
執筆者:辻 勝
会長税理士
小児かかりつけ診療料2026の算定戦略|税理士が解説

小児かかりつけ診療料2026とは
小児かかりつけ診療料2026とは、乳幼児・小児に対して「同じ医療機関で継続的に診る」体制を評価する診療報酬です。小児科クリニックにとっては、外来の単価だけでなく、地域の信頼(相談対応・紹介連携・虐待/発達支援の窓口)を診療報酬として裏付ける位置づけになります。
一方で、算定は「施設基準の届出」「対象患者の同意・運用」「時間外を含む対応体制」など、実務要件が多く、運用が曖昧だと返還リスクが高まりやすい点が課題です。特に2026年は、令和8年度(2026年度)改定に向けた議論も進むため、現行要件の“穴”を早めに塞ぐことが算定戦略になります。
当法人(税理士法人 辻総合会計)は、医療特化で継続的な経営支援を行う中で、「制度を知っているのに算定が続かない」「スタッフ運用が回らない」という相談を多く受けます。本記事では、制度の要点を押さえつつ、院内オペレーションまで落とし込む方法を解説します。
2026年時点の点数と「改定で増えた役割」
小児かかりつけ診療料は「1/2」と「処方箋交付の有無」「初診/再診」の組み合わせで点数が分かれます。2026年時点で、改定後の点数は下表のとおりです。
| 区分 | 処方箋を交付する | 処方箋を交付しない |
|---|---|---|
| 小児かかりつけ診療料1(初診) | 652点 | 769点 |
| 小児かかりつけ診療料1(再診) | 458点 | 576点 |
| 小児かかりつけ診療料2(初診) | 641点 | 758点 |
| 小児かかりつけ診療料2(再診) | 447点 | 565点 |
実務上のポイントは、単に「点数が上がった/下がった」よりも、算定に求められる“診療の中身”が明確化・拡張されている点です。改定後の算定要件(抜粋)では、従来の指導等に加えて、発達障害の疑いがある患者への相談・紹介、育児不安等への適切な対応が明記されています。
つまり2026年は、感染症や慢性疾患の継続管理だけでなく、「発達・虐待・育児不安」を含めた相談窓口としての機能が、算定の実体として問われやすい年といえます。
小児科診療報酬としての位置づけ
小児かかりつけ診療料は「外来の包括評価」として設計されているため、院内の算定設計では次の整理が必要です。
- 小児科外来診療料(B001-2)との関係(施設基準上の前提)
- 検査・処置・加算の算定可否(包括の範囲)
- 再診中心のクリニックほど「運用設計」が収益に直結
制度の理解を“点数表の暗記”で終わらせず、診療フロー(受付〜診察〜説明〜文書〜フォロー)に埋め込むことが最短ルートです。
施設基準と届出の要点
小児かかりつけ診療料は、算定以前に「施設基準の適合・届出」が必要です。届出様式のチェック項目から、特に重要な論点を抜き出します。
時間外対応は算定の土台
届出書添付書類では、時間外対応が明確に要件化されています。
- 小児かかりつけ診療料1:時間外対応加算1または3の届出
- 小児かかりつけ診療料2:時間外対応加算2または4の届出、または初期小児救急への参加(年6回以上)+診療時間外の案内(#8000等)の整備
ここが弱いと、院内では算定できても患者側の期待(夜間休日の相談)に応えられず、結果として運用が破綻しやすくなります。算定戦略としては、時間外対応を「院内の仕組み」に落とすことが最優先です。
医師の実績要件は“2つ以上”を満たす設計に
届出様式では、常勤で小児科(または小児外科)を担当する医師について、次の項目のうち「2つ以上」に該当することが求められます(様式上のチェック)。
- 乳幼児健診の実施
- 定期予防接種の実施
- 15歳未満の超重症児等への在宅医療実績(条件あり)
- 園医・嘱託医・学校医への就任
「現場でやっている」だけでは足りず、届出時に確認資料の写しが求められます。監査の観点でも、後日説明できる形で証跡を残すことが重要です。
研修(発達・虐待)は“望ましい”でも軽視しない
施設基準(抜粋)では、担当医について発達障害等に関する研修・虐待に関する研修の修了が「望ましい」と整理されています。義務ではないから不要、ではなく、2026年の運用では「相談対応の実体」を問われた際の説明力になります。
小児かかりつけ診療料の算定戦略(院内オペレーション編)
ここからは「要件を満たす」だけでなく、「継続して回る」算定戦略を提示します。ポイントは、対象患者の設計と、同意・文書・フォローの標準化です。
対象患者の設計:全員を狙わない
小児かかりつけ診療料は、継続管理の価値が出る患者層ほど相性が良い一方、短期受診(旅行・一見の発熱)中心の患者では運用負荷が勝ちます。
実務では、次のように対象を段階設計すると安定します。
- フェーズ1:予防接種・健診・アレルギー等で定期的に来院する家庭
- フェーズ2:喘息・アトピー等で計画的な生活指導が必要な家庭
- フェーズ3:発達相談・育児不安・虐待懸念を含む「相談窓口」ニーズが高い家庭
最初からフェーズ3まで広げると、時間外相談や紹介連携の負担が急増します。まずはフェーズ1〜2で運用を固め、スタッフが説明に慣れてから拡大するのが現実的です。
Step形式:同意取得〜算定開始までの流れ
Step 1: 対象患者リストを作る
- 予防接種・健診・慢性疾患の定期フォロー患者を抽出
- 家族の受診行動(休日夜間の受診傾向)も確認
Step 2: 同意取得と説明文書を標準化する
- 口頭説明だけでなく、渡す文書を固定(院内統一)
- 「相談できる範囲」「夜間休日の連絡方法」「紹介時の流れ」を明記
Step 3: 診察室のテンプレを作る
- 発達・育児不安の相談が出た場合の問診項目をテンプレ化
- 紹介が必要な場合の紹介先リスト(地域の医療・相談窓口)を整備
Step 4: 時間外対応の運用を“電話機能”で終わらせない
- 留守電案内文を定期更新(#8000、地域の夜間小児救急など)
- 当番医制等に参加している場合は実績管理(年6回以上の証跡)
Step 5: 月次で算定の自己点検をする
- 同意書・説明文書の保管
- 相談対応の記録(育児不安、発達相談、虐待懸念の所見・対応)
- 紹介状・情報提供の履歴
ケーススタディ(匿名)
ある小児科クリニックでは、算定開始当初「医師が忙しく同意説明が飛ぶ」「受付が書類を回収し忘れる」ことが頻発し、月によって算定件数が大きくブレていました。
そこで、受付での説明を2分以内に収めるスクリプト化と、電子カルテのチェックボックス(同意取得・説明文書交付・時間外案内)を必須入力に変更したところ、算定件数が安定し、クレーム(夜間の連絡先が分からない等)も減りました。ポイントは、「制度の理解」ではなく「運用の自動化」です。
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返還リスクを下げるチェックリスト(小児 かかりつけ)
小児かかりつけ診療料は、算定の正当性が“診療録と証跡”で説明できるかが核心です。よくある返還トリガーを先回りして潰します。
- 同意取得が診療録で追える(いつ・誰が・何を説明したか)
- 時間外対応の案内が実際に機能している(留守電、院内掲示、患者配布文書)
- 発達相談・育児不安の相談に「対応した記録」がある(否定でなく、評価と対応)
- 紹介が必要なケースで、紹介・連携の記録がある(紹介状、情報提供)
- 届出要件(健診・予防接種・学校医等)の証跡が整理されている
「やっているはず」を「見せられる」に変えるだけで、監査対応の難易度が下がります。
2026年度改定(令和8年度)を見据えた準備
2026年4月に向けては、令和8年度診療報酬改定の議論が進みます。方向性のキーワードは、「かかりつけ医機能の可視化」「地域連携」「患者への説明」です。
小児科クリニックとしては、次の準備が“改定で揺れない体質”につながります。
- かかりつけ機能(時間外、相談、連携)の院内掲示・患者説明を整備
- 発達・虐待の相談に関する院内導線(誰が初期対応し、どこへつなぐか)
- 地域の夜間休日体制(当番医、#8000、救急)との接続情報を定期更新
制度改定のたびに算定を作り直すのではなく、日常運用を「説明できる形」にしておくことが最も強い戦略です。
よくある質問
Q: 小児かかりつけ診療料1と2は、どちらを選ぶべきですか?
A:
届出上の差は主に時間外対応の要件設計に出ます。時間外対応加算の届出が可能で、院内の連絡体制・記録管理まで作り込めるなら1を検討しやすいです。一方、当番医制への参加実績や診療時間外の案内整備で要件を満たす設計なら2が現実的な場合があります。重要なのは、届出後に運用が回るか(説明文書・同意・夜間休日の案内)が担保できるかです。Q: 発達相談や育児不安は、どこまで記録すればよいですか?
A:
「相談があった/なかった」だけでなく、評価(困りごとの内容、緊急性)と対応(助言、フォロー、紹介の要否)を診療録に残すのが安全です。発達障害の疑いや育児不安への対応は算定要件に含まれるため、診療録で説明できる粒度にしておくことが返還リスクを下げます。Q: 同意書や説明文書は紙で保管しないといけませんか?
A:
法令・通知上の要請や運用は個別に確認が必要ですが、少なくとも「同意取得の事実」と「説明内容の提供」が後日説明できる状態が必要です。電子カルテにスキャン添付、テンプレ記録、配布文書の版管理など、クリニックの運用に合わせて“証跡が残る”設計にしてください。まとめ
- 小児かかりつけ診療料2026は、継続診療と相談・連携機能を評価する仕組み
- 改定後点数は「1/2×処方箋×初再診」で整理し、院内フローに埋め込む
- 届出要件の核心は、時間外対応と医師の実績(2項目以上)+証跡管理
- 発達相談・育児不安への対応は、診療の実体と記録が算定の防波堤になる
- 令和8年度改定を見据え、かかりつけ機能の説明・掲示・連携を先に整備する
参照ソース
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【重点分野Ⅰ(救急医療、小児・周産期医療、がん医療)】」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001252074.pdf
- 厚生労働省(関東信越厚生局)「小児かかりつけ診療料の施設基準に係る届出書添付書類」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/r6-t07-8.pdf
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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