
執筆者:辻 勝
会長税理士
診療報酬の算定漏れチェック2026|見落とし加算10選|専門家向け実務

算定漏れチェックリスト2026の結論
診療報酬の算定漏れは、ほとんどが「算定できる状態なのに、レセプトに載っていない」運用ミスです。収益最大化の近道は、算定要件(患者側条件)と施設基準(届出・掲示・体制)と算定回数(月1回など)の3点を、毎月の定型点検に落とし込むことです。特に2026年(令和8年度)改定に向けて要件が見直されやすい項目は、チェック項目を先に作っておくと算定漏れが減ります。
診療報酬の算定漏れとは(なぜ起きるのか)
算定漏れとは、本来算定可能な点数・加算を、レセプト請求時に載せ忘れることです。現場では「医師はやっている」「受付も案内している」のに、算定に必要な記録や設定が足りず、結果として未算定になるケースが多発します。
代表的な原因は次の3つです。
- 施設基準の届出・更新(再届出、経過措置)が追い付かない
- 電子カルテやレセコンのマスタ設定が改定に追従できていない
- 監査に耐えるレセプト摘要(算定根拠の記載)が不足する
見落としやすい加算10選(算定漏れチェックリスト)
以下は外来中心の医療機関で、算定漏れが起きやすい加算を「点検観点」でまとめたものです。自院の算定方針に合わせて、該当しない項目は削り、該当項目は「担当者」「点検頻度」「証拠の置き場所」を追記してください。
| 加算(代表例) | 見落としポイント(典型) | 最低限の点検観点 |
|---|---|---|
| 医療DX推進体制整備加算 | 体制は整えたが、掲示・実績・経過措置対応が未整理で未算定 | 届出の有無、オンライン資格確認の運用、電子処方箋等の要件、院内掲示の整備 |
| 医療情報取得加算 | オンライン資格確認の取得・活用と算定の紐付けが曖昧 | 取得情報の活用記録、算定タイミング、患者区分別の算定可否 |
| 機能強化加算 | かかりつけ機能の説明はしているが、届出・掲示・周知文書が不足 | 届出、院内掲示、患者への周知文書、対応範囲の整合性 |
| 外来感染対策向上加算 | 感染対策はしているが、自治体公開や連携体制の要件が欠ける | 受入体制、自治体等での公開、研修・手順書、実施記録 |
| 連携強化加算 | 連携先はあるが、情報共有方法が明文化されていない | 連携先一覧、連絡体制、情報共有手順、記録様式 |
| 抗菌薬適正使用体制加算 | 抗菌薬の見直しはしているが、体制(責任者、手順、教育)の証跡が薄い | 責任者、指針・手順、教育実施、モニタリング記録 |
| 時間外対応加算(1〜4) | 電話対応はしているが、周知方法・連携・当番体制の届出が未整備 | 届出区分、連携内容、周知(診察券・掲示・文書)、対応記録 |
| 夜間・早朝等加算/時間外等加算 | 受付時間・標榜時間と算定時間帯の扱いが混在し、算定条件を外す | 算定時間帯の定義、受付締切、休日扱い、レセコン設定 |
| 一般名処方加算 | 置換率や院外処方運用はできているのに、処方箋表記が要件未満 | 一般名記載ルール、対象成分の確認、処方箋テンプレの統一 |
| 外来後発医薬品使用体制加算 | 月次実績(カットオフ等)の集計はあるが、算定・届出の更新が漏れる | 直近実績の算出、届出要件、薬価改定時の臨時取扱い確認 |
チェックリストを「実務」に落とすコツ
上の表はそのままだと「確認した気になる」だけで終わりがちです。運用に落とすために、各加算を次の3分解で管理します。
- 条件:患者側の条件(初診か、月1回か、対象疾患か等)
- 体制:施設基準(届出、掲示、連携、教育、手順書)
- 証拠:レセプトに残す根拠(摘要、同意書、計画書、ログ)
算定漏れを防ぐ毎月点検の手順(チェック担当が迷わない型)
算定漏れ対策は「年1回の監査」では遅く、月次で回すほど回収が安定します。以下はクリニック規模でも回しやすい最小構成です。
Step 1: 対象加算を棚卸しする(10分)
算定している加算、算定したい加算、算定しない加算を3分類します。算定しない加算も「なぜ算定しないか」をメモし、担当交代時のブレを防ぎます。
Step 2: 届出・再届出・経過措置を月次で確認する(15分)
地方厚生(支)局の届出様式と、改定に伴う要再届出の条件を確認します。ここが崩れると、算定漏れだけでなく返戻・返還のリスクも上がります。
Step 3: レセコン設定とカルテ記録の「穴」を埋める(20分)
- レセコン:算定条件(初診、月1回、時間帯など)が正しく設定されているか
- カルテ:摘要や算定根拠がテンプレ化されているか(誰が入力しても同品質か)
Step 4: 月次サンプル監査(30分)
加算ごとに、当月の対象患者を10件程度抽出して「算定されているか」「根拠が残っているか」を照合します。算定漏れが見つかったら、個別修正より先に“再発防止の設定”を直します。
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2026年(令和8年度)改定を見据えた更新ポイント
2026年4月を含む令和8年度改定は、基本方針や会議資料が順次公表されます。改定が近づくほど通知・疑義解釈が増えるため、次の運用が有効です。
- 「改定で要件が動きやすい加算」を先にマークする(DX、感染対策、後発医薬品、時間外など)
- 施設基準の再届出条件(いつから、何が変わるか)をリスト化し、月次点検に組み込む
- レセコンベンダーの改定対応は「反映済み」だけでなく、実患者で算定できたかまで確認する
よくある質問
Q: 算定漏れはどれくらいの頻度で点検すべきですか?
A:
最低でも月1回を推奨します。加算は「月1回」等の回数制限が多く、月次で回すと漏れの発見が早く、修正や運用改善が効きます。Q: 施設基準の届出が間に合っていない場合、さかのぼって算定できますか?
A:
原則として届出受理前の算定はできません。届出・受理・掲示・運用開始日の整合が必要です。個別の扱いは通知や厚生局の案内に従って確認してください。Q: スタッフが入れ替わると算定漏れが増えます。何から整備すべきですか?
A:
「算定根拠のテンプレ」と「月次のサンプル監査」の2つから始めるのが効果的です。誰が入力しても摘要が同品質になり、点検で早期にズレを検出できます。まとめ
- 算定漏れは「条件・体制・証拠」のどれかが欠けて起きる
- 見落としやすい加算は、届出・掲示・経過措置・算定回数で漏れやすい
- 月次点検(棚卸し→届出確認→設定確認→サンプル監査)を型化すると再発が減る
- 2026年(令和8年度)改定に向け、要件が動きやすい加算から先にチェック項目を固定化する
- 個別事情で取扱いが変わるため、最新の通知・点数表に基づき運用を更新する
参照ソース
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて(資料)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/001277499.pdf
- 厚生労働省「処方箋に記載する一般名処方の標準的な記載(一般名処方)」: https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/shohosen_250401.html
- 関東信越厚生局「基本診療料の届出一覧(令和6年度診療報酬改定)」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/shitei_kijun/kihon_shinryo_r06.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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