
執筆者:辻 勝
会長税理士
オンライン診療受診施設とは?2026制度化の開業影響|税理士が解説

オンライン診療受診施設とは、患者がオンライン診療を受ける場所として提供される施設で、医療法上の枠組みとして新設されます。2026年の制度化により、クリニック開業は「診療所を増やす」だけでなく、患者の受診導線を施設で設計する発想が現実的になり、連携先・立地・投資・オペレーションが変わります。
一方で、オンライン診療を行う医療機関側には、届出や基準遵守、施設側の適合確認など新しい実務が増えます。開業時点でオンライン診療を事業の柱にするなら、医療法対応と同時に、契約・収益構造・税務(消費税・源泉・固定資産・リース等)まで一体で組むことが重要です。
オンライン診療受診施設とは(定義と制度の狙い)
オンライン診療受診施設は、患者がオンライン診療を受ける専用の場所として医療法に位置付けられ、設置者は設置後10日以内に都道府県へ届出を行う枠組みが示されています。また、オンライン診療を行う医療機関の管理者が、当該施設のオンライン診療基準への適合性を確認する整理がされています。「医療機関が遠隔で診る」だけでなく「患者が安心して受けられる場所」を制度側が用意するイメージです。
制度化の背景には、オンライン診療が指針ベースで運用されてきたところ、法的な位置づけを明確化し、適切なオンライン診療を推進する狙いがあります(オンライン診療の定義、届出、基準の設定・遵守などが整理)。また厚労省は、オンライン診療は対面診療と適切に組み合わせるのが基本であり、原則として「かかりつけの医師」が実施するという考え方も示しています。
制度化(医療法改正)で何が変わるか:クリニック開業への影響
1) 立地戦略が「診療圏」から「受診拠点網」へ
従来の開業は、診療圏(人口・競合・導線)と外来の回転率が中心でした。2026年以降は、オンライン診療を前提にすると、患者の居宅だけでなく受診施設という拠点が選択肢に入ります。
- 生活導線上(駅前、職場近く、介護施設併設等)の受診拠点と連携する
- 対面は検査・処置・初期評価、オンラインはフォローと慢性疾患管理、という設計にする
- 医師の稼働設計(外来枠とオンライン枠)を最初から分けて設計する
開業時からこの設計をすると、「小さく開業して広く診る」モデルが現実的になります。
2) 連携モデル(B2B)が増える:契約と責任分界が重要
オンライン診療受診施設は医療機関以外でも設置が想定されうるため、連携先が増えます。ここで重要なのは「医療行為の責任」「個人情報」「設備運用」の分界です。
- 施設運営者との業務委託契約(場所提供、予約導線、機器管理、プライバシー確保)
- 緊急時対応(容態急変時の受入れ体制、患者所在地近隣との連携)
- 料金の流れ(施設利用料が発生する場合の取扱い:誰が徴収し、誰の売上か)
税務・会計では、売上計上主体、手数料の区分(支払手数料/業務委託費)、源泉要否、設備のリース/レンタル処理など、初期設計でミスが起きやすい領域です。
3) “届出・基準”が前提になる:運用コストを見込む
制度化により、オンライン診療を行う医療機関の届出や、オンライン診療基準の遵守などが整理されます。開業計画に落とす際は、システム費用だけでなく、運用に必要な人的コスト(研修・手順書・監査対応)を見込む必要があります。
「診療所」と「オンライン診療受診施設」の違い(比較表)
| 比較項目 | 診療所(クリニック) | オンライン診療受診施設 |
|---|---|---|
| 役割 | 医師が対面で診療する拠点 | 患者がオンライン診療を受ける場所の提供 |
| 手続 | 開設手続・各種届出が前提 | 設置後10日以内の届出が示されている |
| 収益構造 | 医療収益が中心 | 場所提供・運営費は別建てになりやすい(連携契約次第) |
| 開業投資 | 内装・医療機器・人員が重い | 小規模設備でも成立し得るが、運用・情報管理が要点 |
| リスク | 医療事故・感染等の現場リスク | プライバシー・通信・本人確認・責任分界が争点 |
ポイントは、オンライン診療受診施設は「医療機関の代替」ではなく、患者側の受診環境を整えるインフラになり得る点です。開業側は、これを“集患装置”として見るのではなく、診療提供体制の一部として組み込む発想が必要です。
クリニック開業での実務対応:制度化を見据えた進め方
Step 1: 事業モデルを決める(対面×オンラインの比率)
- 初診・再診の比率、対象疾患、対面への切替条件を明文化
- 予約導線(自院サイト、地域拠点、企業/施設連携)の優先順位を決定
Step 2: 法令・届出・院内規程を整備する
- オンライン診療を行う場合の届出・遵守事項の整理
- 本人確認、同意取得、診療計画、記録保存、セキュリティの手順化
Step 3: 連携先(受診施設運営者等)との契約を設計する
- 役割分担、費用負担、個人情報、障害時の対応、クレーム/事故時の責任分界
- 収益計上(自院売上/手数料控除/施設利用料)を会計処理まで落とす
Step 4: 税務・資金繰りの設計(見落としがちな論点)
- 設備投資(リース/購入)と減価償却、固定資産税、補助金が絡む場合の処理
- 外注費・手数料の区分、源泉徴収の要否、消費税区分の整理
- 電子カルテ・予約・決済の月額課金を含めた損益分岐の再計算
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ケーススタディ:2026年を見据えた開業設計(匿名事例)
よくある相談として、「駅前に小規模で開業し、周辺の企業・介護施設からオンライン診療を受けたい」というニーズを取り込みたい、というものがあります。
例えばA院(仮)は、対面枠を午前中心、午後はオンライン枠を固定化し、連携先(施設運営者)とは「場所提供+予約導線+機器保守」を委託範囲に設定しました。会計面では、手数料の性質を明確化し、広告宣伝費と混在しないように契約書と請求書様式を統一。結果として、月次での損益把握が安定し、投資判断(追加スタッフ・追加拠点)を数字で行えるようになりました。
制度化後は、こうしたモデルが増える可能性がありますが、成功する院は共通して「法令対応・オペレーション・会計」を同じ設計図で管理しています。
よくある質問
Q: オンライン診療受診施設を自院が設置するメリットは何ですか?
A:
自院の診療圏外(職場近く・交通結節点・介護施設等)に受診環境を持てる可能性があり、対面が必要な患者を適切に誘導しつつ、フォローをオンラインで継続する設計がしやすくなります。ただし、届出・運用・契約・責任分界の設計が前提です。Q: 2026年制度化で、オンライン診療を始めるハードルは下がりますか?
A:
“拡げやすさ”は増える一方で、法的な位置づけが明確化され、届出や基準遵守などの実務がより重要になります。システム導入だけでなく、手順書・同意・本人確認・緊急時対応・情報管理まで含めた運用体制を用意する必要があります。Q: 受診施設の運営者に支払う費用は、税務上どの勘定科目になりますか?
A:
実態によります。場所提供が中心なら賃借料、運営・予約導線・機器保守等を含むなら業務委託費や支払手数料として整理するケースが多いです。契約書の役務内容と請求書の内訳が一致していることが重要で、消費税区分や源泉の要否にも影響します。まとめ
- オンライン診療受診施設は、患者がオンライン診療を受ける場所として医療法上に新設される枠組み
- 2026年の制度化で、開業は「診療所立地」だけでなく「受診拠点網×オンライン運用」の設計が重要になる
- 連携モデルが増えるため、契約・責任分界・個人情報・緊急時対応の設計が必須
- 会計・税務は、売上計上主体、手数料/委託費、設備投資、消費税区分などを開業時点で固める
- 法令対応と運用コストを織り込んだ資金繰り計画が、オンライン診療を柱にする開業の成否を分ける
参照ソース
- 厚生労働省「オンライン診療について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/index_0024_00004.html
- 厚生労働省「オンライン診療に関する総体的な規定の創設(資料)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001640824.pdf
- 厚生労働省 法令等データベース「医療法等の一部を改正する法律(令和7年法律第87号)等」: https://www.mhlw.go.jp/hourei/new/hourei/new.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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