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クリニック向けコラム
作成日:2026.02.08
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

電子的診療情報連携体制整備加算の準備|2026再編を税理士が解説

10分で読めます
電子的診療情報連携体制整備加算の準備|2026再編を税理士が解説

導入:電子的診療情報連携体制整備加算とは、何を「できる状態」にする評価か

電子的診療情報連携体制整備加算とは、医療DX(医療のデジタル基盤)に必要な仕組みを「導入した」だけでなく、診療の現場で診療情報・薬剤情報等を安全に取得・活用できる体制を整えている医療機関を評価する加算です。
医療情報取得加算・医療DX推進体制整備加算が再編される流れの中で、院内のシステム、運用、掲示、非常時対応まで含めた“体制整備”が問われます。とくに院長・事務長にとっては「届出に間に合うか」「ベンダーが対応できるか」「投資が損金・資産計上どちらになるか」が悩みどころではないでしょうか。

本記事では、現行の医療DX関連の施設基準で求められている要素を踏まえつつ、2026に向けて“今から準備できること”を税理士の視点(投資・契約・税務・証憑)で具体化します。

電子的診療情報連携体制整備加算と医療DX加算再編の全体像

医療DXに関する評価は、これまで段階的に見直しが続いてきました。現行の制度では、オンライン資格確認で得られる診療情報・薬剤情報の活用、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス等の導入・活用、さらに掲示・Web掲載などが施設基準の柱となっています。
再編後の「電子的診療情報連携体制整備加算」も、名称は変わっても、狙いは一貫して「医療情報を電子的に連携し、現場で活用できる状態を作る」ことにあります。

ここで重要なのは、制度の“点数”よりも、届出で問われる要件を満たし続ける運用です。届出は通っても、監査・適時調査で「実態がない」と判断されると、返戻や指導につながります。準備はシステム導入だけで終わりません。

ここがポイント
再編後の詳細(点数・正式な施設基準、経過措置の期限など)は告示・通知で確定します。したがって本記事は「現行制度で明確になっている要素」をベースに、再編後も外れにくい実務準備に落とし込んでいます。

電子的診療情報連携 加算要件は何が想定される?(電子処方箋・電子カルテ・オンライン資格確認)

再編後の正式要件は告示・通知を待つ必要がありますが、準備の主戦場は次の4領域です。現行の医療DX関連の施設基準に照らすと、少なくとも以下は外しにくい論点です。

1) オンライン請求・オンライン資格確認が「止まらず回る」状態

オンライン請求・オンライン資格確認は前提インフラです。単に端末があるだけでなく、診察室等で閲覧・活用できる動線(端末配置・権限・操作手順)が重要です。
「取得できる」から「診療で使える」への移行が求められます。

2) 電子処方箋:発行だけでなく、マスタ整備・運用点検まで

電子処方箋は、院内の処方運用・薬局連携・マスタ整備(医薬品コード等)で躓きやすい領域です。ベンダー任せにせず、院内で「誰が」「いつ」「何を」点検するかを決めておく必要があります。
また、電子処方箋はシステム改修だけでなく、受付・会計・処方箋発行のオペレーション変更が発生します。

3) 電子カルテ情報共有:接続可否だけでなく、同意・説明・記録の整備

電子カルテ情報共有サービス等に関しては、接続設定の有無に加えて、患者への説明や同意、運用時の記録・ログ管理が論点になりやすい分野です。
加算は“連携の体制”評価である以上、医療情報を扱うプロセスの整備(規程・責任者・教育)が重要になります。

4) 掲示・Web掲載:施設基準の「見える化」が監査の入口になる

現行の医療DX関連の施設基準では、体制や情報活用について院内掲示・Web掲載が求められる運用が一般化しています。
ここは「やっているつもり」になりやすく、掲示の文言・場所・更新日・Web反映が揃っているかがチェックされやすいポイントです。

2026に向けた準備手順(チェックリスト):今からやるべき5ステップ

制度が確定してから動くと、ベンダーの開発・導入が混み合い、届出に間に合わないケースが出ます。準備は先に“土台”を作っておくのが合理的です。

Step 1: 現状棚卸し(システム・回線・端末・運用)

  • オンライン資格確認:設置形態、閲覧場所(診察室等)、操作できる職種、トラブル時の連絡先
  • 電子処方箋:対応状況(導入済/未導入/ベンダー開発待ち)、院内フロー変更点
  • 電子カルテ情報共有:参加可否、必要な追加契約、同意取得の運用案
  • セキュリティ:端末管理、バックアップ、アクセス権限、ログ保管

Step 2: ベンダー・契約の整理(“誰が責任を持つか”を明確化)

  • 電子処方箋・共有サービス対応は、ベンダーの提供範囲が分かれます
  • 保守契約に「制度対応」「マスタ更新」「障害対応SLA」が含まれるか確認
  • 見積は「初期費用」と「月額費用」を分離し、税務処理(資産/費用)判断の材料にします

Step 3: 院内オペレーション設計(受付〜診療〜会計〜院外連携)

  • 受付:マイナ保険証・同意取得、説明資料の整備
  • 診療:診療情報・薬剤情報の閲覧手順、参照した事実の記録方法
  • 会計:処方箋発行フロー、患者案内、トラブル時の代替手順

Step 4: 届出・掲示・規程(監査に耐える“証拠”づくり)

  • 院内掲示文案(体制・情報活用方針・個人情報の取扱い)
  • Web掲載(同じ文言を反映、更新日管理)
  • 非常時対応(停電・回線障害時の運用、連絡網、紙運用への切替)

Step 5: 税務・補助金・資金繰りの設計(導入時期を逆算)

  • 取得価額・利用開始日・契約期間を整理し、減価償却・リース判定に備える
  • 補助金・助成の対象になり得る場合は、交付要綱の要件に合わせて発注・検収・支払のタイミングを調整

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投資コストと税務の考え方(電子処方箋・電子カルテ 2026対応)

医療DXは「点数を取りに行く投資」になりやすい一方、税務では“資産か費用か”が利益・資金繰りに直結します。とくに電子カルテの改修や周辺機器は、契約形態で処理が分かれやすいので注意が必要です。

←横にスクロールできます→
投資・契約の例典型的な支出内容税務上の論点(概要)実務での注意点
電子処方箋対応(改修)ソフト改修、設定、初期導入ソフトウェア等の資産計上になる場合あり見積書で「改修」と「保守」を分ける
電子カルテ情報共有対応接続機能、追加モジュール、連携設定機能追加は資産性が出やすい“利用開始日”を証憑(検収書等)で残す
端末・ネットワーク増強端末、ルータ、無停電電源装置固定資産(備品)になりやすい設置場所・台数管理、リース判定
セキュリティ強化EDR、バックアップ、訓練月額サービスは費用処理が一般的契約書・請求書で役務提供を明確に
ここがポイント
医療機関は非課税売上が中心のため、消費税の仕入税額控除は原則として制約されます(課税方式・課税売上割合等により異なります)。「税込投資額」で資金繰りを組む前提で、見積段階から総額を把握しておくのが安全です。

つまずきやすいポイント(届出・運用・セキュリティ)と、税理士が見るべき管理ポイント

医療DXの要件対応で多い失敗は、「導入したが現場で使われていない」「掲示やWeb掲載が更新されていない」「非常時対応が形だけ」の3つです。
これらは監査対応だけでなく、患者対応の品質にも直結します。

  • 運用責任者を決める(院長/事務長/担当者、ベンダー窓口)
  • 点検の証跡を残す(チェックリスト、月次点検、障害記録)
  • 受付・診療・会計での手順書を1枚にまとめる(新人でも回る形)
  • 取引の証憑を整える(見積→契約→納品/検収→請求→支払の流れを残す)

税務面では、同じ「DX投資」でも処理がブレると、決算で修正が必要になります。資産計上の有無は、単に金額だけでなく「機能追加か」「利用期間がどれくらいか」「契約の実態が何か」で判断が分かれるため、早い段階で会計方針を決めておくとスムーズです。

よくある質問

Q: 電子的診療情報連携体制整備加算は、電子処方箋と電子カルテの両方が必須になりますか? ▼

A:

最終的には告示・通知で確定しますが、現行の医療DX関連の施設基準では電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスが重要要素として整理されています。したがって「必須/選択」の別がどうであれ、少なくとも対応可否の確認と、導入に要する期間・費用の見積は2026前に終えておくのが安全です。
Q: 届出の準備で、税理士(会計事務所)が関与できる部分はどこですか? ▼

A:

主に(1)ベンダー見積の内訳整理(資産・費用の切り分け)、(2)導入時期と決算・資金繰りの調整、(3)補助金等が絡む場合の証憑整備、(4)委託契約・保守契約のチェック(更新・解約条件)です。システム導入の成否は、契約と運用設計に左右されます。
Q: 2026に向けて、まず最初にやるべきことは何ですか? ▼

A:

「現状棚卸し」と「ベンダー確認」です。オンライン資格確認の閲覧・活用が診察室でできるか、電子処方箋・共有サービス対応が“いつ・いくらで・誰が”できるかを押さえるだけで、届出までのボトルネックが見えます。次に掲示・Web掲載の文案作成と、非常時対応の手順整備に進むのが効率的です。

まとめ

  • 電子的診療情報連携体制整備加算は、医療DXの“導入”ではなく運用できる体制を評価する方向性が強い
  • 準備の主戦場は「オンライン資格確認の活用」「電子処方箋」「電子カルテ情報共有」「掲示・Web掲載」の4領域
  • 2026直前に動くとベンダー対応が混みやすい。棚卸し→契約整理→運用設計→届出・掲示→税務設計の順で進める
  • 投資は資産計上・費用処理が混在しやすい。見積の内訳と利用開始日の証憑を整える
  • 非常時対応とセキュリティは“形だけ”になりやすい。点検と証跡管理を仕組みにする

参照ソース

  • 厚生労働省「医療DX推進体制整備加算等の要件の見直しについて」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001521280.pdf
  • 厚生労働省「医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて」: https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/001277499.pdf
  • 厚生労働省「医療DX推進体制整備加算の見直し(令和7年10月以降)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001439601.pdf
  • 厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第644回) 議事次第」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_69213.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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