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クリニック向けコラム
作成日:2026.01.10
更新日:2026.01.15
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

診療報酬改定2026の内科影響と対策|税理士が解説

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診療報酬改定2026の内科影響と対策|税理士が解説

診療報酬改定2026(令和8年)とは:内科が最初に押さえる結論

診療報酬改定2026は、内科クリニックにとって「算定ルールの変更」だけでなく、物価・賃金の上昇に耐える経営と、かかりつけ医機能や医療DXに沿った運用への移行を同時に求める改定です。
厚生労働省が示した令和8年度改定の基本方針では、(1)物価・賃金・人手不足への対応、(2)2040年頃を見据えた機能分化と地域包括ケア、(3)安心・安全で質の高い医療(医療DX等)、(4)効率化・適正化(後発品促進等)が柱になっています。
内科は外来中心で患者層も高齢化しやすく、改定の“政策テーマ”がそのまま現場オペレーションに直撃しやすい領域です。まずは「何が増える/減る」よりも、「何を満たすと評価されやすい方向か」を先に理解するのが近道です。

当法人(税理士法人 辻総合会計)でも、クリニック顧問の現場で多いのは「改定内容は追っているが、院内の体制・レセプト・人件費計画に落ちない」というご相談です。以降は、内科に関係しやすい論点を“経営に変換”して整理します。

内科クリニックへの主な影響:収益・コスト・運用の3点セットで見る

改定の影響は、(A)収益(算定・加算)、(B)コスト(人件費・外注費・材料費等)、(C)運用(記録・連携・DX)に分けると見落としが減ります。基本方針のキーワードを内科の経営要素に翻訳すると、概ね次の構図になります。

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改定テーマ(基本方針)内科で起こりやすい影響現場での対策例
物価・賃金・人手不足への対応人件費・外注費の上昇を報酬で吸収できるかが課題。受付・看護の採用難が慢性化業務分解(受付/会計/医師事務補助)、予約・問診のDX、処遇改善の原資設計
機能分化と地域包括ケア外来医療の機能分化と連携が進み、紹介・逆紹介や在宅/施設連携の運用が重要に連携先リスト整備、紹介状テンプレ、退院後フォロー導線、在宅/施設の後方支援体制
安心・安全・質(医療DX等)電子処方箋や情報連携など、ICT要件が算定・監査対応の前提になりやすい電子処方箋・オンライン資格確認の運用点検、記録様式の標準化、情報セキュリティ整備
効率化・適正化(薬剤等)後発医薬品の促進、薬剤適正使用の流れが強化。処方の方針・説明が収益と監査リスクに影響服薬状況・重複投薬の確認フロー、薬局との連携、患者説明の記録整備
ここがポイント
改定点数や算定要件の細部は、最終的に告示・通知・疑義解釈で具体化します。2026年4月以降に「想定と違った」を避けるため、今の段階では“方向性に合う体制投資”と“取りこぼし防止”を先に固めるのが安全です。

内科の「取りこぼし」を減らす実務対策:算定・体制・運用の整え方

内科は患者数が多く、1件あたりの単価差が月次損益に直結します。改定局面では「算定できるのにしていない」「要件を満たしているのに証跡が弱い」が最ももったいない損失です。対策は大きく3段階で組みます。

1) 算定の棚卸し:現状の“伸びしろ”を数字で出す

まず、直近3か月〜6か月のレセプトを、項目別に件数と算定率で分解します。
「算定率が低いが対象患者は多い」「医師の記録はあるがスタッフ運用が追いついていない」など、課題が見えれば、改定対応の優先順位が決まります。

2) 体制要件の点検:院内ルールが“属人化”していないか

改定のたびに起こる典型例は、要件は満たしているのに「掲示・同意・記録・連携」のどこかが欠けて返戻や指摘につながるケースです。
医師だけでなく受付・看護・事務の動線まで含めて、「誰が」「いつ」「どこに」「何を残すか」を標準化します。

3) 医療DXの整備:算定以前に“運用破綻”を防ぐ

医療DXは導入するだけでは不十分で、「受付」「資格確認」「処方」「会計」「請求」のつなぎ目で詰まります。
電子処方箋・オンライン資格確認・院内の端末運用は、現場負荷が増えると定着しません。業務を分解し、タスクシフト(医師→スタッフ、スタッフ→システム)で負荷を下げる設計が必要です。

税理士の視点:診療報酬改定を“経営数値”に落とす方法

改定を乗り切る鍵は、「点数の暗記」ではなく、月次損益と資金繰りに翻訳して意思決定することです。税理士が現場で重視するのは次の3点です。

1) 損益インパクトの試算:患者数×算定率×単価で感度分析する

内科は患者数のブレ、季節性、検査や処方の構成比で収益が変わります。
改定の影響は、(a)単価の変化、(b)算定率の変化、(c)運用コスト(人件費・システム費)の変化に分解し、3パターン(保守・標準・攻め)で試算します。

2) 人件費の原資設計:処遇改善と採用難に先回りする

基本方針でも、賃上げや業務改善・タスクシフトの推進が明確に示されています。
賃上げを「気合」でやると資金繰りが傷みます。月次の粗利(医業収益−変動費)から、固定費(人件費・家賃・リース・委託費)を再配分し、賃上げの上限と投資余力を同時に決めます。

3) 監査・返戻リスクの管理:ルール変更時ほど“証跡”が重要

改定直後は、院内の理解が追いつかず記録や請求にブレが出やすい時期です。
特に外来中心の内科は件数が多いため、返戻が積み上がると資金繰りに影響します。改定後3か月は「返戻理由の分類」「再請求率」「記録不備の原因」を毎月レビューする運用が有効です。

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2026改定までの準備ステップ:スケジュールに沿って進める

厚生労働省・中医協の議論は段階的に進み、基本方針→具体的議論→告示・通知→疑義解釈の順で実務が固まります。院内の準備は、情報が出揃うのを待つのではなく、今できる“土台づくり”から着手します。

Step 1: 情報収集の仕組み化(毎月1回でよい)
中医協資料と厚労省の改定ページを定点観測し、「内科」「外来」「医療DX」「薬剤適正化」に関係する項目だけ院内共有します。

Step 2: 算定棚卸し(現状把握→優先順位付け)
直近レセプトから、算定率・返戻率・患者構成(高齢者比率、慢性疾患比率)を出し、改定で伸ばす項目と守る項目を分けます。

Step 3: 体制・記録の標準化(属人化の解消)
要件に絡む「説明」「同意」「記録」「掲示」をテンプレ化し、受付〜診察〜会計の動線に落とします。

Step 4: 投資と資金繰りの設計(DX・人件費の原資)
システム費用、外注費、賃上げ原資を織り込んだ月次資金繰り表を作り、改定後のキャッシュの谷を先に潰します。

ここがポイント
改定対応は「院長が頑張る」だけでは回りません。受付・看護・事務が“同じルールで動ける”ように、院内マニュアルとチェックリストを短く作り、継続運用できる形にするのが成功パターンです。

よくある質問

Q: 診療報酬改定2026(令和8年度)はいつから影響しますか? ▼

A:

診療報酬改定は通常、年度初めのタイミングで実施されます。令和8年度改定の議論・資料は厚労省ページに集約されるため、まずは基本方針と中医協資料の更新を確認し、院内準備を前倒しで進めるのが安全です。
Q: 内科クリニックは何を優先して準備すべきですか? ▼

A:

優先順位は「算定の取りこぼし防止」→「体制要件と証跡の整備」→「医療DXを含む運用設計」です。点数の上下より、運用破綻や返戻増によるキャッシュ悪化を先に防ぐ方が効果が出やすいです。
Q: 改定内容が確定してから対応しても間に合いますか? ▼

A:

点数の細部は確定後に調整するとしても、業務標準化(記録・掲示・連携)やDXの運用設計は“今から”進めた方が確実です。特に人手不足の環境下では、改定直前の詰め込みが最も失敗しやすくなります。

まとめ

  • 診療報酬改定2026は、物価・賃金、人手不足、機能分化、医療DX、適正化が柱で、内科は影響を受けやすい
  • 影響は「収益」「コスト」「運用」に分解し、算定棚卸しと体制要件の標準化から着手する
  • 医療DXは導入より運用が重要で、受付〜請求の“つなぎ目”を設計しないと現場負荷が増える
  • 改定は点数の上下より、返戻・記録不備・運用破綻が資金繰りを傷めやすい。改定後3か月は月次レビューが有効
  • 最終確定を待たず、土台(標準化・数値化・資金繰り)を先に固めるのが最もリスクが低い

参照ソース

  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の基本方針」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66904.html
  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の基本方針(PDF)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001607288.pdf
  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の基本方針の概要(PDF)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001607287.pdf
  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定に向けた主な検討スケジュール(案)(PDF)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001473983.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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