーションのKPI管理」に分けて支援してきました。よくある失敗は、端末設置や掲示は整えたのに、受付の一言・導線・例外対応が曖昧で利用率が伸びないケースです。
要件スケジュール:いつから70%になるのか(比較表)
医療DX推進体制整備加算は、加算の区分ごとに利用率の実績要件が異なります。2026年対応では、「自院がどの区分を狙うか」を先に決めるのが合理的です。
| 適用期間 | 加算1・4 | 加算2・5 | 加算3・6 |
|---|---|---|---|
| 〜2025/9/30(R7.4.1〜9.30) | 45% | 30% | 15%(小児科特例あり) |
| 2025/10/1〜2026/2/28(R7.10.1〜R8.2.28) | 60% | 40% | 25%(小児科特例あり) |
| 2026/3/1〜2026/5/31(R8.3.1〜5.31) | 70% | 50% | 30%(小児科特例あり) |
「利用率70%」の意味:どの指標で測られるか
「利用率」と聞くと、院内でカウントした提示率を想像しがちですが、制度運用上は指標の定義が重要です。厚労省資料では、利用率をより実態に近づけるため、従来のオンライン資格確認ログ中心の考え方から、レセプト件数ベース利用率(レセプト枚数に占めるマイナ保険証利用人数)を主に示す方針が整理されています。
- 従来:オンライン資格確認件数ベース(速報性はあるが実態反映に限界)
- 今後:レセプト件数ベース(実態に近いが把握は翌々月になりやすい)
参考として、厚労省資料では「令和7年10月のレセプト件数ベース利用率は47.26%」という全体状況も示されています。全国値と自院を比べる目的ではなく、「70%は自然増を待つだけでは届きにくい水準」という温度感を掴むのに役立ちます。
利用率を上げる実務:受付導線と声かけを設計する
利用率は「患者の気持ち」だけで決まりません。現場では、受付のオペレーションが数値を作ります。特に70%を狙う場合、以下の3領域をセットで整えるのが効果的です。
1) 受付の基本動線を固定する(例外処理も含めて)
- 受付カウンター到達前に「マイナ保険証はお持ちですか」の視認(掲示・卓上POP)
- カードリーダーの位置を「自然に手が伸びる場所」に置く(初診/再診の導線上)
- 例外(暗証番号不明、顔認証NG、カード未携帯)の案内を1枚に集約して迷いを減らす
ポイントは、受付担当者の裁量を減らし、誰が対応しても同じフローになることです。属人的な声かけは、繁忙日に崩れて数値が落ちます。
2) 声かけスクリプトを決める(短く、理由を添える)
院内でよく効くのは「お願い」ではなく「手続きの標準化」です。
- 「保険確認はマイナ保険証でお願いします。こちらの端末にお願いします」
- 「同意いただくと薬剤情報などが確認でき、確認の手戻りが減ります」
- 「本日はお持ちでない場合も受診できます。次回からご協力ください」
一文目は断定形、二文目はメリット、三文目は逃げ道。これでクレームを増やさずに提示率を上げやすくなります。
3) 院内掲示とWeb掲示を“運用”として回す
医療DX推進体制整備加算では、医療DXの体制や情報取得・活用について「見やすい場所およびウェブサイト等に掲示」といった要件が整理されています。掲示は作って終わりではなく、以下を点検してください。
- 掲示物が受付導線上で読める位置にある(入口・受付前)
- 文字サイズが高齢者でも読める(貼ったが読めないが多い)
- Web掲示がトップから2クリック以内で辿れる(スマホ前提)
医療DXの届出(施設基準)の流れ:2026年に向けた実務手順
加算を算定するには、施設基準の届出が前提です。厚生局の案内では、所在県を管轄する事務所へ届出書を提出すること、また新規届出は「要件審査を終え受理した場合、翌月1日から算定」といった扱いが示されています(各月末までの審査・受理が基本)。
Step 1: 自院が該当する加算区分を確定する
- 加算1〜3(例:電子処方箋の導入状況等で区分)と、加算4〜6のどちらを狙うかを整理
- 2026年3〜5月に「70%」が必要なのは加算1・4である点を前提に、現実的な目標区分を決める
Step 2: 施設基準の要件を棚卸しする
厚労省資料で示される要素(オンライン請求、オンライン資格確認、診療情報の閲覧・活用、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス、掲示等)について、現状が要件を満たすかをチェックします。
Step 3: 提出先・様式を確認し、届出書を作成する
地方厚生局の案内ページから、該当する別添・様式を取得し、必要事項を記載します。提出先は「医療機関・薬局が所在する県を管轄する事務所」とされています。
Step 4: スケジュールを逆算して提出する(更新・届出直し含む)
経過措置や見直しに伴い、既に届出済みでも「届出直し」が必要となるケースがあります。自院の算定状況(電子処方箋導入の有無、特例の適用など)により扱いが変わるため、厚生局の案内と通知類を確認し、提出期限・必着の有無まで管理してください。
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70%未達のリスクと、現実的な加算戦略
70%要件は「努力目標」ではなく、算定の可否に直結します。未達の場合に起きやすい論点は次のとおりです。
- 狙っていた区分(加算1・4)が算定できず、収入計画が崩れる
- 利用率はタイムラグがあるため、気づいた時には手が打ちにくい
- 突貫の声かけ強化で患者体験が悪化し、クレーム・受付疲弊につながる
したがって、戦略は二段構えが実務的です。
- 第一案:70%達成を前提に、受付導線・例外処理・掲示・教育を1〜2月までに固める
- 第二案:70%が現実的でない場合、狙う区分を見直し「確実に満たせる要件で安定運用」へ寄せる
数値を作るKPI設計:月次ではなく「日次の行動」に落とす
利用率を上げるためのKPIは、いきなり月次の%だけを見ると改善が止まります。現場で効くのは、日次の行動指標です。
- 受付での「初回声かけ実施率」(チェック欄で可視化)
- 例外処理の内訳(暗証番号不明、カード未携帯、端末不調など)
- 端末前の滞留時間(混雑が増えると運用が崩れる)
これらを1〜2週間回すだけで、「実は端末の位置が悪い」「例外案内が長すぎる」「声かけが担当者でブレる」といった改善点が見えます。
よくある質問
Q: 70%は院内で数えた提示率で判定されますか?
A:
目安として院内集計は有効ですが、制度上は利用率の定義(例:レセプト件数ベース利用率など)に基づいて評価される整理が示されています。院内KPIは「結果の先行指標」として使い、公式の定義とタイムラグを前提に運用計画を立てるのが安全です。Q: 2026年3〜5月に70%が必要なのは、すべての医療機関ですか?
A:
一律ではありません。厚労省資料では、加算区分ごとに必要な利用率が異なり、2026年3〜5月に70%となるのは「医療DX推進体制整備加算1・4」です。自院がどの区分を算定するかで目標が変わります。Q: 届出はいつ出せばよいですか?
A:
地方厚生局の案内では、新規届出は各月末までに要件審査・受理となれば翌月1日から算定、といった扱いが示されています。既届出でも見直しに伴う届出直しが必要な場合があるため、最新の案内・通知で期限を必ず確認してください。まとめ
- 医療DX推進体制整備加算2026では、加算1・4の利用率要件が2026年3〜5月に70%へ引き上げられる
- 利用率の定義はレセプト件数ベースが重視され、把握は翌々月になりやすい
- 70%達成には、端末設置だけでなく「受付導線・声かけ・例外処理」を標準化する必要がある
- 施設基準の届出は前提で、更新・届出直しが必要となるケースがあるためスケジュール管理が重要
- 目標区分(1・4/2・5/3・6)を先に決め、達成可能性に応じて運用と戦略を組み立てる
参照ソース
- 厚生労働省「医療DX推進体制整備加算の見直し(令和7年10月以降)」(PDF): https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001439601.pdf
- 厚生労働省「マイナ保険証の利用促進等について」(PDF): https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001614998.pdf
- 九州厚生局「医療DX推進体制整備加算等に係る届出について」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kyushu/iryo_shido/iryoudx.html
- 厚生労働省(中医協資料)「医療DX推進体制整備加算等の要件の見直しについて」(PDF): https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001521280.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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