
執筆者:辻 勝
会長税理士
診療報酬改定2026 泌尿器科の前立腺・排尿検査対応|専門家解説

2026年改定で泌尿器科がまず押さえる結論
診療報酬改定2026で泌尿器科クリニックが最初に押さえるべきは、「点数の増減」そのものより、算定要件(適応・頻度・併算定制限)の変更が収益と運用を大きく左右する点です。点数が据え置きでも、算定できる回数や対象患者が狭まれば実収入は下がります。
また、令和8年度改定は物価・賃金上昇、人材確保、医療DXなどを背景に、医療機関の経営・処遇改善と効率化を同時に求める方向性が示されています。泌尿器科では、前立腺・排尿機能領域の検査は「外来の回転率」「検査室の稼働」「紹介・逆紹介の導線」に直結するため、改定情報を“診療設計”に落とし込むことが重要です。
前立腺・排尿機能検査とは(泌尿器科での収益インパクト)
「前立腺検査」「排尿機能検査」は、同じ“検査”でも性格が異なります。前立腺領域はスクリーニングから確定診断、治療方針決定までの流れがあり、排尿機能は症状評価・治療反応性評価・長期フォローの比率が高いのが特徴です。
前立腺(例:PSA等)で見落としやすい算定ルール
前立腺がんの評価で行われる検査は、臨床的な必要性に加え、保険上の頻度制限が論点になりやすい領域です。たとえば、前立腺がんの診断目的で実施する検査について「原則1回限度」や、確定診断がつかない場合の追加算定の条件(期間・回数上限)が示されているものがあります。こうしたルールは、改定で明文化・厳格化されると、“いつもの運用”が急に算定不可になり得ます。
排尿機能検査(例:尿流測定、残尿評価、尿流動態)でのポイント
排尿機能検査は、症状の重症度・治療選択・フォローアップの妥当性を担保する役割があります。そのため改定では、以下が「点数変更」以上に重要になりがちです。
- どの病態で、どの検査が適応として整理されるか(医学的妥当性の提示)
- 治療前後での実施間隔(頻回実施の適正化)
- 他検査・処置・管理料との関係(包括・併算定)
泌尿器科クリニックの経営上は、排尿機能領域の検査は「患者数×フォロー回数」で積み上がるため、算定要件の変更は月次売上に直結します。
「点数変更」の読み方(泌尿器科 点数2026のチェック軸)
診療報酬改定は、実務的には「点数」「算定要件」「施設基準」「包括(まるめ)」の4点セットで影響が出ます。特に泌尿器科では検査の構成比が高い分、次の読み方を推奨します。
- 1点当たりの増減(単価)
- 算定回数の増減(頻度制限・算定可能場面の増減)
- 併算定の可否(別算定→包括、またはその逆)
- 記録要件(検査目的、所見、治療方針への反映の記載)
「単価×回数×算定率」で見ないと、改定の“見た目”と実収入がズレます。
| 変更タイプ | 典型的な改定内容 | 泌尿器科(前立腺・排尿)での影響例 | 経営への効き方 |
|---|---|---|---|
| 点数の増減 | 点数アップ/ダウン | 同じ検査でも月次が上下 | 1件あたりの粗利が変動 |
| 要件の厳格化 | 適応・頻度・回数制限 | 検査回数が減る、算定漏れ増 | 売上が“静かに”減る |
| 包括(まるめ) | 検査が管理料等に包含 | 別算定不可になる | 診療単価の再設計が必要 |
| 加算の新設 | 条件を満たすと上乗せ | 連携・DX等の加算 | 取れる体制なら追い風 |
改定影響を試算する手順(実務向け)
税理士法人 辻総合会計では、クリニックの月次試算や診療行為別の採算整理の相談を受ける際、改定対応は「検査コードごとの試算」に落とします。ポイントは“全部追わない”ことです。影響が大きい上位項目から潰します。
Step 1: 前年同月の検査実績を「件数×算定点数」で棚卸し
- 前立腺関連(例:PSA等)、排尿機能関連(尿流・残尿・尿流動態など)を分ける
- 上位10項目で売上の多くを占めるケースが一般的
Step 2: 変更が出た項目を「点数」「要件」「併算定」で分類する
- 点数増減より、要件(頻度・対象)の変更を先に確認
- 併算定不可(包括化)の有無を確認
Step 3: 3パターンで月次への影響を置く(保守・中立・攻め)
- 保守:算定率低下(算定できないケースが増える)を織り込む
- 中立:現行運用のまま想定
- 攻め:加算/体制整備で算定率を上げる
Step 4: オペレーションを改定仕様に合わせて標準化する
- 検査オーダー時の目的記載テンプレ
- フォロー間隔の院内ルール化
- 算定チェックの項目化(受付/看護/医事の分業)
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注意点とリスク:前立腺・排尿検査で起きやすい「落とし穴」
「検査をやった」だけでは足りない:医学的必要性の説明
改定局面では、検査の実施理由と結果の活用が算定の正当化になります。前立腺領域なら、生検等の方針決定や経過観察の根拠、排尿機能なら治療変更や重症度評価への反映が記録上の要点です。
頻回実施の適正化で、フォロー売上が目減りする可能性
排尿機能検査はフォローで積み上がる一方、制度上は頻回実施を抑制する方向が入りやすい領域です。改定で頻度の目安が明文化されると、これまで算定できていた回が算定不可になることがあります。
ケース(匿名):検査回数の“無自覚な増加”が否認リスクに
ある泌尿器科外来では、排尿症状のフォローで同一検査を短い間隔で繰り返す運用が定着していました。医師側は「症状が不安定だから必要」と考えていましたが、記録上は治療変更との紐づけが弱く、医事側もチェックできていませんでした。改定後に要件が明確化された場合、算定否認・返戻のリスクが高まります。対策は、検査実施の目的と、結果が治療方針にどう反映されたかをテンプレ化することです。
よくある質問
Q: 2026年改定で、前立腺・排尿機能検査の点数はもう確定していますか?
A:
改定の基本方針(2025年12月9日)と、改定の枠組み(2025年12月24日)は公表されていますが、個別の点数や詳細な算定要件は告示・通知で確定します。現時点では「確定点数の断定」より、影響が大きい検査の棚卸しと、要件変更に備えた記録・運用整備が先です。Q: 前立腺がん関連の検査は、回数制限が厳しくなるのでしょうか?
A:
一律に「厳しくなる」とは断定できませんが、前立腺がんの診断目的で行う検査には、原則1回限度や、確定診断がつかない場合の追加算定条件(期間・回数上限)が示されているものがあります。院内の運用がこの枠組みと整合しているかを点検しておくのが安全です。Q: クリニック経営としては、何から着手すべきですか?
A:
「上位10検査の月次金額」「要件変更が出た項目の算定率」「記録テンプレとチェック体制」の3点から着手してください。点数が微増でも、算定率が落ちると実収入は減ります。逆に、要件を満たす運用を標準化できれば、改定を機に収益のブレを抑えられます。まとめ
- 診療報酬改定2026は、点数よりも算定要件(適応・頻度・併算定)が泌尿器科の実収入を左右しやすい
- 前立腺領域は、診断目的の検査に回数・期間のルールがあるため、院内運用の整合が重要
- 排尿機能検査はフォローで積み上がるため、頻回実施の適正化が入ると月次売上に影響し得る
- 影響試算は「単価×回数×算定率」で、上位項目から実務的に行う
- 記録テンプレと算定チェックを標準化すると、改定後の返戻・算定漏れを抑えられる
参照ソース
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の基本方針(令和7年12月9日)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001618046.pdf
- 厚生労働省「診療報酬改定について(令和7年12月24日)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001620952.pdf
- 厚生労働省「中医協総会(臨床検査の保険適用について)資料」: https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001197880.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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