
執筆者:辻 勝
会長税理士
眼科開業医の働き方|1日の診療と患者数の実態|専門家解説

眼科開業医の働き方は、「診療時間を伸ばす」よりも、検査と診察の役割分担で回転率を上げ、無理なく患者満足を維持する設計が要点です。1日の患者数は、診療スタイル(一般外来中心/コンタクト中心/手術外来併設など)で大きく変わります。この記事では、典型的な1日の動きと患者数の目安、運営上の論点を、開業後の実務目線で整理します。なお患者数の公式統計は「患者調査」「医療施設調査」等で把握できますが、個別医院の運営実態は設備・スタッフ・地域で差が出ます。
眼科開業医の働き方とは:診療時間より「設計」で決まる
眼科は、問診・診察だけでなく視力、眼圧、屈折、視野、OCTなどの検査が多く、検査前倒しが働き方を左右します。医師が全工程に関与すると診療が詰まりやすく、結果的に待ち時間が増え、クレーム対応や残業が増えます。反対に、検査を視能訓練士(ORT)・看護師・検査スタッフが先行し、医師は判断と説明に集中できる導線を作ると、診療時間を延ばさずに安定します。
また、開業後は「診療」と同じくらい「経営者業務」が増えます。朝礼、スタッフ面談、レセプト・クレーム確認、委託業者対応、資金繰り確認などが日次で発生するため、診療枠の中に経営者タスクを入れない設計が重要です。税理士法人 辻総合会計が開業支援で拝見する限り、初年度に疲弊しやすい院は「患者数目標」だけが先行し、導線・人員・予約の整合が取れていないケースが目立ちます。
眼科クリニックの患者数:1日何人が現実的か
「1日患者数」は、地域需要だけでなく、検査機器の台数、スタッフの熟練、予約比率、コンタクト比率、手術外来の有無で決まります。公的統計としては、医療施設調査に「眼科の外来患者延数」といった項目があり、地域の需要把握や診療圏の検討に活用できます。
一方、開業医が働き方をイメージするうえでは、院内オペレーションに基づく「実務の目安」を押さえるのが近道です。以下は、一般的な設備・スタッフ体制を想定した、診療スタイル別の患者数レンジです(あくまで目安で、立地と採用状況で変動します)。
| 診療スタイル | 主な特徴 | 1日患者数の目安 | ボトルネックになりやすい点 |
|---|---|---|---|
| 一般外来中心(軽症〜慢性) | 眼精疲労・結膜炎・ドライアイ・緑内障フォロー等 | 50〜90人 | 受付〜検査の滞留、説明時間の増加 |
| コンタクト比率高め | 検査・フィッティング・定期交換が多い | 70〜120人 | 検査スタッフ不足、ピーク時の会計渋滞 |
| 画像検査(OCT等)を多用 | 黄斑・糖尿病網膜症・緑内障評価が多い | 40〜80人 | 検査機器待ち、結果説明の集中 |
| 手術外来併設(白内障等) | 術前検査・説明・同意が重い | 30〜60人 + 手術枠 | 術前説明・同意書、紹介/逆紹介の連携 |
| 小児・斜視弱視対応 | ORT業務が厚くなる | 30〜70人 | 検査時間が長い、家族対応が増える |
ポイントは「医師の診察数」ではなく、「検査工程と会計工程が詰まらない上限」を先に決めることです。患者数を増やしても、待ち時間が伸びればキャンセル・再診離脱が増え、結果的に収益が安定しにくくなります。
眼科開業医の1日モデル:診療時間と動線の実例
ここでは「一般外来中心・予約併用(午前/午後の2部制)」を例に、1日の流れを分解します。働き方の差は、診療時間そのものより、患者導線と検査配置で生まれます。
午前の流れ(例:9:00〜12:30)
Step 1: 開院準備(8:30〜9:00)
受付・検査機器の立上げ、当日予約の確認、急患枠の設定、スタッフ配置を確定します。朝礼は5分でも「今日の混雑予測」と「役割」を合わせると、午前の滞留が減ります。
Step 2: 受付〜検査(9:00〜)
受付後すぐ検査へ誘導し、医師が診察室で待つ時間を減らします。コンタクト・慢性疾患フォローは検査パターンを定型化し、迷いを減らします。
Step 3: 診察・説明(9:15〜)
医師は所見判断と治療方針説明に集中します。説明が長くなる症例(術前説明、緑内障の治療変更など)は、予約枠を別に切ると、通常外来が崩れにくいです。
Step 4: 会計・次回予約(〜12:30)
会計渋滞が起きると、クレームが増えます。会計前に次回予約の仮押さえを入れる運用も有効です(現場オペレーションに応じて設計)。
午後の流れ(例:15:00〜18:30)
午後は「学校・仕事終わり」が重なり、ピークが鋭くなりがちです。予約比率を上げ、急患枠を固定し、ピークを平準化します。午後に検査・説明が重い患者を入れすぎると、閉院後の残務(記録・紹介状・レセ)が雪だるま式に増えます。
診療スタイルの違い:働き方を左右する3つの分岐点
一般外来中心か、コンタクト中心か
コンタクト中心は患者数が増えやすい一方、検査・装用指導・在庫管理の負荷が増えます。一般外来中心は症例が多様で説明負荷が上がりやすく、医師の集中力が課題になります。どちらも「何を標準化し、何を個別対応にするか」が運営の肝です。
手術外来をどの時点で組み込むか
白内障などの手術外来は、術前検査・説明・同意などで1人あたりの時間が重くなります。外来を回しながら手術外来を同日に入れると、日中の外来回転が落ちやすいため、「手術日」「術前説明日」を分ける設計が現実的です。
予約運用:予約比率をどこまで上げるか
予約比率を上げると待ち時間は減る一方で、当日急患の受け入れが難しくなります。眼科は急性結膜炎、角膜異物、急な視力低下など「当日受診ニーズ」が一定数あるため、予約枠の中に急患枠を織り込む運用が有効です。ここが崩れると、受付対応が荒れ、現場の疲弊が早まります。
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開業後に起きやすい課題と対策:患者数を増やす前に整えること
混雑の正体は「診察」ではなく「検査と会計」
混雑は診察室ではなく、検査待ちと会計待ちで発生することが多いです。機器増設より先に、検査手順の見直し、スタッフ教育、動線の改善で解消できるケースがあります。患者数を伸ばす施策は、ボトルネック解消とセットで行うべきです。
採用・教育:ORTの有無で診療の上限が変わる
ORTが安定すると検査の質とスピードが上がり、医師の負荷が下がります。採用が難しい地域では、検査を担当できるスタッフの育成計画をあらかじめ作り、院長が「教える時間」を確保しないと、増患がそのまま残業につながります。
Web発信・集患の注意点:広告規制を前提に設計する
眼科は自由診療(例:一部の検査やオプション等)を含むケースもあり、Web発信が増えがちです。ただし医療機関の広告は医療法上の規制があり、ガイドラインも示されています。制作会社に委託していても、最終責任は医療機関側に及ぶ点は要注意です。
よくある質問
Q: 眼科開業医の診療時間は、どれくらいが一般的ですか?
A:
午前・午後の2部制(例:9:00〜12:30、15:00〜18:30)を基本に、曜日で調整する設計が多いです。重要なのは時間の長さより、検査・会計の滞留が起きない上限を決め、予約比率と急患枠でピークを平準化することです。Q: 1日患者数を増やす最短ルートは何ですか?
A:
設備投資より先に、検査工程の標準化とスタッフ教育で回転率を上げることです。特に検査前倒し、検査パターンの定型化、会計前の次回予約導線は効果が出やすい領域です。Q: 公的統計で眼科の患者数を調べる方法はありますか?
A:
あります。医療施設調査には診療科別の外来患者延数などが定義されており、眼科についても項目が用意されています。診療圏の仮説検証や、地域比較の入り口として有効です。まとめ
- 眼科開業医の働き方は、診療時間より「検査・診察の分業」と導線設計で決まる
- 1日患者数は診療スタイルで大きく変わり、増患はボトルネック解消とセットで行う
- 混雑の主因は検査待ち・会計待ちになりやすく、標準化と教育で改善できる
- 予約比率と急患枠でピークを平準化すると、残業とクレームが減る
- Web発信は医療法の広告規制・ガイドラインを前提にチェックフローを整える
参照ソース
- 厚生労働省「医療施設調査・病院報告(結果の概要)」: https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/79-1a.html
- 厚生労働省「令和5年(2023)患者調査の概況」: https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/index.html
- e-Stat「眼科の外来患者延数(医療施設調査の調査項目情報)」: https://www.e-stat.go.jp/surveyitems/items/271010064
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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