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クリニック向けコラム
作成日:2025.02.28
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

MS法人とは?節税効果と注意点|医療経営を税理士が解説

9分で読めます
MS法人とは?節税効果と注意点|医療経営を税理士が解説

MS法人(メディカルサービス法人)とは?結論と全体像

MS法人(メディカルサービス法人)とは、医療法人や個人クリニックとは別に設立し、医療周辺の営利事業(不動産賃貸、物品販売、事務受託など)を担う法人です。院長・理事長の所得を「医療収益」から直接移す仕組みではなく、医療と周辺事業の役割分担と、グループ内取引の設計によって税負担や承継を最適化する発想です。
一方で、節税だけを目的にすると、取引実態や価格の合理性が崩れ、税務上の否認・医療法上の論点が生じやすい点が核心です。

MS法人でできること/できないこと(MS法人 医療法人 違い)

MS法人は株式会社・合同会社など一般の営利法人として設立されることが多く、物販や不動産、事務受託などの事業が可能です。
ただし、医療行為(診療・処方等)はMS法人では行えないため、保険診療収益そのものをMS法人に付け替える設計はできません。医療法人の業務範囲・付随業務の考え方は公的資料でも整理されています。

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項目医療法人(または個人クリニック)MS法人
主目的医療提供(診療所等の開設・運営)医療周辺の営利事業
収益源診療報酬・自費診療等賃料、物販、事務受託料、リース料等
強み医療の信用・許認可の枠組み事業自由度、利益配分・承継の柔軟性
注意点医療法・施設基準等取引実態、対価の合理性、消費税負担
ここがポイント
「MS法人」という名称は制度上の法人形態(医療法人の一類型)ではなく、実務上の呼称です。したがって、設計の良し悪しは“法人名”ではなく、業務実態・契約内容・価格設定で決まります。

MS法人の節税効果:どこで差が出るか(MS法人 節税)

MS法人の税務メリットは、医療法人(または院長個人)の「利益構造」と「支出の性質」を組み替えることで生じます。代表的な論点は次のとおりです。

節税効果1:所得分散(法人税の軽減税率帯を意識)

医療法人側で利益が厚くなると、法人税等の実効税率が上がりやすくなります。MS法人へ業務を適正に移管し、利益を分散できれば、グループ全体の税コストが下がる余地があります。
ただし、分散は「実態のある役務提供」と「適正価格」が前提です。

節税効果2:不動産(建物・内装・設備)の保有主体の見直し

院長個人またはMS法人が建物・内装等を保有し、医療法人へ賃貸する設計は、資産の分散や承継設計(後継者が医師でない場合の取り回し等)で効果が出ることがあります。
一方で賃料が相場から乖離すると、税務否認や医療法人のガバナンス上の問題になり得ます。

節税効果3:リース・物販・事務受託(外注化の設計)

MS法人が医療機器・什器を購入して医療法人へリースする、医療材料や消耗品の一部を管理する、レセプト周辺や総務の事務受託を行うなど、周辺業務に収益機会を作る手法です。
この場合も、医療法人側で「何の対価か」が説明できることが重要です。

注意点と否認リスク:税務調査で見られるポイント(MS法人 注意点)

MS法人スキームの成否は、税務上は「通常の取引として合理的か」に集約されます。具体的には次の観点がチェックされます。

1) 役務提供の実態があるか(名義貸し・ペーパーカンパニーの回避)

事務受託料、管理料、コンサル料などは、業務範囲が曖昧だと否認されやすい領域です。業務記録(作業ログ、成果物、稼働時間、担当者、委託範囲)を残し、契約書と整合させる必要があります。

2) 価格が相場・算定根拠に基づくか(寄附金認定・損金否認の論点)

対価が過大な場合、実質的に資金移転とみなされ、損金性が争点になります。一般論として、寄附金の損金算入には限度があり、損金不算入となる領域があるため、「対価性」の説明が重要です。
したがって、見積書、相場資料、原価積上げ(人件費+間接費+利益率)などで算定根拠を用意します。

3) 同族会社の行為計算否認の射程

同族関係のある法人間では、形式上は有効な契約でも、税負担を不当に減少させるような「異常な取引形式」が問題化し得ます。MS法人の設計は、まさにこの観点に触れやすいため、過度な節税目的・不自然な価格設定は避けるべきです。

ここがポイント
実務で多い失敗例は、「毎月定額の管理料」を設定したものの、業務範囲・稼働実態・価格根拠が説明できず、修正を余儀なくされるケースです。先に“運用できる証拠設計”を作ることが重要です。

消費税・社会保険・資金繰りの落とし穴(医療法人 MS法人)

MS法人を入れると「法人税だけでなく、消費税と社保・資金繰り」が動きます。ここを見落とすと、節税どころか手残りが減ることがあります。

消費税:医療法人側の控除制限に注意

保険診療は非課税取引が中心のため、医療法人は仕入税額控除が制限されやすい構造です。MS法人から受ける役務提供(課税取引)の消費税は、医療法人側で控除しきれずコスト化する可能性があります。
このため、消費税の控除制限を織り込んだ上で、MS法人へ移す業務範囲・価格を再設計する必要があります。

社会保険:役員報酬・雇用の二重管理

MS法人に家族役員を置き報酬を出す場合、実態と職務内容に合わない設定は税務・労務双方の論点になります。グループで雇用契約・出向契約を整理し、指揮命令系統と給与負担の一致を取ることが実務上重要です。

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MS法人導入の方法/手順:設立から運用まで(MS法人 設立 手順)

MS法人は作って終わりではなく、運用で証拠が積み上がる設計が必要です。導入は次の順で進めるとブレが少なくなります。

Step 1: 目的と業務範囲の棚卸し

医療法人(または院長個人)で行っている業務を「医療行為」「医療付随」「一般事業」に分解し、MS法人へ移せる領域を確定します。

Step 2: 取引スキームの設計(契約書の骨子)

賃貸借、業務委託、リース、物販など、取引類型ごとに契約書を整備します。業務委託は、成果物・稼働・責任範囲・再委託可否まで明確化します。

Step 3: 価格決定ルールの策定(相場・原価積上げ)

見積取得、相場資料、原価計算(人件費・間接費配賦・利益率)を用い、価格算定根拠を残します。取引価格の合理性が説明できる形にします。

Step 4: 運用証拠の仕組み化(ログ・請求・承認)

月次で、作業ログ、請求書、検収書、稟議・承認フローを残します。税務調査対応は「書類の一貫性」が決定打になります。

MS法人を検討すべきタイミング:ケーススタディで整理

当法人(税理士法人 辻総合会計)では、MS法人の相談は「利益が出ているから」だけではなく、承継・人材・投資戦略とセットで検討するケースが多い印象です。

典型ケース:利益が厚いが投資も増えるクリニック

  • 状況:医療法人の利益が継続的に高い。内装更新・機器入替が周期的に発生。
  • 打ち手:MS法人で設備保有・リース、物販や自費の周辺サービスを整理し、医療法人の損益を平準化。
  • 注意:消費税コストと価格根拠を先に詰めないと、手残りが悪化することがあります。

典型ケース:後継者が医師ではない/家族承継を視野

  • 状況:医療法人の後継は医師要件があり、事業承継の設計が難しい。
  • 打ち手:MS法人で不動産・周辺事業を保有し、非医師の家族へも承継可能な領域を作る。
  • 注意:医療法人との取引条件が恣意的になりやすいので、外部相場の裏付けが重要です。

よくある質問

Q: MS法人を作れば必ず節税になりますか? ▼

A:

いいえ。節税効果は「医療法人の利益水準」「移管する業務の実態」「価格設定」「消費税の控除制限」次第です。特に医療法人側で消費税が控除できない場合、MS法人への外注化がコスト増になることがあります。
Q: MS法人の“管理料”はいくらが適正ですか? ▼

A:

一律の正解はありません。業務範囲(何を、どの頻度で、誰が、どの成果物を出すか)を定義し、人件費・間接費配賦・利益率を積み上げるか、外部見積と比較して根拠を作ります。根拠が弱い定額設定は否認リスクを高めます。
Q: 医療法人とMS法人の役員を同じにしても大丈夫ですか? ▼

A:

兼務そのものは会社法上直ちに否定されませんが、ガバナンスと利益相反管理が厳しく問われます。税務上も同族関係が強いほど取引の合理性説明が重要になるため、実態・承認プロセス・価格根拠を厚く整備してください。

まとめ

  • MS法人は医療周辺の営利事業を担う法人で、医療行為そのものは行えない
  • 節税効果は所得分散・資産保有・外注化で出るが、実態と価格根拠が前提
  • 過大な対価や曖昧な業務委託は、寄附金認定や行為計算否認などのリスクを招く
  • 医療法人側の消費税控除制限により、MS法人取引がコスト増になる場合がある
  • 導入は「業務棚卸し→契約→価格ルール→運用証拠」の順で設計する

参照ソース

  • 厚生労働省「医療法人の業務範囲(PDF)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000547146.pdf
  • 国税庁「No.5281 寄附金の範囲と損金不算入額の計算」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5281.htm
  • 国税不服審判所等(公的裁決紹介)「同族会社の行為又は計算の否認」: https://www.kfs.go.jp/service/MP/02/1001000000.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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