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クリニック向けコラム
作成日:2025.01.12
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

医療機器リース購入の損得|開業資金と税務を税理士が解説ポイント

9分で読めます
医療機器リース購入の損得|開業資金と税務を税理士が解説ポイント

医療機器リースと購入の結論|どちらが得?

医療機器の「リース」と「購入」どちらが得かは、開業時の手元資金と、機器の更新周期(陳腐化スピード)で決まります。開業直後で資金繰りが不安な場合はリースで固定費化し、長期使用する基幹機器は購入で総コストを抑えるのが基本線です。特に、開業医にとっての課題は「初期投資の重さ」と「想定患者数が読めない不確実性」であり、ここをどう吸収するかが意思決定の核心になります。

医療機器リース購入とは|定義と違いを整理

リースは、リース会社が機器を購入し、クリニックが一定期間の使用料を支払って利用する形です。購入は、クリニック自身が機器の所有者となり、原則として耐用年数に応じて減価償却で費用化します。

リースの主な類型(実務での見分け方)

  • ファイナンス・リース(実質的に「割賦購入」に近い性格)
  • オペレーティング・リース(比較的「賃貸」に近い性格)

税務上・会計上の取扱いは契約内容で変わるため、見積書の「契約形態」「所有権移転の有無」「中途解約条項」を必ず確認します。

比較表|リースと購入の違い(実務目線)

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項目リース購入
初期支出原則小さい(頭金なしの場合も)大きい(現金 or 借入)
毎月の負担平準化しやすい借入なら返済、現金ならなし
費用化の考え方契約類型により異なる(賃借処理/資産計上など)減価償却が基本
更新のしやすさ期間満了で入替えしやすい下取り・売却が必要
故障時の扱い保守込み/別契約など条件次第保守契約次第(自己負担も)
中途解約原則難しい(違約金が発生しやすい)売却等で調整可能
総支払額金利・手数料分上振れしやすい価格交渉次第で抑えやすい
ここがポイント
「月額が安いからリースが得」とは限りません。総支払額(リース料総額+保守+消耗品)と、更新時の下取り・再リース条件まで含めて比較すると判断ミスが減ります。

リースが向くケース|開業期の典型パターン

開業直後は、内装・保証金・採用・広告などで現金が減りやすく、売上は立ち上がり途上です。次の条件に当てはまる場合、リースのメリットが出やすい傾向です。

1) キャッシュを厚く残したい(運転資金を優先)

  • 想定患者数が保守的(初年度の売上に不確実性が大きい)
  • 人件費や広告費が先行する(固定費の山がある)
  • 借入枠を内装・運転資金に振り向けたい

この場合、初期投資を圧縮し、資金繰りの安全域を確保するという観点でリースが合理的です。

2) 陳腐化が早い・更新頻度が高い機器

機器の技術進歩が速い領域(例:画像診断系の周辺機器、予約/受付システム連携機器など)は、更新しやすさを重視する考え方があります。

3) 保守込みで予算管理を単純化したい

保守や動産保険がセットになっている提案は、想定外支出のブレを抑える効果があります。ただし「保守の範囲(部品代・出張費・代替機)」は要確認です。

購入が向くケース|設備投資を回収しやすい条件

購入が有利になりやすいのは、長期使用が前提で、稼働率が高く、値引き余地がある基幹機器です。

1) 長く使う「基幹機器」である

  • 診療の中核(例:X線、超音波など)で使用年数が長い
  • 稼働率が高く、投資回収が読みやすい

購入なら、リース料に含まれがちな金利・手数料分を回避でき、総コストを抑えられる可能性があります。

2) 補助金・自己資金・借入条件が良い

補助金や有利な借入条件があると、実効コストは購入が有利になることがあります。見積比較は「月額」ではなく、金利・保守・更新費を含めた「総額」で揃えるのが鉄則です。

3) 中途解約リスクを避けたい

診療方針の変更や移転など、将来の変更リスクがある場合、リースの中途解約条項が重荷になり得ます。購入なら売却・移設など選択肢が増えます。

税務・会計の違い|減価償却・リース取引・消費税

ここは誤解が多い領域です。ポイントは「購入=減価償却」「リース=全部経費」と短絡しないことです。

減価償却の基本

事業用資産は取得時に全額費用になるのではなく、原則として法定耐用年数に応じて費用配分します。少額減価償却(10万円未満)や一定要件の特例もあります。取得価額の判定に消費税を含めるかは、税込/税抜経理方式で変わる点も重要です。
(参考:国税庁「減価償却のあらまし」)

法人のリース取引(税務)の考え方

法人が一定の要件を満たすリース契約を締結した場合、税務上「リース資産の引渡し時に売買があった」と整理されることがあります。つまり、契約によっては「リースなのに資産計上に近い」処理になり得ます。
(参考:国税庁「リース取引についての取扱いの概要」)

消費税の論点(課税時期のズレに注意)

リース取引で「リース資産の引渡し」が課税資産の譲渡等に該当する場合、譲渡対価の全額が引渡日の属する課税期間の対価に含まれる整理が示されています。インボイス対応や課税売上割合も含め、消費税は資金繰りに直結します。
(参考:国税庁「リース取引についての消費税の取扱いの概要」)

ここがポイント
税務・会計処理は「契約書の条文」で結論が変わります。見積段階で、契約類型(所有権移転の有無、解約、残価、保守)を税理士・会計担当者に共有してから意思決定すると手戻りが減ります。

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失敗しない医療機器導入の方法|見積比較の手順

開業時は「全部そろえる」より、患者導線と売上構造に沿って優先順位を付ける方が成功確率が上がります。設備投資は“診療オペレーションの設計”とセットで考えます。

Step 1: 必須機器と後回し機器を分ける
診療の必須(開院日にないと診療が成立しない)と、代替可能(紹介・外注・共同利用で凌げる)に仕分けします。

Step 2: 3つの資金枠で上限を決める

  • 初期投資枠(内装・保証金・機器)
  • 運転資金枠(最低6か月分を目安に確保)
  • 予備枠(想定外の修繕・採用追加)

Step 3: 同条件で相見積りを取る(最低2〜3社)
購入価格だけでなく、保守、消耗品単価、更新時条件、納期、設置費まで揃えて比較します。

Step 4: 「総コスト」と「撤退コスト」を並べて判断

  • 総コスト:購入総額 or リース料総額+保守+消耗品
  • 撤退コスト:中途解約違約金、移設費、売却損など

Step 5: 税務処理と資金繰り(消費税含む)を事前に試算
月次の資金繰り表に落とし込み、赤字月が出ないか確認してから契約します。

リース・購入での注意点とリスク|よくある失敗を回避

リースの注意点

  • 中途解約は原則難しく、違約金が重いケースが多い
  • 保守が「込み」でも範囲が狭いことがある(部品代・出張費など)
  • 残価設定や再リース条件で、更新時コストが膨らむことがある

購入の注意点

  • 初期支出が大きく、開業直後の資金繰りを圧迫しやすい
  • 稼働率が低いと投資回収が遅れる(導入過剰)
  • 保守契約を軽視すると、故障時に診療停止リスクが上がる

迷ったときの実務的な結論

  • 「必須・長期使用・稼働率高」:購入(または借入)を第一候補
  • 「更新頻度高・不確実性大」:リースで固定費化を検討
  • いずれでも、契約書の条文と総コストで最終判断

よくある質問

Q: 医療機器はリースだと全額経費になりますか? ▼

A:

一概には言えません。契約内容によって税務上の取扱いが異なり、一定のリース取引は「引渡し時に売買があった」と整理される場合があります。契約類型(所有権移転の有無など)を前提に判断します。
Q: 開業時に購入すると資金繰りが心配です。目安はありますか? ▼

A:

一般論として、運転資金(固定費の数か月分)を確保した上で、必須機器から優先的に購入・リースを組み立てます。初年度は売上変動が大きいため、月次の資金繰り表で赤字月が出ない設計が重要です。
Q: 消費税はリースと購入でどちらが有利ですか? ▼

A:

取引形態により課税時期や計上のされ方が変わり得ます。リース資産の引渡しが課税資産の譲渡等に該当する場合の整理も示されていますので、課税事業者か免税事業者か、税込/税抜経理かも含めて個別に確認してください。

まとめ

  • 医療機器のリースと購入は「開業時の資金余力」と「更新周期」で最適解が変わる
  • 月額だけで判断せず、総支払額(保守・消耗品・更新条件込み)で比較する
  • 購入は減価償却が基本で、少額資産の特例なども視野に入れる
  • リースは契約内容により税務上の整理が変わるため、契約書の条文確認が不可欠
  • 最終判断は、総コストと撤退コストを並べて資金繰り表に落として決める

参照ソース

  • 国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
  • 国税庁「No.5702 リース取引についての取扱いの概要」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5702.htm
  • 国税庁「No.6163 リース取引についての消費税の取扱いの概要」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6163.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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