
執筆者:辻 勝
会長税理士
整形外科開業費用の資金計画|リハ設備込み総額を税理士が解説

整形外科の開業費用は「リハビリ有無」で総額が変わります
整形外科クリニックの開業費用は、結論として「リハビリ区画をどこまで作るか」で総額が大きく変わります。特に運動器リハビリを主軸にする場合、床面積・人員・機器・内装が増えるため、資金計画は内科より厚めに設計するのが安全です。問題になりやすいのは「工事が膨らむ」「採用が遅れる」「運転資金が先に尽きる」の3点ではないでしょうか。
目安として、リハビリを併設する一般的な整形外科では、初期投資と開業後数か月の運転資金を合わせて、総額8,000万〜2億5,000万円程度のレンジで検討されることが多い印象です(立地・面積・画像機器のグレードで上下します)。
整形外科開業費用の内訳|どこにいくらかかるか
費用を「投資(固定費)」と「運転資金(流動)」に分けると、計画が立てやすくなります。整形外科は、画像診断(X線等)と運動器リハが診療設計の中心になりやすく、設備投資の比重が高めです。
初期費用の主な項目(目安レンジ)
- 物件関連(保証金・仲介・前家賃):300万〜2,000万円
- 内装・工事(待合、診察室、処置、リハ区画、電気容量、床補強等):2,000万〜9,000万円
- 医療機器(一般X線、超音波、骨密度、物理療法機器等):2,000万〜8,000万円
- リハ備品(平行棒、訓練台、評価機器、運動療法器具等):200万〜1,500万円
- IT(電子カルテ、レセコン、予約、PACS等):200万〜1,500万円
- 開業前費用(広告、採用、研修、消耗品初期在庫):200万〜1,500万円
- 運転資金(3〜6か月分):1,000万〜4,000万円
リハビリ設備込みの費用比較(規模別)
| モデル | 延床・リハ区画のイメージ | 初期投資(目安) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 小規模(リハ最小) | 40〜60坪/物理療法中心 | 6,000万〜1億2,000万 | 工事は抑えやすいが人員と算定設計に工夫が必要 |
| 標準(リハ併設) | 60〜90坪/運動療法+物理療法 | 8,000万〜2億0,000万 | 最も相談が多いゾーン。採用と運転資金が成否を分ける |
| 充実型(リハ強化) | 90坪〜/運動療法比率高め | 1億5,000万〜2億5,000万超 | 設備・人員とも厚い。固定費が重い分、集患設計が必須 |
※上記はあくまで概算レンジです。建築区分(居抜き/新築)、地域、機器選定、工事仕様で大きく変動します。
「リハビリあり」で資金計画が難しくなる理由
整形外科でリハを運用する場合、単に機械を置くだけでなく「算定」と「運用体制」がセットになります。診療報酬は改定により要件が見直されるため、直近の改定資料・届出案内を踏まえた設計が欠かせません。
施設基準の届出・指定の流れを見落としやすい
運動器リハ等の算定を想定する場合、地方厚生(支)局への届出実務が絡みます。また、保険医療機関の指定申請は「指定日が原則翌月1日」など運用上のルールがあり、開業日から逆算して準備が必要です。開業=売上計上開始ではないため、資金繰り上のズレを織り込むのが重要です。
人員計画が固定費を押し上げる
リハ運用は、理学療法士等の採用・定着が前提になります。採用が遅れると、(1) 予約枠が埋まらない、(2) 予定していた算定ができない、(3) 院長の診察が過密化する、という形で収益が崩れやすくなります。
資金計画の立て方|自己資金・融資・リースの基本
整形外科の資金調達は、自己資金・融資・リースを組み合わせるのが一般的です。日本政策金融公庫などの創業向け制度では、事業計画の提出を前提に審査が行われます。資金計画では「設備投資」と「運転資金」を分け、返済可能性を説明できる形に落とし込みます。
Step 1: 必要資金を“3つ”に分解する(投資・開業前費用・運転資金)
工事や医療機器は投資、広告や採用は開業前費用、家賃・人件費・材料費は運転資金です。まずは運転資金を3〜6か月分、先に確保します。
Step 2: “見積りの上振れ”を予備費として計上する
整形外科は工事追加が出やすいため、総工事費・機器費の5〜10%程度を予備費として別枠管理します。
Step 3: 調達手段を当てはめ、返済余力で微調整する
- 融資:内装・工事、運転資金に向く(返済は長期化しやすい)
- リース:高額機器に向く(キャッシュアウト平準化)
- 自己資金:保証金・初期在庫・つなぎ資金に厚めに
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収支シミュレーションの考え方|損益分岐を先に出す
当法人(税理士法人 辻総合会計)では、クリニック支援の現場で「売上の上振れ」よりも「固定費の下振れ(想定より重い)」で苦しくなるケースを多く見ます。整形外科は家賃・人件費・リース料が厚くなりやすいので、損益分岐点を先に置くのが実務的です。
ざっくりモデル(考え方の例)
- 固定費(家賃、人件費、リース、通信等):月600万
- 変動費(材料、外注、決済等):売上の10%
- 目標営業利益:月100万
この場合、必要売上は
(固定費600万 + 利益100万) ÷ (1-変動費率10%) = 約777万/月
となります。ここに、開業初期の患者数立ち上がりを踏まえ、3〜6か月は赤字でも回る運転資金を積むのが基本です。
注意点とリスク|「想定外」を最小化するチェック
- 工事費の追加:遮蔽・電気容量・床補強・空調で上振れしやすい
- 採用遅延:リハ枠が回らず売上が立たない
- 診療報酬改定:算定要件や評価の変更があるため、最新資料で確認する
- 開業日のズレ:保険医療機関の指定・届出のタイムラグを織り込む
- 更新投資:画像機器・物理療法機器の更新時期と資金繰りを合わせる
よくある質問
Q: 整形外科でリハビリを入れると、なぜ費用が増えますか?
A:
リハ区画の内装・床面積が増えることに加え、運用上は人員確保(理学療法士等)と届出実務がセットになるためです。工事と人件費の両方が増える点が、費用差の主因になります。Q: 運転資金は何か月分みておくべきですか?
A:
一般には3〜6か月分が目安です。整形外科は採用やリハ稼働で立ち上がりが遅れると赤字幅が拡大しやすいため、保守的に見積もる方が安全です。Q: 機器は購入とリース、どちらが良いですか?
A:
一概には言えません。キャッシュを厚く残したい場合はリースが有効ですが、総支払額や更新時期との整合も検討が必要です。耐用年数(税務)と更新計画(実務)がずれる前提で、複数案を比較してください。Q: 開業日からすぐ保険診療を開始できますか?
A:
指定・届出のタイミングによりズレが出る可能性があります。保険医療機関の指定申請や施設基準の届出は、地域の地方厚生(支)局の案内に沿って逆算し、開業日=算定開始日とならない場合の資金繰りも織り込む必要があります。まとめ
- 整形外科の開業費用は、リハビリ設備の規模で総額が大きく変わる
- 初期投資と運転資金を分け、運転資金は3〜6か月分を先に確保する
- 工事の上振れ(遮蔽・電気・床)を予備費として計上する
- 人員計画と届出・指定のタイムラグを織り込み、資金繰りのズレを潰す
- 耐用年数(税務)と更新投資(実務)を分けて、長期の資金計画に落とす
参照ソース
- 厚生労働省「医療法(抜粋)」: https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/shikarinsyo/gaiyou/kanren/iryo.html
- 地方厚生(支)局「保険医療機関・保険薬局の指定等に関する申請・届出」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/shinsei/shido_kansa/hoken_shitei/index.html
- 地方厚生(支)局「施設基準の届出等」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/iryo_shido/sisetukijyunntodokede.html
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定(資料)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001251539.pdf
- 国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」: https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/01_sinkikaigyou_m.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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