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クリニック向けコラム
作成日:2026.01.28
更新日:2026.02.09
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

【2026年6月施行】診療報酬改定の概要|本体+3.09%の内訳と対策を税理士が解説

8分で読めます
診療報酬改定2026概要|本体+3.09%の影響

診療報酬改定2026(令和8年度)の結論:本体+3.09%は「賃上げ・物価・緊急対応」が中心

診療報酬改定2026の全体像は、本体(診療報酬)+3.09%(令和8・9年度の2年度平均)という数字だけを見ると「一律に増える」ように見えます。しかし実際は、賃上げ原資や物価高対応など政策目的を持つ財源が上乗せされる一方、後発医薬品の置換えや長期処方の推進などで効率化(減算)も織り込まれています。

誰にとって何が問題か。院長や事務長にとっての論点は「改定率」そのものではなく、自院の収益構造に増減がどう配分されるか、そして賃上げ・物価高に耐える運営へ「請求・人件費・業務プロセス」をどう合わせるかです。

ここがポイント
同じ「本体プラス」でも、入院・外来・在宅、病院・診療所・薬局で配分が異なります。自院の主力算定(外来再診、在宅、検査、リハ等)ごとに影響を確認するのが実務の近道です。

「本体+3.09%」の意味:2年度平均と、2026年度単年の差を押さえる

「本体+3.09%」は2年度平均です。2026年(令和8年度)単年では+2.41%、2027年(令和9年度)単年では+3.77%という整理になります。改定を読むときは、“平均”と“単年”を混同しないことが重要です。

また、本体(診療報酬)は令和8年6月施行と整理されている一方、薬価等は令和8年4月施行(材料価格は6月施行)とされており、月ズレが起きます。請求システムやマスタ更新、院内掲示や同意書等の見直しタイミングにも影響します。

改定率の内訳(診療報酬・本体)

以下は、診療報酬(本体)の主な内訳です(数値は2年度平均ベース。括弧内に令和8年度単年が示されているものは併記)。

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区分位置づけ目安(2年度平均)令和8年度(単年)メモ
賃上げ分医療従事者の処遇改善+1.70%+1.23%(令和9年度+2.18%)
物価対応分物価上昇への対応(特別項目含む)+0.76%+0.55%(令和9年度+0.97%)
食費・光熱水費分入院関連の基準額引上げ等+0.09%40円/食、60円/日(患者負担も原則連動)
緊急対応分経営環境悪化を踏まえた特例+0.44%施設類型で配分に差
効率化後発品、長期処方等による抑制▲0.15%医療機関の運用にも影響
その他上記以外の改定分+0.25%事項別の加算・評価の組替え等

各科改定率(参考)

本体の中でも、医科+0.28%、歯科+0.31%、調剤+0.08%と整理されています。院内処方の有無、外来中心か在宅中心か等で体感は変わります。

2026年改定で「何が変わる?」:改定の軸は3つ(賃上げ・物価・提供体制)

令和8年度改定の基本方針では、物価・賃金上昇、人材確保、現役世代の負担抑制といった環境変化を前提に、2040年を見据えた機能分化・連携、医療DX等を進める方向性が示されています。

1) 賃上げの“実効性”が問われる

賃上げ分は+1.70%と大きな柱で、医療現場の生産性向上とセットでベースアップ実現を支援する設計です。つまり、単に点数が増えるのではなく、賃上げに結びついたかを把握・検証する前提で議論が進みます。

実務では、給与改定・手当設計、職種別の賃金実績の整理、委託費の見直しなど、「賃上げ余力の可視化」が重要になります。

2) 物価対応は“特別な項目”の設定へ

物価対応分は+0.76%。特に令和8年度以降の物価上昇対応として、診療報酬に特別な項目を設定して対応すると整理されています。病院・診療所・薬局で配分が異なり、病院は+0.49%、医科診療所+0.10%など差があります。

診療所では、医療材料費・委託費・光熱費がじわじわ効く一方で、配分は限定的になりがちです。したがって、物価高対策は「点数増」だけに期待せず、購買・委託・導線の見直し(無駄検査の抑制、予約設計、在庫回転の最適化)がセットになります。

3) 効率化(▲0.15%)は現場運用にも直撃する

効率化として、後発医薬品への置換え、在宅医療・訪問看護評価の適正化、長期処方・リフィル処方の取組強化などが挙げられています。ここは「制度の方向性」なので、現場のオペレーション(処方日数、リフィルの運用、薬局連携、服薬指導の設計)まで落とし込まれます。

ここがポイント
効率化は“減点”というより「運用を変えないと取りこぼす」領域です。診療側・事務側・薬局側で、算定要件と業務フローのギャップを先に埋めると事故が減ります。

診療報酬改定2026はいつから?施行時期と、実務で起きるズレ

ロングテールで最も多いのが「いつから」です。今回の整理は次のとおりです。

  • 診療報酬(本体):令和8年6月施行
  • 薬価等(薬価・材料価格):令和8年4月施行(ただし材料価格は6月施行)

このズレにより、4月は薬価改定対応(採用品目・在庫評価・処方提案の調整)が先行し、6月に本体改定で算定要件・点数が大きく動く、という段取りになりやすい点に注意してください。

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Step 1: 収益構造を“算定別”に分解する(改定の影響を見える化)

月次の売上を「初診・再診・検査・画像・処置・在宅・リハ・加算」など算定カテゴリに分解し、上位10項目の構成比を出します。ここが分からないまま点数表だけ読んでも、結論が出ません。

Step 2: 改定の“取りに行く点”と“守る点”を分ける

  • 取りに行く点:新設・拡充の加算、施設基準の整備、連携体制の構築、DX・業務効率化に紐づく評価
  • 守る点:算定要件の厳格化、長期処方・リフィル運用、後発品対応、在宅・訪看の評価適正化

この段階で、医師・看護・事務の役割分担(タスクシフト/シェア)を明確にします。

Step 3: 6月施行を見据えて“運用に落ちる”形にする

算定ルールを院内のチェックリスト、予約枠、問診テンプレ、同意書、レセ点検ルールへ落とし込みます。施行後の1〜2か月は、算定漏れ・過誤が最も起きるため、週次でモニタリングする体制が有効です。

よくある質問

Q: 本体+3.09%なら、うちの売上も3.09%増えますか? ▼

A:

一律には増えません。+3.09%は2年度平均の改定率で、賃上げ・物価・緊急対応など目的別の配分があり、さらに効率化(▲0.15%)も含まれます。自院の主力算定がどこに属するかで増減が変わるため、「算定別の構成比」を出して影響を確認するのが確実です。
Q: 診療報酬改定2026はいつから反映されますか? ▼

A:

診療報酬(本体)は令和8年6月施行、薬価等は令和8年4月施行(材料価格は6月施行)と整理されています。4月と6月で対応が分かれるため、マスタ更新や院内運用の段取りを分けて準備するのが安全です。
Q: 賃上げ分は、具体的に何をすれば算定上有利になりますか? ▼

A:

個別点数の設計は今後の告示・通知や点数表で具体化しますが、方向性としては「賃上げの実効性確保」と「生産性向上」がセットです。給与改定の記録整備、職種別配置の見直し、ICT活用(予約・問診・レセ前点検など)で業務負担を減らす取組を、施行前から形にしておくと運用が安定します。

まとめ

  • 診療報酬改定2026は本体+3.09%(2年度平均)だが、2026年度単年は+2.41%で、平均と単年を混同しない
  • 財源の柱は「賃上げ(+1.70%)」「物価対応(+0.76%)」「緊急対応(+0.44%)」で、効率化(▲0.15%)も織り込まれる
  • 施行は本体が令和8年6月、薬価等が令和8年4月(材料は6月)で、実務対応は二段階になりやすい
  • クリニックは「算定別の売上構成」→「取りに行く点/守る点」→「運用への落とし込み」の順で準備するとブレにくい

参照ソース

  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について(令和7年12月24日)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001620952.pdf
  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の基本方針(令和7年12月9日)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001618046.pdf
  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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