
執筆者:辻 勝
会長税理士
レセプト点検 クリニック2026|返戻を減らす改定対応|専門家監修

レセプト返戻を減らす近道は、改定の読み替えを早めに整理し、算定要件・病名・施設基準・記載の「抜け」を提出前に潰すことです。院長・事務長・医療事務にとっての問題は、返戻が増えると入金が遅れ、再請求の工数が積み上がり、収益が不安定になる点ではないでしょうか。2026は改定対応が絡むため、点検のやり方を「個人技」から「標準手順」へ移すことが重要です。
2026のレセプト点検で押さえるべき改定対応の前提
診療報酬は原則2年ごとに改定されます。2026年度(令和8年度)の改定は、基本方針や検討資料が順次示され、運用上の読み替えや経過措置(一定期間の暫定ルール)が発生しやすい局面です。
点検の実務では、改定そのものよりも「現場の入力ルールが更新されない」ことで算定ミスが起きます。例えば、算定要件の文言が変わったのに旧来のテンプレート(定型コメント、病名セット、算定日数の考え方)が残っているケースです。
「返戻」「査定」「保留」を分けて原因を特定する
返戻を減らすには、まず結果の分類を揃えます。原因が違うのに同じ対策を打つと、点検が形骸化します。
| 区分 | 典型的な原因 | クリニック側の初動 | 再発防止の打ち手 |
|---|---|---|---|
| 返戻 | 記載不備、添付不足、形式要件の欠落 | 期限内に補正し再請求 | 入力ルール・テンプレ修正、提出前チェック |
| 査定 | 算定要件未充足、病名整合不十分、過剰算定 | 事実関係を確認し必要なら再審査請求 | 要件チェック表、病名セット見直し |
| 保留/確認 | 情報不足、審査側照会 | 照会対応を迅速化 | 事前にコメント・検査値・経過を整理 |
この表に沿って、月次会議では「返戻=提出前の工程不良」「査定=要件解釈・証拠不足」を切り分け、対策の担当(受付・医療事務・医師・管理者)を明確にします。
返戻が増える典型パターンとチェック観点
返戻・査定の多くは、次の4領域に集約されます。
1) 算定要件の見落とし(改定の読み替えを含む)
算定要件は「対象患者」「実施内容」「頻度・回数」「算定期間」「必要な記録」のセットです。どれか1つ欠けると否認されます。改定後は要件が微修正されやすく、点検者が旧ルールで判断してしまうのが典型です。
2) 病名整合の不足(適応の説明が弱い)
検査・処置・管理料は、病名の整合が弱いと査定に寄ります。病名が付いていても「当月の症状・所見・検査値とのつながり」が見えないと、審査側は安全側に倒れます。月末に病名をまとめ付けする運用は、整合崩れの原因になります。
3) コメント(摘要)不足・テンプレの使い回し
必要な摘要がない、または内容が薄いと返戻・保留につながります。逆にテンプレの過剰記載も、実態とズレると不利です。点検では「要件に必要な最小限の根拠」を書けているかだけを見ます。
4) 施設基準の届出・算定開始日の管理
施設基準は、届出受理日・算定開始日・要件維持の3点管理が必要です。人事異動や設備変更、運用停止で要件を満たさなくなっても、システム上は算定できてしまうことがあります。
月次で返戻を減らす点検フロー(仕組み化)
返戻は「提出前」の工程で減らせます。おすすめは、月次で同じ手順を回して改善点をログ化する運用です。
Step 1: 返戻・査定ログを作る(分類と件数)
当月の返戻・査定を、診療科別ではなく「原因カテゴリ(要件/病名/摘要/施設基準/形式)」で集計します。まずは件数で十分です。
Step 2: 高頻度トップ3を深掘り(入力ルールの特定)
件数の多い順に、共通する入力手順を特定します。例:特定の管理料の算定日、病名セット、摘要テンプレ、算定条件のチェック漏れなどです。
Step 3: 提出前チェックを標準化(ダブルチェックの設計)
「誰が見ても同じ結論になる」チェック表に落とします。紙でもスプレッドシートでも構いません。医師確認が必要な項目(病名・摘要・適応)は、締日前にまとめて依頼します。
Step 4: ルール変更を現場に反映(テンプレ・マスタ更新)
算定ミスは、教育よりも「仕組み」で減ります。テンプレ文章、病名セット、算定アラート、コメント必須化など、システム側に寄せます。
Step 5: KPIで定着(返戻率・再請求工数)
KPI例は「返戻件数/総請求件数」「再請求に要した時間」「同一原因の再発件数」です。数字が出ると改善が続きます。
当法人(税理士法人 辻総合会計)では、医療機関のバックオフィス改善支援で、返戻の原因をログ化し、テンプレとチェック表を更新するだけで再発が大きく減るケースを多く見ています。特に点検フローを月次で回せると、改定期でもブレにくくなります。
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2026改定期に起きやすい「落とし穴」チェックリスト
改定期は「情報収集」だけでなく、「現場反映」を点検対象にします。
- 改定通知・疑義解釈の更新日を、院内で1つの保管場所に集約しているか
- 経過措置の期限を、算定ルール(いつまで旧扱いか)として管理しているか
- 施設基準の届出様式の改定に追随できているか(差替え漏れがないか)
- 電子カルテ・レセコンのマスタ更新後、入力テンプレが旧運用のまま残っていないか
- 医師が確認すべき摘要・病名の判断基準を、事務側だけで決めていないか
改定資料を読むだけでは返戻は減りません。院内の「入力・確認・提出」の工程に落とし、誰がいつ何を更新するかまで決めて初めて効果が出ます。
よくある質問
Q: レセプト点検は、どこまで院内でやるべきですか?
A:
まずは「返戻が多いトップ原因3つ」に絞って院内で標準化し、再発が止まらない領域(要件解釈が難しい、医師判断が必要、施設基準管理が複雑)だけ外部点検を検討するのが合理的です。全件を完璧にするより、月次で改善が回る仕組みを優先します。Q: 返戻を減らすのに、点検ソフトは必須ですか?
A:
必須ではありません。ただし、算定要件アラートや病名整合の自動チェックは、人的チェックの「漏れ」を減らす効果があります。導入時は、ソフト任せにせず、院内ルール(摘要テンプレ、病名セット、施設基準の算定開始日)を先に整えると成果が出やすいです。Q: 改定直後に返戻が増えた場合、最初に見るべきポイントは?
A:
まず「改定の読み替えが入った項目」「経過措置がある項目」「施設基準の届出が必要な項目」を疑います。次に、マスタ更新後のテンプレ・セット病名が旧運用のまま残っていないかを確認してください。まとめ
- 返戻を減らす鍵は、算定要件・病名整合・摘要・施設基準を「提出前工程」で潰すこと
- 返戻・査定・保留を分類し、原因別に対策を分けると改善が速い
- 改定期は情報収集よりも、院内テンプレ・マスタ・チェック表への反映が重要
- 月次の点検フローを固定し、返戻ログとKPIで再発を止める
- 個別判断が必要な項目は、通知・疑義解釈・届出状況と突合して慎重に運用する
参照ソース
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html
- 厚生労働省(地方厚生局)「基本診療料の届出一覧(令和6年度診療報酬改定)」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/shitei_kijun/kihon_shinryo_r06.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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