
執筆者:辻 勝
会長税理士
小児科開業の成功ポイント|立地と診療時間の決め方を税理士が解説

小児科開業の成功ポイント:立地と診療時間の決め方
小児科開業で成功するコツは、「立地」と「診療時間」をセットで設計することです。誰にとって何が問題かというと、開業医にとっては「患者数が読めない」「スタッフが集まらない」「診療が回らない」が同時に起きやすい点が課題です。立地で“来やすさ”を作り、診療時間で“選ばれる理由”を作ると、広告や値引きに頼らずに安定しやすくなります。
税理士法人 辻総合会計(クリニック支援の実務経験を踏まえた一般論)では、開業後の資金繰りや人件費のブレが大きいほど、初期の「場所と時間」の設計ミスが表面化しやすいと整理しています。個別事情で最適解は変わるため、以下は意思決定の軸としてご活用ください。
立地選定:診療圏調査と動線設計(小児科クリニック 開業 立地)
小児科の立地は「人が多い場所」より「保護者の動線に乗る場所」が重要です。具体的には、(1)徒歩・自転車の来院が成立する人口密度、(2)車の導線(駐車場・乗降スペース)、(3)競合の“強みの違い”を見ます。加えて、小児科は季節波動(感染症流行期と閑散期)があります。ピークに合わせて箱を大きくしすぎると固定費が重くなりがちなので、立地の期待患者数は保守的に置くのが実務的です。
立地タイプ別の判断軸(住宅街/駅前/郊外)
| 立地タイプ | 強み | 落とし穴 | 相性が良い診療時間 |
|---|---|---|---|
| 住宅街(戸建・マンション集積) | リピートがつきやすい/徒歩・自転車圏が作れる | 夕方以外は来院が伸びにくい地域もある | 平日夕方+土曜午前を厚めに |
| 駅前・商業集積 | 新患導線が強い/共働き世帯と相性 | 賃料が高い/競合が近い | 平日遅め(〜19時等)を検討 |
| 郊外ロードサイド | 駐車が強い/広い待合が作れる | 車がないと来にくい/人件費が膨らみやすい | 午前・午後を規則的に、土曜稼働の意味が大きい |
「住宅街 成功」を狙う場合は、徒歩・自転車圏を“狭く深く”取りにいく戦略が基本です。駅前で勝ちにいく場合は、時間の差別化(仕事帰り・保育園迎え後)を作れないと、賃料負けしやすくなります。
競合分析は「診療科」ではなく「代替行動」を見る
小児科の競合は小児科だけではありません。近隣の総合診療・内科、休日夜間急患センター、オンライン診療、さらには「受診しない(市販薬・様子見)」も代替です。現地で見るべきは、保育園・幼稚園・小学校、薬局、スーパー、幹線道路、バス停などの組み合わせです。これらが“日常の動線”に入っている立地ほど、開業初期の立ち上がりが安定しやすい傾向があります。
診療時間設計:親の行動時間から逆算(小児科 クリニック 開業 住宅街 成功)
診療時間は「院長の希望」だけで決めると、立地のポテンシャルを取り逃がします。小児科は、保護者の生活時間(登園・登校、就業、迎え、夕食、入浴、就寝)に強く影響されます。診療時間の設計はマーケティングというより、需要の“受け皿”を作るオペレーション設計です。
典型的な“需要が出る時間帯”
- 平日午前:乳幼児(未就園児)が中心。予防接種・健診枠との相性が良い
- 平日夕方:就園児〜学童、共働き家庭の受診が増えやすい
- 土曜午前:平日受診できない層の受け皿になりやすい(混雑が読める)
住宅街で成功しやすい形は「平日夕方を厚めにしつつ、予防接種・健診を“時間枠”として分離」する運用です。感染症外来と非感染(健診・予防接種)の導線分離は、満足度と回転に直結します(物理的分離が難しい場合でも時間分離は可能です)。
人件費と回転数のバランスで“無理のない延長”にする
平日遅めの診療は集患に効きますが、スタッフ確保・残業・定着率に跳ね返ります。特に小児科は説明時間が長くなりやすく、ピーク時に遅延が連鎖しがちです。延長するなら「週◯回だけ遅番」「遅番は予約中心」「遅番は医師2人体制にしない」など、持続可能性のルールを先に決めてください。
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平日 9:15〜18:15(土日祝休業)
開業前の注意点:広告規制・保険指定・リスク管理
立地と診療時間が固まったら、次は「開業初期につまずきやすい制度・手続き」を前倒しで潰します。特にWeb発信は、医療法の広告規制との整合が必要です。厚生労働省は医療広告ガイドラインやQ&A等を公表しており、ウェブサイト等の表示も含めた考え方が整理されています。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html
また、保険診療の開始時期は資金繰りに直結します。地方厚生(支)局の案内では、保険医療機関の指定日は「原則として指定申請をした翌月1日」とされています。開業月の売上計画は、指定日・オンライン資格確認の導入準備等を織り込んで保守的に置くのが安全です。https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/shinsei/shido_kansa/hoken_shitei/index.html
立地と時間が決まった後に行う「決め切り」手順
Step 1: 想定患者像を1枚に落とす
年齢層(未就園/就園/学童)、来院手段(徒歩・自転車/車)、来院動機(感染症/健診・予防接種)を整理します。
Step 2: 診療圏を“移動分”で切る
徒歩・自転車圏は「距離」より「信号・坂・道路横断」で体感が変わります。現地を歩いて、診療圏調査の前提を補正します。
Step 3: 診療時間を“需要の出る曜日と時間”で仮置きする
平日夕方、土曜午前、健診・予防接種枠をどう置くかを先に決め、オペレーション(人員・導線)で実現可能か検証します。
Step 4: 固定費(賃料・人件費)に対する下限患者数を置く
ピークではなく閑散期で回る設計にします。季節変動がある前提で、資金繰り余力(運転資金)を確保します。
よくある質問
Q: 小児科は住宅街が有利と聞きますが、本当ですか?
A:
一般論として、住宅街はリピートがつきやすく相性は良いです。ただし、住宅街でも「共働き比率」「保育園・学校の位置」「車導線」が弱いと伸びません。住宅街で成功させるなら、平日夕方・土曜午前など“受診しやすい時間”を作るのが前提になります。Q: 診療時間を遅くすれば集患できますか?
A:
一定の効果は期待できますが、同時にスタッフ確保・残業・待ち時間悪化のリスクが増えます。週の一部だけ延長する、予約中心にする、健診・予防接種枠を別枠にするなど、持続可能な運用ルールとセットで設計してください。Q: ホームページに何を書けばよいか不安です。
A:
まず医療広告ガイドラインとQ&Aを確認し、事実に基づく記載に徹してください。診療内容・時間・アクセス・予約方法・感染対策など、来院判断に必要な情報を整理し、断定的・誇大な表現は避けるのが基本です(詳細は厚生労働省の広告規制ページ参照)。まとめ
- 小児科開業は立地と診療時間をセットで設計すると、立ち上がりが安定しやすい
- 立地は「人通り」より「保護者の動線(園・学校・買い物・車導線)」で判断する
- 診療時間は親の行動時間から逆算し、平日夕方・土曜午前・健診/予防接種枠を設計する
- Web発信は医療広告規制との整合が必要。表現の統一とガイドライン確認が重要
- 保険指定日など手続きスケジュールは売上計画に直結するため、保守的に資金繰りを組む
参照ソース
- 政府統計の総合窓口(e-Stat)「医療施設調査」: https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?tstat=000001030908
- 厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html
- 地方厚生局(近畿厚生局)「保険医療機関・保険薬局の指定等に関する申請・届出」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/shinsei/shido_kansa/hoken_shitei/index.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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